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謝らない子に「謝らせる」はNG?!「ごめんなさいは?」のデメリット

この記事を書いた人

久美子 久美子

久美子

  • 臨床心理士
  • 公認心理師

5歳と7歳(小1)の息子のアラフォーママ。

公認心理師・臨床心理士の資格を持っています。

心理士の仕事をしながら、発達心理学の視点も踏まえて、日々、子育て奮闘中。

夫にも積極的に育児に参加してもらい、親子でハッピーになれる時間を模索しています。

子育てをしていると、我が子が何か失敗したり、お友達と言い合いになったりして、謝ってほしい場面によく出会います。

子どもは悪いことをしているつもりもなく、ただ遊びが行き過ぎたり、うまくできなかったり、わざとじゃないけど失敗することは日常茶飯事です。

そうだとわかっていても、我が子が「ごめんなさい」を言えなくて、モヤモヤ・イライラした経験はありませんか?

頭ごなしに謝らせようとするのはよくないとわかっていても、つい感情的に「ごめんなさいは?」と言ってしまうこともありますよね。我が子に反省している様子がなければ、なおさらでしょう。

子どもが素直に謝れないとき、「ごめんなさい」と親が言わせようとするのは正しいのでしょうか?

前回に続いて、今回も子どもに素直に謝らせるにはどうしたらいいのか悩んでいる方に、

頑なに謝ろうとしない・謝れない子どもの心理、

ママやパパが子どもに「ごめんなさい」を強要してしまうことのデメリット

について紹介します。

▶ 前回の記事
>>「ごめんなさい」が言えないのはなぜ?子どもの心理と親が心がけたいこと

 

目次

 

1.謝りたくない・謝れないのはなぜ?「ごめんなさい」を言いたくない子どもの心理は?

「ごめんなさい」を言うと、友達と仲直りできたり、罰として「してはいけません」と制止していたことがまたできるようになります。

謝ることのメリットは多そうですが、中には頑なに黙り込んでしまう子どももいます。

謝らない子どもは、どんなことを感じているのでしょう。「ごめんなさい」を言いたくない子どもの心理を見てみましょう。

 

1-1.納得できなくて「自分は悪くない」と思っているとき

納得できないとき、自分は悪くないと思っているとき子どもは、謝りません。親から見た状況と、現実の状況が食い違っている場合に起きやすいです。

筆者の息子(5歳~6歳)がそうでした。傍から見たら妹を泣かせているように見えたので注意したのですが、絶対に謝りませんでした。一言「ごめん」と言ってくれれば、その場が収まるのにどうして言えないのだろうとやきもきしました。

丁寧に理由を聞いても黙っていたり、泣いてしまったりと、当時困ったことを覚えています。

ただ、6歳頃になると「僕は悪くない。先にぶってきたから、やりかえしたんだ」と話してくれるようになりました。

自分から状況を説明してくれると、親が見ていなかったやりとりを知ることができ、息子ばかりが悪かった訳ではなかったんだなとわかりました。

息子は、間違えて相手をぶってしまったときも絶対に謝らなかったのですが、6歳頃から怒った口調でも「ごめん!間違えてあたっちゃったの」と言えるようになりました。怒ったように話すのでまだまだですが、「ごめん」の単語が出てきてくれたので第1ステージはクリアです。

おそらく子どもには、謝ることを受け入れる成長という時間が必要だったのかもしれません。

子どもも自分が納得できれば、ちゃんと謝ることができます。

 

1-2.「謝る=負け?」幼児期のプライドが邪魔をしているとき

「ごめんなさい」を言ったら、負けを認めることだと思う子どももいます。

子どもはみんな「万能感」を持っています。 これは『幼児的万能感』と言って、「自分が1番かっこいい!」「世界で1番すごいのは自分だ」という気持ちです。 子どもなりのプライドですね。

謝ることは、この万能感とは相容れません。 自分が悪いことをしたことは頭でわかっていても、「自分は悪くない」と考えないとこの万能感を保てないので、幼児期はプライドが邪魔をして謝ることができない場合もあります。

 

1-3.ルール違反しても大人にバレていないと思っているとき

「家に帰ったら手を洗ってね」「ゴミはゴミ箱に捨ててね」といったルールや約束を教えられると、子どもはそれを守らないと大人から注意されることを予測するようになります。

子供たちは遊びに夢中になっている最中に、「ダメだよ」と言われたことに気づかず、うっかり破ってしまうことがよくあります。

その際、親や先生が見ていないとわかると、「バレないなら注意されないからいいや」と思うこともあります。大人の目をかいくぐることは子供の成長の一環ですが、親としては時折頭を抱えることもありますよね。

 

1-4.頭が真っ白になってしまっているとき

とっさの出来事に返答するのが苦手な子どももいます。頭が真っ白になって、なんの言葉も思い浮かばないため「言えない」のです。 親からしたら「どうしてごめんなさいが言えないの?」とイライラしてしまうこともあります。

これは、発達障害のお子さんに多い悩みです。 中には、叱られるのではないかと恐怖や不安を感じて何も言えなくなってしまうお子さんもいます。 反射的に「ごめんなさい」とパターン的な言葉を言える子も、実はその単語以外は思い浮かばない、なんてこともあります。

どれも、いきなり叱られたことで本人の中で一種のパニックが起きてしまって、その子なりに精一杯対処している結果なのです。

 

1-5.「無口」や「受け流し」は、謝っても無駄だと思っているとく

謝らない子の中には、叱られるとむっとして黙ってしまう無口パターンや、「あー、はいはい」と目を合わせずに受け流そうとするパターン、「そんなことより」と遮って、無理やり別の話にすり替えようとするパターンなどが見られます。

そのようなとき、子どもは「謝っても意味がない」、「何も言わないほうがいい」と学習してしまっている可能性があります。

子どもが「ごめんなさい」と言っても、その言い方次第では、「ちゃんと謝りなさい」「反省してないでしょ」と思うこともしばしばあります。大人は誠意が伝わってこないと謝ってもなかなか許そうとは思えません。

ですが、子どもからしたら「ごめんなさい」と言ったのに許してもらえないという、謝ることの否定的な体験として残ります。「謝ったってダメなんだ」という気持ちは、黙る・受け流す・話題を変えるなどの行動につながってしまいます。

 

2.<コラム> 子どもは何歳から相手の罪悪感がわかるの?

子ども同士のケンカでは、悪いことの程度に関わらず、相手が謝ってくれたらたいていは許してしまいます。

特に2歳~4歳では、それがよく起きます。2歳~4歳頃の子どもは、表情よりも言葉で相手の感情を理解しようとします。 言葉でのルールが入りやすい時期ですので、ママやパパは「こんなときは、ごめんなさいを言おうね」と促しやすいでしょう。

成長するにつれて「心からの謝罪」か、「形だけの謝罪」か区別がつくようになってきます。

小学1年生頃は言葉で判断しますが、小学3年生~小学5年生は表情と言葉の両方で判断します。 この時期は、相手の表情を見て「悲しそう」「嬉しそう」といった読み取りができるようになります。 言葉だけでなく、表情や態度も合わせて判断し、「悲しそうな顔をしているから反省している。だから許してあげよう」となれるのです。

ということは、大人と同様の認知ができるまで発達しているため小学高学年になると、表情や態度が伴っていない謝罪に対しては、簡単に許さなくなります。罪悪感がない相手から謝られても、怒りの気持ちが下がらなかったり、許せなくなるので、その分、仲直りも簡単にできないことも起こります。

お子さんの「罪悪感」の発達に合わせて人間関係のルールを教えていきましょう。

小さいうちは「ごめんなさい」を言うことからはじめて、「お友だちはいまどんな顔(表情)をしている?」と、子どもに感情を推測させるように促していきましょう。 将来的な社会スキルの獲得にも繋がります。

 

3.「ごめんなさいは?」親から強制して謝らせることのデメリット

子どもは、意図的に悪いことをする場合と、たまたま悪いことをしてしまう場合があります。

「ぶつかったのに気づかなかったため、無視してしまった」「棚の上のモノをとったときに、ほかのものを落としてしまった」など、子ども自身は気づいていなくても、困った行動になっていることもあります。

他人に迷惑をかけてしまったときや、何度もルールを破るときには、ついかっとなって叱り過ぎてしまうこともありますよね。

子どもが納得していなのに、無理やり謝らせてしまったら子どもにはどんな影響があるのでしょうか。 「ごめんなさい」を強要してしまうことのデメリットについて考えていきましょう。

 

3-1.謝ることの意味が本末転倒

我が子が他のお子さんに迷惑をかけてしまったとき、相手の親の目や周囲の目があるので、早くその場を収めたいと思いますよね。 そういうときに限って、子どもはなぜ謝らないといけないのか、状況をわかっていないことが多いです。

たまたま振り上げた手が、お友達の顔に当たってしまったなど、悪いことをした自覚がないときもあります。

筆者も何度もそういう経験があります。「ほら、ごめんなさいって言って!」と強めに促してしまい、無理やり子どもに「ごめん!」と怒りの声で形だけの謝罪をさせてしまっていたことがあります。

我に返ったとき、あんなに急かして「いったい誰のために謝まらせたかったのだろう?」と考えてみると、相手のお友達のためと思いきや、実は親の体裁のためでもあったなと気づきました。

我が子が迷惑をかけたとしても、ママが我が子よりお友達を優先する姿を見たら、子どもはどう思うでしょう。子どもは「ママはわかってくれない」という寂しさや憤りを感じるかもしれません。

お友達に謝ることはもちろん必要ですが、我が子の気持ちをないがしろにしては本末転倒です。 そういう場面が起こったら、我が子もお友達も尊重するこんな声かけをしてみるといいでしょう。キーワードは、「不快な気持ち」「仲直り」です。

声掛け例:「〇〇ちゃんもお友達もいま嫌な気持ちになっているから、仲直りのために先に一緒に謝ろうね。あとで、◯◯ちゃんの気持ち(お話)をたくさん聞くからね」

今ではないけれどあとで時間をとって、話をちゃんと聞くよと伝えてあげることは大切です。 その声掛けだけで、「ママは私のことも気にかけてくれている」と安心し、実際に話を聞けなかったとしても子どもは気が済んで気持ちを切り替えて遊べることもあるでしょう。

 

3-2.「私が悪いんだ」思考や「チャレンジできない」といった負の影響

本当は謝る必要がない場面で、子どもに「謝りなさい」と言ってしまうこともあるでしょう。

例えば、子どもが食事中にコップを倒して、飲み物がこぼれてしまうことはよくあります。子どもがわざと倒すことは少なく、ほとんどが間違えてコップを倒してしまいます。そんなとき、子どもに謝らせることが対処法として正しいのでしょうか。

間違いやミスに対して無理やり謝らせると、子どもは「失敗は悪いこと」と学習します。その結果、「失敗が怖くなってチャレンジできない」「他人の目を気にして、自己主張できない」といった影響をもたらすこともあるでしょう。

また、些細なことで謝るクセが身についてしまうと、なんでもかんでも謝る子になってしまいます。

自分に責任がない場合でも、「私が悪かった」と自分を責めるようになり、大人になったときに人間関係で損をしたり、泣き寝入りなんてこともありえます。

筆者もよく、5歳の娘が飲み物をこぼしたとき、水浸しのテーブルを、ため息をつきながら拭きます。そのとき、笑顔が消えて黙って見ている娘に「なんで黙ってるの?ごめんなさいは?」と言いそうになって、こらえたことがありました。

子どもは未熟ですからミスをしたら、代わりにそのミスをカバーするのは親の役割です。そのとき、子どもから「ごめんなさい」を言われるよりも、「ママ、ありがとう」と言われた方がしっくりきます。

そうしたら、自然と「次は気をつけてね」と笑顔で伝えることができ、また楽しい食事の時間に戻ることができます。

謝る必要がない場面では、「ごめんなさい」ではなく感謝の気持ちを伝える「ありがとう」を促しましょう。

 

3-3.「親が苦手」な存在に…こころが委縮するリスクも

ルール違反した子どもに、親がポジティブな雰囲気で注意をするか、責めるようなネガティブな雰囲気で注意するかで、その後の親子関係は変わってきます。 ネガティブな雰囲気の場合、子どもは親に叱られることが怖いので、緊張したり親から遠ざかっていきます。

このような萎縮した心理状態では、反省することも、心から謝ることもできません。怖がらせるのではなく、子どもの気持ちに寄り添い、穏やかにルールを伝えていきましょう。

 

周囲の目を気にする空気は、協調性を重んじる日本社会では仕方がない面もあります。それでも、我が子をお友達や周囲の目よりも1番に考えてあげられるのは、親だけではないでしょうか。我が子には心配がつきませんが、親は我が子を心配するものです。

子どもに伝えたいメッセージは、シンプルに考えれば「気をつけてほしい」だけで、「あなたが悪い」と否定することではないと、親自身が忘れないようにしたいですね。

子どもが謝らずに、「やってない」「でも、だって」と言い訳をするような場合は、以下の記事を参考にしてみてください。

▶参考記事
>>言い訳する子どもにはどう対応する? 「だって」を繰り返すこどもの心理とは

 

4.謝れなくても大丈夫!成長に合わせた「ごめんなさい」を育もう

「ごめんなさい」と素直に謝るには、自分の間違いを認めることです。それができるようになるには、相手の気持ちを理解できる能力の獲得も必要ですし、親との信頼関係も必要です。

謝罪は関係を修復する大切なコミュニケーションですが、大人でも難しく、心理・社会的にも『大きなコストがかかること』だと言われています。とりあえずその場を収めるためなど、無理やり謝らせることは子どもに大きなストレスをかけてしまうことにもなります。

周りの目が気になることはあっても、焦らずに、我が子を尊重する気持ちを持って接しましょう。また、子どもは保育園や幼稚園で「ごめんね」と言われたら「いいよ」と答えるやりとりを覚えます。

未就学児は、大人が介入するためそのやりとりで通用してしまいますが、小学生以降に子供同士で「ごめんね」を言ったら必ず「いいよ」と言わなければならないという暗黙のルールでは、解決しない場面も出てきます。

本当は許してはいけない場面でも許してしまうことになりかねません。謝ることも許すことも子どもの成長に合わせて教えていきたいですね。

 

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主な参考文献
・大坪庸介(2015)仲直りの進化社会心理学:価値ある関係仮説とコストのかかる謝罪.社会心理学研究。30(3)191-212
・深津さよ子・岩立京子(2021)幼児期初期の罪悪感の芽生えとしての“後ろめたさ”の表出。保育学研究59(1)33-44

 

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