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小1反抗期ってなに!?小1の”なまいき”な言動を認知心理学の視点から読み解く

この記事を書いた人

平尾しほ 平尾しほ

平尾しほ

  • 言語聴覚士

言語聴覚士免許を所有、児童発達支援センターでの勤務経験があります。

特に遊びの中でのことばの育ちを意識して個別療育を行っていました。

現在小学校2年生の息子がいます。

個別療育でのたくさんのご家族とのかかわりと子育ての経験を合わせて、皆様に分かりやすくお伝えしていきたいです。

小学校に入ってから急に反抗的な態度になった気がする。 「うるさい!」などと強い言葉を使うようになった。

そんな我が子の様子に、「まさか小1で反抗期!?」と思っていませんか?

この記事では、なぜ小1反抗期がやってくるのか、親はどのような対応をするのが良いのか、認知心理学をもとに考えていきます。

お子様の反抗的な態度に納得できる理由が見つかるかもしれません。 小1反抗期を乗り越え、お子様とご家族が良い関係を築いていけるヒントを見つけていきましょう。

 

目次

1.小1反抗期ってなに?

小学校に入学したころから、親の目から見ると「反抗的な態度が増えたな」「口答えするようになったな」などと感じることがあるでしょう。

それは、小学校入学前後にはじまる『小1反抗期』によるものかもしれません。

ここでは、小1反抗期がどんなものかを説明していきます。特徴や性差があるのかについても見ていきましょう。

 

1-1.小1反抗期は、2つの大きな反抗期の間にやってくる『中間反抗期』

子どもの反抗期は、3回やってくると言われています

1つ目は2歳前後の第一次反抗期。イヤイヤ期と呼ばれる自我が芽生えはじめるころのことです。自分の意思の存在に気付き、なんでも自分でやりたがり親の提案を「いや!」と跳ねのける様子が見られます。

2つ目は今回のテーマである『小1反抗期』。特徴は次の見出しで詳しく見ていきます。

そして3つ目は、第二次反抗期で小学校高学年以降、思春期にさしかかるころ頃に見られます。このころ頃は親と距離を取り、助言などは激しく拒否します。先生など周囲の大人への反発が増えるのも特徴の一つです。

小1反抗期は、第一次、第二次の大きな反抗期の間にやってくるため『中間反抗期』とも呼ばれます。

 

1-2.小1反抗期の特徴は、”なまいき”な言葉や態度

小1反抗期では以下のような言動が目立ちます。

●乱暴な言葉を使う
●口ごたえをする、屁理屈を言う
●親の注意を聞かない、ルールを守らない
●親の手助けを拒否する
●嘘をついたり隠しごとをしたりする

はじまる時期やどのような行動をとるかには個人差があります。

たとえば、お手伝いをするように頼んだ場合。以前は「はーい」と返事して取り組んでくれていたのが、無視してゲームを続けたり、「うるさいなぁ!」と拒否したりするようになることがあります。

今までと違う反応に驚くことがあるかもしれません。

 

1-3.息子と娘で差はある?

反抗的な様子を見ると、「男の子だからこんなに乱暴なの?」「女の子だから口ごたえするの?」などと思うことがあるかもしれません。

性差の有無は明確ではありませんが、傾向の違いはあると言われています。

たとえば男の子の場合、ものを投げる、暴れる、乱暴な言葉を使うなどの態度がよく見られます。言語よりも行動での表現が目立つと言えるでしょう。

女の子の場合は、口ごたえや屁理屈が多くなる、無視するなど、コミュニケーションをとらないという様子がよく見られます。言語的なやりとりに反抗的な態度が表れやすい傾向があります。

 

2.小1ってどんな時期?

小学校に入学したてはまだ幼さも残っていたのに、気付くと反抗的な様子が目立つようになり、「なぜいきなりそんな態度をとるの!?」と思うことがあるかもしれません。

6歳・7歳ごろの子どもは、さまざまな面で発達の転換期をむかえています。

ここでは、小1反抗期の時期は子どもたちの心身にどのような変化が起きているのかを見ていきます。

 

2-1.子どもから大人へのターニングポイント

6歳・7歳ごろの子どもは、子どもから大人に向けてすすむ飛躍的な成長のスタート地点にいると言えるでしょう

ことばの面でも、学習に適した力を徐々に身につけていきます。 たとえば、以下のような特徴があります。

〈からだとこころ〉
●走る、蹴る、投げるなどの運動能力が飛躍的に発達していく
●物事の善悪の判断がつくようになる
●公共の場でのふるまいなどを意識できるようになる

〈ことば〉
●言葉の音を取り出して操作する力が向上する
たとえば、「たぬきのまん中の音は?」が分かる、「すいかの中にいる生き物は?」のようななぞなぞを楽しめるなど
●文字と音の対応の理解が進み、文字学習がすすむ
●おしゃべりのためではなく、勉強をするための「学習言語」の獲得が始まる

 

2-2.小学校入学という大きな環境の変化がある

小学校入学というのは、子どもにとっても大きなイベント。今までの生活が大きく変わります

幼稚園や保育園より大きな集団の中に入り、ルールや規律の中で生活します。日中は時間割があり、活動は遊びから勉強へとシフト。

入学して数週間後には「宿題」を持ち帰ってきて、家での過ごし方も変わってきます。 求められることがそれまでに比べて量的にも質的にも変化するのは明らかです。

また、新しいお友達ができる、上級生と遊ぶようになるなど、親の知らない交友関係も増えていきます。

世界が広がり、楽しい反面、トラブルになることもあるでしょう

 

3.小1反抗期がやってくるのはなぜ?

心身ともに大きく変化する6歳・7歳ごろ。今までとは違う環境に適応しようとしてストレスがたまることもあるでしょう。

しかし、小1反抗期がおきる理由はそれだけではありません。 実は6歳・7歳ごろは、認知発達的にもターニングポイントにあたる時期なのです

ここでは、小1反抗期が起きる理由を認知心理学的視点から解説します

認知心理学とは、人の知覚や思考、記憶などの心の働きを明らかにしようとする心理学の一分野。発達の過程にも大きく関わる領域で、子どもの行動の謎を解くヒントが隠れているでしょう。

 

3-1.自分と人や親は違うと知るから

スイスの心理学者ピアジェは、認知発達段階理論を提唱しました。

その理論によると、2歳~7歳前後は「前操作期」と呼ばれ、自己中心性を特徴とします。「自分が世界の中心だ」と考えていて「他の人はどう考えるか」という視点はまだ持ち合わせていない段階です。

次の7歳~11歳前後は「具体的操作期」と呼ばれ、徐々に他者の視点を身につけていく「脱中心化」が特徴です。 「自分は世界の中心ではない」と気付き、自分と他者の考えはちがうということが徐々に分かるようになっていきます。

6歳・7歳はこの2つの段階のちょうど転換期。他者視点を獲得する過程で「親も自分とは違う存在」ということを意識し始めます。これは自立への大きな一歩でもあるのです

そのため、生活の中で親から、自分の意思に反して注意されたり頼みごとをされたりすると、反抗的な態度をとるようになります。

 

3-2.他人との関係性で優劣を知るから

前段落でふれたように、6歳・7歳ごろには脱中心化が進み、他者と自分の違いを意識するようになります。

学校という集団の中では他者を意識する機会が多くなり、評価や点数が価値判断の基準として大きな位置を占めるようになります。

ドイツ生まれの心理学者エリクソンは、人の生涯にはそれぞれの時期に応じた課題があると述べています。小1反抗期にあたる児童期の課題は、『勤勉性対劣等感』です。勉強などで勤勉さを身につける過程で他者と比較することも増え、自分の価値が揺るがされるような経験もします

劣等感を強く感じ「自分はあの子よりだめだ」という気持ちを持つおそれがある時期と言えるででしょう。 劣等感を感じるとイライラして八つ当たりする、気持ちが不安定になるなど、反抗的な態度が増える一因になります

 

3-3.自分でできる以上のことを求められるから

小学校に入学すると時間通りに登校する、宿題をするなど、求められることが一気に増えます。

親から「もう1年生だから、これぐらいはできるでしょう」「小学校に行くのだから1人でやりなさい」と言われることもあるかもしれません。

宿題や朝の支度は「小学生になったから」という理由で一律にできるよう求められますが、子どもにとってまだ1人でするには難しいこともあるでしょう。

ロシアの心理学者ヴィゴツキーによると、子どもが成長するには、少しのサポートで成功できる『発達の最近接領域』に対し適切な手助けをすることが大切です

たとえば、宿題をするとき。1人ではなかなか進まなくても、「ここはこういう意味だよ」と問題の意図を大人が伝えるだけですらすら進むことがあります。

この場合、「問題の意味を理解する」というのが発達の最近接領域にあたります。問題を簡単に伝えなおすというのは、この子にとって必要な手助けだったのです。

小1では「発達の最近接領域」にあたる事柄について個人差が大きいです。必要な手助けをしてもらえない、難しいことに1人で挑戦しないといけないという不満を持ち、反抗してしまうと考えられます

 

4.小1反抗期に親はどう対応する?

小1反抗期が訪れる理由の一つは、6歳・7歳ごろに認知発達段階のターニングポイントと大きな環境の変化が同時にやってくること。

子どもは自立に向けて進みだしますが、それゆえに反抗的な態度が増えるということです。

しかし日々、そんな態度と向かい合っていると、大人も疲弊してしまいますよね。 ここでは、認知心理学の視点から親の適切な対応を考えていきます。

 

4-1.子どもを自分とは違う1人の人間と認める

ピアジェが述べたように、6歳・7歳以降は脱中心化が進み、他者の視点を獲得していきます。

親と自分はも違う考えをもった人間であることを意識し始めるため、頭ごなしに「こうしなさい」「やめなさい」と伝えても反抗したくなるばかりです。

まず親も、子どもは自分とは違う1人の人間だと意識しましょう。そして、指示口調はなるべく控え「お母さんはこう思うよ」のように、親自身を主語にして伝える方法をおすすめします

また、ゲームや動画を見る時間など家庭でルールを決める際は一方的にルールを提示するのではなく、相談し、子どもの意見も踏まえて決めるのがよいでしょう

例)
「ゲームは1日2時間まで!」
⇒「お母さんはゲームは1日2時間までが良いと思うけど、○○君はどう思う?」

 

4-2.「できること」と「手助けが必要なこと」を見極める

小学生になったからといって、全てのことを一気にできるようになるわけではありません。手助けが必要なことは、サポートを受けて成功を経験してこそ成長や自立につながります。

ヴィゴツキーの言う『発達の最近接領域』はどこかを見極め、手助けが必要なことについて突き放した態度をとっていないか振り返ってみましょう

子どもが1人でできないことは、一緒に練習したり良いやり方を見つけていくのがいいですね

年齢で「できて当然」と決めつけずに、親ができると思っていることと子どもが自分の力でできることのズレを埋めていきましょう。

例)
「もう1年生だから朝の支度は自分でしなさい!」
⇒1つ1つの準備はできるが、何からすればよいか分からずうろうろしている場合に「朝の支度は何からすればやりやすいかな?一緒に考えてみよう」


反抗的な態度と正面からぶつかっていると、親は疲弊し、親子関係もこじれてしまいます。

子どもを1人の人間として尊重したうえで難しいことには必要なサポートをする。適切な対応を意識することで、良好な親子関係を続けることができるでしょう

 

5.小1反抗期は自立に向けて動き出す時期

小1反抗期は、他者の視点を獲得し自分という存在を確立させていく認知発達のターニングポイントにやってきます。合わせて大きな環境の変化もあり、子どもは適応しようと日々試行錯誤しています。

暴言や口ごたえなど対応に苦慮することも多いですが、自立に向けて動き出すこの時期の不安定さを理解して対応することを心がけましょう

また、なんでも1人でさせることが自立を促すのではなく、必要な手助けをすることこそが子どもの成長につながっていきます

小1反抗期への理解を深め子どもの自立をサポートしながら、良好な親子関係を築いていけるといいですね。

 

参考文献
『完全カラー図解 よくわかる発達心理学』渡辺 弥生監修
子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題(文部科学省)

 

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