3・4歳で宇宙語ばかり話す・喃語しか話さなくて心配…【言語聴覚士に聞く】
全く話さないわけではないけれど…、「3歳になっても喃語しか話さない」
「うにゃうにゃ話していてなんと言っているか分からない」「単語を正しく話していない」。
そんなお悩みをお持ちのパパ・ママへ。
言語聴覚士の島袋綾子先生と田中くみ先生に、原因として考えられることや家庭での関わり方のポイントをお伺いしました。
(文責:CONOBAS編集部)
目次
1.「喃語しか話さない/宇宙語ばかり話す」原因は?
1-1. 体に関係する要因も大きい
–−「喃語(※1)しか話さない」「宇宙語(※2)ばかり話す」など「何か話しているけれど上手く言葉になっていない」子の場合、どんな要因があるのでしょうか?
田中 くみ先生(以下、くみ先生):いくつか要因はありますが、1つには体に関係する要因があります。
①耳
まずは、「そもそもはっきり聞こえているのか?」という耳の問題です。
例えば高い音、低い音が聞き取りにくいという問題があると、私たち大人の声が「もわんもわん」と聞こえているため、話す時も、子ども自身が聞こえたまま「もにょもにょ」と話してしまうことがあります。
②鼻・口・喉の発達
他にも肺活量、息の通り道(気道)、舌の動きや喉の形も関係しています。
言葉を話すって簡単にできるように思えるんですが、声を出す段階ではしっかりした肺活量があることが大事です。
また、言葉にはさまざまな音があり、口だけでなく鼻から息を抜いて出す音もあります。
ですから、さまざまな音を出すためには、息の通り道、喉、舌など口の周りの筋肉が重要で、その育ちが未熟だと、上手く発音ができないという問題が起こるのです。
子どもの発音の獲得にも順番があります。
例えば最初は、「ママ、まんま」というように唇を動かせばいいだけの言葉が出やすいです。
一方で、サ行の音は一番発音が難しくて、口周りの発達が未熟だったり、誤って学習していると、4・5歳になっても「たかな(さかな)」「てんてー(せんせい)」と発音することもあります。
(※1)喃語とは:「まーまーまー」「ばばば」など子音+母音の音のまとまりのこと。初語が出る前に話す様子が見られることが多い。
(※2)宇宙語とは:意味をなさない言葉のこと。子ども自身は何かを話しているようだが、聞いている大人はできない。喃語が現れ、単語を話す前に見られることが多い。
・3歳・4歳「カ行・サ行が言えない」発音の悩み【言語聴覚士に聞く】
1-2. 子どもの認識と実際の発音がマッチしていない
−−なるほど、舌の動かし方など体の発達も、発語にかかわる重要なポイントなんですね。体の発達以外にも、喃語や宇宙語ばかり話す要因はありますか?。
島袋綾先生(以下、あや先生):喃語や宇宙語を話している段階のお子さんって、自分ではしゃべれているつもりで話しているんです。
本人は間違ってると思っていなくて、頭の中で考えていることを自分なりの音で羅列してしゃべっている、という感じです。
宇宙語に関しては、自分が話したいことと聞いて理解している音がまだマッチしてない状態です。
例えば「りんご」と言う時、人は頭の中から「り」と「ん」と「ご」の音を引っ張ってきて、「3つの音だ」「この並びだ」っていうふうにしぜんと整理して、口を動かしてしゃべってるんです。
ところがこの段階で「文字数はいくつかな」「音の並びはどうかな」「こういう区切りだよな」という構想ができていないと、宇宙語が出てきます。
宇宙語は音の区切りがない、「音がはっきりしない」「うにゃうにゃ言っている」というのが特徴ですが、音の並びや音の数などを理解する「音韻の力」が弱いとこのような状態になることがあります。
2.「単語の一部しか話さない」原因は?
2-1. 頭の中に保持できる音の数が関係している
–−「上手く発音できない」という悩みの中には「単語の一部しか話さない」という状況もあるようです。「宇宙語」の場合と原因は異なるのでしょうか?
あや先生:単語の一部しか話さないという場合、宇宙語と同様に、「りんご」が「ご」と聞こえているというように、耳など体の発達が関係している可能性もあります。
その他の背景としては、頭の中に保持できる音の数が1個しかないなど、音を保持する力の問題が考えられます。
音の数を把握する、音の並びを把握するという「音韻の力」が未熟だと、「りんご」という三語を「ご」一語だと認識してしまい、結果として、自分が理解した一語で発話している可能性があります。
3.「ごはんを丸のみしてしまう」のも、言葉の発達と関係が
3-1. 食事の様子も、言葉の発達の関連要素
–−「何かを話しているけれど上手く言葉になっていない」という状況には「体の発達」と「音の理解」が関係していることがわかりました。実際に、そういった要因について相談をうけることはありますか?
くみ先生:私はよく、「ごはんを丸のみしちゃうんです」という相談をうけることがあります。
そういう子を見ると大体、言葉の発達がゆっくりな子が多いんですよね。
「食べる」と「話す」は隣り合わせなので、呼吸や噛む動作、舌の動き、そして口がしっかり閉じられるというのは、どちらにおいても大事なんです。
宇宙語を話してるお子さんはそれらの動作が上手くできていないために、「ごはんを丸のみする」ということが起きるんです。
お子さんがごはんを食べやすいように、おにぎりなど一口大にして与えることがありますよね。でも実はこれは、噛む動作や舌の動きなどが未熟な子にとっては危ないんです。
一口で口の中にいれると、上手く噛めないから口の中で吸い続けて、最終的にはお水で流し込む子がいますよね。噛まずに飲みこむ子も同様です。
3-2. 食べ方も、言葉の発達を促す練習になる
こういう状況を回避するには、逆に、十分な大きさのものを与える方がよいんです。
例えば、おにぎりも普通サイズのものなら、まず口を開けて、前歯でかじりとる。かじって口に入れたものを、唇を閉じて舌でごはんを動かしながら左右の歯の方へ持っていき、唾液でまとめて飲み込む。
そんな練習をすることが、言葉の獲得にもつながっていきます。
「言葉が遅れています…」という相談ももちろんありますが、「ごはんを丸のみしちゃいます」とか、「コップ飲みがまだできません」とか、口の動きや呼吸など、体の発達に関係するお悩みを受けることも少なくないですね。
4.コミュニケーションをとる上で気を付けることは?
4-1. 真似する・実況中継をする
–−家庭での関わり方のポイントがあれば教えてください。
あや先生:子どもが「何かを話しているけど、何を言っているか分からない」という時に、「何言ってんの?」とか「こういうことでしょ」と修正するような言い方はおすすめしません。
そういう時は子どもの真似をしたり、「実況中継」をしたりして、まずはコミュニケーションをとろうとする姿勢が大切です。
例えば喃語で「あうあう」って言ったら、「あうあう」って真似するのもコミュニケーションのひとつ。宇宙語も、真似できるなら真似してもいいと思います。
ただそれだけでなく、「この子は何を言ってるんだろう」と考えたり、「こういうことを言いたいのかな」と推測したりして、ママやパパが代わりに言語化して伝えてあげると良いです。私たちは、これを「実況中継」と呼んでいます。
4-2. 言いたいことを受け止め、言葉を返す
あや先生:「こういうことを思ってるんじゃないかな」というのを言葉にして伝えてあげる。「こういうこと言いたいんだろうな」というのを見本として言語化して伝えてあげる。
ただ聞いているだけで、「何を言っているか分からない」と関わりを持とうとしないのは、とてももったいないと思います。
うまく音にならなくても、なんだか楽しそう、なんだか喜んでる、という様子が見えた時には、「うれしいね、楽しいね」と話しかけたり、悔しそうな顔していたら「うまくいかなかったね」「こうするともっと上手にできるよ」と励ましたり、子どもの気持ちを推測して言葉をかけてあげてほしいです。
上手く言葉にできていなくても、発語すること自体は子どもにとってはコミュニケーションのひとつです。それを「ちゃんと聞いてるよ」「キャッチしてるよ」という気持ちを込めて言語化し、見本となる言葉を返してあげるっていうことが大切です。
–−まずはしっかりと反応して返してあげる、というコミュニケーションが大切なんですね。ほかにも、具体的に実践できるポイントはありますか?
4-3. リズム遊びや手遊び歌を取り入れる
あや先生:宇宙語を話す子どもたちには、「音韻の力」を鍛えるための遊びを取り入れることが多いです。
1拍1拍に音があるということを、体でリズムを感じながら身につけられるようにサポートします。
例えば 、1・2・3でジャンプをするという遊びや、階段を上がりながらじゃんけんをして、グーだったら「グ・リ・コ」、パーだったら「パ・イ・ナ・ツ・プ・ル」と音の数だけ進む、というようにリズムや音に合わせて言葉を発する遊びを取り入れるといいと思います。
4-4. 口元の動きを見せる
あや先生:他にも、ママが子どもの正面で、ゆっくりはっきり、どういうふうに口を動かしてるのか、それと一緒にどんな音を出しているのか、口元を見せる、というのがとても大事です。
ここ数年、コロナウイルスの影響で多くの人がマスクをしていました。子どもたちの発達が数カ月遅れてるといわれているのに、口元を見せていなかったことも関係していると思います。
子どもと関わる時、口元を見せてあげるだけでも音が理解しやすくなったり、口の動かし方が分かりやすくなったりします。
大人は意外と早口で声をかけているんです。そうすると、音の処理が苦手な子は全部を聞き取れず、かいつまんで聞こえた音だけをインプットして話す、ということがあります。
ちょっと発話がゆっくりな子だなと思ったら、はっきり、ゆっくりと伝えてあげることで、音の修正ができることもあります。
4-5. 肯定のフィードバックと正しい言い方で伝える
–−「単語の一部しか話さない」など、「正しく発語できていない」時は、どのように子どもに伝えたらよいのでしょうか。
あや先生:本人は「りんご」のことを「ご」だと思って発語しています。ですから、「ご!ご!」って言っていても、まずは「そうだね、りんごだね」という肯定のフィードバックを返します。
「あなたが言いたいものは、それで合ってるよ」という肯定の姿勢を示しながら、親としては正しい言い方を見せていく、というのが基本的な対応ですね。
–−間違って話している時、ついつい「違うよ!」と言いたくなることもありますが、「話していること自体は肯定しながら、正しい音を示す」という姿勢が大切なんですね。
5.「宇宙語ばかり話す/喃語しか話さない」子の、話そうとする気持ちに寄り添おう
<編集後記>
「話してはいるけど、上手く言葉になっていない」「正しく話せていない」。そんなお悩みの要因と接し方のポイントをお伺いしました。
そもそも音が正しく聞こえているのか、正しく音を発するための体の仕組みが整っているのか、という「体の発達」に関する要因と、音の数やリズムを正しく理解できているかという「音韻の力」に関する要因があることが分かりました。
お子さんの様子を照らし合わせながら、発達がゆっくりな部分について丁寧に関わっていけるといいですね。
お話をうかがった先生方
島袋 綾子(しまぶくろ あやこ)
・たねまき協会 ことばのたねまき代表(2020年〜)
Instagram、公式LINEを中心に乳幼児期の言葉の発達
ママが発達に関する知識や関わり方を身につけるための講座や個別
・乳幼児言語発達アドバイザーの育成もしています。
・年少、年長の2児を子育て真っ最中!
・言語聴覚士
田中 くみ(たなか くみ)
・たねまき協会 吃音緩和のたねまき代表(2020年〜)
吃音のある子のママをオンラインでサポート。
Instagram、公式LINEで吃音の情報を配信しています。
・吃音緩和アドバイザー
吃音に特化した専門家。我が子の吃音に対するスキルを学べる基礎講座、資格を取れる講座を開催中。
・吃音絵本『ぼ、ぼ、ぼくのはなしかた』制作者
・言語聴覚士
たねまき協会 https://www.tanemaki.group/
あや先生、くみ先生たちが代表を務める団体。
「ママが生きやすい世界をつくる。」という目標を掲げて、言葉の発達でお悩みのママへ向けた、オンライン支援、言葉の教材開発などを実施しています。
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