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子どもの吃音(どもり)が起こる原因と親ができるサポート【言語聴覚士に聞く】

「言葉が詰まってスムーズに出ない」「言葉の一部を何度も繰り返す」など、子どものどもりや吃音が気になったら、親はどのように関わればいいのでしょうか。

今回は、子どもの吃音やどもりが起こる原因、親ができるサポートについて、言語聴覚士で吃音緩和アドバイザーでもある田中くみ先生にお話を伺いました。

(文責:CONOBAS編集部)

 

目次

1.「吃音(どもり)」どんな相談や困りごとがあるの?

–−保護者の方はどういう状態を心配して、先生のところにいらっしゃるのでしょうか。

ネットで調べて不安になる方も少なくない

田中 くみ先生(以下、くみ先生):吃音が発症することを「発吃(はつきつ)」と言います。発吃する年齢は早くて2・3歳と言われています。

「ママ、ママ」「とととトイレ」「ぼぼぼぼく」などと言う様子は、最初はかわいい話し方だなと感じる保護者の方が多いのですが、それがしばらく続くと「吃音かな…?」とご相談に来られることが多いです。

また入園すると、「周りの子と違う」と気になったり、お友達から指摘やからかいを受けたり、笑われてしまったり。「なんでそんな話し方するの?」と何度も聞かれ、子どもが泣いて帰って来ることが増えて「どうしたらいいんでしょうか」というご相談を受けることもあります。

「吃音(どもる)」という言葉が広く知られるようになったことも、相談にいらっしゃる背景にあると思います。「吃音かもしれない」とネット調べて、情報を得るほどに心配になり、「治るんでしょうか…」とご相談される方も多いですね。

 

あまり神経質にならず、最後まで話を聞いてあげて

くみ先生:他にも耳にするのは、「保護者の方が対応方法に困っている」というお話です。自分の子が他のママさんに話しかけた時に、吃音があってなかなかうまく話せず「おおおおおおおはよう、あああああああのね」となり、「何と声を掛けたら良かったのか?」「相手の方にどこまで話せばいいのか?」と悩む保護者の方もいます。

吃音のある子は、吃音を苦しいとか言いにくいなどとは感じていません。ですから、途中で話を止められると傷ついてしまうんです。「最後までお子さんのお話を聞いてね」と、保護者の方には伝えるようにしています。

こんなふうに、お子さん本人の困り感よりも、保護者の方が気にされて、「どうしたらいいですか」と相談を受けることもあります。

 

2.「吃音(どもり)」の原因は?

–−子どもの吃音(どもり)がひどくなることもあるようです。原因はあるのでしょうか?

遺伝や体質が影響する可能性も

くみ先生:吃音(どもり)の原因は、はっきりしていませんが、最近の仮説としては、「吃音(どもり)になりやすい体質」「遺伝的な問題」と言われています。

おじいちゃんやおばあちゃん、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんなど、家族や親戚に誰か一人でも吃音やどもりの症状があった場合、吃音の症状が出る可能性があります。

また、喜怒哀楽、すごく興奮したイベントなどの刺激により発症する、という可能性もあります。

 

原因は未解明。ママは抱え込みすぎないで

くみ先生:原因がわからないゆえに、「私の言葉かけが悪かったのかな」「怒り過ぎちゃったからかな」など、お母さんが自分のせいと考えてしまいがちです。「あのとき怒らなきゃよかったのかな」とお母さんの不安感が強いことも多いですね。

まずは、子育ての仕方や保護者の方の言動が吃音の原因ではないことを知っておいてほしいです。そして、正しい吃音の知識と情報を得て、お子さんと接していくことが重要です。

 

3.「吃音(どもり)」は治るの?

–−「吃音(どもり)」は子ども特有のもので、成長と共に治るのでしょうか?

「吃音」には、周囲の理解や配慮が欠かせない

くみ先生:7〜8割は自然治癒すると言われています。

言葉の発達が著しく、話したい意欲に自分の発話能力が追いつかないことでもどもりは起こる、と言われています。そのため、言語発達と共に自然治癒するという考えもあります。

ただし、2〜3割は治癒しない可能性もあり、なかには、大人になっても症状が残ってしまう方もいます。数年前までは吃音の誤った情報が多く、理解してくれる環境が乏しかった、という現状があります。

そのため、吃音が原因で対人関係やコミュニケーションを取るのが怖い…、という当事者の方は今も少なくありません。吃音は言語障がいであり、周りの配慮や理解はとても大切です。

大人に限らず、子どもの場合も、吃音やどもりに対してお子さんが抱く不安に保護者の方が気づけないと、お子さんが一人で悩みを抱え込んでしまいがちです。

一人で抱え込まないためにも、保護者の方の吃音への理解と教育現場との連携、本人の心のサポートを率先しておこななっていく姿勢が大切になってきます。

 

4.「吃音(どもり)」にはどんなサポートが必要?

–−先生の講座ではどのようにサポートしていますか?

未来に目を向けたサポートを心がけて

くみ先生:残念ながら、「吃音は治る!」とは断言できません。ですから、もし治らなかったら、どういう準備や心構えが必要か少し先の未来を保護者の方と一緒に考えていきます。

また、教育現場でも吃音に詳しい先生は少ないため、お子さんの吃音の理解者を増やすこと、それから、お子さんの吃音へのアプローチなどをママに身に付けてもらうサポートをおこなっています。

吃音は、今だけに目を向けるのではなく、少し先の未来を想像しながら取り組んでいくことが重要です。

 

「吃音」には、その子がありのままでいられるサポートが大事

くみ先生:吃音は発達障がいに分類されていて、「がんばれば治る」「努力が足りない」などの視点は的外れです。障がいのひとつですから、小学校などの教育機関はきちんと配慮すべきだと言われているんですね。

例えば、音読の際はみんなの前で読むのではなくペアで行うとか、事前に読むところを教えてもらうとか。その子がありのままでいられるサポートをママが率先して準備していこう、とお伝えしてます。

–−“今”にとらわれすぎず、子どもの“将来”へ目を向けて、気を張りすぎずに寄り添うことが大切なのですね。

 

5.お子さんがありのままでいられるサポートを心がけよう

<編集後記>

子どもの吃音(どもり)は、体質や遺伝的な問題が関係している一方で、はっきりした原因は未解明であることがわかりました。

子どもがつっかえながら話したり、言葉がうまく出てこなかったりすると大人は、「ゆっくりでいいよ」「落ち着いてね」などアドバイスしてしまいそうになりますが、途中で遮らずに最後まで話を聞く姿勢が大切なんですね。

お子さん自身が話しづらさを感じていたり、気にしていたりする場合は、ママやパパだけで抱え込まずに、一度専門家に相談してみるといいかもしれません。

「お子さんがありのままでいられるサポート」を考えていけるといいですね。
 

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お話をうかがった先生

田中 くみ(たなか くみ)

・たねまき協会 吃音緩和のたねまき代表(2020年〜)
吃音のある子のママをオンラインでサポート。
Instagram公式LINEで吃音の情報を配信しています。
・吃音緩和アドバイザー
吃音に特化した専門家。我が子の吃音に対するスキルを学べる基礎講座、資格を取れる講座を開催中。
・吃音絵本『ぼ、ぼ、ぼくのはなしかた』制作者
・言語聴覚士

たねまき協会  https://www.tanemaki.group/

あや先生、くみ先生たちが代表を務める団体。
「ママが生きやすい世界をつくる。」という目標を掲げて、言葉の発達でお悩みのママへ向けた、オンライン支援、言葉の教材開発などを実施しています。

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