「小1の壁」の乗り越え方とは?入学までの親と子どもの準備を元教師が解説
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yurinako
- 司書教諭
- 幼稚園教諭
- 小学校教諭
- 子育て支援員
小2と年長の娘のママ。
小学校教員として15年間勤め、小学1年生から6年生までの担任を経験し、
のべ1500人以上の子どもたちを指導してきました。
小学校教諭、幼稚園教諭、司書教諭、子育て支援員の資格を持っています。
親子で一緒に、本やダンス・料理を楽しんでいます!
入学まであと半年ほど。年長さんのママパパにとっては、「そろそろ準備をした方がいいのかな」「何から手を付けたらいいのかな」と気になる頃ですよね。
お子さんの入学は、ご家庭にとって大きな出来事です。
「小1の壁」「小1プロブレム」という言葉があるくらい、幼稚園・保育園の頃と比べると大きな変化があります。
そこで今回は、元小学校の教員であり2児のママである筆者が、「小1の壁」を緩和するために入学までにやっておきたい準備についてご紹介します。
秋口から始めておくと安心なことを中心に、親の準備と子どもの準備に分けてお伝えしていきます。
目次
1.「小1の壁」とは?「小1プロブレム」との違いは?
入学に向けてのキーワードとして、「小1の壁」「小1プロブレム」という言葉があります。
似た言葉ですが、実はその意味に違いがあることを知っていますか?
お子さんの入学に際して“困ること”“悩むこと”というニュアンスは同じですが、「誰が」困るか、という主語が違うのです。
まずは、この2つの違いを見ていきましょう。
1-1.「小1の壁」とは、親が感じる困り感のこと
「小1の壁」とは、子どもの入学を理由に、仕事・育児・家事の両立が難しくなることを言います。
いくつか具体例を挙げてご紹介しましょう。
例えば夕方。保育園なら、基本保育時間の18時台まで安心して預けることができますが、小学校は4時間や5時間で授業が終わります。
そのため、放課後は学童保育に行かせるなどして安全な居場所を確保する必要があります。
また、意外に対応策が難しいのが、朝の時間です。保育園のときは7時台に預けて出勤することができましたが、小学校の登校時間は8時頃が一般的です。
そのため、お子さんより早く家を出て出勤しなければならなかったり、やむを得ず就業時間をずらしたりするご家庭もあるようです。
悩みのたねとして、夏休みなどの長期休みも挙げられます。
一般的な夏休みの期間は、7月20日頃から8月末までです。その間もママパパは勤務があるため、学童保育に行かせたり、祖父母に見てもらったりする必要があります。
また、ほとんどの学童保育は給食がありませんので、お弁当をつくらなければならず、保育園の頃よりも手間がかかると感じる方が多いようです。
1-2.「小1プロブレム」とは、お子さん自身が感じる困り感のこと
一方、「小1プロブレム」とは、小学1年生が学校の生活や雰囲気になかなか順応できず、落ち着かない様子のことを言います。
具体的には、落ち着いて先生の話を聞けずに集団行動を乱したり、授業中に歩き回って授業を妨げたりする様子が挙げられます。
お子さん自身が「みんなみたいに上手にできない」と困り感を感じることもありますが、1年生ではまだ困り感自体を感じられないこともあります。
そのため、お子さんの様子について、親や先生が感じる困り感も「小1プロブレム」に含みます。
幼稚園・保育園と小学校では、異なる部分がたくさんありますので、慣れるまでには個人差があるのは当たり前のことです。
ただ、慣れていく気配が見られない、「学校生活を楽しみたい、頑張りたい」という気持ちが持てないという場合には、何か手立てが必要でしょう。
1-3.起こりえる事態を知っているだけでも、対策になる
「小1の壁」「小1プロブレム」は、起こってから対策を考えると後手後手に回りがちです。
1年生になり生活が変わるとどんなことが起こる可能性があるのか、それにはどんな対策があるのかを事前に知っておくことが大切です。
また、事前の対策にもいろいろな方法があります。おうちの方のお仕事の状況、お子さんの性格、きょうだいの有無など、ご家庭の事情に合わせてどんな対策をとるか考えていく必要があるでしょう。
2.「小1の壁」を乗り越える|小学校入学に向けて必要な【親の準備】
まずは、入学半年前~3か月前頃に、親がしておくべき準備をご紹介します。ご家庭の状況に合わせて、情報収集をしていきましょう。
2-1.入学までの見通しを持つ
特に第1子のお子さんの場合、入学までの流れも初めて尽くしですよね。
まずは、ざっくりと、入学までの流れをつかんでおきましょう。
【入学準備スケジュール】
・10月・11月頃:(入学予定の)学校見学・就学時健診
・1月:就学先決定(入学する学校が正式に決定すること)
・1月後半から2月:新1年生保護者会(入学する学校での説明会。持ち物、学納金、入学式等の説明がある)
・新1年生保護者会から入学までに:学用品準備など
ここに挙げたのは、一般的なスケジュールです。
お住まいの市区町村から、上記の予定が記載されているお知らせや書類が届いたら、目を通しておきましょう。
自治体によって違いがありますので、学校のHPを見たり、先輩ママパパに確認したりしてみてくださいね。
2-2.学童や習い事についての下調べ、見学をする
【学童保育】
お子さんの放課後対策として、学童保育を考えている方は多いですよね。
学童保育にはいくつかの種類があります。公立の学童保育は、公立小学校の敷地内にあるもの、自治体の児童館の施設を使っているものが多いです。
それとは違い、塾や保育園などを経営する会社が母体となっている民間の学童保育もあります。
公立の学童なら、利用料が安く、同じ学校の友達が多いのがメリットです。
また、小学校の敷地内に併設されている学童なら、交通事故や不審者に遭遇するリスクも少ないです。
ここ数年どんどん増えている民間学童なら、預かり時間が長く、夕飯までお願いできるところもあります。また、英語やプログラミングなどの習い事も併せてお願いできることもあります。
どちらも、子どもたちにとっては新たな居場所です。放課後・夏休みなども含むとかなり多くの時間を過ごす場所となりますので、しっかり吟味して決めたいですよね。
早めに下調べをし、場合によっては見学や体験をして決めましょう。
1年生の当初は学童保育に通っている子でも、学年が上がると通う子が減っていく傾向があります。
一人で留守番できるようになったり、放課後に友達と遊ぶようになったりするからです。学童の利用が大きく減るのは、小学3年生頃と言われています。
学童を決める際は、そんなことも視野にいれておくと良いでしょう。
【習い事】
習い事についても、考えておく必要があるでしょう。
年長の頃から続けている習い事でも、1年生になると時間帯が変わるかもしれません。送り迎えの時間も変わるとなると、さらに勤務時間との調整が必要です。
また、1年生になったら新たな習い事を始めようと思っている方もいますよね。
6歳の子どもにとって、学校生活も習い事も新たに始まるとなると、キャパオーバーになってしまうことも!
そんな事態を防ぐため、先輩ママからは、「習い事は年長の冬頃から始めておいた」「学校に慣れてきた1年生の6月ごろに習い事を増やした」という声もあります。
2-3.入学後の子どもの1日を想定して、必要な対策をシミュレーションする
お子さんが入学すると、それまでとは生活の流れが変わります。
お子さんの生活時間を書き出してみて、どんな準備が必要になるか洗い出してみましょう。
確認しておくとよいポイントは、大きく分けて3つです。
①登校前
小学校の登校時間は8時ごろが一般的です。早い時間から保育園に預けていた場合は、お家の方が家を出る時間からお子さんが家を出る時間までどうするか考えておきましょう。
先輩ママパパの中には、お家の方が先に家を出てお子さんが戸締りをするパターン、お仕事の時間を調整するパターンなどが多いようです。
②放課後・帰宅後・習い事
学校が終わった後の過ごし方については、すでに考えている方も多いですよね。
公立学童、民間学童、家でお留守番、祖父母の家に帰るなど選択肢も多いです。
学童に通わせるなら、早めの手続きが必要になることも!
学校から通える施設はどこにあるのか、どんな手順で手続きが進むのか確認しましょう。
③お迎えや登校自粛の場合
体調不良による急なお迎え、コロナやインフルエンザによる登校自粛は、家庭にとって大きな負担になります。
小学校ではコロナ対策の観点から、発熱だけでなく、腹痛や頭痛でもお迎え依頼の連絡がくることもあります。
また、登校自粛や出席停止となると、2週間以上自宅でサポートすることもあります。
そんなときに、どんな対応ができるか、どんなサービスを使えるかなど、知っておくと気持ちが楽になります。
3.「小1の壁」を乗り越える|入学までに身につけておきたい【子どもの準備】
続いては、お子さんの準備を見ておきましょう。
小学校での生活をイメージし、今から慣れておくべきことをピックアップしていきます。
3-1.学校についてポジティブなイメージをもつ
まず、マインドとして大切なのが、「学校にポジティブなイメージをもたせること」です。
「学校でうまくやっていけるようにいろいろ教えておかなきゃ」と思うと、ついついお子さんに厳しくなってしまうかもしれないですね。
しかし、学校の話をするときに「そんなことしていると1年生になれないよ!」「悪いことをすると先生に怒られるからね!」と叱ってばかりだと、「学校→怖い、怒られそう、楽しくなさそう」と印象付けてしまうことがあります。
そうならないためには、お子さんにとってプレッシャーにならない範囲で、サポートをすることが大切です。
お子さんと小学校について話すときには、できるだけポジティブな言葉を心がけると良いでしょう。
「○○にチャレンジするなんて、もう1年生になったみたいだね」「ここまで自分でできるようになったね」と、頑張る気持ちを認めたり、完ぺきではなくてもできた部分を認めたりしていきましょう。
また、学校がどんなところかイメージを持たせたいなら、絵本を活用するのもおすすめです。小学校ではどんなことをするのか、見通しをもつことにつながりますよ。
おすすめの絵本を3冊ご紹介します。
『しょうがっこうへいこう』
入学を控えた年長さんにぴったりの1冊!小学生の生活や幼稚園・保育園との違いが、自然とわかるようなストーリーになっている絵本です。
『1ねん1くみの1にち』
小学校での1日の生活の流れを、写真たっぷりで見ることができます。1年生の教室の朝の会、授業、休み時間だけでなく、忘れ物をした子の様子なども定点カメラからの写真で見ることができます。
『しょうがっこうがだいすき』
作者は、当時小学2年生だった「うい」ちゃん。先輩小学生として、「しょうがくせいになったら、やるといいこと」を紹介しています。
3-2.自分のことは自分でてきぱきとできるように
小学校は、学習がメインの生活です。
生活面については、“自分のことは自分でできるもの”として進んでいきますので、幼稚園・保育園の頃のように身の回りのことまでサポートしてもらうことは難しいと思っておくと良いでしょう。
具体的には、着替え、トイレ、食事などが挙げられます。
【着替え】
体育の授業のときには体育着に着替えますよね。
「Tシャツと短パンに着替えるだけならうちの子もできる!」と感じる方が多いかと思いますが、お友達が大勢いる状況になると様子が変わる子もいるのです。
筆者が1年生の担任をしていたときには、脱いだ洋服がいつも床に散らばっている子、着替えている途中で楽しくなってきてパンツ一丁で教室をうろうろする子、名前を確認せずにお友達の赤白帽子をかぶっている子などが毎回のようにいました。
また、着替える時間にあまり余裕はありません。短いと「着替えて廊下に並ぶまで3分!」なんて指示が出ることもあります。
自分のことをてきぱきと進められるようにしておきたいですね。
【トイレ】
最近の学校トイレは、ほとんどが洋式です。女子トイレなら、個室の1つとして和式が残されているパターンが多いです。
筆者が1年生担任をしたときには、入学式の翌日に「トイレ指導」をしていました。
なぜなら、用を足した後、流せない1年生がとても多いのです。
特に、ご家庭のトイレが自動洗浄や、ボタンで流す場合には要注意です。
小学校のトイレは、レバーを押して流すタイプがほとんど。自動洗浄のトイレに慣れていると、「トイレは勝手に流れるもの、自分で流す必要はない」という感覚が身についている子がいます。
また、ボタンを押して流すトイレに慣れていると、レバーを押す力が弱く、流れきらないままで出てきてしまうことが多いのです。
実際に1年生の子どもに話を聞いてみると、「水の音がしたからちゃんと流れたと思った」というのです。
「トイレ指導」では、しっかりと流れるまでレバーを押すように教えています。
【食事】
また、多くのママパパが気にかけているのが給食ですよね。
好き嫌いが多い子、少食な子、お箸が苦手な子などいろいろなお悩みがあると思います。
最近の小学校では、無理やり食べさせることはしません。
バランスよく、楽しく食べよう!という考え方がベースですが、苦手な子に対しては「苦手でも一口は食べてみよう」「どれくらい食べられそうか自分で考えて、減らしてもいいよ」という指導が一般的です。
1年生を担任していたときに感じたことのひとつが、「この食べ物は知らない・見たこともない」「給食で初めて食べた」というお子さんがとても多いこと。
ご家庭でも、いろいろな食材に出会わせたいですね。
3-3.時間を意識した行動ができるように
子どもが感じる、幼稚園・保育園と小学校の一番大きな違いは「時間」かもしれません。
幼稚園・保育園では、午前中にメインの活動が2つ程度設定されています。子どもたちが焦らずに行動できるよう、時間にゆとりをもたせています。
それに対して小学校は、午前中に45分間の4時間授業。合間の休み時間も細かく区切られています。
もっと言えば、1つの授業の中でも、最初の15分は漢字の学習、残りの30分は物語を読むなど細分化されています。
時間を意識して行動するのはなかなか難しいことですが、ご家庭での取り組みは大きな成果になります。
一番大切なのは、「時間を守ることは大切」というイメージを持つことです。
そのためには、「時間を気にしていてよかった」という成功体験を積ませましょう。
例えば、好きなテレビ番組を最初から見られた、お友達とたくさん遊べたなど小さなことで構いません。
「『長い針が6』って覚えてたんだね」などと認めてあげましょう。
その際、時計は読めなくても大丈夫です。時計を読むことは1年生後半の算数で学習しますので、それまでは「長い針が8にいくまでに」という見方で大丈夫ですよ。
3-4.ひらがなが読めるように
1年生の国語といえばひらがな、というイメージを持っている方も多いですよね。
その通りで、入学直後の4月からひらがなの学習が始まります。
ただ、ひらがなを読むことは、入学前にできていた方が安心です。
なぜなら、黒板の文字や掲示物、お友達の名札もひらがなで書かれているからです。
特に入学直後は、初めてのことだらけですので、口頭での指示だけでなく、黒板にも指示が書かれることが多いです。
例えば、登校すると黒板に「1.てあらい 2.らんどせるのなかみをつくえにいれる 3.れんらくちょうをせんせいにだす…」と書かれていたとします。
ひらがなが読めれば、次に何をしたらよいのか、自分で確認しながら進めることができます。
ひらがなの学習には年齢にあったアプローチがあります。
あせらず子どもにあったサポートができるとよいですね。詳しくはこちらの記事で紹介しています。
・【3歳・4歳児】ひらがなを読めるようになるには?元教師が家庭でできる6つのアプローチをご紹介!
・【4歳・5歳】元教師がひらがなの教え方を紹介!家庭でできる5つのアプローチとは?
4.「小1の壁」を乗り越える|親も子どもも、小学校生活をイメージすることから始めよう
入学まであと半年ほどとなりました。
親子共々できれば10月頃から、どんな生活に変わるのかを知ることから始めましょう。
入学について具体的なイメージをもっておくと、計画的に準備を進めることができます。
親の準備と子どもの準備を分けて考えるのもポイントです。
あらかじめ準備をしてくことで、少しでも「小1の壁」「小1プロブレム」が緩和できるはずです。
また後編では、「入学3か月前~入学直前」の準備についてご紹介します。
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