
5歳で読める?時計学習に必要な「経験・体験・学び」と家庭での「環境作り」
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yurinako
- 幼稚園教諭
- 小学校教諭
- 子育て支援員
- 司書教諭
小2と年長の娘のママ。
小学校教員として15年間勤め、小学1年生から6年生までの担任を経験し、
のべ1500人以上の子どもたちを指導してきました。
小学校教諭、幼稚園教諭、司書教諭、子育て支援員の資格を持っています。
親子で一緒に、本やダンス・料理を楽しんでいます!
「小学校で困らないように、早めに時計が読めるようにしておきたい」
「何回も教えているのに、なかなかできるようにならない」など。
5歳児のお子さんのいるご家庭では、時計の読み方についてのお悩みをよく耳にします。
一般的に「時計を読む」というのは、アナログの時計を見て時刻が分かる(何時何分か理解できる)ことを指します。
「数字が読めれば、時計も読めるようになる」と理解されやすいですが、実は、ほかにもいくつかの要素が必要です。
この記事では元小学校教員が、「時計」学習に必要な「経験・体験・学び」といった5つの要素や「環境作り・サポート方法」についてご紹介します。
目次
1. 時計は何歳までに読めればいいの?
朝ごはんを作る時間、仕事に行く時間、子どもたちが帰ってくる時間など、大人が日常生活を送る上で、とても大切なのが「時間」という概念。
では、子どもたちは時計を何歳ごろまでに読めれば良いのでしょうか。反対に、時計が読めないままだと困るのは何歳ごろなのでしょうか。
ここでは、幼稚園・保育園や小学校での生活を想定し、「何歳までに時計を読めるようになれると良いか」を見ていきましょう。
1-1.小学校2年生が終了するころまでには理解できるように
小学校での「時計学習」に照らし合わせると、「小学2年生(~8歳前後)が終わるころまで」に時計が読めるようになるのが理想です。
小学1・2年生の算数の授業では、「とけい」「時こくと時間」の学習がはじまります。
これらの学習目安として、小学2年生の終わりまでには時計の読み方を確実に理解し、使いこなせるように指導しています。
そのため、5歳で時計が読めないからといって焦る必要はありません。
小学校に入る前であれば、「朝の7時だから、起きる時間だ」「夜の9時だから寝る時間だね」といったように「時間」を身近なこととして捉えられるような声かけがおすすめです。
まずは朝起きて夜に寝るという流れが「時間」というんだな、と分かっていればばっちりです。この単純なイメージ理解がその後の「時計学習」につながります。
小学3年生(9歳前後)以降では、自分で時間を意識して行動することが求められます。
低学年から中学年になる小学3年生は、自立へ向けての練習として、
「体育があるから10:30までに校庭に集合するように」「グループで話し合って発表するまで、30分間です」などと指示を受けることも多く、自分たちで時間をチェックしながら行動することが増えていきます。
1-2.【6歳~9歳前後】小学1,2,3年生で学ぶ「とけい」や「時間」
小学校の算数では、1年生から3年生で「とけい」と「時間」に関する学習があります。
各学年での学習内容は以下の通りです。
【小学1年生 後半】
・時計の読み方を知る(何時、何時半、何時何分)、時計のイラストに針を書き込む
【小学2年生 前半】
・時刻と時間の違い(*)、午前・正午・午後、1日は24時間であること
【小学3年生 前半】
・「秒」~「日」までの時間単位、24時間表記で時刻を表す
(*)時刻と時間の違い
時刻…そのときが「何時何分」であるかを示す
時間…ある時刻からある時刻まで、どれくらい経過したかを示す(「何時間」「何分間」と表す)
※自治体によって教科書が異なりますので、学習する時期については若干の差があります※
1-3.【~6歳前後】時計を学習するまでは、まずは声かけやイラストで時間の感覚をつかむ
先ほども述べましたが、5歳で時計が読めなくても大丈夫です。
「もしかして理解力が足りないんじゃないかな」などと悩む心配も全くありませんので安心してくださいね。
幼稚園や保育園の子どもたちは、年長さんになると徐々に時間に対する意識を高めていきます。
園の先生たちは時間の目安を示すために、「あと1回やったら終わりにしようね」「長い針がここにきたらね!」という声かけをします。
小学校になると、段階を追って時間を示す言葉を変化させていきます。
子どもたちの入学当初、先生たちは「もう終わりだよ」「タイマーが“ピピピ”と鳴ったら始めようね」と声をかけたり、時計のイラストで視覚化したりします。
子どもたちが数字を読めるようになると、「長い針が8になったらね」というように、子どもたちの理解に合わせて「時間」を表現しています。
2.急がなくて大丈夫!「時計」学習は小学校からがベスト
「時計を読むこと」は小学校低学年(7歳前後)にぴったりの学びです。
1年生(6歳前後)では数字の学習が始まり、朝・昼・夕方・夜といった時間感覚がしっかり身についてきます。
また、小学校の先生たちも「1年生はまだ時計読めない」という前提で対応してくれますので、急いで時計を読めるようになっておく必要はありません。
お子さんのペースでゆっくり力をつけていきましょう。
ここでは、小1プロブレム(小1で生じやすい問題)の1つとも言われる「時間で区切られた生活リズム」を中心にご紹介します。
2-1.小学校は時間割に沿って過ごす場所
小学校に入学して、すぐに求められるのは、「時計を読むこと」よりも「時間割に合わせて過ごすこと」です。
実は入学後、ここにギャップを感じる子どもがとても多いのです。
1時間目は体育、2時間目は国語、のように時間割があり、基本的には45分授業です(自治体によって、コロナ対応で40分授業のところも有)。
子どもが「もっとやりたい!」と思う活動があっても、次の授業になったら切り替えなければならないことが多くなります。
校庭や図書室などの特別教室は、使える時間が全てのクラスで割り振られているので、好きな時間に好きなだけ使う事ができないからです。
また、1年間で学習しなければならない学習内容が決められていますので、好きな学習ばかりしていられないというのが実情です。
2-2.「時間」や「時計」は生活の中で学ぶ
「明日は、△△ちゃんと公園で〇時に待ち合わせ」
「ウルトラマン、〇時からだ!」
といったように、当たり前に過ごす毎日の生活に「時計や時間」は欠かせないものです。
今は時計が読めなくても、ママやパパが「もう〇時だから帰ろうね」と教えてくれるので、困ることは少ないと思います。
学校が始まったり、お友達だけで遊ぶようになったりすれば、「読めるようになっておかないと!」と、自然に感じられる時がくるでしょう。
また、同じ年齢といっても理解力(脳の発達)は一人一人違ってきます。
分からないのに、無理に分かるまで教えようとしたり、「なんでわからないの!」と嘆いてしまったりするのは、学習へのやる気が下がってしまうため逆効果です。
すぐに習得できなくても、毎日の生活の中で継続的に学ぶことができますので、入学前から急いでやらせなくても大丈夫です。
まずは「時計を読めるようになるためのステップ」を大人が理解しておき、時計を読むための土台を作っていきましょう。
2-3.♬ 体験談コラム ♬ 「アナログからデジタルへ」
「今の子よりママパパ世代のほうが、時計が読めるようになるのは早かったのではないか」と言われることがあります。
筆者は元小学校教員ですが、私もそのように感じることが多くありました。
筆者が子どもの頃はまだ、時計と言えばアナログがメインでした。
当時の子どもたちにとって、パソコンはまだ“珍しい”“レア”なもので、携帯電話はビジネスマンの一部のみが持っているような特別なアイテムでした。
しかし今は、赤ちゃんの頃からスマホが身近にあり、6歳(小1)から一人1台のタブレットを使う時代です。
時計も、デジタルの方が見慣れていますよね。
ですから、ママパパ世代が子どものころに比べると、アナログ時計を読む必要性が少なくなっていると言えます。
「自分の時は5歳で時計が読めていたし、そろそろ教えたほうがいいかな」と感じたり、
「うちの子、まだ全然読めていないけど、平気かな?」と心配になるママパパがいるのには、こんな背景があるのかもしれません。
3.「時計」学習につながる経験・体験・学び
実は、時計を読むためには、いくつかの要素が必要です。
例えば、「数字が読める」などはイメージがつきやすいですよね。
ここでは、「時計」学習の理解力が高まる経験・体験・学びをご紹介します。
3-1.時間を意識する経験
先ほども少し触れましたが、まずは「時間」についての意識・感覚をもつことが大切です。
時間の意識をもっていない1歳~2歳ごろの子どもは、お腹がすいたときに食べ、気が済むまで遊び、眠くなったら眠るというように自由な本能で行動します。
そのため、夜10時すぎても起きていたり、朝5時にはもう起きていたりと、ママパパとしては「勘弁してよ~」と思うことも多かったのではないでしょうか。
そこから徐々に、「お昼ごはんだから帰ろうね」「もうすぐお昼寝の時間だよ」など、時間を意識する声かけをしていくことによって、時間が意識できるようになっていきます。
3-2.長さ・太さの感覚(長い針と短い針が分かる)
時計を読むためには、長い針と短い針を見分けることが必要です。
この2つの針を見分ける大きなポイントは、針の長さと太さですね。大人から見れば、この2つの針を当然のように区別できます。
しかし、子どもにとっては、この2つの針を見分けることが難しいのです。
この、長さと太さを正しく見分けられるようになるには、実際に手を動かしながら、大きさや長さ・太さを感じる体験が大切です。
具体的には、積み木やブロック遊び、石集めや粘土遊びなどが挙げられます。
ただ遊ばせるよりも、大人の声かけがあるとさらに効果的です。
「同じくらいの長さだね」「どっちが長いかな?」「ここにぴったり入るのはどれかな?」など。
長さや太さを意識できるような言葉をかけてあげると、お子さんが考えるきっかけになります。
3-3.60までの数を数えられる
「何時何分」と読むには、60までの数を数えられるようにしておきましょう。
1時間は60分ですので、60までの目盛りを数えることが必要になるからです。
まずは、「いーち、にーい、さーん…」と声に出して数える練習をします。
始めは10まで、クリアしたら20まで、と少しずつ増やしていき、段階的に60まで数えられるようにしましょう。
次の段階は、積み木やビーズなど、小さい物を数える練習です。
声に出して読むのは簡単にできるお子さんでも、実物を動かしながら数えるとテンポが合わなくなってズレてしまうことがあります。
ゆっくりと、1つずつ動かしたり指さしたりして数えるようにしましょう。
その後は、実際に目盛りを正しく数える練習です。
目線を目盛りに集中させ続けることがなかなか難しいです。やっていくうちに、5・10ごとに目盛りが太くなっていることに気づく子もいるでしょう。
3-4.数字が読める
時計には、1から12までの数字が記載されています。数字が読めれば、「8のところに短い針があるよ」というように、なんとなく針の位置から時間を読むことができるようになります。
5歳といえば、ひらがなに興味を持ち始めるころであり、数字にも興味を示す子も多いのではないでしょうか。
数字は身近なものにも多く書かれていますし、自分の年齢にも関係するものとなると、1~5はすぐに読めるようになる子が多いです。
“11”“12”を「いちいち」「いちに」ではなく「じゅういち」「じゅうに」と認識するまでは、時間がかかることがあります。
電話番号やパスワードだと「いちいち」と表現するのに、数を表すときには「じゅういち」と表現する、この違いが子どもには難しいようです。
3-5.見えないものを的確にイメージする力
小学生にもなかなか難しいのが、「長い針と短い針がどこを指しているのか正しく読み取ること」です。
長い針は時計の目盛り近くまで伸びているので読みやすいのですが、短い針はぱっと見では判断しにくい時があります。
短い針の延長線上をイメージすることで、「何時」という判断ができます。
小学校の授業では、短い針がどこを指しているか、時計のイラストに書き込みながら学びます。
それでも、ぐにゃっとした線を書き足したり、姿勢が悪いために曲がって見えてしまったりして、正しく読み取れないことが多いです。
時計を読むには、実際には見えないものをイメージし、判断する力が必要です。
このような要素を身につけるための環境・サポート方法を、ご紹介していきます。
4.「時計」学習がスムーズになる家庭での環境づくり
では、子どもが時計を読めるようになるために、大人はどんなことができるのでしょうか。
まずは、ご家庭の環境面から見ていきましょう。
4-1.子どもの見やすいところに、シンプルなアナログ時計を置く
まずは、ご家庭にシンプルなアナログ時計を置きましょう。
子どもの生活の中に、当たり前にあるものというイメージを持たせられると良いです。
時計をこれから選ぶなら、できるだけ長い針と短い針が分かりやすいもの(秒針とも区別がつくもの)だと良いでしょう。
また、子どもの視野は大人に比べて狭く、身長が低いので視界が低いものです。子どもの視界に入る場所、見やすい場所に置くようにしましょう。
4-2.おうちの方がアナログ時計を読む姿を見せる
おうちの方が時計を読んでいる姿を見せるようにしましょう。
時計を見ながら、「あ~、もう〇時か、ご飯の用意しなくちゃな」などと言ってみると、子どもも真似して「〇時か~」と言ってみたり、「いま何時?」「なんで何時かわかるの?」と聞いてくることもあるでしょう。これが子どもの時計への関心へとつながります。
子どもは親の注目しているものに興味や関心をもつことが多くあります。そのため、日ごろからママパパ自身がアナログ時計を見るようにしましょう。
また、スマホで時計を見ることが多い現代では、おうちにアナログ時計があっても、ただの飾りだと思っている子どももいます。
大人からするとちょっとびっくりしてしまいますが。これは飾りではなくて、「時間」が分かるものである、という認識をもたせてあげるということから教えてあげましょう。
4-3.時計に興味がでたら「子ども用時計」がおすすめ
「なんでぐるぐる回ってるの?」「どうやって時間が分かったの?」とお子さんが時計に興味を持つようになったら、時計の読み方を教えるチャンスです。
その場合は、子ども用の時計学習アイテムがおすすめです。
①針を回せる時計おもちゃ
時計の針が動いていることに興味を持つ子には、針を回せる時計おもちゃを持たせてみましょう。
自分で針をぐるぐる回したり、アナログ時計と同じ時刻を表現したりするうちに、「あれ?短い針はあんまり動かないぞ。」など時計の仕組みに関心を示すかもしれません。
②分針に1から60までが書かれている子ども時計
数字が読める、60まで数えられるお子さんには、子ども時計がおすすめです。
通常の時計には1から12までの時刻を表す数字が書かれていますが、子ども時計にはそれ以外に“分”を表す1から60までの数字が書かれています。
目盛りを読みやすいので、時計学習の初歩にぴったりです。
5.日々の生活のなかで「時計」学習の基礎を身に着けよう
では、時計が読めるようになるためのステップとして、実際にはどんなことをしていけばよいのでしょうか。
日常生活の中で無理なくできることを、ご紹介します。
5-1.日常の中で、時間を意識する経験
まずは、時間を意識する、時計を見る経験を積み重ねましょう。
時計を見せて針を指で指しながら……
遊びの終わり
・「長い針が一番上に来たら、次は〇〇しようね」
・「あ、長い針が上にきたね、じゃあ、おもちゃのお片付けしようね」
登園前の朝
・「おはよう、7時だよ。起きる時間だよ」
・「長い針が8になったら、保育園に出発だよ。あと15分だね」
夜の就寝前
・「長い針が9になったら、お布団に行こうね」
5-2.身近なものを数える経験
身近なものを数える経験を重ね、数に関心をもてるようにしましょう。
これは、時計だけではなく、算数全般につながります。
例えば、ブロック・ミニトマト・ぶどうなどの小さい物を数えたり、お風呂の湯船で20まで数えたりすることが挙げられます。
また、5歳児の数理解に関しては、以下の記事でも取り扱っていますのでぜひチェックしてみてください。
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5-3.遊びの中で、じっくりとものを見る力をつける
先ほども述べましたが、時計を読むには、長さや太さを見分ける、見えない部分もイメージする力が大切です。
遊びの中でじっくりとものを見る経験を重ねることで、このような力がついていきます。
例えば、間違い探し、線つなぎ、うつし絵、折り紙などが挙げられます。
どれも、見比べる、集中して見る、細かい部分にこだわって見るという部分が共通する遊びです。
6.焦らなくても大丈夫!子どものペースで自然に学ぼう
時計を読むには、実はいろいろな要素が必要であることをご紹介しました。
そのような要素がちょうど揃うのが、小学校低学年頃と言えます。ですので、小さい頃から急いで教えなくても大丈夫です。
子どもが「時計を読んでみたい!」と感じたときにスムーズに理解できるよう、そのための基礎となる力(長さや太さの見分け、数を数える、数字を読むなど)をつけていきましょう。
また現代は、デジタル時計に触れる機会が多くなっていることもあり、アナログ時計を読む機会や必要性が薄れてきています。
子どもが必要性を感じていないことを大人が教えようとすると、「やりたくない!」と反発し、時計に苦手意識をもってしまうこともあります。
子どもが「やってみたい!」と感じたとき、子ども自身に学ぶ必要感が芽生えたときがチャンスです。
焦らず、お子さんのペースでやっていきましょう。
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