子どもの絵が「下手」!?絵心はどうやって育てる?
この記事を書いた人
スーさん
- 幼稚園教諭
- 保育士
10年間保育士として勤務した後、保育系専門学校に10年講師として勤務しています。
保育士時代は、未満児~年少児クラスを中心に担任をしていました。
工作や読み聞かせが得意です。
子どもが3人いて、上2人は社会人、下は中学3年の娘がいるので、まだまだ子育て真っ最中です!
子どもが楽しそうに一生懸命描いて「これ、ママだよ!」と見せてくれた絵。
「えっ!?これが私?」と、お世辞にも「上手」と言えない…と思ったことはありませんか?
あるいは、子どもが通う保育園や幼稚園で飾られた我が子の絵を見て、「○○ちゃんの絵は上手。それに比べてうちの子は…」「うちの子は、いつまでたっても絵が上手にならない」と思ってしまうことはありませんか。
なぜ我が子の絵を見て「上手」と思えないのか。
他の子の絵と比較してしまうのか。
絵が上手になるためには、絵心を育てるためにはどうしたらよいのか。
この記事では、そんな疑問を解決するヒントをご紹介していきましょう。
目次
1.なぜ、「うちの子は絵が下手…?」と思うのか
子どもが「見て見て!」と嬉しそうに持ってきた絵。「○○だよ」と描いたものを見て、「何を描いたのだろう…」 「○○に見えない」「もしかして絵が下手?」と思ったことはありませんか。
なぜ、「下手」と思うのでしょうか。
大人は、対象物と描かれた絵を比較して「上手」「下手」を判断します。
子どもは、自分がイメージしたものを表現して描くので、実物との差異が生じることがあります。
また、子どもは発達段階で描き方が違うので、それを理解していないと、我が子が描く絵を「下手」と思ってしまうことがあるようです。
まずは、子どもの絵の発達段階を知るところから始めましょう。
1-1.子どもの絵の発達段階について
子どもの絵の発達段階は、主に以下の3段階に分かれます。
1.殴り書き期(1歳半〜2歳半頃)
最初は、手先だけを使ってクレヨンで点を描いたり、こすり付けたりします。まだ「描く」まではいきません。
手首だけでなくひじも使えるようになると、らせん形や渦巻形の滑らかな線を描くようになります。
2.象徴期/命名期(2歳半〜4歳半頃)
丸や渦巻の形が記号のように象徴的に現れるので、象徴期と言われます。象徴期の中で描いたものに対して、「これ、ママ」と命名することから、命名期とも言われます。
また、頭から手や足が出ている「頭足人」がこの時期から見られます。
描いたものに対しての色は好みで選んでいますが、4歳くらいから色は物と一致していきます。
3.図式期(5歳〜8歳頃)
人・太陽・花・木・家を記号(図式)的に描き、次第に動作表情、例えば人だけではなく、太陽や花などに目や口などを描いたり、何かを持つ、歩いているといった動作がわかるような絵を描けるようになり、形も複雑化していきます。
物を見て、見えたように描くというより、知っているものを描こうとします。
また、地面(基底点)と空、横から見た断面図のように左右に並べて平面的に描くことが多くなってきます。
以上のような段階を経て、子どもの絵は発達していきます。
年齢ごとに描くものや描けるものを知ると、我が子が描く絵の見方が変わってきますね。
1-2.我が子の絵をつい比べてしまう親の心理とは
「他の子と比べてうちの子は…」。
誰しもこんなふうに我が子を見てしまうことはあるでしょう。特に初めての子育てをしている親は、何が正解なのかで悩んでしまう傾向にあります。
また、親が自分に自信が持てない場合も、自分の子育ての自信のなさが「よその子と比べる」ということに出てしまうことがあります。
特に、保育園や幼稚園に通うようになると「他の子の存在」が気になり始めます。
園では、子どもが作った作品や描いたものを展示することがあるため、「見比べる」といった行為に走ってしまうのです。
本来ならば、子どもは好んで自由にお絵描きをし、描いた作品は一人ひとり違いがあり個性があります。決して他者と比べることではないのですが、親の心情が「比べてしまう」に繋がってしまうのです。
2.子どもの絵の「上手」「下手」とは
4~5歳くらいになると、何を描いたのか大人が見てもわかるようになります。
描いたものをパッと見て、よくわかる=「上手だな」と判断し、「これは、○○?」と何を描いたのかわかりづらい絵=「下手だな」と判断してしまいます。
大人から見て「上手」と「下手」と思える絵には実は特徴があるのです。
では、「上手な絵」と「下手な絵」とはいったいどんな絵なのでしょうか。
2-1.「上手」と言われる子どもの絵とは
誰から見ても「この子、絵が上手だな」と言われる絵の特徴とは何でしょうか。
ズバリ、何を描いたかが見てわかるものです。つまり、描いた対象物の形を捉えている絵です。
対象物の形を捉えているということは、しっかりと観察することができているともいえるでしょう。
例えば、どの子も4歳くらいになると「ゾウは鼻が長い」ことを知っています。観察力がある子は、ゾウの特徴、つまり鼻が長くて耳が大きいところを象徴的に描くことができるのです。
また、観察力だけでなく想像力も豊かで、対象物が目の前になくても、「車を描こう」「ママを描く」など、その時に描きたいと思ったものを頭でイメージし、表現することがうまい子も「絵が上手」と言われます。
2-2.「下手」と言われる子どもの絵とは
子どもが描いた絵を見て、「何を描いたのかがよくわからない」「キリンってこんなだった??」と思わずクスっと笑ってしまうような絵は「下手」と思われがちです。
絵が下手な子どもは、描く対象物の見方を知らず、形をうまくとらえることができないため、うまく描けないのです。そして、頭の中でイメージすることが苦手だという傾向もあります。
また、絵を描く機会が少ないと経験値が上がらないため、上達する機会が得られないということも背景にあるでしょう。
3.子どもの絵心を育てる親の接し方とは
『絵心』とはどういうことでしょうか。
それは「描くことを楽しむ気持ち」「絵のセンス」のことをいいます。
子どもは、発達に応じて皆、最初は同じような絵を描きます。例えば3歳くらいになって丸が描けるようになると、そこから手や足が生えた「頭足人」を描くようになります。
では、どの時期から差が出てくるのでしょうか。
それは物の見方や捉え方の「観察力」が育ってくる4・5歳頃からです。この時期に親の接し方ひとつで観察力がつき、絵心を育てることに繋がっていきます。
観察力がつくためには、見たものを具体的に言葉にしていくことが大切です。
「きれいなお花だね」だけではなく、「赤くて花びらがたくさんあるきれいなお花だね」と細かいところを見て伝える、「何色のお花かな。花びらはどんな形をしているかな」と投げかけて、子どもがよく観察して言葉で表現できるようなやり取りをすることで、自然に観察力が育っていくでしょう。
他にも、子どもがお絵描きをしているときに集中できる環境を作ることや、描いた絵に対して親がいう言葉も絵心を育てることに関係します。
一体、どう関係してくるのでしょうか。子どもの絵をダメにする親の接し方から見ていきましょう。
3-1.否定的な言葉や「上手」と言いすぎない
子どもが描いた絵を見て、「○○ってこうじゃないよ」と描いたものに対して否定するような言葉をかけていませんか。
これを言われると、子どもは傷ついてしまい、一生懸命に描いたことや楽しく描いたこと自体も否定されたように感じてしまいます。
もしかすると、絵を描くこと自体を嫌いになってしまうかもしれません。
また、褒めれば上手になるだろうと思い、「上手!」「すごい!」を連呼するのも、子どもの絵心を摘んでしまいます。褒められたくて「上手に描かなければいけない」と思ってしまいその結果、のびのびと楽しく描くことができなくなります。
そして、「上手に描けないから、お絵描き嫌い」という方向にいってしまい、絵心どころかお絵描きが嫌いになってしまう可能性もあるでしょう。
3-2.干渉的な態度や無関心な態度を取らない
絵が上達してほしくて、口や手を出すなど干渉的になると、子どもの絵を描く気持ちを削いでしまうことになります。
例えば、発達段階的に無理なことをさせようとすると、子どもはそれをストレスに感じたり、緊張感を抱くことになったりします。「できない!」と自己に対して否定的な気持ちになり、絵を描くことが嫌いになってしまいます。
また、その逆に、無関心でいることも取ってはいけない態度の一つです。楽しみながら描いている絵に対して褒められた経験がないというのはとても寂しく、自尊心の育ちを遮ることにもなるでしょう。
描いた絵に対して、褒められたり共感してもらったりすることで、子どもの「もっと描きたい」という思いが育っていきます。
4.子どもの絵心を育てる親の接し方−3つのヒント−
子どもの絵心を育てるために、親はどう接したら良いのでしょうか。望ましい接し方のヒント3つを紹介します。
4-1.子どもの絵に対して前向きな言葉をかける
子どもが描いて見せてくれる絵に対するベストな言葉かけとは、よく描けているところを具体的に褒めることです。
例えば、犬の絵を描いた場合、「目が大きくてかわいい犬が描けたね」とその子の絵を見て、対象物の特徴を捉えて描けているところを取り上げて言葉にするということです。
具体的に褒めてもらうことで、自信を持つことができるでしょう。
描くことに自信が持てると、絵が上達することに加えて、「もっと描いてみたい!」と絵心を育むことにもつながっていきます。
4-2.大人の絵の基準に当てはめない
子どもに、「上手に絵を描かせたい」と大人の思いが込められてしまうと、本来の「お絵描きが好き!」という子どもの気持ちやのびのびとした感性を摘んでしまうことになります。
子ども本来の感性や個性を伸ばすためにも、大人の基準を取り払い、描いた絵の世界観に共感していきましょう。
また、いつでもお絵描きができるように紙とクレヨンを見えるところに置く、お絵描きを始めたら静かに見守るなど、集中して描ける環境を整えることも大切です。
4-3.観察力や想像力を育む
観察力が育つと、描くときに対象物の特徴を捉えやすくなります。また、想像力が育つと頭でイメージしたものを描けるようになってきます。
そのためには、日ごろから物を見るときにそれはどんな形なのか、大きさはどのくらいなのかなど、一緒に具体的に言葉にして物を見ていくとよいでしょう。
また、何気なく見たものに対して、「これ、○○に見えるね」など想像力を働かせるような言葉かけをたくさんすることも心がけたいですね。
5.子どもの絵心を育てるカギは、発達に合った接し方
子どもの絵心を育てるためには、まずは発達段階を理解し、大人の思い込みを払拭することから始めましょう。
そして、親の接し方でその後の子どもの絵心の育ちが違ってくることを理解しておきましょう。
本来、子どもは描くことが大好きです。そんな子どもの気持ちを大切にしていくためにも、親や大人の存在が大きく影響します。
子どもの絵心を育む接し方を、日頃から心がけていきましょう。
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