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長時間保育は子どもに悪影響なの?研究データをもとに解説!

この記事を書いた人

狩野淳 狩野淳

狩野淳

  • 公認心理師
  • 臨床心理士

大学、大学院にて発達心理学と臨床心理学を専攻していました。

臨床心理士と公認心理師の資格を保有しております。

子ども達とその保護者の方の支援を仕事にしており、子ども達へは主に応用行動分析を認知行動療法用いて、保護者の方にはブリーフセラピーを使ったアプローチを行っています。

もうすぐで1歳になる男の子がいて、毎日癒されています!

「共働きで早朝から夕方まで預かってもらうしかないけど、子どもの発達に悪影響を与えていないか心配」

「長時間保育の我が子に対してどのような関わり方をしてあげればいいのかわからない」

そんなお悩みはありませんか?

そんなお悩みをお持ちの方へ、今回は長時間保育が子どもに与える影響長時間保育の際に特に気をつけてもらいたいことについて、筆者である私自身の体験談を混ぜながら解説していきます。

心理学的な視点から子どもの発達について紹介し、限られた時間の中での我が子との関わり方についても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。

 

目次

 

1.長時間保育とは?

保育園

長時間保育が子どもに与える影響について解説していく前に、長時間保育の定義と現状について確認していきましょう。

 

1-1.長時間保育の定義│何時間から長時間?

長時間保育とは、通常の保育時間を超えて8時間以上保育園などに預けることを指します。

朝9時に預けたとして17時を過ぎてしまうと長時間保育に該当します。共働きの家庭ではどうしても長時間保育にならざるを得ないという現実があります。

 

1-2.長時間保育の割合│どれくらいの家庭が利用してるの?

厚生労働省によると、平成30年度に長時間保育を実施している保育施設は全体の8割を超えており、全国的にニーズが高いとしています。

それだけ多くの保護者が長時間保育を頼りにしているということを示していますが、なかには長時間保育に否定的な考えをもち、長時間保育を実施していない保育施設も存在します。

 

2.長時間保育は子どもにどんな影響を与えるのか

ぶらんこ

長時間保育の概要を確認したところで、次に長時間保育が子どもにどのような影響を与えるのかについて紹介していきます。

 

2-1.就寝時間が遅くなる

1つ目は「就寝時間が遅くなる」です。保育短時間の場合は16時半ごろ、通常保育時間の場合は17時半ごろのお迎えとなるため、19時~19時半ごろには夕食と入浴を済ませ、20時半ごろに就寝という動きになるでしょう。

しかし長時間保育の場合は19時~20時に迎えに行き、そこから夕食、入浴を済ませるので、就寝が22時を過ぎてしまう場合もあります。

朝6時~7時に起きる場合は8~9時間ほどしか睡眠時間を確保できず、これは文部科学省が推奨している睡眠時間(1~2歳児は11~14時間、3~5歳児は10~13時間)を大きく下回ってしまいます。

お昼寝の時間でカバーすることもできますが、なかには寝てくれない子もいます。実際に筆者である私の息子は環境の変化からか、長時間保育の際には20分~40分程度しか寝てくれませんでした。

 

2-2.発達に悪影響を与える?

浜松医科大学医学部教授をはじめとした専門家チームが「長時間保育が子どもの発達に及ぼす影響」について調査を行いました。

その結果、「保育の質」が保障された保育施設では、保育時間の長さは子どもの発達に影響を与えないことが明らかになりました。

この研究ではむしろ「親の悩みについて相談できる人がいるかどうか」が子どもの発達に関係があるとしているため、「長時間保育を頼らざるを得ない環境」「仕事や介護などによる親の心理的余裕のなさ」が結果として子ども発達に影響を与えているのかもしれません。

▶どんな研究だった?

この研究では、1歳時点での保育形態や育児環境などを調査し、5年後に同様の内容を再調査することで、長時間保育や子どもを取り巻くさまざまな環境が子どもの発達にどの程度影響を与えるのかを調べました。

 

2-3.愛着形成ができにくくなる?

愛着形成とは児童心理学における用語の1つで「特定の人との関係を通じて形成される心理的な絆」を指します。

長時間保育の場合はママやパパと過ごす時間が少なくなるだけでなく、「早く子どもを寝かしつけないと」と焦ったり、仕事の疲れでイライラしていたりとゆったりとした暮らしができず、子どもとの愛着関係を築くことができないケースもあります。

そのため、「長時間保育=愛着形成ができない」というわけではありませんが、愛着形成ができにくくなることは十分に考えられます。

愛着について詳しくは別記事にて解説して解説していますので、そちらもぜひご覧ください。

「愛着」が幼児期にも大切な理由とは?愛着形成で自己肯定感を高めよう!

【公認心理師解説】3歳まではしつけよりも愛着形成を優先する理由

 

3.なぜ長時間保育の子どもに問題行動が多いといわれるの?その要因は?

長時間保育では子どもの夕方以降の活動が後ろ倒しになりやすく、「適度な睡眠時間が確保できなくなる」場合や、親子の触れ合いの時間の少なさから「愛着形成が上手くいかなくなる」場合が考えられるものの、長時間保育が直接子どもの発達に悪影響を及ぼすことはないと解説しました。

しかし現場の保育士の先生から「長時間保育の子は荒れやすい」「問題行動を起こしやすい」といった声がたびたび聞こえてくることも事実です。

「保育所の保育内容に関する調査研究報告書」では「病気やケガの発生が通常の時間帯よりも多い」、「園児が疲れ気味で落ち着いて遊びに集中できない」と感じている保育士がいることが明らかとなっています。

長時間保育の子どもが問題行動を起こしてしまう要因にはどのようなものがあるのでしょうか。

今回は「保育現場で考えられる要因」と「保育現場以外で考えられる要因」の2つに分けて考えていきます。

 

3-1.保育現場で考えられる要因

はじめに保育現場で考えられる要因として「保育士の疲れ」が挙げられます。

長時間保育はニーズの高い支援であるものの、保育士にとって負担の大きい業務です。経営的に人数配置に余裕がもてず、少ない人数で長時間業務を行っていく現場では、いくら保育のプロとはいえストレスから園児に感情的になってしまう場面もあるでしょう。

その結果、子どもが不安的になり、問題行動を起こしてしまうことも十分考えられます。これは現場の保育士の責任だけではなく、むしろ経営者や社会構造に問題がある場合があります。

 

3-2.保育現場以外で考えられる要因

次に保育現場以外で考えられる要因として、先に紹介した「睡眠不足」「愛着の未形成」以外に「注目行動」が考えられます。

注目行動とは心理学の用語の1つで「相手から関心や注目を得るために起こす行動」を指します。

長時間保育の子どもは保育士と触れ合う時間が長いため、他の園児よりも親密な関係を築くことが多くあります。しかし通常保育時間中は多くの園児がおり、保育士側としても「この子は早い時間に帰ってしまうからたくさん関わろう」といった心理が働くため、なかなか相手をしてもらえません。

そこで「僕を見て!」「私にかまって!」といったサインを「いたずらをする」「大声を上げる」「他児を叩く」といった行動で示してしまう場合があるのです。

 

4.長時間保育で気をつけたい帰宅・休日の過ごし方

長時間保育の場合には様々な要因から問題行動に繋がってしまうケースがあることを紹介しましたが、だからといって長時間保育を利用しないわけにはいかないというご家庭が多いのではないでしょうか。

かく言う私も仕事の都合で長時間保育を利用していました。幼い我が子を家ではない場所に長時間預けることに対して罪悪感や息子への申し訳ない気持ちがないといえば嘘になります。

少しでも息子との時間を大切にしようといくつか気をつけていたことをご紹介しますので、是非参考にしてください。

 

4-1.平日のタイムスケジュール

はじめに長時間保育中のタイムスケジュールについて簡単に紹介していきます。

6:30 起床
6:40 朝ご飯
7:30 出発
7:40 保育園着
18:00 ママお迎え
18:30 帰宅&入浴(このタイミングで私が帰宅します)
19:00 夕食
20:00 寝かしつけ
20:30~21:00 就寝

もちろん毎日この通りになるわけではありませんでしたが、遅くとも21時には寝させようとしていました。

次に保育園から帰宅した後に気をつけたことと、休日の過ごし方で気をつけたことを紹介していきます。

 

4-2.帰宅後の過ごし方

帰宅後は夫婦で「21時には寝かそう」という共通認識のうえで行動していました。

朝食と夕食は土日で作り置きをしたり、息子が寝た後に作ったりして時短をし、就寝までスムーズに進めるように工夫しました。

また、寝かしつけは極力夫婦2人で行い、絵本を読んだり、幼稚園の話をしたり、それぞれの職場でのことを話したりと3人で過ごす時間を作るように心掛けました。

とにかく息子との時間を捻出しつつ、睡眠時間を確保することで、長時間保育による弊害を少しでも抑えました。

また私達夫婦も自分たちの入浴が終わり次第すぐに寝るようにして体の疲れをとるともに睡眠不足からイライラしないように気をつけました。

日常的に長時間保育にならざるを得ない場合は家族の協力を得ながら時間を短縮できる部分を探し、「子どもとの時間」を作りながら、できるだけ早い時間に就寝できるよう心掛けましょう。

💡ポイント

  • 睡眠時間はできるだけ多く確保
  • 子供との時間は少しでもとる(絵本を読む、園での話を聞く)
  • できれば家族が協力して流れを作る
  • 時間を短縮できるところを考える(例えばご飯は作り置きする。着替えや園の用意はあらかじめ準備しておく など)

 

4-3.休日の過ごし方

妻は仕事が土日休み、私が平日と日曜日休みだったため、長時間保育の期間は平日1日と土日の3日間保育園をお休みして週4日預けるようにしました。

平日と土曜日はなるべく外には連れ出さず、昼寝の時間を長くとったり、ブロック遊びやボール遊びをして過ごしました。

どうしても外に行きたいと騒ぐようなら近所を散歩したり、一緒にお菓子を買いに行ったりと軽い外出で済ませ、ゆっくりとした時間を過ごせるようにしました。

日曜日は家族が全員揃うのでショッピングセンターに買い物に行ったり、共通の友人に遊びに来てもらったりと保育園ではできないことをしていました。

我が家ではこのように、休みの日は「ゆっくり過ごす日」と「遊ぶ日」にわけ、メリハリをつけていました。

お子さんによっては朝起きる時間を遅くしたり、積極的に外出したりした方が喜ぶ場合もあると思いますので、お子さんにあった過ごし方をしてあげるといいですね。

💡ポイント

  • 片方でも「平日休み」が取れたら、園を休ませてゆっくり自宅で過ごしてみるのも◎
  • 保育園ではできない暮らしの機会を無理のない範囲で作る(お出かけ、祖父母との交流など)
  • 我が子が楽しめる過ごし方は何かを考えてみる

 

5.長時間保育でも大丈夫!健やかな成長のためにできることから始めよう

ファミリー

今回は長時間保育が子どもに与える影響について解説しました。

長時間保育は、適切な場所や人の確保された「質の高い保育」を受けている場合は子どもの発達に悪影響を与えることはありません。

しかし、長時間保育によって生じる生活リズムのずれ込みや愛着関係の不十分さ、養育者・保育者のストレスなどといった要因から子どもを不安定にさせる場合があります。

長時間保育は両親のキャリア形成と育児の両立に必要不可欠ですが、長時間保育のために親子関係が悪化してしまっては本末転倒です。

仕事と育児どちらも上手く回していきたいなら、日常生活を見直し、無駄な部分はないか、改善できるところはないかを探し出し、できるところから変え、子どもとの時間を大切にしていきましょう。

 

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主な参考文献
安梅勅江等,長時間保育が子どもの発達に及ぼす影響に関する追跡研究,第51巻第10号「厚生の指標」,2004
庄司順一研究員,延長保育・一時保育の実践研究 -保育所の保育内容に関する調査研究報告書-

 

 

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