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「ママと離れたくない…」園を休ませるべき?保育士が原因と対応方法を解説

この記事を書いた人

なな なな

なな

  • 高等学校教諭
  • 保育士

早稲田大学在学中に放課後等デイサービスでアルバイトとして勤務。

一般企業に就職後、子どもの人生に関わる仕事がしたいと思い、保育園で働きながら保育士資格を取得しました。

現在は保育士として勤務しています。

「子どもと一緒に楽しむ」ことを大切に、子どもと接しています!

保育園や幼稚園に送って行くときに「ママと離れたくない」と子どもが泣き暴れて困った経験はありませんか。

ママにべったりで寂しそうなお子さんの姿を見ていると、園に預けることに罪悪感を抱いてしまったり、離れにくくなったりする一方で、何日もお休みさせると登園渋りが長引きそう…と対応に悩むママやパパもいるでしょう。

CONOBASのお悩み相談フォームにも、「ママと離れたくないと泣いて幼稚園に行けない」というお悩みをお寄せいただきました。

今回は現役で保育士として働いている、ななさんにお話を伺いました。

「ママと離れたくない」と感じる子どもの気持ちを深掘りしながら、ママと離れることへの不安が強い子どもへの対応のコツをまとめました。

(編集部)

「ママと離れたくない」と泣き暴れ、思い通りにならないと癇癪を起こす

4歳女の子 ママからのご相談

子どもの登園渋りが長引くと、ママもゆとりを持って接することが難しくなってきますよね

相談者様は、「幼稚園の先生は気持ちが落ち着いて、来れるようになるまで待ちます。とはいっていただいているのですが、このまま待っていいのか、私としてはなんとか行ける方法を探している」とお悩みのことです。

子どもの行き渋りには、どのように接するのが適切なのでしょうか。子どもの「ママと離れたくない」に隠された気持ちを読み解きながら、どのように対応すればいいか一緒に考えていきましょう。

 

目次

 

1.「ママと離れたくない」という子どもの気持ち

お子さんから「ママと離れたくない」といわれると気になりますよね。

子どもにはいろんなタイプの子がいます。集団生活にすんなり馴染める子もいれば、たくさんの人がいるところに1人で入っていくことに強い不安やストレスを感じる子もいます。

また、幼児期は、特にママと離れることに寂しさを感じる子どもが多いです。ここでは、母子分離不安について触れながら、お子さんが「ママと離れたくない」という理由を考えてみましょう。

 

1-1.母子分離不安とは

母子分離不安とは、子どもが保護者などの愛着対象から離れる際に強い不安を感じることを指します。

愛着とは、「乳幼児と特定の養育者(親や保育者)との間に形成される情緒的結びつき」を意味する心理学の用語で、アタッチメントと呼ばれることもあります。

母子分離不安は、小さい子どもによく見られる現象で、おおよそ生後8か月ごろから始まり、生後10か月から1歳半に最も強くなります。分離不安は2歳ごろまで続く(※1 )といわれています。

3歳以降になると、愛着対象から離れても、心の中でママやパパの存在を感じ、安心できるようになってくる子どもが多いです。

しかしお子さんの気質や養育環境によっては、幼稚園や小学校に通い始めてからも「ママと離れたくない」と泣き出し、分離不安が続く子どももいます。

 

1-2.3歳以降の母子分離不安の特徴

3歳は、保育園や幼稚園に入園する時期です。

園での集団生活が始まると、生活環境の変化に伴い、子どもも不安やストレスを感じるようになります。それまでは後追いや人見知りをしなかった子どもでも、急に不安が強くなることもあります。

よくある行動の具体例:

  • 登園を嫌がり、ママやパパと一緒にいたいと言う
  • スキンシップを多く求める
  • 今まで平気だったことも怖がり、家族と一緒にしたがる
  • 小さな失敗でパニックになる

幼稚園に入園すると、今までお家で家族と過ごしていた生活から、たくさんの友だちやおもちゃに囲まれ、園のルールに沿った生活を送るようになります。

大きなトラブルがなくても、新しい環境は疲れやストレスに繋がり、ママ・パパと離れることへの不安や気持ちや行動が現れることもあります。

 

1-3.3歳以降の母子分離不安の原因

母子分離不安が起こる要因は様々です。筆者が保育士として子どもたちと接する中で実際に遭遇した事例では、

  • 友達から嫌なことを言われた、された
  • 苦手な活動がある
  • 運動会やお遊戯会などの練習で忙しくて、疲れる

などが挙げられます。

大人からすれば大したことのないように思える理由でも、経験の少ない子どもにとっては大きなストレスとなっていることもあります。「みんなが大丈夫だからうちの子も大丈夫」と決めつけずに、子どもの気持ちに寄り添った関わりが大切です。

【編集部コラム】母子分離不安が強い子どもってどんな子?割合は?

幼稚園に入園したばかりの3歳児を対象に、登園時に母親と自分から別れ、母子分離が完了する時期を調査した研究(※2)によれば、ほぼ半数の幼児はほとんど分離不安を示さず、4月から幼稚園生活を問題なく過ごすことができた一方で、3割の幼児は分離不安が強いことが明らかになりました。

実験では比較的女子の方が母子分離不安が強い傾向があり、兄弟構成においては、末っ子、長子、中間子の順に母子分離不安が強くなることがわかっています。

本研究の執筆者は、「実際に子ども達に接してみると,母親と別れる不安というものは,ある日突然に解消していくものではなく,子ども達が幼稚園の生活の中で行きつ戻りつしながら,徐々に乗り越えてい くものであることが実感できた」と述べています。

相談者様のお悩みには、入園してから3ヶ月は泣きながら登園し、夏休み前には泣かずに行けるようになったが、ある日突然、登園渋りが再開したと書かれております。子どもは毎日行ったり、来たりを繰り返しながら成長していきます。

登園渋りが続くと、ママも心が疲れてしまうこともあるでしょう。しかし「ママと離れたくない」と登園を嫌がったり、幼稚園でお家のことを思い出して泣いてしまったりするのは、ママとの間に愛着関係が築けている証拠でもあります。

終わりの見えない登園渋りに毎日付き合うのは本当に大変なことと思いますが、子どものペースを尊重し、温かく見守っていけるといいですね。

 

2.「ママと離れたくない」と言われたら休ませる?休ませない?

子どもから「ママと離れたくないから幼稚園には行かない」と言われると、どのように対応するか迷いますよね。大切なのは、大人の都合で振り回すのではなく、ルールを決めることです。

例えば、「水曜日はお休みしてもOK」「1日休んだら1日登園する」などがあります。登園を嫌がるたびにママやパパの対応が異なると、子どもは混乱して、余計に不安定になります。

家庭の事情等でルールから外れる場合は、その理由もきちんとお子さんに伝えましょう。

 

2-1.まずは子どもの気持ちを受け止める

まずは、お子さんの気持ちを聞きましょう。

「ママと離れたくないんだね」「○○が心配なんだね」など、お子さんの言葉を繰り返すだけでも、分かってもらえているという安心に繋がります。

園に行きたくない理由を聞きたくなってしまいますが、幼児期はまだ自分の気持ちを言葉で伝えるのが難しい場合もあります。お子さんから話さない場合は、無理に聞き出そうとせずに見守りましょう。

 

2-2.休ませる場合

子どもがどうしても行きたがらない場合、ママの気持ちや時間に余裕があれば、休ませても構いません。

休ませると決めたら、お子さんと一緒に「次に登園できる日」を約束しましょう。何日もお休みが続くと、園の生活リズムに慣れることができず、登園渋りが長引くこともあります。

「明日は幼稚園に行くと約束できる?それなら今日はお休みしてもいいよ」と伝えてから休ませることで、お子さんも「明日は頑張ろう!」と気持ちの切り替えがしやすくなりますよ。

幼稚園をお休みした日は、子どもの話をよく聞いたり、一緒に遊んだりして過ごします。ママの安心感が伝わることで、子どもの不安定な心も落ち着いていきます。

 

2-3.休ませない場合

仕事や外出の予定などで幼稚園をお休みできない場合は、ママも気持ちを切り替えて、笑顔でお子さんを見送りましょう。

まずは「今日は幼稚園に行きたくないんだね」と子どもの気持ちを受け止め、「ママも〇〇ちゃんと一緒に過ごしたいけど、今日はどうしても大事なお仕事があるんだ。帰ってきたらいっぱい遊ぼうね!」など休めない理由や降園後の楽しみを伝えて、子どもの気持ちが切り替わるようにサポートしましょう。

頑張って登園した日は、帰ってきてからゆっくり話を聞きましょう。ハグをする、膝に乗せるなどのスキンシップを取りながら話を聞くのもおすすめです。

少しの時間でもいいので、なるべく子どもと1対1で時間を取るようにしてください。

 

3.子どもが安心して登園するための工夫

「ママと離れたくない」と泣く子どもの姿を見ていると、「泣かずに行けるようになってほしい」という気持ちになりますよね。

ここでは、お子さんが安心して園での生活を送るためにママやパパができるサポートをご紹介します。

 

3-1.先生と連携する

子どもが安心して幼稚園で過ごすためには、先生と安心感や信頼感を築くことが大切です。子どもが園を嫌がる理由があれば、そのことを先生にも伝え、無理をさせないようにお願いするなど、家庭と園での連携を強化しましょう。

園での子どもの様子について担任の先生に尋ねるのもおすすめです。「先生の迷惑になるかも」と心配する必要はありません。

他のお子さんやママがいる前だと相談しにくい方は、電話や連絡帳を活用しましょう。こまめに連絡を取り合うことで、子どもの様子や個性が先生にもよく伝わり、先生と子どもの信頼関係を深めることにもつながりますよ。

 

3-2.別れ際は笑顔でさらっと送り出す

園に送り出すときにママが心配そうな顔をしていると、お子さんも不安になります。

また「すぐに迎えに行くから」「あと1回行ったらお休みだよ!」などの声かけは、「保育園・幼稚園=つまらない場所」というイメージをお子さんに植え付けます。「今日も楽しんできてね」と笑顔で言葉をかけるのがおすすめです。

いつまでもママの姿が見えていると、子どもも気持ちの切り替えに時間がかかります。園に着いたら先生にお任せして、さっとその場を去りましょう。

 

3-3.子どもが安心できるお守りを作る

おもちゃやふわふわのタオルなどで気持ちが落ち着く子どもは多いです。しかし、おもちゃなどを持ってくることは禁止している園が多いですよね。

その場合は、髪ゴムやお気に入りの洋服などもお守りがわりとしてつかうことができます。ばんそうこうに絵を描いて、指など見えやすいところに貼ってあげるのもおすすめです。

 

4.子どもの癇癪とうまく付き合うコツ

お悩み相談には、「自分のやりたいようにできないと癇癪を起こすようになり、うまく対応できずに困っている」とも書かれていました。ここでは、癇癪を起こしたときの対応方法についてご紹介します。

 

4-1.子どもの気持ちを代弁する

幼児期の子どもはまだまだ身体機能が未発達です。ママやパパがやっていることを真似したいけれど、うまくできずに癇癪を起こすこともあるでしょう。

また自分の感情をうまく言葉にできずに癇癪を起こすこともあります。その場合は、「〇〇がしたかったんだね。うまくできなくて悔しいね」などお子さんの気持ちを代弁しましょう。

ママがイライラしてしまって、うまく代弁できないときは、お子さんの言葉をそのまま繰り返しましょう。

「イヤ」という子には「イヤだったんだね」と声をかけるだけで、子どもは「ママに理解してもらえている」と感じ、落ち着くことができます。

少し落ち着いたら、背中をさすったり手を握ってあげるなどのスキンシップもおすすめです。

 

4-2.タイムアウト法を利用する

子どもがママの注意を聞かないとき、周りの人や自分が怪我をしそうなとき、物を壊しそうなときには、タイムアウト法がおすすめです。

タイムアウト法とは、アメリカでよく行われているしつけの方法で、子どもが癇癪などの望ましくない行動を起こした際に、周りに物が少ない場所に移動させて、子どもが落ち着くまで待つことを意味します。

子どもの癇癪が手をつけられなくなったら、「嫌なんだね、わかったよ。少しここで落ち着こうか」と伝え、別の場所に連れていきます。

タイムアウト法は、子どもの気持ちをクールダウンさせることが目的であり、「罰を与えること」とは異なります。押入れやお風呂など誰もいない暗い場所をタイムアウトに利用するのは絶対に避けましょう。

 

4-3.ママのイライラが止まらないときは?

癇癪自体は、子どもにとって自己表現の一つなので、決して悪いものではありません。

しかし毎日のように大声で泣き叫んだり、物や人に当たったりされると、ママ自身の心の余裕がなくなる場合もありますよね。

その場合は、子どもの安全を確保しながら、ママ自身もトイレなどの個室へ移動して、気持ちが落ち着くまで待つのも有効です。

パパや周りの大人にも頼りながら、お子さんだけではなく、ママご自身のことも大切にしてくださいね。

 

5.「ママと離れたくない=ママ大好き」の証!

お子さんが毎朝涙を流して「ママと離れたくない」というのは、ママが大好きな証でもあります。

登園渋りをするお子さんをそばで見ていると、心配で落ち着かない気持ちになりますよね。ときには、ママの心が疲れてお子さんとうまく向き合えないこともあるかもしれません。

しかしどんな子でも、成長とともに少しずつ親元を離れていきます。ママが毎日お子さんに向き合おうと頑張っていることは、子どもにもきちんと伝わっていますので、自分を責めすぎないでくださいね。

「ママと離れたくない」と涙が出るのも今だけのことと捉えて、おおらかに見守っていけるといいですね。

 

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参考文献
※1:『分離不安および人見知り』,MSDマニュアル家庭版
※2:天野菜穂子,宮本正一,『三歳児の幼稚園入園時の分離不安

 

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