強い意志で未来を切り拓く!子どもの自制心を鍛えるコツを保育士が紹介
この記事を書いた人
宮先惟之
- 保育士
保育所や子ども園にて15年間勤務。
主に、3〜5歳児のクラス担任や障がい加配保育士をしてきました。
2児の父でもあり、子育ての大変さや楽しさを感じながら、日々子どものやる気を引き出す環境作りや言葉のかけ方を工夫しています。
子どもの様子を見ていて「気持ちの切り替えが上手になってほしい」「我慢ってどうしたらできるようになるんだろう?」と思うことはありませんか?
わがままな様子を見ていると「このままで大丈夫?」と心配になりますよね。
子どもが、自分の感情や欲求に負けずに気持ちをコントロールするには、自制心を鍛えることが重要です。自制心を鍛えると様々な分野で効果を発揮し、子どもの可能性が大きく広がりますよ!
本記事では、現役の保育士である筆者が、これまで保育現場で関わってきた子どもの姿や自身の子育ての経験を踏まえて、子どもの自制心を育てる方法をご紹介します。
目次
1.「自制心」って何?
はじめに、自制心についてお話しします。
1-1.「自制心」とは
自分の感情や欲望をおさえようとする心です。(参考:広辞苑)
セルフコントロール力と言われることもありますね。
1-2.「忍耐力」との違い
自制心と混同されやすい言葉に忍耐力がありますが、忍耐力は、粘り強くがんばれる力のことであり、自制心は自分自身をコントロールする力です。
どちらも、学校や社会で成功するためには欠かせない非認知能力「=知的な能力とは違い、感情や社会性に関するスキルや特性」として、子どもに育んでほしい力ですね。
1-3.「自制心」を鍛えるのは4歳頃から
発達心理学者であるエリクソンが提唱している発達段階・発達課題では、4〜5歳になると自分の周りにある外の世界に興味や関心を持ち、なぜこうなっているのかといった探索をはじめるとあります。
エリクソンについて気になる方はこちらの記事をご覧ください。
・子どもの「自分らしさ」を伸ばす!エリクソンの発達段階と発達課題とは?
子どもは、理由を理解できるようになると、自分の気持ちに折り合いをつけられるようになってきますね。
例えば、4〜5歳の子どもが、登園するための準備をするときはどうでしょう?
それまでしていた遊びをやめて、準備を始めますよね。
親の「準備しましょう!」といった声を聞いて動いているでしょうが、気持ちを切り替えて行動できるのは、頭の中になぜ用意をするのかが分かっているからです。
このことから、4歳児頃から自分をコントロールする力「セルフコントロール力」がつくことが分かりますね。
2.こんな効果が?子どもの自制心を鍛えるメリット3選
では、自制心を鍛えるとなぜいいのか?具体的なメリットを見ていきましょう!
2-1.良好な人間関係が築ける
自制心が鍛えられると、衝動的な行動が少なくなります。
例えば、遊びたいおもちゃを友達が先に使っていた場合、使いたい気持ちを抑えて待つことができますよ。落ち着いて過ごせると、周りの友達とのコミュニケーションが円滑になり、結果として信頼関係が築けますね。
また、大きくなったときに自分の欲望や感情をコントロールできると、自分自身の価値観にあった人と付き合うことができるでしょう。
自制心が育っていないと、誘惑に負けて、危険な人と交友を持つことに発展しかねません。
友達と遊ぶ様子を見守りながら、小さい頃から自制心を育んでいきましょう。
2-2.学習に集中できる
自制心が育っている子どもは、学習の面で高い集中力を発揮します。
授業だと、他のことに気をとられずに取り組めますし、計画したことも最後までやり遂げられるので、学びが深まるでしょう。
反対に、自制心が育っていないと気が散りやすく、やるべきことをついつい後回しにするため、学習に支障がでることもあります。
保育の現場だからこそ知る話ですが、幼児期に、絵を描いたり製作するときに落ち着いて活動していた子どもは、小学校でも学習意欲が高い傾向にある反面、気が散りやすく席を立っていた子どもの数名は、小学校に行っても落ち着かない様子で学習の面で困っていると聞くことがありますよ。
集中して取り組む子はアイデアが浮かんだり想像力が膨らんだりするため、充実した学習のうえで、幅広い学びを得ることもあるでしょう。
2-3.ストレスを軽減でき、健康に過ごせる
ストレスのコントロールって、大人でも難しいですよね。
人によってストレスを感じた時の対処法はそれぞれでしょうが、自制心が鍛えられていると、解決策を考えたうえで適切な方法でストレスを解消できます。
反対に、自制心が育っていないとストレスから不安になりやすく、情緒がいつまでも安定しません。チョコレートやポテトチップスなどを食べ過ぎたり、体が成長したときにアルコールやタバコを過剰に摂取したりといった無理な方法でストレスを発散することもあるでしょう。
我が子が健康を維持できるように、今、子どもの内面のケアをしておきましょう。
3.おすすめ!子どもの自制心を鍛えるコツ5選
では、いよいよ実際に子どもの自制心を鍛える関わり方について5つ紹介します。
簡単に実践できるものもありますので、お子さまとの関わりを楽しみながら実践してみてください。
3-1.子どもの感情を言葉にして、共感しよう!
感情を言葉にして気持ちを共有することで、子どもは自分の感情をコントロールする方法を学び、自制心を鍛えられるでしょう。
兵庫教育大学らの共同研究報告書「子どもの感情制御の発達をうながす適切な支援とその効果」によると
強いストレスを感じている子どもが感情を認めて共感してもらうことが、感情制御の発達をうながす。
ともあります。
保育の現場では、嫌なことがあって子ども同士でトラブルになったときには、まずそれぞれの思いを受け止めることから始めます。
子どもたちは自分の気持ちを理解してくれると安心でき、気持ちを切り替えられますよ。
子どもの感情に心を寄せることは大切ですね。
3-2.ルールのある遊びを楽しもう!
遊びの中でも自制心を鍛えられます。
特に、カードゲームや鬼ごっこなど複数人で行うものがおすすめですよ。
順番を待ったり、自分の思うような展開にならなかったときに感情を切り替えたりする経験が子どものセルフコントロール力を育みます。
よく、遊びの途中で負けそうになると、「もうやらない!」と投げ出す子どもはいませんか?
筆者の子どもはまさにそうでしたが、途中で抜けたら遊んでいる人が困ることを伝えたり、最後まで遊びのルールを守ることを初めに約束したりしました。
すると、繰り返し遊びを経験するうちに、少しずつ我慢ができるようになりましたよ。
子どもが自分の気持ちと闘っている様子は、何とも言えない可愛らしさがありました。
3-3.公共のマナーを知り、守ろう!
家の中の自分から一歩外にでると、社会の中の自分に変わります。社会に出てその場所のルールやマナーを知ることは子どもにとって学びとなる良い機会ですよ。
家と雰囲気が大きく変わることで、子どもなりに緊張もしますし、多少周りの目も意識するでしょう。
電車にのる機会があれば、「電車の中ではどう過ごす?」、遊園地や公園で遊ぶときには「遊びたいものに人が並んでいたらどうする?」など、その都度ルールや適切な行動を伝えて守ることで、子どもの自制心は鍛えられます。
可能であれば、事前に見通しがもてるような言葉かけをしてみましょう。子どもの理解がスムーズにすすみますよ。
例えば、電車に乗る前だと、駅のホームで「今から電車に乗るけど、電車の中は静かにしようね。いろいろな人が気持ちよく乗れるためのお約束ね」と分かりやすく伝えると良いでしょう。
マナーを守る理由が分かると、子どもは自分のふるまいや気持ちをコントロールしやすくなります。
3-4.親が見本になろう!
子どもにとって、1番の見本は親です。
私たちが思っている以上に、子どもはよく親を見ており、真似もしますね。
そこで、あえて子ども達の前で私たちのセルフコントロール力を発揮しましょう。
言葉を足して実践すると、効果的です。
例えば、夕食後に子どもと一緒にテレビを見ているところで、「まだゆっくりテレビをみていたいけど、いつまでもこうしていたらダメだね。よし、片付けを始めよう!」とつぶやいて行動を開始するとどうでしょう?
筆者の子どもの場合、口調まで真似しますが、朝の登園準備をする際などで気持ちを切り替えて行動する姿が見られます。
3-5.規則正しい生活をおくろう!
予期せぬことが起こったり誘惑があったときに、そもそも自分の気持ちが落ち着いていなかったらどうでしょう?適切な対応ができるでしょうか。
睡眠が足りておらず、体調が良くなければ感情をコントロールするのは難しくなりますよね。
子どもも大人も規則正しい生活は、情緒や健康状態を安定させます。
まずは、安定した環境を用意することで、子どもたちが自制心を育みやすい土台を作りましょう。
規則正しい生活は、意外に見落としがちなポイントでもあるので、振り返ってみてくださいね。
4.要注意!子どもの自制心が育まれない親のNGな関わり方
次に、自制心を育むうえで避けるべき行動についてお伝えします。
4-1.大きな声で叱る
大声で叱る行為は、子どもが言うことを聞くのでついついしてしまいがちですが、長期的な目線でいうと適切な方法ではありません。
大声は、子どもに怒りや不安、恐怖などの感情を与えるため、自分の感情をコントロールすることが難しくなります。
また、親からの愛情を受けられないと感じると、自分に自信が持てなくなることもありますよ。子どもにきちんと叱りたい場合でも、穏やかなトーンで何が良くなかったかを明確に伝えるようにしましょう。
そのときに、子どもの感情を認め、共感することも忘れないでくださいね。
4-2.指示を出しすぎる
子どもと日々関わっていると、「あれして、これして」や「だから○○って言ったでしょう」と子どもの行動に口を出してしまいますよね。
ところが、感情のコントロールを必要とする場面に子どもが直面した際、親が先回りして指示を出しすぎるとどうでしょう。
子どもが自分で気持ちに折り合いをつける時間を、奪ってしまいますよね。
子どもから「今しようと思ったのに!」と言われたことはありませんか?
子どもに「○○しようね。」と声をかけた後に、様子を見守るのも大事です。
あるとき、筆者の子どもは「あと少し遊んだら、歯磨きする!」と話したので、私は聞き入れて子どもを見ていました。少し時間はかかりましたが、そのあと自分で気持ちを切り替えて行動する姿が見られましたよ。
1つ1つ経験を積み重ねることで、自制心は育まれていきます。
5.自制心を鍛えて輝かしい将来を!
自制心を鍛えると、様々な分野で効果を発揮することが分かりました。何をするのも、心の持ちようは大切ですね。
良好な人間関係からステキな出来事が起こることもあれば、深い学びから自分が生涯かけて取り組みたいテーマに出会えることもあるかもしれません。
子ども達の可能性は無限に広がっています。
私たちは、子どもたちが輝かしい将来を手にするお手伝いとして、子どもに寄り添いながら自制心を育んでいきましょう!
主な参考文献
・兵庫教育大学と大学院同窓会員との共同研究 : 研究成果報告書「子どもの感情制御の発達をうながす適切な支援とその効果」
・米国科学アカデミー(National Academy of Sciences)「A gradient of childhood self-control predicts health, wealth, and public safety」
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