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「自分で決められない」を解決!子どもの自発性を育てる方法を現役保育士が解説

この記事を書いた人

宮先惟之 宮先惟之

宮先惟之

  • 保育士

保育所や子ども園にて15年間勤務。

主に、3〜5歳児のクラス担任や障がい加配保育士をしてきました。

2児の父でもあり、子育ての大変さや楽しさを感じながら、日々子どものやる気を引き出す環境作りや言葉のかけ方を工夫しています。

「なんでもいい」、「お母さん、お父さんが決めて」と自分で考えようとしない子どもに、困ったことはありませんか?
自分で決められず、親を頼るばかりだと「このままで大丈夫?」と心配になりますよね。

子どもが自分で考えて行動するためには、幼児期に自発力を身につけることが重要です。

本記事では、現役の保育士である筆者が、これまで保育現場で関わってきた子どもの姿や自身の子育ての経験を踏まえて、子どもの自発性を育てる方法をご紹介します。

 

目次

1.「自発性」って何?

はじめに、自発性についてお話します。

 

1-1.「自発性」とは

自発性とは、他からの影響・強制などではなく、自己の内部の原因によって行われること。(参考:デジタル大辞泉)
つまり、子どもが自分で考えて行動、問題解決ができるには自発性が大切ということです。

 

1-2.「自主性」「自律性」との違い

自発性と近い意味の言葉に、自主性と自律性があります。

自主性は、やるべきことを人に言われる前にすすんで行うことで、行動する内容が決まっている、というところが自発性との違いです。また、自律性は、自分自身で立てたルールに従って行動できることですね。

これら3つは混同しやすい言葉ですが、子どもが自分で考えて行動、問題解決ができるには「自発性」が大切といったことがわかりました。

 

1-3.「自律性」が育まれると「自発性」へ

子どもに、ぜひ育んでもらいたい自発性ですが、どうすればいいのでしょう。

エリクソンが提唱している発達段階・発達課題では、3~6歳で自発性が生まれるとありますが、その前段階(1~3歳)で自律性が育まれると自発性へとつながるとあります。

自律性は、「自分でやってみたい」、「思い通りにしたい」と行動し、「自分でできた」という感覚が持てると育まれるものです。

ということは、おうちの人のできるまで待ってあげる忍耐力と、程よい加減の手助けが重要ということですね。
さあ、自分で行動する意識がついたら、いよいよ自発性を育んでいきましょう。

 

 

2.自発性があると、メリットがいっぱい

まず、自発性があると、なぜいいのか?得られるメリットをお伝えします。

 

2-1.学習を深められる

筑波大学教授、櫻井茂男の研究データ「幼児期および児童期における学習意欲の形成—親の関わりを中心に—」によると、

『自ら学ぶ意欲は、学習行動を起こし、安心して学べる環境によって学習行動が成功に終わると、結果として「おもしろい・楽しい」といった感情、充実感が発生する。また、学習が上手くいかなくても、欲求にフィードバックされ、意欲が修正されて新たな学習行動が展開される』

とあります。

学習の結果に限らず、子どもの学ぶ姿勢が、続くことは嬉しいですね。

自分で考える習慣がついていると、日常の生活で気づきがあったときや学校で学んだときに、さらに知識を増やすことができますよ。

「なぜ?知りたい!」と思うと調べたり聞いたりするので、自然と学びは深まります。

 

2-2.困ったときも、自分で解決しようと行動できる

自発性が育つと、困難に直面しても自分なりの方法で解決しようと行動できるでしょう。
反対に、自発性がないと誰かの指示を待ったり、人に頼ったりするので、その場しのぎになりがちです。

困難と聞くと大げさですが、保育の現場では、ちょっとしたことでも子どもの行動に大きな違いがあります。

例えば、給食のときに必要なスプーンを忘れた場合だと、行動できる子どもはスプーンを貸してほしい思いを保育士に伝えたり、箸を使って食べたりする姿が見られますが、スプーンを使って食べるメニューを前にただ無言で保育士を見つめる子どももいます。

困ったときに、自分で解決できると自信になり、経験を重ねる中で自立していくでしょう。

 

2-3.好きなこと、得意が見つかる

自発性が育っている子どもは、いろいろなことにチャレンジするでしょう。

保育の現場では、自発的な子どもは、やったことのないおもちゃや遊びでも進んで取り組みますよ。
おもしろいと感じたら遊び込みますし、そうでなければ程々に遊び、別の遊びに移ります。

たくさんの経験を通じて、好きなことや得意が見つかると、将来のやってみたい仕事や趣味につながったりするでしょう。
子どもの人生が、充実するのは嬉しいですね。

 

3.おすすめ!子どもの自発性を育てるコツ5選

では、実際に子どもの自発性を育てる関わり方について5つ紹介します。
簡単に実践できるものもありますので、お子さまとの関わりを楽しみながら実践してみてください。

 

3-1.子どもが決める機会を作ろう!

もし、「どれくらいおやつ食べていい?」と子どもが尋ねてきたらどのように返事をしますか?
「チョコ2個ね!」などと、いつも具体的な数やものまで親が決めていないでしょうか?
状況にもよりますが、大事なことは子どもが自分で考えて決める経験をすることです。

これは、意外と簡単に機会を作ることができます。
子どもが尋ねてきた時の返事を工夫してみましょう。
尋ねてきたことに対して、「あなたはどう思う?」と聞き返すことで、子どもは自分の意見を持ち始めます。親が助言してもいいですね。

おやつの例でいいますと、「虫歯にならないくらいの数がいいね。」などと伝えると子どもは考えやすくなりますよ。

 

3-2.自発的な姿を褒めよう!

子どもにとって褒められる経験は嬉しいだけでなく、行動にも影響が現れます。

高知工科大学がおこなった調査「褒めることによる人々の行動の影響」では、「ほめ言葉」だけでも人々のパフォーマンスが上がるという結果が報告されていますよ。

保育現場でも、お絵かきや製作物を褒めると、翌日も意欲的に取り組む姿勢が見られます。

様子を見ていると、昨日とは違った方法や発想で描いたり作ったりする様子から、自発性が育まれていることを感じました。

 

3-3.選べる環境を用意しよう!

物事を選ぶことでも、子どもの自発性は育ちます。

子どもによっては、「どうする?」「何がいい?」のHowやWhatの質問が難しい場合がありますのでそんな場合は、「どちらにする?」のWhichで尋ねましょう。
選ぶことも、決める経験の1つです。

お絵描きのときには、ペンやクレヨン、色鉛筆など、描けるものをあえて複数用意したり、おやつを食べるときには、4つのおやつから2つ選ぶようにしたりと遊びや生活の場面でさりげなく選ぶ環境は作れますよ。

子どもが選ぶときに迷っていても、優しく待ってあげてくださいね。

 

3-4.自発性がある親の行動を子どもに見せよう!

子は親に似ると言いますが、なぜでしょう。 言い方や話し方が、自分と似ていて驚いたことはありませんか?
子どもは、親の姿を見て真似をしますよね。

では、私たちが自発的な行動を子どもの前で行うとどうでしょう?
子ども達の自発性が育つきっかけになりますね。

思ったことを、あえて口に出して行動すると効果的です。
「いいこと思いついた!○○してみよう」と話すと、子どもも同じように自分で考えて行動しますよ。

 

3-5.絵本やお話を通して、考えを尋ねよう!

想像の中で、子どもに考える力をつけていく方法です。

おうちで絵本を読み聞かせることはありますか?
読んだ後に「あなたなら、そんなときどうする?」と尋ねてみると、いろいろな考えを引き出すことができますよ。

例えば、大きなかぶを一緒に見たとしたら「あんな大きなかぶがあったらどうやってとる?」と聞いてみてください。
もしかしたら、「スコップで、かぶの周りに穴を掘る」といった発想がでるかもしれません。
ここで大切なのは、自分なりに考えてアイデアを出す経験です。

子どもの考えを認めると、自信になり、実際の生活でも自分で考えて行動する力がつくでしょう。

絵本に限らず、テレビや聞いた話を「自分だったらどうする?」と尋ねるのでも構いませんが、絵本は子どもにとって想像しやすいので、おすすめです。

 

4.要注意!自発性が育たない関わり方3選

次に、自発性を育てるうえで避けるべき行動についてお伝えします。

 

4-1.命令口調で指示をする

「○○しなさい!」と子どもに言うことが良くないのはなぜでしょう?
それは、子どもの考える機会やどうするか決める機会を奪っているからです。

選択できるよう提案する場合も、するかしないかは子ども自身が決められるよう、余白のある聞き方をしましょう。

命令口調は強い言葉に聞こえることから、物事を強要するような関わり・脅迫的な言葉がけ(不適切保育)になるので、保育現場では気をつけています。
時間や気持ちに余裕がないときもあるでしょうが、それでも命令口調は控えましょう。

急いで準備してほしい場合だと、「準備は、いつから始める?」「用意しないと間に合わないけど、どうする?」と、尋ねるように、子どものやる気を引き出せれば、自発性につながっていきますよ。

 

4-2.子どもの行動に過度に口をはさむ

我が子の行動を見ていて、ついついあれこれと指摘することはありませんか?

不器用な仕草が気になったり、無駄な動きが多いと感じたりすることはありますが、言われる子どもからするとどうでしょう。
何度も言われると、やる気をなくし、チャレンジしたり思いついたことをやってみたりするのが嫌になってしまいます。

優しく見守りながら、端的に言葉をかけるよう心掛けたいですね。

 

4-3.「○○に決まっている」と話す

子どもが「~~したらどうなるかな?」と尋ねてきたときはどう答えていますか?

「○○に決まっている」と「どうなるかな?やってみたら!」だと、どちらが子どもの自発性を育めるでしょう?
前者は、子どもの疑問には答えていますが、子どもが自分で体験することはできません。
後者だと、子どもは考えたことを自分なりのやり方で試してみるでしょうし、何か別の気づきや発見があるかもしれませんよ。

試行錯誤する面白さを感じることで、別の機会でも自発性を発揮することだってありますので、決めつける言い方には気をつけましょう。

 

5.子どもの考えを引き出し、自発性を育もう!


自発性を育むには、自分で考えて行動できる機会を作ることが大切です。

子どもと会話する時に、「まだ子どもだしね」と見下げていると、知らず知らずのうちに自発性が育たない関わり方になるので、気をつけましょう。

子どもとはいえ、1人の人間として尊重する姿勢が大事です。
お子さまの成長を楽しみながら、温かく見守っていきたいですね。

 

こんなお悩みはありませんか?

・発達がゆっくり…?
・〇歳でこれくらい出来ていて普通なの?
・調べてもよくわからない

 

主な参考文献
・櫻井茂男「幼児期および児童期における学習意欲の形成—親の関わりを中心に—
・高知工科大学マネジメント学部「褒めることによる人々の行動の影響
・株式会社キャンサースキャン「不適切な保育に関する対応について

 

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