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運動神経を伸ばす「お家遊び」5選!〜誰でも伸びる運動発育の黄金期とは?~

この記事を書いた人

宮先惟之 宮先惟之

宮先惟之

  • 保育士

保育所や子ども園にて15年間勤務。

主に、3〜5歳児のクラス担任や障がい加配保育士をしてきました。

2児の父でもあり、子育ての大変さや楽しさを感じながら、日々子どものやる気を引き出す環境作りや言葉のかけ方を工夫しています。

「子どもの運動神経が良くなる、身近な遊びはないか?」

「うちの子、運動が苦手かも・・・」

そう思ったことはありませんか?ママやパパ自身が、運動に苦手意識があるとなおさら不安になるかもしれません。

本記事では、現役の保育士である筆者が、運動神経を伸ばす「お家遊び5選」をご紹介します。

どれも実際に子どもと遊んで効果を感じた遊びです。

身近にある物を使って実践でき、親子で楽しい時間を過ごせるので、ぜひ試してみてください。

子どもへの接し方のコツもお伝えするので、お子さまの成長の後押しに役立ててもらえたらうれしいです。

 

目次

1.運動神経ってなんだろう?

「運動神経」って本当にあるの?と疑問に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

まずは、「運動神経」とは、一体何なのかについてお話します。

 

1-1.運動神経って存在する?

身体には、血管やリンパ官と同じように「神経」といわれる器官が身体中に張り巡らされています。

この神経によって、私たちは外からの刺激を情報として受け取り、状況に合わせて身体を動かすことができます。

例えば、風が吹いてきたときに「風が吹いた」ことを感じたり、「ちょっと寒いな」と思い腕を伸ばして上着を着るといった動きができるのも、情報が神経を通って脳や筋肉に届いてはたらくためです。

神経には、大きく2つの種類があります。

「脳」と「脊髄」から成る「中枢神経」。中枢神経と身体の全体をつないでいる「末梢神経」です。

末梢神経は、さらに「体性神経」と「自律神経」に分けられます。

さらに、体性神経は、触覚、痛覚、温度覚などの皮膚感覚につながる「感覚神経」と、脳に命令して身体を動かすための骨格筋にはたらきかける神経の「運動神経」に分けられます。

この筋肉にはたらく神経が、「運動神経」と呼ばれるものです。

 

運動神経は、ダンスなどの身体を使った動き、ボールやバットなどものを操作する動きなどの身体を使った技術の習得身体をコントロールする器用さに関わっています。

 

1-2.親の運動神経は子どもに影響する?

先に述べましたが、運動神経は情報を伝達する器官ですから、「運動神経がない」ということはなく誰にでも存在するものです。

また、神経は使うほど活性化され、情報伝達を効率よくスムーズにする特徴をもっています。

そのため、「運動神経」の良さは、どれだけ身体を動かしているかという環境要因が大きく影響していると考えられています。

一方で運動能力には遺伝要因があることも分かっています。

運動能力(身体能力)」とは、運動神経とは異なり、筋力や瞬発力、持久力などを生み出す身体の個体差が関係します。

身体の個体差とは?

・背の高さによる肺活量の違い

・骨格による背の高さ

・筋肉を形成するタンパク質の違い

・血液中の物質濃度の違い など

 

これまでの運動能力の研究から、生まれながらに運動能力が高い遺伝子を持った人が存在することは確かです。

しかし、先にも述べましたが、身体をコントロールする力や器用さとなる「運動神経」は、環境要因が大きく影響しています。

 

2.運動と発育~運動神経がグンっと伸びる黄金期とは?~

ここでは、運動神経を効果的に高められる時期について「スキャモンの発育曲線」と「ゴールデンエイジ」についてみていきましょう。

その後に、改めて運動の大切さやメリットについてお話しします。

 

2-1.4歳からは運動神経を高める黄金期!

誕生から成人までの20年間の身体の発育を曲線で表した「スキャモンの発育曲線」から、運動神経を高める適切な時期を見てみましょう。

運動神経は、その名の通り「神経型」に分類されます。

神経型は、身体コントロールの器用さの発育です。誕生から4~5歳頃までに急速に発育し成人の約80%の値まで成熟します。その後も発達は継続し、12~13歳頃で成人と等しくなります。

運動神経の発達段階で、身体をたくさん動かす経験をすると、神経が活性化され、たくさんの神経ネットワークが形成されます。

これが、身体をコントロールする力の基盤になると考えられています。

 

※発育量とは?

発育量とは、誕生(0歳)~成熟期(20歳)までの体の発育を割合で表したものです。成熟期を当着点として100%としています。

 

2-3.年齢で見る「ゴールデンエイジ」区分

スキャモンの発育曲線では、運動神経を高めるのに効率的な時期を「ゴールデンエイジ」と呼んでいます。

現在では、ゴールデンエイジを以下のように区分しています。

「プレ・ゴールデンエイジ(3~8歳)」

神経系の発達が著しい時期。いろいろな動きを経験することで、基本的な運動動作を獲得する時期です。多様な動きを獲得することで、対応能力が身に付き、その後のスポーツの覚えや成長が良くなるといわれています。

「ゴールデンエイジ(9~12歳)」

プレ・ゴールデンエイジで獲得した基本的な動きを基にして、新しい動きを獲得し、スポーツに活かすことができます。ここで覚えた身体の動きは生涯忘れないといわれています。

「ポスト・ゴールデンエイジ(13~15歳)」

体格や身長が大きく成長します。筋力や心肺機能が成長して、持久力や力強さが高まります。また、動きの理解力が発達する頃で、効果的なトレーニングや競技への理解を深めていきます。

(田中,2018,幼児期児童期における運動あそび指導の検討を参考に一部変更して記載)

 

プレ・ゴールデンエイジ」で、基本的な運動動作を体験していないと、ゴールデンエイジで新しい動きを習得しずらいといわれています。

そのため、幼児期から児童期の運動あそびの体験は、とても重要です。日常生活の中で運動する機会をたくさん取り入れられると良いですね。

 

2-4.運動のメリット「心と体の健康」

運動は、健康で豊かな日々を過ごすために誰もが必要なことです。

また、近年では子どもの肥満や高血圧など生活習慣病の増加が問題視されていますが、生活習慣病の予防にも運動は不可欠です。

運動に苦手意識をもってしまうと、身体を動かすことに抵抗を覚えてしまい、後に運動嫌いになってしまうこともあります。

幼児期から、早めに身体を動かす習慣を身に着けることが大切です。

文部科学省が発表している、幼児期運動指針でも以下のように幼児期の運動の大切さに注目しています。

“幼児期は、神経機能の発達が著しく、タイミングよく動いたり、力の加減をコントロールしたりするなどの運動を調整する能力が顕著に向上する時期である。この能力は、新しい動きを身に付けるときに重要な働きをする能力であるとともに、周りの状況の的確な判断や予測に基づいて行動する能力を含んでおり、けがや事故を防止することにもつながる。”
引用:幼児期運動指針

 

運動はストレス解消メンタルヘルスの改善にも良い効果があるといわれており、子どもたちの健全な心の育成にも役立ちます。

 

3.運動神経を伸ばすポイント

運動ができるできないではなく、身体を動かすことを楽しいと思えることが大切です。

運動が苦手なお子さんには、まずは、身体を使った運動遊びで「楽しい」気持ちをたくさん経験させてあげましょう。

運動と聞くと、水泳やサッカーなどのスポーツのことを連想してしまいがちですが、「遊び」も十分な運動体験になります。

それでは、どんな遊びが運動体験に効果的なのでしょうか?

ここでは、子どもたちの運動神経を伸ばす運動遊びのポイントに加えて、コーディネーショントレーニングについてお話しします。

 

3-1.運動神経を伸ばすポイント①全身を使った動きの体験!

遊びといっても、ボール遊びをはじめ、たくさんの種類がありますが、子どもの運動神経を伸ばすことで重要なポイントは、全身をしっかり使った運動ができるかを注目してください。

手だけを動かすものではなく、腕や膝を曲げたり、足をしっかり使った遊びが効果的です。

中でも、普段の生活でしないような体勢を遊びの中で取り入れられたら、とても良い遊びといえるでしょう。

 

3-2.運動神経を伸ばすポイント②わくわくする環境!

子どもが「やってみたい!」と自分から入っていく遊びとは何でしょう?

何も用意されていない場合と、楽しそうにおうちの人がいつもと違った環境を作っている場合では、どちらに興味を示すでしょうか。

保育の現場でも家庭でも、大人が何か準備をし始めると、「何やっているの?」と子どもたちが集まってきます。

準備している物が、自分たちと一緒に遊ぶものだとうれしくなり、すぐ遊びに繋がりますね。

 

3-3.「楽しい」を重視!遊びの延長にある運動

体を器用に動かすためには、全身を使った遊びをたくさん経験することが大切です。

様々な体勢で体を動かす体験を積み重ねることで、「このように動きたい」と頭でイメージした動きを自然と体で表現できるようになります。

遊びのなかに運動要素を取り入れることにより、子どもは「楽しい!」と感じるはず。

この「楽しい!」という気持ちがとても大切で、「好きこそものの上手なれ」という言葉の通り、”好き”や“楽しい”は成長を後押しするだけでなく、継続力にもつながります。

最近では「コーディネーショントレーニング」というものも注目されています。

さまざまな動きを繰り返すことで脳や神経に刺激を与え、体を思い通りに動かす力を身につけるトレーニングでのことで、特定のスポーツを始める前の基礎運動能力向上に適切な方法なのだそう。

スポーツ選手がジャンケンを取り入れて、楽しそうに練習をしている姿をテレビで見かけたことはありませんか?

実は、これもコーディネーショントレーニングの1つ。遊びの延長のような感覚で、運動スキルを養えるので体操教室やその他のスポーツ系の習い事などでも取り入れられています。

 

4.運動神経を良くする室内遊び5選

それではここで、楽しく運動神経が伸ばせる全身を使った「お家遊び」を紹介します。

気になる遊びは、ぜひおうちで試してみてくださいね。

 

◆ふうせんバレーボール

風船を使った遊びで、空間の把握をする力や状況に応じて体を動かす力が鍛えられています。

風船を追ったり、タッチしたりする中で、自然といろいろな体勢をとるので、運動神経の発達に効果的です。

[用意するもの]

風船、仕切りになるもの(薄いマットや椅子など)

[遊び方]

仕切りを挟んで向き合って立ち、自分のコートに風船が落ちないように、相手のコートに返す。

バレーなので、キャッチはせず、手に当てて遊ぶ。

ボールには、何度でも触れてよい。

相手のコートに5回先に落とした方が勝ち。

 

遊びのポイント

遊び始めはコートを作らず、落とさずに何回タッチできるかを数えて遊んでもOK。

レベルアップして、下敷きや段ボールをラケット代わりに、風船打ちに挑戦するのも◎

 

◆クモの巣くぐり

障害物に当たらないようにゴールを目指す遊びで、バランス感覚や体幹が鍛えられます。

高い所、低い所にスズランテープを結び、子供がまたいだり、かがんで通ったりできるようなコースができると、運動の効果が上がります。

(剝がしやすいマスキングテープを使用すれば、壁に貼ることも可能。)

[用意するもの]

カラーのスズランテープ、障害物になるもの(椅子、机など)

[遊び方]

まずは、スタートとゴールを決め、その間に障害物を置く。

その後、障害物同士にスズランテープを結び、通りにくくし、コースができたらゲームスタート。

何も当たらずにゴールできるかな?(当たったら最初から、もう一度チャレンジしよう!)

 

遊びのポイント

ゴールしたら、また当たらずにスタートまで戻ってみよう!

コースを変えてレベルアップすると、遊びが長続きします。

・「ぬいぐるみ救出任務」など、ストーリーをつけると、子どものやる気がアップします。

的あて遊び

投げる動作が経験できる貴重な遊びです。

[用意するもの]

手のひらサイズの軽いボール、的(段ボールなど)、ひも、場合によってはつっぱり棒

的は段ボールに穴をあけて、子ども達と絵を描いたり、色を塗ったりして作ります。

大きな穴や小さな穴と複数穴をあけたり、点数を書いたりしてみると、子供たちのやる気を引き出せるでしょう。

的ができたら段ボールにひもを通して、カーテンレールやつっぱり棒などに吊します。

[遊び方]

ボールをいろいろな所から段ボールの穴をあけた所をねらって投げる。

たくさん投げて、全部の穴にボールを入れてみよう!

 

遊びのポイント

始めは、近いところから始めてみましょう。

的作りを子どもと一緒にするのもおすすめです!

◆ダンス

ダンスや歌が好きなお子さまにおすすめ。普段の生活では、とらない体の姿勢をとれるので、運動神経を伸ばすきっかけになります。

[用意するもの]

タブレットもしくは、ネットが繋がるテレビ

[遊び方]

子供と一緒にダンスを楽しもう!

 

遊びのポイント

YouTubeなどを見ながらやってみるのも◎

普段、お子さまが通っている園で踊っているものがおすすめです。

◆ひっくり返し遊び

準備がいらず、すぐにできでおすすめです。

体を支える背中や首の筋肉が鍛えられることにより、姿勢をしっかり維持する力がつくことに加え、いろいろな姿勢をとることから、運動神経も刺激することができる遊びです。

自然と親子でのスキンシップもとれるので、子どもとのコミュニケーションにもなります。

 

[遊び方]

場所は、カーペットやマット、布団の上など転がっても痛くない安全な所で行う。

まず、子供が床にうつ伏せになり、おうちの方が子どもをひっくり返す。

仰向けにすることができたら、大人の勝ち、うつ伏せのまま耐えられたら子供の勝ちです。

 

遊びのポイント

1分間耐えたら勝ちなど、制限時間を設けるとさらに盛り上がります

うつ伏せになる側を交換して、子どもにひっくり返してもらうのも◎。

 

5.もっと伸ばせる!子どもへの関わり方

紹介した遊びだけでも十分な運動効果は得られますが、おうちの人の関わり方により、更に子どもの成長を後押しすることができます。

3つのポイントを紹介しますので、参考にしてみてください。

 

5-1.子どもの声を聞く。

一緒に遊びながら、子どものつぶやきを聞いてみましょう。

上手くいったことを見てほしい気持ちがあったり、遊んでいて驚いたことや気付いたことを聞いてほしかったりと子どもは様々な思いを抱きます。

そんな時はぜひ、目を見て「そうだね!」と一声かけてあげてください。

大好きなママやパパが見てくれているとわかると、もっと遊びが楽しくなり体を使って遊ぶ時間が長くなります。

また、「次は、こんな風にしてみたい!」と遊びのアイデアが出てくるかもしれません。

子どもが自ら考えた意見を取り入れると、子供はさらに夢中になるはずです。

 

5-2.やりたいようにさせてみる。

遊ぶ様子を見る中で子どもの動きを見ていると、「こうやって動くんだよ!」と指導したくなったり、「何でそんなことするの?」とやきもきしたりする場面があるかもしれません。

しかし、子どもなりに考えがあって取り組んでいる場合もあります。

あれこれと言われることで、遊びの意欲が減ってしまうこともあるので、思い通りに動いてくれず違和感を感じても少し様子を見てみましょう

ぎこちないと感じていた子でも、自由に遊んでいく中で柔軟に体を動かせるようになるパターンもたくさんあります。

まずは、体を動かす楽しさを感じてもらうことが大切です。

 

5-3.たくさん褒める。

子どもたちは、褒められるのが大好きです。たくさん褒めてあげましょう。

遊びの中で上手くいった時やってみようとした時が効果的です。

例えば、風船を落とさずに返した時やボールが的に当たった時など、些細なことでも声を掛けてあげると子どもは自信になります。

前と比べて、上手くなったことも伝えてあげると喜ぶかもしれません。

うれしい気持ちになると、遊びが楽しくなり、ますます熱心に取り組むでしょう。

 

6.今この時間を楽しもう!

子どもの運動神経を伸ばすには、幼児期からの身体を使った遊びの経験が大切です。

親子時間をたくさん作れる未就学児のうちから、楽しい遊びを通してたくさん体を動かしてみてください。

子どもが大きくなるのは、あっという間ですが、おうちの人と一緒に遊んだ思い出はしっかり子どもの心に残ります。

お子さまとのふれ合いも楽しみながら、成長のきっかけにしてくださいね。

 

・非認知能力がどうして大事なの?効果は?

・情報を知ることがどうして大切なの?

こちらで詳しく解説中です!

 
 

主な参考文献
幼児期運動指針:幼児期運動指針策定委員会,文部科学省,平成24年3月
村上晴香,身体能力と遺伝(遺伝子多型),e-ヘルスネット,厚生労働省
田中一徳,幼児期児童期における運動あそび指導の検討~滝川市内幼稚園・保育所・小学校連携推進研修会の実践事例~,國學院大學北海道短期大学部紀要第35巻,2018
・運動と健康(’18):関根紀子(編著),鈴木宏哉(10章執筆者)10.運動と発育・発達,放送大学教材,2018

 

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