親子で楽しく読解力を伸ばそう!家庭でできる読解力の土台作り9選!
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mono
- 保育士
5学年差姉妹のママ。
元塾講師。在職中に保育士資格を取得しました。
佐々木正美先生の『子どもへのまなざし』シリーズが子育てのバイブルです。
自治体の子ども読書活動推進懇話会委員、学校の読み聞かせボランティアとしても活動しています!
「読解力の低下が問題と聞いたことがあるけれど、読解力がないとなぜ困るの?」
「子どもの読解力をのばしたいけれど、今はまだ早いのかな?」
「どんなことをしたら読解力を身につけられるの?」
読解力について、こんなお悩みや疑問をお持ちではありませんか?
今回は、読解力とはどんな力なのかを整理し、家庭で幼児期から小学校低学年のお子さんと一緒にできる読解力を伸ばす方法をご紹介します。 親子で楽しみながら、読解力の土台を作っていきましょう!
目次
1.読解力ってどんな力?なぜ読解力が必要なの?
OECD(経済協力開発機構)が3年おきに実施している「PISA」と呼ばれる国際的な学力到達度調査があります。
2018年実施のPISAでは、日本の“読解力”の成績が参加79カ国の中で15位という結果となり、過去最低順位であったことが話題になりました。
2003年のPISA調査において読解力分野の日本の順位が41カ国中14位という結果を受け、文部科学省では、2005年より「読解力向上プログラム」の導入を開始しましたが、さらに下回る結果となってしまったのです。
このように、日本の子どもたちの読解力低下が問題となっている理由はどこにあるのでしょうか。 そもそも読解力とはどんな力なのか、なぜ読解力が必要なのか、読解力を身につけるにはどうしたらよいのか考えてみましょう。
1-1.読解力ってどんな力?
PISA調査では、読解力について
“自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力”
引用:文部科学省・PISA調査における読解力の定義,特徴等
と定義しています。
つまり、文章に書かれていることを読んで理解することはもちろん、理解した情報を自分で噛み砕いてよく考え、的確に活用できることが「読解力」である、ということです。
「読解力」と聞くと、読書量が多い方が読解力向上につながると考える方も多いのではないでしょうか。
実際に、平成21年に文部科学省が発表した「読書活動と学力・学習状況調査の関係に関する調査研究」では、読書好きの子どもほど学力が高い傾向にあることがわかりました。
このように読書と学力には強い関係性があることがわかりますが、ただ読書量を増やすことが「読解力」につながるとも言いきれません。
文部科学省ではPISA調査の結果を受け、長年子どもの読書活動推進に取り組んでいます。 そのおかげか、全国学校図書館協議会が毎年行う調査によると、2004年以降の小中学生の読書量は増加傾向にあることがわかりました。
決して「子どもの本離れ」が進んでいるわけではないのですが、なぜか読解力の成績は低下し続けています。 このことからわかるのは、国際的に求められている「読解力」は、読書だけで伸ばせるわけではないということ。
PISAが定義するように、「読解力」の向上には文章を論理的に読み解き、なおかつ自分の持っている知識や考えを用いたアウトプットする力までが必要です。
また、読解力を構成する要素として、次の能力が大切であると考えられています。
①文字・ことば・文章の理解
②情報の読み取り
③創造力
④論理的思考
⑤情報の取捨選択
記事の後半では、この5つの能力に関連づけて、親子で楽しく取り組める「読解力を身につけるための方法」をご紹介します。
1-2.読解力不足で起こること
もし読解力が不足した場合、どんな困りごとが起こるのでしょうか?
教科学習において、読解力が必要なのは「国語」だと考える方が多いと思います。 確かに国語の読解問題を解くときには、問題文を読み解く力が必要ですよね。
しかし、読解力が必要な教科は国語だけではありません。 算数や数学など、理系教科においても読解力は必要不可欠です。
どの教科でも読解力が不足していると、教科書や副教材に書かれた内容を正しく理解し知識を身につけることが難しくなってしまいます。
近年、中学受験や大学受験でも「読解力」重視型問題の出題が多くなっています。
お題となる資料を読み解き、様々な教科の知識を駆使して解答するような教科横断型の問題も増えており、ますます読解力の必要性が高まっていると言えるでしょう。
読解力不足による困りごとは、学習についてだけではありません。
大人になってからも、物事の本質を正しく読み取り理解できないと、日常生活や仕事に支障が出たりコミュニケーションに問題をを抱えたりする可能性もあります。
1-3.読解力を鍛えることで得られるメリット
読解力を鍛えることで得られるメリットについても考えてみましょう。
読解力が身につくと、文章の内容を速く正確に、深く理解できるようになります。学習面では、教科書や副教材の内容を速やかに理解でき、知識の習得もスムーズになるでしょう。
学校の授業での理解度も深まり、テストでも問題文を読んですぐに理解できれば、その分答えを考える時間を長く取ることができます。
読解力があると有利なのは学習面だけではありません。 社会に出て仕事をするときも、読解力はとても重要です。
情報過多なデジタル社会において、読解力を駆使し必要な情報を取捨選択できることは、効率的な作業や質の高い情報を入手することにつながります。
また読解力がある人は、相手の伝えたいことを曲解せず正しく理解できるので、コミュニケーションにおけるトラブルを回避し、円満な人間関係を築けます。
ことば足らず、説明不足な文章が多い傾向にあるSNSを用いてのコミュニケーションでも、読解力は必要不可欠と言えるでしょう。
少ないことばや短い文章の背景にあることを理解して不用意なトラブルを未然に防ぎ、自ら発信するときも人を傷つけないことばや文章で表現し伝えることができます。
子どもの頃から読解力を養うことは、社会で生きていく上での大きな糧となるでしょう。
1-4.読解力を身につけるために必要なこと
読解力を身につける方法の大きな柱は、「より多くの文章に触れること」、つまり「たくさん本を読むこと」です。
「国際的に求められている『読解力』は、読書だけで伸ばせるわけではない」と先述しましたが、読解力を伸ばすために読書が有効であることは間違いありません。
小さなお子さんなら、まず親子で一緒にたくさんの絵本に触れてみましょう。 小さな頃から楽しく絵本に触れ、絵本や本が好きになると、自らどんどん本を読むようになり、読解力の基礎も自然と身についていきます。
お子さんが本を好きになるように、アラカルト本棚を用意して本との出会いを広げるのもおすすめです。
読書以外では、まず語彙力を伸ばすことに力を入れましょう。 語彙力は読解力を支える重要な要素です。 文章を読むとき、たくさんのことばを知っていればスムーズに内容を理解できます。
しかし、文章の中に知らないことばがいくつもあると、断片的にしか理解できなくなってしまいます。 新しいことをどんどん吸収できる幼児期から小学校低学年の頃は、語彙力を伸ばすのに最適な時期です。
大人からたくさん子どもに話しかけたり、園や学校での話を聞いて、できごとや気持ちをことばにしたり、辞書を使った遊びをしたりして、楽しみながら語彙力を伸ばしましょう。 次の章では、親子で取り組める具体的な方法をご紹介していきます!
2.親子で楽しく読解力の土台を作ろう!家庭でできること9選
読解力の土台作りに役立つ方法を、「年少・年中向け」「年長・小学校入学直前向け」「小学校低学年向け」に分けてご紹介します!
取り組みやすさについて星の数で表し、先述した読解力を構成する5要素【①文字・文章の理解②情報の読み取り③創造力④論理的思考⑤情報の取捨選択】も関連付けています。 ぜひ参考にしてくださいね!
2-1.年少・年中のお子さん向け
2-2.年長・小学校入学直前向け
2-3.小学校低学年向け
2-1.年少・年中のお子さん向け
1)たくさん会話しよう【☆】①
年少、年中くらいの子どもは、 だんだんことばが上手に使えるようになり、おしゃべりしたい気持ちでいっぱいです。お子さんのおしゃべりしたい気持ちを受け止め、お話をたっぷり聞いてあげてください。
そして大人からもたくさん話しかけましょう。 会話を楽しみながらたくさんのことばに触れることで、語彙がどんどん増えていきます。
2)絵本にたくさん触れよう【☆】①・③
親子で多くの絵本を手に取って、楽しい時間を過ごしましょう。 「絵本っておもしろい!楽しい!」という体験の積み重ねは、子どもが本好きな子になるのを促します。
普段身近な大人が使わない表現に触れる機会も増えるので、語彙力アップにもつながります。
2-2.年長・小学校入学直前向け
3)園でのできごとを聞こう【☆】①・②・④・⑤
子どもが帰ってきたら、園でのできごとを聞いてみましょう。 自分の体験を伝えようとすることで、さらにことばを上手に使えるようになっていきます。
また、ことばでアウトプットすることは、頭の中でその日の体験や記憶を整理し、有用な情報や知識として身につけることにもつながります。
受け答えに慣れるまでは、「今日はお外で遊んだの?」「給食はおいしかった?」というような、答えが限定され、すぐに答えられる質問をするのがおすすめです。
慣れてきたら「今日は何をして遊んだの?」「給食は何を食べたのかな?」というような答えの範囲が広い質問をしてみてください。
次の段階では、「今日は何が楽しかった?どんなふうに楽しかったの?」「そのときどんな気持ちになったかな?」というような気持ちを表現して答える質問も織り交ぜられると良いですね。
子どもの発達に合わせて問いかけ、もしうまくことばが出てこないときは、大人がいくつかことばの選択肢を示したり、体験や気持ちに近いことばで言い換えてあげたりと、フォローしながら聞いてくださいね。
子どもが楽しい気持ちで話せるように、興味を持って聞き、答えてくれたことは否定せずにまるごと受け止めて、たっぷり共感してあげましょう。 話すことが楽しいと感じると、子どもの方からたくさん話してくれるようになりますよ。
4)動画を見て内容を話そう【☆】①・②・④・⑤
3分〜5分くらいの子ども向けストーリー動画を一緒に見て、内容について話すのもおすすめです。 受動的に情報を取り入れるだけでなく、見たものを自分の知っていることばで説明することで、情報を整理し理解を深めることができます。
動画を見終わったら「どんな人が出てきたかな?」「次は何が起きたっけ?」と、質問をしてみてください。 答えが限定されるもの、答えの範囲が広いものの順に、発達に合わせて問いかけてみましょう。
この取り組みを続けることで、入手した情報を整理する力や、人にわかりやすく伝える力も身につきます。
5)親子で一緒に絵本を声に出して読もう【☆☆】①・②・③
子どもがひらがなを読めるようになったら、親子で一緒に絵本を声に出して読んでみましょう。
声を合わせて読んだり、一文ずつ交代で読んだり、登場人物のセリフ部分を子どもに読んでもらったりと、いろいろなパターンで挑戦してみてください。
今まで読んでもらっていた本を自分で読めると、子どもの自信につながり、自分ひとりで本を読むことへの橋渡しにもなります。 小学校へ入学すると音読の宿題が出ることが多いので、その練習にもなりますよ。
6)辞書で遊ぼう①知っていることば探し【☆☆】①・②
子ども向けの辞書をお持ちの方は、ぜひその辞書を使って遊んでみましょう! 目をつむって「せーの!」で辞書をパッと開き、そのページに知っていることばがいくつ載っているか探します。
見つけた言葉はマーカーなどでチェックしておきましょう。 知っていることば以外にも、同じページで気になることばがあったら、そのことばもマーカーの色を変えてぜひチェックしてください。
開いたページにはふせんを貼っておくと良いですね。 遊びながら語彙を増やせて、辞書を引くのが楽しいと思えるようになるおすすめの方法です。
2-3.小学校低学年向け
7)教科書音読の宿題を一緒にやろう【☆】①・②
多くの小学校では、1年生から教科書を音読する宿題が出されます。毎日のことで大変ですが、低学年の間は子どもまかせにするのではなく、大人がそばについて見てあげられると良いですね。
おすすめなのはスマートフォンの録音機能などを使ってお子さんの音読を録音し、直後に教科書を見ながら録音を聞いて、きちんと読めているか一緒に確認する方法です。
読み間違いや読み飛ばしに自分で気づき、丁寧に読む習慣が身につきます。
8)辞書で遊ぼう②ことば探し競争【☆☆】①・②
辞書の使い方を覚えたら、親子やきょうだいでことば探し競争をして遊んでみましょう。それぞれ辞書を手元に準備し、お題のことばをどちらが早く引けるか「よーい、ドン!」で競います。
子ども向けの辞書と一般向けの辞書など別の種類の辞書を使って、それぞれ書かれている意味を比較しても楽しいですよ。辞書が1冊しかない場合は、何秒で引けたかタイムを計るなど、工夫してみてくださいね。
ことば探し競争をきっかけに辞書を引くスピードが速くなり、知らないことばに出会ったときに自分で調べる習慣が身に付きます。
9)家族で交換日記【☆☆☆】①・③・④・⑤
子どもとお母さん/お父さん、あるいは家族全員で交換日記をしてみましょう。
普段は文章を読みたがらない子どもも、「自分宛てのメッセージ」には特別感を感じて、きっと「読みたい!」という気持ちになってくれるでしょう。
家族が書いた日記を読み、それに答える日記を書くことは、文章を読んで理解し、関連した内容を考えてことばを選び、文章を組み立てることにつながります。
読んでくれる相手を想像して、手を動かしアウトプットする作業は、自分の言いたいことをよりわかりやすく相手に伝える練習にもなります。
この取り組みを続けることで、読解力はもちろん文章を書く力も相乗的に伸びていきます。最初から長文を書こうとせずに、まずは1行から始めてみましょう。
「今日は何の授業があったのかな?」「休み時間は何をして遊んだの?」など、子どもが答えやすい質問を書いて渡すと良いですね。
最初は簡単な内容でも、続けていくうちに長い文章を理解したり書いたりできるようになります。楽しみながら書き続けた交換日記は、親子や家族の思い出にもなりますよ。
3.毎日の会話や遊びを楽しみながら、読解力の土台作りにつなげよう!
ことばや読む力についての成長は、個人差が大きいものです。 子どもの成長の様子に合わせて、無理なくできそうなことから始めてみましょう。
幼児期から小学校低学年にかけて、読解力を身につけるため何か特別に難しいことをする必要はありません。
普段の会話を少しだけ意識したり、絵本や辞書などを使って楽しく遊んだりすることが、読解力の土台作りにつながります。 子どもも大人も「楽しい!」という気持ちを持って、取り組んでみてくださいね!
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参考文献
・平成16年度 臨時全国都道府県・指定都市教育委員会 指導主事会議 資料4‐6 PISA(読解力)の結果分析と改善の方向(要旨)
・松井剛太・佐藤智恵・上村眞生(2007)保育者の考える「読解力」に関する研究-読み聞かせにおける絵本の選択理由から-
・読解力向上に向けた対応策について