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子どものやる気を引き出す!「やる気スイッチ」を押す声掛けを性格タイプ別に解説

この記事を書いた人

榊原なつき 榊原なつき

榊原なつき

  • 心理カウンセラー
  • 中学校教諭
  • 小学校教諭
  • 保育士

小学校教諭として2年間勤め、現在は放課後等デイサービスに勤務

保育士・小学校教諭・中学校教諭・心理カウンセラーの資格をもち、大学では教育社会学を専攻。

ひとりひとりの個性に合った教育や療育を目指しています!

5~6歳になると、「自分でやる!」と言って色々なことに挑戦し、成長を感じるもあるでしょう。

一方で、「やり始めるまでに時間がかかる」「イヤイヤ取り組んでいる」「親の言葉に口応えをする」などやる気のない子どもの姿に悩む親御さんも少なくありません。

本当は自分で出来るはずなのに「なぜ?」と思うこともありますよね。

小学校に入学すると毎日宿題が出るようになります。子どもの勉強のやる気を引き出すのが難しく、なかなか宿題に取り掛からないわが子の姿にどう対応すればいいのか困ってしまいますよね。

今回は、子どもがやる気を出せない理由と子どものやる気を引き出す環境づくりについてお伝えします。

小学校や放課後等デイサービスで多くのお子さんと接してきた筆者の経験をもとに、性格タイプに合わせた「やる気スイッチ」を押す方法も紹介します。

お子さんのタイプにあった方法を試してみてくださいね。

 

目次

1.子どもの「やる気がない」~様々なパターン~

 

日々お子さんを見ている中で、「だらだらしている」「なかなか自分からやってくれない」「やっているけれど、適当に済まそうとする」ということはないでしょうか?

以下の具体例を見ながら、まずは、日々のお子さんとのやり取りを振り返ってみましょう。

 

1-1.遊んでばかりで、やるべきことをやらない

テレビを見たりゲームをしてばかりで、身支度やお手伝いは全然やる気がない。

勉強も以前は楽しそうにやっていたのに、今はほったらかし。

「~しなさい!」と言っても全然話を聞いていなくて「いつまでゲームしてるの!」とお子さんを叱ることに…。

 

1-2.集中力がなく、ひとつのことに時間がかかる

着替えて歯磨きをして荷物を用意して…。毎日の身支度も終わるまでにとても時間がかかってしまう。

着替えている間に遊び始めてしまったり、「自分で着替える!」と言ったはずなのに全然進んでいなかったり。

「早くして!」「時間がないから!」と結局、保護者がお子さんの身支度を手伝ってしまう。

 

1-3.「わからない」「できない」と言ってやらない

前はできたはずのお着替えも「できない~!」と言ってやらない。

一緒に勉強をしようとしても、考える前から「わからない!」と言う。

習い事も楽しそうに通っていたのに、行く直前になると「行きたくない!」とごねることがある。

 

1-4.とりあえずやるが、中途半端

勉強をしたけれど字が汚かったり、適当に済ませて「おわった!」と言ってすぐにまた遊びにもどってしまう。

「ちゃんとやってないでしょ!」と伝えても「もうやったもん!」と言って聞く耳をもたない。

やっている最中に、わざとふざけて最後までやならいこともある。

 

2.子どもがやる気を出せないのには理由がある!

なぜ、このようにお子さんのやる気が出てこないのでしょうか?

お子さんの親御さんとのやりとりをよく見てみると、お子さんにとってやる気になれない理由が隠れているかもしれません。

 

2-1.強制されることはやりたくないから

大人でも、仕事や家事をするときに「~しなきゃいけない」と思いながらもなかなか重い腰が上がらない、ということがあると思います。

子どもも、「片付けしなさい!」「お着替えしなさい!」と強制されると、なかなかやる気にはなりません。

最初のうちは子どもから「やる!」と言ってやっていたことも、「~しなさい」と言われることで次第に自分からやろうとしなくなっていきます。

 

2-2.子どもには子どものスピードがあるから

子どもは知らないことや、初めての経験が大人よりもたくさんあります。

そのひとつひとつの情報を頭のなかでじっくり整理しながら過ごしています。

ひとつひとつの行動に時間がかかってしまうのも、「どうやってやればいいのだろう?」と試行錯誤をたくさんしているからです。

大人の世界はとても忙しく、つい「早くして!」と言いながら手伝ってしまいがちですが、しかしそれでは、子どもが試行錯誤する経験が減ってしまい、やり方がずっと分からないままだったり、自分のやり方を否定されたと感じたりしてしまいます。

「ひとりでやっても、どうせまた失敗して怒られちゃう」と脳が判断すると、「自分でやることが怖い」と感じてしまいます。

 

2-3.曖昧な指示で何からやっていいかわからないから

例えば「服を着る」という動作ひとつをとっても、

・着る服を用意する
・服の前後を確かめる
・服の裾を持って頭にかぶる
・頭を服の襟元に通す
・両手を順番に袖に通す
・裾を下す

というように、分解するといくつもの工程があります。

その動作を「服を着て」という一言で伝えても子どもは何からやり始めればいいのか分からず「できない!」「分からない!」と感じてやり始められないのかもしれません。

 

2-4. 子どもにとってその行動に価値があると思えないから

その行動がお子さんにとって「お母さんに怒られないためにやる」ことが目的になっていないでしょうか?

行動自体に意味を持たせたり、「いつやるか」「何をするか」をお子さん自身が選択したりすることで「自分でやってみよう」と思えるようになります。

また、頑張ってやっても褒めてもらえなかったり、途中で親御さんが手伝ったりしてしまうと「自分でやらなくてもいいや」「やらなくてもやってもらえる」と思うことにもつながります。

 

3.子どもがやる気を出すには環境づくりから!

では、実際にお子さんのやる気を出させるにはどのようにすればいいのでしょう。

重要なのは「やりたくなる環境を作ること」です。

小さな工夫をすることで、子どもの「やりたい!」と思う環境は作ることができます。

具体的なポイントを紹介していきます。

 

3-1.子どもが自分から自然とやる環境を作る

子どもに「やらせよう」という気持ちではなく、子どもが「自然とできるようになるにはどうしたらいいか」と考えることが大切です。

特に、小さいお子さんは身の回りの様々なことに興味津々です。 「これ何だろう?どうやって読むのかな?」「使ってみたい!やってみたい!」という気持ちをたくさん持っています。

その力を自然と引き出す環境を作っていきましょう。

具体的には、やってほしいことに必要な道具は子どもの目の届くところに置いておきます
たとえば、

・勉強をさせたい→鉛筆とワークをすぐ手の届く棚に置く。絵本を置いておく。
・着替えをひとりでできるようにさせたい→着替えセットをいつも同じカゴに置いておく

手に取ったらそこですかさず「自分でやろうとしてえらい!」と褒めたり、「何があるかな?」と一緒に興味をもつ声掛けをしたりすると、自然と集中して取り組み始めることができます。

 

3-2.子どもが「できること」に焦点を当てる

子どもにいろいろなことをできるようになってほしいと思うと、子どものできていないところに目が行きがちです。

しかしよく観察してみると、今できていることもたくさんあるはずです。

・勉強はやりたがらないけれど、パズルやお絵描きは好き
 →数字を使ったパズルやひらがなが書いてある本を置いておく
・言われたことはやりたがらないけれど、人のお手伝いは好き
 →「これ一緒に手伝ってほしいな」と伝える

そんな、今「できること」を生かして、さらに子どもの力を伸ばすにはどうしたらいいかを考えていきましょう。

 

3-3.スモールステップで「できた!」を増やす

一方で、できないことにも焦点を当ててみましょう。

「着替えがひとりでできない」原因は何でしょうか。 大人にとっては些細なことでも、子どもにとっては大きな壁になっているかもしれません。

・服を選ぶことができない

 →翌日の着る服はいつも決めた場所に出しておく
・いつ着替えていいか分からない
 →スケジュール表を作り、いつも同じ時間や順番でやるべきことをする
・何から脱いで、何から着ていいのか分からない
 →いつも同じ順番で着替えの練習をしたり、手順を絵に書いて貼ったりする

子どもが現状ひとりではできないこと、難しいと思っているところは「ここは一緒にやろう」「まずここだけやってみよう」と伝え、その他はひとりでやっているところを見守るようにしましょう。

少しでもひとりできたところ見つけたら「ひとりでできたね!」「ボタン留めるの上手だね!」等と伝えて「次もできそうだ!」という自信につなげていくことができます。

 

4.子どもの性格タイプ別「やる気スイッチ」の押し方

「やる気スイッチ」はお子さんにとって様々ですが、掛けられる言葉ひとつでその子にとって「やるぞ!」と思えるかどうかは変わります。

「ちょっとだけやってみようかな」「自分にもできそうだな」「なんだか楽しそうだな」と思わせる声掛けをして、最初の一歩を後押ししましょう。

ここでは「性格統計学」(※1)に基づき3つの性格タイプをとりあげます。
・ロジカルタイプ
・ビジョンタイプ
・ピースタイプ

それぞれのタイプの特徴と、タイプ別のやる気スイッチを押す声掛け、できる限り避けたいタブーなことを紹介します。

お子さんのタイプを見極めることで、お子さんに合った言葉がけをしていきましょう。

 

4-1.自分の計画で進めたい「ロジカルタイプ」

ロジカルタイプのお子さんは、ゴールや目標を決めて計画的に取り組むことが得意です。

「自分で決めたい!」「自分のペースでやりたい!」と強く思っています。

「できる」か「できない」かを事前に頭の中でシミュレーションして、できると判断したら行動に移します。

具体的な事実を伝えて褒めることで、モチベーションがアップします。

<やる気スイッチを押す声掛けの例>

●「8時になったら歯を磨こう」:あらかじめ時間を決めておく
●「このブロックケースにしまおうね」:具体的に指示する
●「今からやる?ごはんの後でやる?」自分で選択させる
●「ひとりで着替えられたね!」:具体的に褒める

<タブーなこと>

●急な計画変更
●「はやく!」「いますぐやって!」とせかされる
→自分の計画通りに進めることができないことがストレスになる
●抽象的な指示→何をどのような手順でやればいいか分からず不安になる

 

4-2.とりあえず動いて考える「ビジョンタイプ」

ビジョンタイプのお子さんは、状況に応じて臨機応変に対応することができます。

急な予定変更などがあっても「おもしろそう」「楽しそう」と思ったことには「やりたい!」と感じて行動することができます。

想像力が豊かで、頭の中に映像を浮かべながら話をすることができます。

「すごい!」とオーバーに褒められることでモチベーションがアップします。

<やる気スイッチを押す声掛けの例>

●「~できたらすごいんだけどなあ!」:褒められる予感を引き出す
●「すごい!」「がんばったね!」:できたことに注目して大げさに褒める
●「かっこいいねえ!」「お兄さんみたいだね!」:抑揚をつけて短い言葉で伝える

<タブーなこと>

●長い話、細かい指示 →全部を聞いて覚えることが苦手
●間違いを指摘される →自分で試行錯誤したいのでモチベーションがダウンする
●「いつになったらやるの!」と予定を決めさせられる
→まず行動してからでないと次のことを決められない

 

4-3.自分より相手を優先する「ピースタイプ」

ピースタイプのお子さんは、人の役に立ちたい、相手の喜ぶ顔が見たいという思いから行動することが得意です。

「ありがとう!」「嬉しい!」などの感謝の言葉がモチベーションアップにつながります。

人の和を重視し、波風を立てることが嫌いです。他人と比較されたり、競争させられたりするとモチベーションは下がってしまいます。

目的をはっきりさせたり、「なぜ?」「どうして?」と理由や経緯を知ることで、納得して行動することができます。

説明する際にも「最初は~で、次〇〇ちゃんが~で」と順を追って話すので、保護者の方は「うんうん」と共感して聞いてあげることでお子さんは嬉しく感じます。

<やる気スイッチを押す声掛けの例>

●「一緒にやってみよう! 」:隣にいる安心感を与える
●「お母さんは〇〇をしなきゃいけないから、〇〇ちゃんは~してね!」:理由を伝える
●「この練習をすると~ができるようになるよ!」:具体的なゴールを説明する
●「頑張っているところが見られてうれしい!」「助かった!」:親御さんの気持ちを伝える
●「~手伝って!」:お手伝いをしてもらう

<タブーなこと>

●「〇〇ちゃんはやってるんだって」「〇〇さんよりがんばったね!」 と人と比べる
→自分の頑張りを見てもらえていないと感じる
●「あとはおねがい!」「ひとりでできるでしょ!」と急にひとりでやらせる
→見てもらえていないことで不安を抱く
●大きな声で伝える→怒られていると恐怖を感じる
●「やるのが当たり前でしょ」と理由を伝えない →なぜやるべきか分からずモヤモヤする

 

5.環境と言葉掛けで、子どものやる気スイッチを効果的に押そう!

小学校入学前から自然とやる気スイッチを押すことができると、「自分はひとりでもできる!」という自己肯定感をどんどん蓄積することができます。

自分で身支度や勉強をする習慣をつけたり、習い事をさせて得意なことを作ったりしておくことで、小学校入学後にスムーズに学校生活も送れるようになり、勉強や習い事などに前向きにとりくめることにもつながります。

親御さんの小さな工夫で、子どもが自然とやる気スイッチを押すことのできる環境をつくっていきましょう!

 

 

参考文献
※1 稲場真由美(2021)わが子がやる気になる伝え方~性格3タイプ別の声がけで自己肯定感が高くなる~ 小学館クリエイティブ単行本

 

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