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子どもに伝わる叱り方~叱るコツや年齢別のポイントを紹介~【後編】

この記事を書いた人

多村美穂 多村美穂

多村美穂

  • 保育士

子育て中のWEBライターです。

保育士資格を所有。

保育園にて勤務した経験や、自らの子育てを通して得た知識を、分かりやすくお伝えしていきたいです!

お友だちを叩いてしまったり、道路に飛び出そうとしたり…、子育てをしていると毎日のように子どもを叱ることもあるでしょう。

しかし、子どもを叱っていると「この叱り方は正しいのかな」「こんな小さい子を叱って効果あるの?」と不安になってしまうことはありませんか。

子どもを適切に叱り、親の意思をしっかり伝えることは科学的に子どもの成長にもプラスになると考えられています。

前編の「子どもを「叱る」のは悪いこと?~叱る意味やNGな叱り方とは~」に引き続き、後編となるこの記事では正しく叱るためのコツや、年齢別に見た叱り方のポイントを紹介します。

この記事を読むことで、どの年齢でも変わらない基本の叱り方と、成長に合わせた応用の叱り方のポイントを押さえることができ、子どもを叱るときの自信につながりますよ!

 

目次

1.子どもの上手な叱り方のコツ

そもそも「叱る」とは間違いを正したり、ルールや規則を伝えたりすることを指します。子どもは叱られるべきタイミングに適切に叱られることで、トラブルを回避する方法や社会のルールを学んでいくのです。

ここでは子どもの学びにつながる上手な叱り方のコツを、ひとつずつ確認していきましょう。

 

1-1.子どもの気持ちを否定しない

子どもを叱ることがあっても、子どもの気持ちを否定しないように注意しましょう。子どもを叱る場面では親もカッとなってしまい、頭ごなしに叱ってしまうことがあるかもしれません。

しかし、子どもの気持ちを否定したり無視したりして叱っても、子どもは反発する恐れがあります。

「お友だちを叩いたのは、ぶつかって痛かったから」「ガラスの破片を触ろうとしたのは、キラキラしていて綺麗だったから」など、子どもの行動にも理由があるものです。

叱る前に「痛くて嫌だったんだね」「奇麗だったから触りたかったんだね」と、まずは子どもの気持ちを肯定してあげましょう。その後で「叩くとお友だちがケガしちゃうよ」「ガラスの破片は手を切るから危ないんだよ」などと伝えてあげてください。

先に気持ちを肯定しているため、子どもに伝わりやすくなりますよ。

 

1-2.子どもと「気持ち」も「体」も向きあう

子どもを叱るときは、「気持ち」「体」も子どもに向けてください。「叱る」とは「伝える」ことです。親の「気持ち」と「体」が両方子どもに向かっていなければ、子どもにはうまく伝わりません。

具体的には、以下のポイントを意識するといいでしょう。

  • 目線を合わせ、子どもの目を見る
  • 携帯を見ながら、お出かけの準備をしながら、などのような「ながら叱り」をしない

「気持ち」と「体」を子どもに向けることで、言葉だけでなく表情や態度からも真剣に叱っていることを伝えることができます。

 

1-3.叱る理由は1つだけにする

子どもを叱るときは話を広げず、叱る理由を1つに限定しましょう。子どもを叱っていると、子どもの過去の失敗を思い出して、あれもこれもと言いたくなってしまいますよね。

しかし、叱る理由が多すぎると子どもが混乱してしまい、叱られている原因が分からなくなってしまう可能性があります。

例えば、「昨日も今日も、手を洗わない状態でリビングに行ってしまった」という場合を考えてみましょう。

「手を洗いなさい!昨日も言ったでしょう!」と昨日のことを含めて叱るのではなく、「帰ってきたら手を洗おうね」と今のことだけを叱った方が、子どもに伝わります。

 

1-4.「叱る」と「褒める」を組み合わせる

子どもを叱った後、子どもが改善できた場合は必ず褒めてあげましょう。改善できたことをしっかり褒めることによって、子どもは自信をつけ、「次もやろう」という意欲を持つことができます。

反対に、子どもを叱ってばかりいると自己肯定感が下がり、自信や挑戦する意欲を失ってしまいます。

また、結果としてうまくいかなかった場合も、挑戦したことを褒めてあげてください。例えば、以前は靴を揃えないで家に上がっていて、今日は揃えようとしていたような場合です。

靴がきれいに揃っていなくても「今日はお靴のことちゃんと気にしてあげてたね」と伝えてあげてください。「叱る」は「褒める」と組み合わせることで、さらなる効果を発揮するのです。

 

1-5.叱った後はフォローする

子どもを叱ったら、アフターフォローをしっかりしましょう。親に叱られると、多かれ少なかれ子どもは傷ついているものです。

  • 抱っこをしてスキンシップをとる
  • 「大好きだよ」と伝える
  • 叱り過ぎてしまったら「怒っちゃってごめんね」と謝る

などのやり取りを通して、上手にフォローしてあげましょう。

アフターフォローをすることで、「子ども自身のことを嫌いになって叱ったのではなく、悪いことをしたから叱られたんだ」と伝えられますよ。

 

2.【0~1歳半】乳児期の子どもの𠮟り方

ここからは、年齢や発達段階に合わせた叱り方のポイントを紹介していきます。ドイツの発達心理学者エリクソンは、乳児期と呼ばれるおよそ0~1歳半は、基本的信頼感を身に付けるべき時期であると言っています。

そのため、母親をはじめとする周囲の大人から愛情を受け、お世話をされることがとても大切です。この点を踏まえた上で、0~1歳半の叱り方のポイントを見ていきましょう。

 

2-1.叱るのではなく、叱らないで済む工夫をする

0~1歳半の子どもに対しては、叱るより前に、叱らないで済む工夫をすることを考えましょう。この時期の子どもは、また善悪の判断がつかず、言葉の意味もしっかりとは理解できません。

また、叱ることで子どもの行動を制限してしまうと、子どもの成長に欠かせない好奇心を遮ってしまうことになります。

そこで、

  • 子どもが安心して遊べるスペースを作る
  • 怪我の原因になるものや、誤飲の心配があるものは子どもの手の届かない所に置く

など環境を整えて、叱ることのない状況を作ることを優先しましょう。

 

2-2.言葉が分からなくても「言葉かけ」を大切にする

言葉の意味が分からない時期であっても、言葉かけを大切にしましょう。言葉の発達を促すためには、言葉かけは欠かせません。また、言葉かけを積み重ねることで、「これはダメなことなんだな」と漠然と学んでいきます。

なお、この時期の子どもを叱る際は、「あぶないよ」「イタイイタイ」「だめよ」など、1~2語で話すと伝わりやすいでしょう。

 

3.【1歳半~3歳】幼児前期の子どもの叱り方

発達心理学者エリクソンは、およそ1歳半~3歳を幼児前期と呼び、自我が芽生え自主性が育つ時期であると言っています。この時期に子どもの自主性を尊重し、さまざまな挑戦をさせることで、子どもは意思や意欲を獲得していくのです。

以上のポイントを押さえて、1歳半~3歳の叱り方を見ていきましょう。

 

3-1.イヤイヤ期は感情を受け止める

およそ1歳半~3歳は、いわゆる「イヤイヤ期」と呼ばれる自己主張が激しくなる時期でもあります。イヤイヤ期の子どもを叱るときは、感情を受け止めてあげることが大切です。

イヤイヤ期の原因は、自我の芽生えと自主性の表れだと考えられています。

「自分でお靴が履きたかったんだよね」「自分で食べたかったんだね。うまくできなくて悔しいね」と、子どもの感情を受け止め、自主性を尊重してあげましょう。

感情を受け止めてもらうことでイヤイヤが落ち着き、親の言うことを聞き入れる態勢が整います。

 

3-2.叱るときは短い言葉で伝える

乳児期に比べて言葉の理解が進んできていますが、言葉の力はまだまだ発展途上です。叱っている意味が伝わりやすいよう、短い言葉で叱りましょう。

具体的には、

  • 「イタイイタイだから、返してね」
  • 「飛び出すと危ないよ」

など、2~3語で伝えてあげてください。

 

4.【3歳~5歳】幼児後期(遊戯期)の子どもの叱り方

幼児後期もしくは遊戯期と呼ばれるこの時期は、子ども同士のやり取りが増えると同時に、「あれがしたい、これを知りたい」と積極性が芽生える時期です。この時期に子どもを叱り過ぎると、叱られることを怖がって、自発的に活動する力を失ってしまう恐れがあります。

それでは、3~5歳の叱り方のコツを年齢順に確認していきましょう。

 

4-1.3歳からは理由をしっかり伝える

3歳からは、叱るときにしっかり理由を伝えるようにしましょう。3歳を過ぎたころから、言葉の説明で物事がイメージできるようになってきます。そのため、叱る理由を伝えることで、危険なことやしてはいけないことが分かってくるからです。

理由を説明する際には、

  • 「人の多い所で走ると、ママが見えなくなって迷子になるよ」
  • 「人のいる方に物を投げると、ぶつかってケガをさせちゃうよ」

など、子どもが理解できるように具体的に伝えましょう。

叱られた理由が理解できるということは、叱る基準に一貫性が必要になるということでもあります。

「前は怒られなかったのに、今日は怒られた」と子どもが混乱してしまわないよう、自分の中で叱るルールを決めておきましょう。

 

4-2.4歳からは人の気持ちも伝える

4歳頃からは、叱るときに人の気持ちも伝えるようにしましょう。

子どもは4歳頃になると、「自分と同じように、他の人にも心や気持ちがある」と気が付き始めます。

「馬鹿って言われたら嫌だよね。○○君も同じなんだよ」

「○○ちゃんが危ないことをしたら、ママは悲しいな」

と人の気持ちを伝えることで、人の気持ちを思いやる力を育むことができますよ。

 

4-3.5歳からは人前で叱らない

5~6歳頃になると、善悪の区別や因果関係が分かってきます。そのため、叱るときには叱る理由を説明するとともに、「どうすれば良かったのかな」と解決策を考えさせるのも効果的です。

その際に大切なのは、人前で叱らず、子どもと1対1で叱ること。5歳頃は社会性が育ち始め、周囲との人間関係を築きつつある時期です。

人前で叱ると「恥ずかしい」「お友だちの前で叱るなんて酷い」というマイナスの気持ちが強く残ってしまい、肝心の叱る理由が伝わらない可能性があります。「人前」というのは友だちはもちろん、兄弟も含まれます。

子どもの自尊心を傷つけないためにも、人前で叱るのは避けましょう。

 

5.年齢に合わせて叱り方を工夫し、子どもの成長を促そう!

叱ることは、子どもが身の周りの危険を防ぐ方法や、社会で生きていく上で必要なルールを学ぶために必要なことです。

しかし伝わる叱り方をしなければ、時間や労力がかかる割に、子どもを導いてあげることはできません。叱り方のコツや、年齢に合わせた叱り方を意識して適切に叱り、子どもに大切なことを伝えていきましょう。

前編では、子どもを叱る必要がある場合や、叱り方に関するQ&Aについて紹介しているので、あわせて参考にしてくださいね。

 

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