【3・4歳】わざと大人を困らせる子どもの心理と対応方法とは?
この記事を書いた人
狩野淳
- 公認心理師
- 臨床心理士
大学、大学院にて発達心理学と臨床心理学を専攻していました。
臨床心理士と公認心理師の資格を保有しております。
子ども達とその保護者の方の支援を仕事にしており、子ども達へは主に応用行動分析を認知行動療法用いて、保護者の方にはブリーフセラピーを使ったアプローチを行っています。
もうすぐで1歳になる男の子がいて、毎日癒されています!
「やってはいけないことをわざとやって大人を困らせる」「特定の人の時だけ悪さをする」などなど。
3・4歳の我が子のそんな行動が気になっている方へ。
わざといけないことをしてしまう子どもの心理と、大人がとるべき対応方法を紹介しています。
子どもの行動には必ず理由があります。子どもの心理状況を理解したうえで適切な対応をとり、親子の関係性を深めましょう。
目次
1.【3・4歳】わざと大人を困らせる行動は「試し行動」かも?
「おもちゃをわざと乱暴に扱う」「ごはんをわざと床に落とす」「話しかけられてもわざと無視をする」…。
3・4歳のこういった行動は「試し行動」の可能性があります。 まずは、この「試し行動」について紹介していきます。
1-1.試し行動とは?
試し行動とは、子どもが大人の気持ちを探る・試す行動を指します。
行動の背景には、「自分が悪いことをしても見捨てないでくれるかな」「間違ったことをしても自分を愛し続けてくれるかな」という心理があります。
人は成長すると関係性や空気感などから、信頼されているのか、愛されているのかなどを察することができるようになります。
しかし、3・4歳でそれはまだわかりません。そこで、自分でもいけいないとわかっている行動をとり、その反応を見ることで相手の愛情・信頼感を確かめるようとするのです。
それが、「試し行動」です。
大人側が試し行動について知らないと、「どうしてそんなことをするの!」「やっちゃダメってわかってるでしょ!」とついつい子どもを叱りつけてしまうこともあるでしょう。
叱られた子どもは「この人は、これをやったら怒るんだな」ということを学習します。
そして同時に、「嫌われちゃったらどうしよう」「まだ自分のことを好きでいてくれているかな?」と不安になり、再度同じような行動をとり、また怒られてしまうという悪循環に陥るケースがしばしば見られます。
1-2.『イヤイヤ期」』との違い
大人の意に沿わない行動をするという点では、1歳半~3歳ごろに見られる「イヤイヤ期」に似ているかもしれません。
しかし、試し行動とイヤイヤ期はまったく異なる概念です。
イヤイヤ期は、自己主張の高まりから「自分の思い通りにしたい、自分でやりたい」という気持ちと、「自分ではできない、やらせてもらえない」という現実、「自分の気持ちをうまく伝えられない」という発達上の問題が重なり「イヤ!」という言動に繋がってしまいます。
一方で試し行動は、相手の行動を観察するために行います。イヤイヤ期のように葛藤があるわけではなく、むしろ冷静な状態で行われます。
また、イヤイヤ期は年齢を重ねることで落ち着いていきますが、試し行動は「この人は大丈夫だな」と子どもが判断したとたんに行わなくなる、という点も異なっています。
『イヤイヤ期』については、下記の記事もチェック!
・イヤイヤ期の癇癪はどう対応する?放置するより「タイムアウト」が効果的!
1-3.試し行動のタイプ
試し行動には、いくつかのタイプがあります。
◼️タイプ1「食べ物や行為を要求をする」
食事ができあがるタイミングや食事を残した後にジュースを欲しがったり、お菓子を食べたがったりする、自分でできるようなことをわざと大人にやらせようとするなどが具体例として挙げられます。大人が一度許してしまうと、その後何度も要求してくるケースが多いことも特徴です。
◼️タイプ2「関わりを拒否する」
わざと無視をしてみたり、「○○君の家の方がいい」などと話したりすることで、大人がどんな反応をするのか探ろうとします。親御さんとしてはショックで、なんと言ったらいいのかわからなくなってしまいますよね。
◼️タイプ3「自分や他者を傷つける」
わざと壁に頭を打ち付けて心配させようとしたり、友だちやきょうだいを叩いて注意を引こうとしたりします。注目してほしい気持ちが強くなると行為がエスカレートし、怪我に結び付く可能性があります。
このように試し行動には様々な種類があります。子どもの行動に疑問を感じた際には「これって試し行動かも?」と疑ってみてください。
2.【3・4歳】わざと困らせる子どもへの対応方法
大人を試すような行動をする子どもには、どのように対応していけばよいのでしょうか。
主な対応方法を3つ紹介します。
2-1.間違った行動にははっきりとNoサインを出す
試し行動をする中で、子どもは時に、社会的なルールを外れた行動やモラルに反した行為を行うことがあります。
その場合まずは、その行為が間違っていることをはっきり伝えてあげる必要があります。
注意されず、試し行動は受け入れられることだと間違った学習が進んでしまうと、試し行動の回数が増えたり、行為自体がエスカレートしていくケースが往々にしてあります。
それを防ぐためには、「それは間違っているよ」と毅然とした態度で伝えていく必要があります。
とはいえ、「どうして間違っているのか」「間違った行為をするとどうなるのか」を長々と説明しても、3・4歳の子どもには伝わらないでしょう。
そればかりか、「結局、何が間違っていたのか」「自分はどうすれば良かったのか」という、子どもに一番わかってもらいたい部分が伝わらないことがあります。
短く、簡潔に伝えてあげてください。
2-2.叱った後は、いつも通り接する
「間違っているよ」と伝えた後に気持ちを引きずってしまい、子どもに冷たい態度をとったり、嫌味を言ってしまうことがあるかもしれません。
臨床心理士である筆者も、日々の子ども達との関わりの中で、叱った後にどんな顔をすればよいか、どんな接し方をすればよいかわからず、ギクシャクとした空気が流れてしまうことがありますので、気持ちは痛いほどわかります。
しかし、大人が気持ちを切り替え、「さっきはさっき、今は今」と空気感を変えることで、「もう怒ってないんだ」「自分のことを嫌いになったわけじゃないんだ」と行動で子どもに伝えてあげる必要があります。
そうすることで子どもは、「自分は愛されている」という感覚を持つことができます。
2-3.一緒にいる時間を増やす
子どもが試し行動をするようになったら、一緒にいる時間を積極的に増やしましょう。
試し行動をするということは、お子さんが親御さんと自分との間の信頼関係や親御さんからの愛情に対して不安な気持ちを抱いているということです。
そんな気持ちを払拭させてあげるためには、一緒に過ごす時間を増やし、言葉だけでなく態度でも「あなたは大切な存在なんだよ」「あなたのことを愛しているよ」と伝えていくことがとても大切です。
一緒にテレビを見たり、園での話を聞いたり、親御さんのその日の出来事について話してみたり…。どんな形でも構いませんので、お子さんとの時間を大切にしてくださいね。
3.【3・4歳】わざと困らせる子どもへの対応を間違えるとどうなる?
何度注意しても困らせてくる子どもにイライラしてしまい、子どものことを無視したり、怒鳴りつけたりしてしまったり…。
「間違った対応である」とわかっていてもやってしまった経験はありませんか?
親御さんも人間です。いろいろなことが重なると、感情的になってしまうこともあるでしょう。
しかしそのあとに訪れるのは、後悔の念と罪悪感だけではありません。子どもにも悪影響を及ぼすことがあります。
そこで、わざと困らせてくる子どもへの対応を間違えると、子どもにどんな影響があるのかについて解説していきます。
3-1.自己肯定感が低下する
試し行動を無視されたり怒鳴られたりすると、「自分は愛されていないんだな」「自分には価値がないんだな」と子どもに思わせてしまう場合があります。
自分に自信がなくなり他者と関わろうとしなくなったり、心を閉ざしてしまう可能性すらあります。
このような自己肯定感の低下は、子どものその後の人生に大きな影響を与えるといっても過言ではありません。
そうならないために、試し行動は正面から受け止め、愛情を伝えていくことが不可欠なのです。
3-2.愛着障がいになる可能性がある
試し行動によって愛情を確認できなかった場合、「愛着障がい」になる可能性もあります。
愛着障がいとは、何らかの原因により特定の人との情緒的な絆を結ぶことができなかったために問題を抱えている状態のことをいいます。
養育環境によって異なりますが、おおむね5歳までに発症すると言われています。
具体的な問題としては、以下が挙げられます。
・理由もなく嘘をつくため、人間関係が構築できない
・他人や自分を傷つける
・睡眠や食事に問題が生じる
愛着障がいになってしまうと、すぐに元には戻りません。長期間の治療と信頼関係の形成が必要となります。
そのため、試し行動を行う子どもへの対応には注意をしなければならないのです。
4.子どもの試し行動を受け止め、愛情を伝えていこう
試し行動は、「自分は愛されているのか」「どこまで自分を認めてくれるのか」を確かめるために行われる行動です。
そのため、間違った行為に関しては真摯に向き合いつつ、「あなたを愛しているよ」「大切な存在なんだよ」ということを言動で示し、伝えていくことが大切です。
何度も繰り返し行われる困った行動に腹を立てる気持を、まずはグッと抑えましょう。
そして、今回紹介したことを参考に子どもの気持ちを理解し、受け止め、深い信頼関係を作っていってくださいね。
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