嘘泣きは子どもの心の訴え!”嘘”に反応しない、親のふさわしい対応を解説
この記事を書いた人
横山ミノリ
- 中学校教諭
- 高等学校教諭
- 小学校教諭
- 児童発達支援士
小1と年少の男の子の母。
長男はASD(自閉スペクトラム症)
産後うつと育児ノイローゼになった経験から”ラクに生きる”がモットーに。
子どもには「自分で決めた!」「自分でできた!」という経験をたくさんしてほしいと思っています。
子どもとの好きな遊びは工作。子育てで好きな本は、高濱正伸著の「こどもの可能性を伸ばす「しない」子育て」です。
泣いているのに涙が出ていない、自分の思い通りになると泣くのをやめるなど、子どもの嘘泣きに悩まされることはありませんか?
余裕がないときに子どもに嘘泣きされると、ついイライラしてしまいますよね。しつこさに根負けして、子どもの要求をのんでしまう自分を責めているママもいるのではないでしょうか。また、将来のことを考えて「ずる賢い子に育ってしまうのではないか」と不安になるかもしれません。
この記事では、4歳〜6歳の子どもが嘘泣きをする心理と、ふさわしい対応をお伝えします。
嘘泣きに隠された心理を知れば、子どもが嘘泣きによって伝えようとしている気持ちに注目できるようになるでしょう。
「子どもの嘘泣きに振り回されたくない」「子どもの本当の気持ちを知りたい」と思っているママはぜひ最後までお読みください!
目次
1.嘘泣きする子どもの心理
京都大学大学院教育学研究科が刊行した「幼児期における嘘泣きについての認識の発達」によると、子どもは4歳頃になると、意図的に嘘をついたり欺き行為を行えるようになるといわれてます。
このことから、言葉の噓と共にここで生まれるのが嘘泣きと考えられるでしょう。嘘泣きは、知性やコミュニケーション能力が発達してきた証拠なのです。
この年齢の子どもがつく嘘に悪意がないのと同じように、子どもは嘘泣きでママを騙そうとしているわけではありません。では何のために嘘泣きをするのでしょうか。
ここでは、嘘泣きする子どもの心理を3つ紹介します。
1-1.「要求を通したい」
子どもは「要求を通したい」という心理から嘘泣きをします。
「欲しいものを買ってほしい」「まだ帰りたくない」など、嘘泣きをすることで自分の要求を通そうとしているのです。親が根負けして子どもの言い分を飲んだ途端に嘘泣きをやめるので、すぐにわかるでしょう。
この場合、子どもは何度か「嘘泣きすると自分の望み通りになる」という成功体験をしており、嘘泣きが要求を通すための手段になっていると考えられます。
1-2.「かまってほしい」
子どもの嘘泣きには、「かまってほしい」という心理が隠れていることがあります。
例えば下の兄弟が生まれた場合、ママからの愛情が減ってしまったと感じ、嘘泣きをしてママの関心を引こうとします。また、お友達や兄弟と喧嘩をしたとき、「注目してほしい」「味方になってほしい」という気持ちから嘘泣きすることもあります。
どちらの場合も、ママに自分のことを見てもらうため、ママからの愛情を確かめるための嘘泣きで、ママにかまってもらうことを目的としています。
1-3.「怒られたくない」
子どもは「怒られたくない」という心理から嘘泣きすることもあります。
悪いことをしたときに怒られるのを避けるため、自己保身のために嘘泣きするのです。ママが叱ろうとすると泣きだすというパターンが多いでしょう。
子どもは、ママに叱られるような悪いことをしてしまった自覚はあるけれど、「大好きなママに怒られたくない」という気持ちから嘘泣きします。また、「自分の非を認めたくない」と思っている場合もあります。
2.嘘泣きする子どもへの対応「要求を通したい」場合
まずは、子どもが「自分の要求を通すために」嘘泣きしている場合のふさわしい対応をお伝えします。
2-1.子どもの話をよく聞く
子どもが何かの「要求を通すため」に嘘泣きしていることがわかったら、まずは子どもの話をよく聞きましょう。なぜなら、子どもは要求を通す以前に、「ママに自分の気持ちをわかってほしい」と思っているからです。
子どもの要求を受け入れることはできなくても、要求を受け止めるてあげることはできますよね!
子どもに「何がしたいの?」「どうしてそうしたいの?」などと質問してみてください。子どもが答えてくれたら「教えてくれてありがとう」と言って、気持ちを言葉で伝えてくれたことに感謝しましょう。そして、「○○したいんだね」と気持ちに共感してあげるのです。
子どもは自分の気持ちや、したいと思っていることを聞いてもらえるだけで、嘘泣きをやめるかもしれません。
2-2.一貫した態度をとる
子どもが「要求を通すため」に嘘泣きしているとわかっても、要求をのまないという態度を貫くことが大切です。
大人が一貫した態度を示すことで、子どもは要求があるときに「嘘泣きすればいい」から「嘘泣きしても仕方ない」ことを学習していくからです。
最初は嘘泣きがひどくなるかもしれませんが、ママが揺るがない態度をとることで、子どもは嘘泣きしても無駄だということがわかり、しだいに要求を通すために嘘泣きすることはなくなるでしょう。
常に一貫した態度をとるのは難しいと感じたママも安心してください。親子で無理なく守れるルールを作り、それを必ず守るようにしましょう。
例えば、買い物のたびにお菓子をねだる場合、「週末のお買い物のときは、好きなおやつを3つまで買っていい」というルールを作るのはいかがでしょうか。ルールは子どもと一緒に決めると守ってくれやすくなりますよ!
子どもの心理が「嘘泣きしても仕方ない」から「嘘泣きしなくてもいい」に変われたら、前向きですよね。
事前にルールを決めておくと状況にも左右されないので、ママも楽になるはずです。また、先回りして嘘泣きに対処していることになるので、気持ちに余裕が生まれるでしょう。
2-3.離れて見守る
上記でご紹介した対応を試してみてもなお、子どもが嘘泣きをやめないこともあるかもしれませんね。そんなときは、子どもの嘘泣きが落ち着くまで待ってあげましょう。
安全が確保できるのであれば、離れた場所で見守るのも効果的です。ママがその場にいることで、子どもに期待させてしまうかもしれないからです。
子どもには「泣くのをやめたらお話聞くからね」と言って、そばで見守っていることを伝えましょう。この時間は、子どもにとって、自分で気持ちを落ち着かせる練習にもなります。
自分で気持ちを切り替えられて、嘘泣きをやめられたら、たっぷりと褒めてあげましょう!
3.嘘泣きをする子どもへの対応「かまってほしい」場合
ここでは、ママにかまってほしくて嘘泣きをする子どもへのふさわしい対応をお伝えします。
下の子が生まれた場合と、子ども同士の喧嘩の場合にわけてみていきましょう。
3-1.子どもの目を見て会話する
下の子のお世話に多くの時間をとられる時期は、どうしても上の子との会話はながら作業になることが多く、目線は下の子に向きがちですよね。そんなときでも、子どもの目を見て会話するように心がけましょう。
少しでも自分のために時間をとろうとしてくれた、自分のことを見ようとしてくれたママの気持ちは子どもに伝わります。
また、下の子のお世話をするときには事前に声をかけて、協力してもらうといいでしょう。
例えば、赤ちゃんが泣いていたら「どうして泣いているんだと思う?」「おむつ替え手伝ってくれる?」と尋ねて、下の子のお世話に参加してもらいます。
3-2.他のものに興味をもたせる
お友達や兄弟と喧嘩した際の嘘泣きには、子どもの注意をそらすことで嘘泣きを忘れさせることができます。他のものに興味をもたせたり、別の遊びに誘ったりできるでしょう。
子ども同士のトラブルに介入するときは、嘘泣きしている子どもの味方にならないように気をつけます。子どもは、どんな状況でも嘘泣きすれば守ってもらえると思っているかもしれないからです。中立の立場で両者の話をよく聞くようにしましょう。
3-3.スキンシップをとる
かまってほしくて嘘泣きをする子どもには、普段から「ちゃんと見ているよ」「大切に思っているよ」ということを言葉と行動で伝えていきましょう。ママの愛情が伝わる1番の方法はスキンシップです。
例えば、「おはよう」と「おやすみ」のハグをルーチンにしてみるのはいかがですか。一緒にお風呂に入ったり、膝の上に抱っこして絵本を読んだり、テレビを見たりするのもいいですね。
毎日のいろいろなタイミングで積極的にスキンシップをとるようにしましょう。
4.嘘泣きをする子どもへの対応「怒られたくない」場合
ここでは、子どもがママに怒られたくなくて嘘泣きをする場合のふさわしい対応をお伝えします。
4-1.よくないことはしっかり叱る
怒られるのを回避するための嘘泣きには、よくないことはしっかり叱るという態度を貫くことが大切です。
嘘泣きによって叱るのをやめたり、優しい叱り方に変えたりすると、子どもは嘘泣きすると怒られなくてすむと学習するからです。
4-2.一方的・感情的に叱らない
先ほど「よくないことはしっかり叱る」とお伝えしましたが、子どもを叱るときには、一方的・感情的にならないように気をつけましょう。
怒られたくなくて嘘泣きする子どもの中には、「怒られるのが怖い」という思いを持っている子もいるからです。叱る前に、まずは子どもの言い分をしっかりと聞いてあげることが大切です。
また、子どものしたよくない行動に対してだけ、叱るようにしましょう。
叱られると「ママに嫌われたのではないか」と思ってしまう子どももいます。そんなときは、叱った後に「お話聞いてくれてありがとう。大好きだよ!」と言葉で伝えると安心してくれますよ。
子どもは「ママは自分の話を聞いてくれる」「叱られても愛されている」とわかれば、自己保身のために嘘泣きすることはなくなるはずです。
5.嘘泣きは子どもの心の訴え
子どもの「泣きたい」という気持ちに嘘はありません。嘘泣きは、気持ちをうまく言葉で表現できない子どもの、心の訴えなのです。ではどんな心の訴えなのか詳しくみていきましょう。
5-1.ママに気持ちを受け止めてほしい
嘘泣きは「ママに自分の気持ちを受け止めてほしい」という心の訴えです。子どもが求めているのは、「これが欲しい」「こっちを見てほしい」「怒らないでほしい」といった自分の気持ちを受け止めてもらうことなのです。
嘘泣きが子どもの心の訴えだと理解すると、嘘泣きをやめさせるために完全に無視したり、「また嘘泣きでしょ!」と注意したりするのがよくないことだとわかるでしょう。
このようなことが続くと、子どもはママに自分の気持ちを受け止めてもらえないと感じ、親との信頼関係が築けなくなるかもしれません。将来の人間関係に影響が及ぶことも考えられます。
難しいことは考えず、ときには嘘泣きの演技に付き合ってあげることができます。「思いっきり泣いたらいいよ」と言って、気のすむまで泣かせてあげるのも効果的ですよ!
5-2.ママならわかってくれると信じている
子どもは、ママなら自分の気持ちをわかってくれると信じています。信じているから嘘泣きするのです。
ときには嘘泣きに向き合ってあげられないことや、嘘泣きに負けてしまうこともあるでしょう。でもそんな自分を責めなくても大丈夫です。ときどきそのようなことがあったとしても、子どもがママに嘘泣きしてくるということは、「ママは自分の気持ちを受け止めてくれる」と知っているからではないでしょうか。
ママが自分に向き合おうとしてくれていることは、しっかりと子どもに伝わっているのです!
6.子どもの嘘泣きに隠された本当の気持ちに注目しよう!
子どもの嘘泣きは成長過程で起こるもので、決して悪いことではありません。嘘泣きされると、”嘘”に反応しがちですが、ここで泣いているのが嘘か本当かは重要ではないのです。
大切なのは、子どもが嘘泣きによって伝えようとしている本当の気持ちに注目し、受け止めてあげることです。
この時期に自分の気持ちをしっかりと受け止めてもらえた子どもは、ママとパパとの信頼関係を土台にして、健やかに成長することができます。子どもが嘘泣きを卒業した暁には、子どもの成長と、強くなった親子の絆を実感できるでしょう!
参考文献
・京都大学大学担教育学研究科紀要 第55号(2009),満川藍「幼児期における嘘泣きについての認識の発達」
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