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子どもの言葉の発達に不安を抱えるママたちへ【言語聴覚士に聞く】

3・4歳の言葉の発達に心配事や不安を感じている保護者の方へ。

たくさんの情報があふれている現代は、それが安心材料になる反面、焦る気持ちを加速させることもあるでしょう。

そこで、言語聴覚士の島袋綾子先生と田中くみ先生に、親の関わり方や心構え、アドバイスなどをうかがいました。

日々、子どもたちやママたちに関わっている先生方ならではの、あたたかい言葉が満載です。

(文責:CONOBAS編集部)

 

目次

1.メディアとの関わりと言葉の発達の関係は?

–−手軽に使えるスマホやタブレット、動画配信サイトなどの普及が、子育てにさまざまな影響を及ぼしています。これらが言葉の発達に与えるデメリット、そしてメリットを教えてください。

1-1. 言語の発達には、生のコミュニケーションが不可欠

島袋 綾子先生(以下、あや先生):以前、「自分の方言が嫌だから、子どもにテレビを観せて標準語を覚えさせようとした」というママがいました。でも、それだとコミュニケーションが生まれないし、言葉を育めないんですよね。

たしかに、テレビやYouTubeから日常では触れられない知識を得たり、映像から刺激を受けたりっていう、いい部分もたくさんあると思います。でも、コミュニケーションは生のやりとりを通して育まれるものなので、子どもだけでテレビや動画を観ているだけでは、言葉を使うというアウトプットはありません。

テレビを観る場合は例えば、ママやパパも一緒に観て、「何を観てたの?」「これはこうだね」と話しかけたり、観終わったら「どんなことやってたの」など会話をしたり、テレビやタブレットという道具を使いながらも、生のコミュニケーションをとることが大切だと思います。

先ほどの方言のママさんも、タブレットを使ってなんとか言葉やコミュニケーションを育めないか、という思いがあったんです。でも、生のコミュニケーションをプラスしなかったために、言葉の習得が遅くなってしまったんです。

やっぱり、「生で会話をする」という経験を積んでいかないと、言葉が遅れてしまう傾向があるのかなとは感じますね。

 

1-2. 日常的に使うことが、言葉を育む

田中 くみ先生(以下、くみ先生):例えば大人も、YouTubeを観るだけで英語がペラペラ話せるようになるかというと、そうじゃないですよね。実際に「日常で使う」ということをしないと、言葉は育まれないなと常々思います。

でも、ママもパパも日々忙しいから、どうしてもYouTubeに頼る時間もありますよね。私もたまにします(笑)。決して悪いものではないし学ぶことも多いと思うので、完全に除外しなくてもいいんですが、時間を決めるなどしてうまく付き合うことが必要かなと思います。

「数字が言えない」というお悩みでお伝えしたように、まだ時間の概念がなかったら、砂時計を使って、「この砂が全部なくなったら終わりだよ」と伝えたり、砂時計ができたら時計で「針が12から3になったら終わりだよ」と教えたりするのもいいですね。終わりが目でわかりやすいので、見通しが立てやすく、ルールや約束についても学ぶことができます。

 

2.3・4歳の言葉の発達を支える「基盤」とは?

–−「言葉の発達」というと、発音や語彙を習得させて、言葉を使ったやりとりをたくさんしなきゃと考えがちですが、先生方は「その子自身をよく見つめること」の大切さをおっしゃっています。

2-1. 言葉の発達には、「愛着形成」も大きく関わっている

あや先生:私が、乳幼児言語発達アドバイザーとして皆さんにもう1つお伝えしているのは、愛着形成についてです。

「3歳ぐらいまでの親子の関係性がすごく大事」というのは多方面で言われていますが、3歳を超えても、親子の信頼関係っていうのはいろんな場面で基盤になるんです。

なぜ、言葉の発達に関しても愛着形成が大事かというと、それが「心のよりどころや安全基地になる」からです。

ママパパがいる、絶対に私・僕のことを見捨てない、外に出ても帰る場所がある、味方がいる。そんな安心感があることによって、子どもは社会に出て挑戦をしていけるんです。

おうちの中ではある程度推測で会話ができたとしても、外に出たら文で話をしないと言いたいことが伝わらない。コミュニケーションの力、会話の力、言葉の能力を高めていかないと会話ができないんですよね。

その土台となるのは、言葉のスキルだけではありません。「親子の関係性」「心の安定」がすごく大事なんです。

 

2-2. 成長しても、触れ合いの時間を持ってほしい

あや先生:なので、ママパパには、子どもたちとのスキンシップをたくさん取ってもらいたいなと思います。

体が大きくなった4・5歳くらいでも例えば、湯上がりに体を拭いてあげたり、髪を乾かす時に頭を触ってあげたり、寝かしつける時にとんとんってしてあげたり、出かけるときや帰ってきたときにハグしてあげたり、手つないでおうちまで帰ったり。

そういうちょっとした触れ合いやコミュニケーションを通じて、いつも安心感を与えてあげてほしい。言葉の知識に加えて、そこはお伝えしたいところですね。

 

3.たくさんの情報の中から、何を信じて選択すればよい?

–−メディアは言葉の発達に影響を及ぼすことに加えて、保護者が情報を集める助けになることも、妨げになることもあるようです。

3-1. あふれる情報に振り回されないで

くみ先生:子どもの成長に関わる心配事を1人で抱え込んで、さらに不安になってしまって、SNSやネットで探索しまくる…、というのは誰にでもありますよね。

情報があふれている中で、「コレ、うちの子に当てはまるかも…」と思い込むと、その型にはめて自分で診断をしたくなる、という気持ちもすごくわかります。安心したいですよね。

でも、子どもが100人いたら100人とも発達の仕方は違って、個人差があって、型にはめられません。情報収集することは大事だけれども、適切な情報を見極め、我が子に目を向けてほしいと思います。

 

–−とはいえ、情報と我が子の様子を照らし合わせて不安を感じたら、まず何をすればよいのでしょう。

3-2. まずは、子どもの様子を観察・記録してほしい

くみ先生:1人では抱え込まないでほしいです。

たしかに、自治体などで相談をすると、「様子を見ましょう」と言われてしまうことはよくあるんですが、「様子を見る」っていうのは、何もできることがないというわけではありません。

まずは、「自分の子どもは今、何ができて何が難しいのか」ということをしっかり観察して記録に残しておいてほしいです。

漠然と観察して、不安なことばかりピックアップして並べてしまいがちですが、できるところにも目を向けて書き留めておくことが大事です。

その記録は、言葉や体の発達が遅い、目線が合わない…という期間が長くなったときに、重要になってきます。専門家が今後の見通しを立てたり、お医者さんが診断をつけるための判断材料になるんです。

最近は、子育て相談窓口などもたくさんあるので、そういうところに相談して専門家などを巻き込む、という勇気もママには大事かなって思います。何より、「1人で抱え込まないでほしい」ということは、ぜひ伝えたいです。

 

4.言語聴覚士が、保護者との関わりで大切にするポイントとは?

–−先生方が保護者と関わる際や、何かを伝える際に気をつけていることを教えてください

4-1. できることに目を向け、前向きに声を掛ける

あや先生:常々、「ママのペースでがんばりましょう」と言っています。そこには、「お子さんのペースにも合わせようね」という気持ちも込めています。

子どものペースで進めないと、遅かれ早かれ壁にぶつかっちゃうんです。親が必死になっても、子どものペースに合ってないと、「うまくできなかった…」というのが積み重なって、親子共にどんどんネガティブになってしまうので、周りと比べずにその子を見て、その子のペースで進める。

そして、ママパパが「これならできる」「これならこの子とやってみたい」という前向きな気持ちでできることをやっていくことが大事だと思います。

あとは、くみ先生も話していましたが、お風呂のときの数分、寝る前の数分でもいいから、ちょっとした関わりを、毎日こつこつつなげて積み重ねていってほしいですね。「がっつり1日30分この子と遊ぶ時間を作ろう!」というよりも、断然大事かなと思っています。

言葉は目に見えない部分の成長なので、長期戦です。それを、すごく短期間集中してがんばると、心が折れちゃうんですよね。言葉の発達は数年単位で関わっていくことなので、ママやパパが無理なくできることを積み重ねていくことが大切です。

 

4-2. 同じ・似た立場の保護者との関係を大切に

あや先生:経験談を聞ける人と接点を持つことも、すごく大事かなと思っています。

私たちは「たねまき協会」でママたちとお話をするんですが、支援者の角度と当事者のママたちとの角度はちょっと違うんだなと感じます。

当事者のママ同士の方が、共感できることが多いですし、実際にかける言葉や熱量が違います。「こういうときどうしてた?」と相談したり経験談を聞いたりすると、「うちの子もこうなってくのか」という道筋や希望が見えて前に進める、ということもあると思います。

SNSでもリアルでもいいので、悩みが近い方との接点を持つことは、ママの心の安定剤として大事だと思いますね。

 

5.言葉の発達に不安を感じる保護者へ〜言語聴覚士からのアドバイス〜

–−最後に。我が子の言葉の発達に不安や迷いを抱えている保護者へ。先生方からのメッセージをお願いします

5-1. 早めに行動することが、子にも親にも近道になる

あや先生:相談に来てくれる保護者の方の中には「もっと早くやっておけばよかった」と、後悔を口にする方がとても多いです。

先のことは誰にも分からないからこそ、「ちょっと様子見ててもいいかな」「まだ大丈夫かな」と先延ばしにすることは得策じゃないように思います。悩んだ時点でできることを探す、というのが一番の近道になるのではないでしょうか。

日々モヤモヤと向き合うママもしんどいし、子どももできるだけ早く「コミュニケーションを取るのって楽しいっ!」て思えた方がいいですよね、きっと。

子どもは日々成長していきます。できるだけ後悔がないように、できるだけ早く手を打っておくことは、子どもの将来のためにもすごく大事かなと思います。

 

5-2. 小さな成長に目を向け、子育てを楽しんでほしい

くみ先生:今、目の前にいるお子さんは、数カ月間の成長過程の中で、表情も言葉の発達や表現力なども著しく成長します。

不安を抱えたまま、成長していく我が子の隣で立ちすくむのではなく、また、他人と比べたり、できないところにばかり目を向けたりするのではなく、我が子の良いところにも目を向けてほしいです。

「こんなに上手になった」「ここができるようになった」と、お子さんと毎日を楽しみ、お子さんと共に歩む生活を楽しんでほしいなって思います。

 

6.早めの行動と、子どもの成長をよろこぶ眼差しを

<編集後記>

できないことばかりでなく、できること・できたことに目を向けることで、親も子も前向きになってほしいと、あや先生もくみ先生もエールを贈ります。

また、日々の子どもの成長をしっかり観察することに加えて、不安を感じたら、早めに専門家に相談することも大切だと教えてくださいました。

毎日のコミュニケーションを楽しみながら、一歩一歩、成長する我が子を見守っていきたいですね。

 

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お話をうかがった先生方

島袋 綾子(しまぶくろ あやこ)

・たねまき協会 ことばのたねまき代表(2020年〜)
Instagram公式LINEを中心に乳幼児期の言葉の発達、愛着形成に関する情報を発信しています。
ママが発達に関する知識や関わり方を身につけるための講座や個別相談などのオンラインサポートを実施しています。
・乳幼児言語発達アドバイザーの育成もしています。
・年少、年長の2児を子育て真っ最中!
・言語聴覚士

田中 くみ(たなか くみ)

・たねまき協会 吃音緩和のたねまき代表(2020年〜)
吃音のある子のママをオンラインでサポート。
Instagram公式LINEで吃音の情報を配信しています。
・吃音緩和アドバイザー
吃音に特化した専門家。我が子の吃音に対するスキルを学べる基礎講座、資格を取れる講座を開催中。
・吃音絵本『ぼ、ぼ、ぼくのはなしかた』制作者
・言語聴覚士

たねまき協会  https://www.tanemaki.group/

あや先生、くみ先生たちが代表を務める団体。
「ママが生きやすい世界をつくる。」という目標を掲げて、言葉の発達でお悩みのママへ向けた、オンライン支援、言葉の教材開発などを実施しています。

 

 

 

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