「情操教育」の重要性とは?子どもの情操を育む家庭での取り組みをご紹介
この記事を書いた人
平尾しほ
- 言語聴覚士
言語聴覚士免許を所有、児童発達支援センターでの勤務経験があります。
特に遊びの中でのことばの育ちを意識して個別療育を行っていました。
現在小学校2年生の息子がいます。
個別療育でのたくさんのご家族とのかかわりと子育ての経験を合わせて、皆様に分かりやすくお伝えしていきたいです。
「情操教育は小さいころから始めることが重要」と聞いたことがある方は多いと思います。
情操教育は、さまざまなメディアでも取り上げられる子育てのテーマの1つと言えるでしょう。
しかし、「情操教育」はいったい何?どんなことをすればいいの?と実はよく知らない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、情操教育とはなにかを説明し、情操教育で身につくこと、家庭でできる情操教育のヒントをお伝えします。
目次
1.情操教育とは?
情操教育が大切とはいえ、それが何なのか分からないままに実践はできませんよね。
情操教育とはどんなものなのか。子どもの成長によい影響をもたらすためにも、まずは一緒にひも解いていきましょう。
1-1.子どもの豊かな心を育てる教育
「情操」とは芸術や学問、人の気持ちなどに触れたときの感情の動きを指します。
人の「豊かな心」と表現されることが多く、感動する、人を思いやる、尊敬する、興味をもつなどさまざまな気持ちの動きを含みます。
情操教育とは、子どもの豊かな心を育てるアプローチです。
子どもがあらゆるものと対峙したときに、「素敵だな」「大切にしたい」「もっと知りたい」などと感じる心を育んでいくことが情操教育であるとも言えるでしょう。
自分の心の動きを素直に感じ取れることは、生きていくうえで大切なことです。
1-2.情操教育には幼児期から取り組もう
情操教育とは、豊かな心を育むこと。
感受性が豊かな幼児期から情操教育をはじめると、たくさんのことを吸収してくれるでしょう。 情操教育は、3歳ごろから始めるとよいとされます。
3歳になると、2歳ごろから続いていたイヤイヤ期が終わりを迎え、少しずつ大人の言うことを受け入れる準備が整ってくると言えるでしょう。
また、言語発達的にも日常生活に関する内容であれば、大人の言うことをおおむね理解できるようになります。子どもが興味をもったことや親が伝えたいことを、少しずつですが言葉のやりとりで深めることができるようになります。
これらのことから、3歳は情操教育を始めるのにうってつけなのです。もちろん、もう少し遅くから始めても大丈夫。子どものペースに合わせて取り組みましょう。
1-3.情操教育には4つの種類と目的がある
情操教育は、主に以下の4種類に分けられます。それぞれの特徴をご紹介します。
・科学的情操教育
自分の周りの状況や環境について「なぜ?」「どうして?」と思う好奇心を刺激し、満たしていくこと
・美的情操教育
芸術や音楽など美しいものに触れたときに、心動かされたり感動したりする気持ちを育てること
・情緒的情操教育
地球上に存在するあらゆるものや人を大切にする心を育むこと
・道徳的情操教育
ものごとの良し悪しを考える、相手を思いやるなど社会性や協調性を養うこと
日本では、学校や幼稚園のカリキュラムでそれぞれの領域の教育が準備されています。集団生活の中で自然と身についていく部分も大きいでしょう。
2.操教育で育みたいのは「すこやかに生きる力」
情操教育を行い子どもの豊かな心を育てることは、生きていくうえで大切なこと。
豊かな心が育つと子どもはどうなっていくのでしょうか?また、勉強とはどんな点が違うのか?という疑問も出てきますよね。
ここでは、子どもが情操教育で身につけることができる力について説明していきます。
2-1.感性や内面の豊かさが育つ
子どもは年齢に応じて心身共に大きく発達します。身体がどんどん大きくなり、自分の身の回りのことは自分でするようになっていきます。
情操教育を行うことで、身体の成長や生活動作の自立だけでなく、心の内面の成長につながるでしょう。
たとえば、前段落で述べた4つの情操教育に分けて見てみると、それぞれの領域に応じて以下のような「心の内面の成長」が期待できます。
・科学的情操教育
「知ることが楽しい」と感じられ、今後さまざまなことを学ぶ積極的な姿勢につながる
・美的情操教育
美的なセンスを刺激し、発想力や創造性の向上にもつながる
・情緒的情操教育
命の尊さを知り、自分だけでなく相手のことも同じように大切に思い尊敬することにつながる
・道徳的情操教育
相手の立場を配慮したり善悪を判断して自分の行動を決めることができるようになる
これらは、子どもの人生の基盤となり、自分の人生を豊かにすることにつながるでしょう。
2-2.学習では十分に身につけられない
幼児期の後半は、小学校入学を見据えてさまざまな知識を入れること、学習を意識した活動をすることも多くなると思います。
「文字が書ける」「計算ができる」などは小さいうちに身につけておきたい基礎学習力ではあります。しかし、それだけでは子どもの豊かな心は育つとは言えないでしょう。
心の豊かさは、「感情が動く」場面に多く出会うことで育まれます。
さまざまな物事、人に対峙したときに自分の心の動きを素直に受け止め、表現することができるようになるでしょう。そのことが、人生を楽しみ、すこやかに生きる力となるのです。
情操教育は、知識を身につける教科学習とは視点が異なることを、意識しておきましょう。
3.情操教育は日常の中でできる−4つのヒント−
では、情操教育のためにどんなことをすればよいのでしょうか?
この段落では日々の生活の中に取り入れられることを4つご紹介します。
日々、生活の中で行っていることが実は、情操教育の実践になっているかもしれません。肩に力を入れ過ぎず、身近なことから試していきましょう。
3-1.ヒント①一緒に料理をする
子どもと一緒に料理をすることも、情操教育の1つになります。
野菜や果物を切る工程では、調理する前の姿に興味をもつなどキッチンに立たないと気づかない発見が見られます。
お肉やお魚の調理は、命をいただくことの真の意味を知るきっかけになるかもしれません。
中には手間がかかったり、意外と力が必要だったりする作業もありますが、一緒に経験することで「料理をする」ことの大変さにも気づきます。
普段料理をしてくれる人への感謝や尊敬の気持ちにつながっていくのです。また「自分もやってみたい」と料理に対する意欲もより一層強くなるでしょう。
3-2.ヒント②家庭菜園をする
家庭菜園もおすすめです。
植物が育っていく様子をそばで観察でき、小さな虫や植物にも命があることを身をもって感じることができます。
「自分がお世話をしないと!」と責任感を持つことにもつながり、さぼらずやろうと自分を律する気持ちも芽生えます。
また、日々の小さな変化を見ることで、観察する力も身につくでしょう。
「他の野菜はどうやって育つのだろう?」「じゃがいもはどこにできる?」などとさまざまな疑問が出てきて知的好奇心を刺激します。
季節ごとに取り組んで、野菜や果物から旬を感じるのもいいですね。
3-3.ヒント③絵本を楽しむ
絵本を一緒に読むことも、情操教育の1つです。
絵本を読むことで想像力が鍛えられます。
それだけでなく、物語の中に入っていき主人公と同じように悲しくなったり嬉しくなったりと、他者の気持ちに共感する力も身につきます。
絵本のイラストや写真を鑑賞するだけでも、大丈夫です。
「なんだか素敵だな」「気になるな」と感じる経験から、観察する力も鍛えられます。
また、言葉の表現のバリエーションも自然と増え、自分の気持ちを表現したり相手を思いやる言葉のかけ方を学んだりすることもできます。
絵本に親しむ時間は、もっとも身近な情操教育の時間になるかもしれません。
3-4.ヒント④習いごとをする
ピアノや歌、絵画などは人気の習いごと。芸術的なセンスを伸ばすだけでなく、物事に取り組む集中力や想像力なども身につきます。
自分のことを表現する1つの手段にもなっていくでしょう。
また、近い年齢の子と関わる場面が多いチームスポーツもおすすめです。
相手を思いやったり協力し合ったり、自然と他者の立場を意識することができます。自分だけでなく周りの人を大切にすることを身につける機会になるでしょう。
4.情操教育のためにできる特別な体験−3つの提案−
情操教育のために長期休暇などのタイミングで、普段できない体験をするのもいいですね。
心が動く瞬間にたくさん出会え、子どもにとっても記憶に残り、心が動く瞬間にたくさん出会える時間となるでしょう。
おすすめしたい3つの特別な体験をご紹介します。
3-1.提案①キャンプや野外体験をする
自然の中での活動は、その瞬間・その場でしか得られない気持ちを味わうことができます。
水の清らかさや風の気持ちよさに触れること、さまざまな植物や生きものに出会うことなど、普段できない経験を通じて素直に「美しいな」「素敵だな」という気持ちに浸ることができます。
バーベキューやテントを張る経験も、「どうすればうまくいくだろう?」「何を用意すればいいだろう?」などと自分で考える姿勢を養うチャンスです。
親が全部してしまうのではなく、子どもも一緒に行うことをおすすめします。
子どもにとって思い出になると同時に、「自分でやってみたい!」と挑戦する気持ちも育てられるでしょう。
3-1.提案②季節や家族の行事に参加する
季節の行事に参加すると、そのときどきの美しいものに触れる機会が得られます。
春には花見、夏はお祭りや花火、秋は紅葉狩り、冬は雪遊びなど季節を感じられる経験は、美しさに感動する気持ちが自然と芽生えるでしょう。
また、お正月やお盆などの家族の行事にも積極的に参加するのもおすすめです。
世代をこえてつながる家族や親族の絆を感じ、より一層大切にしようと思う気持ちが生まれるでしょう。また、命のつながりについて考えるきかっけにもなりますね。
3-1.提案③コンサートや美術館に行く
コンサートや美術館、博物館に行き「本場のもの」に触れることもいいでしょう。
音楽や絵画、作品などに触れることで創造性が刺激され美的感性が磨かれます。
作品のテーマやモチーフ、どんな気持ちで作ったのかなどを考え、想像力も豊かに育まれるでしょう。「どうやって作ったのだろう?」と創作への興味にもつながります。
あわせて、コンサート会場や美術館の雰囲気を感じ取り、親の普段と違うふるまいに気づくかもしれません。
人に迷惑をかけないように行動することを意識するきっかけにもなります。
「まだ小さいから…」と気が引ける場合は、子ども専用の時間やイベントもあるので、ぜひ探してみてくださいね。
5.情操教育は身近なことからはじめてみよう
情操教育を少し身近なものに感じられたでしょうか?
情操教育は決して難しいことではなく、日常の中で少し意識することでできることもたくさんあります。
子どもが人生を楽しみ、すこやかに生きる力を育んでいけるよう身近なことからはじめてみましょう。
この記事で取り上げたヒントや提案も、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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