野菜作りで知育!家庭菜園で「観察力・リサーチ力」を育もう
この記事を書いた人
さたけ のぞみ
- 作業療法士
自宅へ伺う訪問リハビリテーション、発達障害がある子どもへの療育など、作業療法士として15年勤務しています。
造形・アート、自然体験活動などを通して、子どもたちを支援し、また子どもたちから日々沢山のことを学んでいます。
プライベートでも2人の娘と、森でのお散歩や創作活動を一緒に楽しんでいます!
家庭菜園のメリットには安全で新鮮な野菜が食べられるだけでなく、野菜嫌いだった子どもが野菜を食べられるようになる、子どもの学ぶ力を育むという点があります。
野菜作りで体験する「植える、育てる、収穫する」といった一連の作業は、観察力やリサーチ力を高めるのにも最適です。
この記事では野菜作りの知育としての効果や「観察力」や「リサーチ力」を育む野菜育てのポイント、簡単に家庭菜園を始める方法について紹介します。
この記事を読めば、家庭菜園を楽しみながら子どもの学ぶ力を育む方法がわかります。どうぞ最後まで読んでみてくださいね。
目次
1.子どもと家庭菜園をするメリットは?
まず子どもと家庭菜園をするメリットについて、ご説明します。
小学生の栽培活動の研究から、花や野菜を育てることは、
「生きる力」となる、「確かな学力」や「豊かな人間性」を育む経験になることが挙げられています。
今回は、「自然 × 知育・学びの土台」にフォーカスして、野菜作りから得られる効果を見ていきましょう。
1-1.SDGsにつながる「自然現象」や「生態系」への興味・関心を育む
家庭菜園を始めると、土や植物、虫などに触れる機会が増えます。
種から芽が出てグングン大きくなり、花が咲き野菜が実るまでの一連の流れを目の当たりにすることで、人間とは異なる生態系や自然現象への興味が育まれます。
例えば「土の中のダンゴムシ、花にやってきたミツバチ」など、家庭菜園には虫がつきものです。
虫が苦手な方にとっては慣れるまでは大変なところもありますが、子どもにとっては多様な生き物を学べる良い機会です。
よく見てみると、小さいながら懸命に生きている虫たちが、かわいくみえてくるかもしれません。
┋
環境保護運動の先駆者といわれる、アメリカの生物学者レイチェル・カーソンは、環境問題への重要な概念として「センス・オブ・ワンダー」を提唱しています。
「センス・オブ・ワンダー」とは「自然に触れて、深く感動する力」という意味です。
家庭菜園で子どもが感じる「これ、なんだろう?」「見てみたい!」「触ってみたい!」といった探求心や好奇心は、まさに「センス・オブ・ワンダー」そのものです。
探求心や好奇心は学習効果を大きく高めると言われています。つまりもっと知りたい!という気持ちが、主体的な学びにつながります。
1-2.気づきの学び「観察力」が身につく
観察力とは「物事をしっかり捉えることで、変化を感じ気づきを得られる能力」のことです。
観察力を高めるには視覚的な情報だけでなく音や匂い、触感など、五感を使うことが重要だと言われています。
家庭菜園は観察力を高めるのに絶好の機会です。
野菜の様子は日々変化していくので、たくさんの気づきを与えてくれます。
例えば、どんな観察ができる?
〈植物の比較観察〉
同じようなものやことをいくつか見て、どこが似ていてどこが違うかを探すことです。
例:
「同じトマトでも丸い形と長細い形のトマトでは、種の形は違うのかな?」
「きゅうりとなすの苗は、どこが違うだろう?」といった、ほかと比較する観察。
〈植物の成長観察〉
例:
種を植えてからの発芽など、時間とともに変化を見る観察です。
「種を植えてから芽が出るまで、どれくらいかかったかな?」
「小さな緑の実がなった!」「昨日より多くなってる」「赤くなってきたぞ」
また家庭菜園では植物の茎や花の匂いを嗅ぐことや、それぞれの葉っぱの手触りを感じたり、さまざまな観点から観察力を伸ばすことができます。
身近に育てているからこそ、植物の変化を五感でたくさん味わうことができるのです。
1-3.リサーチ力
リサーチ力とは「情報を収集し、整理し、分析する能力」のことです。
具体的には、正確な情報を見つけることや、集めた情報を整理すること、情報源の信頼性を評価することまでが含まれます。
情報にあふれた現代では、適切な情報を取捨選択し、活用する力はとても重要な能力です。
家庭菜園を始めると、たくさんの疑問にぶつかります。
┋
「今の季節に植える野菜は、何がいいの?」
「なぜまいた種から芽が出てこないの?」
「トマトをたくさん収穫するためには、どのような手入れが必要?」
「見慣れない虫がついているけど、そのままにしていいの?」
┋
このような疑問を解決するためには、野菜作りに関する情報収集が必要です。
子どもと一緒に情報収集し、学んだ知識を実際に野菜作りに生かしていくことができます。
また、きちんと手入れすることで野菜が上手に育てられたという子どもの成功体験にもつながります。
1-4.食育になる
家庭菜園の第一の良さは、自分たちで育てた新鮮な野菜をたくさん食べられることです。
農薬や化学肥料を使わない安心な野菜を育てることも可能です。
家庭菜園の野菜は新鮮でおいしい上に、自分で育てた!という愛情がこもっているので、子どもたちもたくさん食べてくれるでしょう。
新鮮な野菜をたくさん食べることで野菜のおいしさに気づき、野菜嫌いだった子も食べられるようになるかもしれません。
┋
野菜を好きになることは、将来の健康的な食生活習慣にもつながりますね。
さらに家庭菜園を始めると、野菜についての知識も自然に身につきます。
実際の収穫を通して「この野菜は秋にとれるんだな」とか、「これは人参の葉っぱ!」と葉を見るだけで何の野菜かわかる、など野菜の知識が体験的に身につくことも魅力のひとつです。
2.家庭菜園を始めるのに必要な準備とおすすめ野菜
「家庭菜園を始めよう!」と思っても、「準備は何から始めればいいの?」「どんな野菜が育てやすいの?」と迷いますよね。
ここからは、家庭菜園を始めるために必要な準備とおすすめ野菜を具体的にお伝えします。
2-1.必要な準備
家庭菜園を始めるために必要な準備は次の4つです。
- 野菜を決める
- 育て方を調べる
- 道具をそろえる
- 植える場所を用意する
・・・・・・・・・・・・・
(1)野菜を決める
最初に、どの野菜を育てるか決めましょう。
季節やお住いの地域にあった野菜を選ぶと失敗しにくいです。子どもや家族が好きな野菜を選ぶとやる気も高まりますね。
・・・・・・・・・・・・・
(2)育て方を調べる
育てる野菜が決まったら、育て方を詳しく調べましょう。
調べる時のポイントには次のようなものがあります。
- 野菜に合った土壌や肥料の種類
- 適切な水やりの頻度や量
- 日当たりを好むかどうか
- かかりやすい病気や害虫
- 摘芯など特別な世話が必要か
・・・・・・・・・・・・・
(3)道具をそろえる
家庭菜園に必要な主な道具は次のとおりです。
- クワ
- 肥料
- スコップ
- せんていばさみ
- 水やりの道具(ジョウロやホース)
- プランターと土(プランター栽培の場合)
あとは必要に応じて、道具をそろえていきましょう。
・・・・・・・・・・・・・
(4)植える場所を用意する
野菜を植える時は、庭での地植えかプランターが一般的です。
地植えの場合は、野菜を植える2週間ほど前までに土を耕して石灰や肥料を施しておきましょう。
石灰には土壌のpHを調整する役割があります。
プランターの場合は、育てたい野菜にあった土とプランターをホームセンターなどで購入しましょう。
室内でしか育てられず土汚れが気になる場合は、水耕栽培という方法もあります。
2-2.季節別・初心者におすすめの野菜
野菜は春植えか秋植えが一般的です。
初心者にも育てやすいおすすめ野菜を季節別にご紹介します。
年間を通して育てやすい野菜には、ネギ、ニラ、ラディッシュなどがあります。
〈春植えの野菜〉
- じゃがいも:2月下旬~4月上旬に植え、梅雨前に収穫します。種イモを植えるだけで良いので植え方が簡単です。収穫の際は土の中からたくさんの芋を掘り出すので、子どもも楽しめます。
- トマト:大玉トマトは割れやすいので、比較的簡単なミニトマトがおすすめです。実がなる期間が長いので、たくさん収穫できます。
- きゅうり:苗を植えてから収穫までの期間が比較的短く、初心者でも手応えを感じやすい野菜です。1日単位であっという間に大きくなるので、観察にも向いています。
- ナス:品種によって形や色が多様で、自分好みの品種を選べます。揚げ物や煮物、炒め物など、幅広い調理法で食べられます。
- 落花生:あまりメジャーではないかもしれませんが、収穫しやすい野菜です。花が咲いた後、つるが地面に落下して土の中に潜り込むという面白い野菜です。
〈秋植えの野菜〉
- 大根:栽培がかんたんで、種まきから収穫までの期間が短いです。芽が出やすいので、発芽の観察に最適です。
- ほうれん草:早ければ30日ほどで収穫できます。葉を少しずつ収穫すれば、同じ株で繰り返し収穫できます。
- スナップエンドウやソラマメ:10月ごろ種をまいて春に収穫できます。つるを伸ばして成長する過程を見るのが楽しいです。たくさん収穫できて、甘い味は子どもにも好まれます。
3.観察力やリサーチ力を育む野菜育てのポイント
家庭菜園を通じて子どもの学ぶ力を育むには、やり方をひと工夫すると効果的です。
子どもと一緒に家庭菜園をするときに、観察力やリサーチ力を育むポイントをご紹介します。
3-1.同じ野菜を違う条件で植えて比べる
子どもの観察力を育むために有効なのが、同じ野菜を違う条件で植えてみるという方法です。
違う条件とは、例えば次のようなものがあります。
- 植える場所:畑/プランター
- 育て方:種から/苗から
- 日当たり:日の当たる場所/日陰
- 品種:同じ野菜でも違う品種を植えてみる
条件の違いによって生育状況や収穫物に差がでてくるので、変化に気づきやすくなります。
違いがでた時には「この部分が変わっているね」「どうしてこんなに違うのかな?」と子どもと話しあって、違いの原因まで一緒に考察してみましょう。
3-2.観察絵日記をつける
観察力を高めるために観察絵日記をつけてみましょう。
観察絵日記には、日付や植物の名前、成長や変化の様子、天気や気温を記録します。
また、文章だけでなく絵を描いて記録すると、より詳細に観察できるためおすすめです。
〈観察絵日記をつける効果〉
(1)詳細に観察する習慣ができる:スケッチするには野菜の細かな部分まで見る必要があります。つるの巻き方や葉っぱの形、花びらの数など細かい部分に注目することで観察力を高められます。
(2)変化に気づきやすくなる:毎日スケッチしていると、花が咲いた、実が膨らんだなどたくさんの変化に気づきます。後から振り返ると変化を一連の流れで理解できます。
(3)振り返りができる:スケッチがたまっていくと変化の過程がわかり「なぜこうなったのか?」原因や理由について考察できます。話し合いで一緒に子どもと考えるのもよいですね。分析や思考する力はリサーチ力にもつながります。
3-3.収穫した野菜や種を図鑑で調べる
野菜や種を収穫することができたら、お子さんと一緒に図鑑で調べてみましょう。
まずは野菜図鑑や農業図鑑、園芸に関する図鑑を用意します。ネット上にもたくさんの図鑑があるので、見やすいものを選んでください。
野菜や種の形・特徴から、該当する野菜を見つけます。
┋
図鑑では野菜の歴史や種類、選び方、保存方法、栄養や効能など、1つの野菜からたくさんのことを学べます。
図鑑によって特徴があるので、複数の図鑑を見比べてみると、よりいろんな視点で作物について理解が深まりますよ。
継続することで「これなんだろう?」「知りたい!」と思ったときに、図鑑で調べる習慣を身につけることができます。
4.子どもと一緒に家庭菜園をするときの注意点
せっかく家庭菜園を始めるならば、失敗は避けたいところですね。
ここでは、子どもと家庭菜園を楽しむために、気をつけるポイントについて解説します。
4-1.安全へ配慮する
野菜作りには、ショベルや収穫用のはさみなど、先の尖った道具を使用します。
そのため、ふざけながら持たないように、使い方を間違えないように話をすることが大切です。子どもたちが作業をするときは、必ず大人が付き添って、事故が起こらないように注意しましょう。
また、野菜の栄養となる肥料や虫よけの薬剤には、危険性の高いものがあります。
選ぶ際には「化成肥料」や「有機質肥料」など、家庭菜園用の人体へ安全なものを使用することがおすすめです。
┋
マンションで野菜作りをする場合は、規約を確認することも忘れないでください。
マンションのベランダは共有部分と見なされ、避難時の通路確保や景観保護のルールが決められている場合があります。
鉢やプランターは落下しないよう注意し、ビニールなどの資材が風で飛ばないよう対策しておくと安心です。
4-2.育てやすい野菜や場所を選ぶ
子どもが育てる野菜は、簡単に育てられるものを選びましょう。例えば、トマトやキュウリ、なすなどは育てやすい野菜です。※詳しくは、前述の「季節別・初心者におすすめの野菜」で紹介しています。
野菜を育てる場所は、十分な日光が当たる場所や、水はけの良い場所を選ぶとよいでしょう。
また、子どもが水やりしやすい高さに植木鉢やプランターを置いておくと、自主的に観察しやすくなります。
4-3.水やり・害虫や病気に注意
野菜はそれぞれ特性があり、必要な水の量や適している土壌は野菜によってハッキリと違います。
「良かれと思って毎日水をやっていたら、根腐れを起こした…」ということにならないように、必要な水の量や頻度を調べておきましょう。
野菜は虫や病気にかかりやすいため、定期的にチェックして、虫や病気を予防することも大切です。
野菜によって、発生しやすい害虫や病気があります。
いったん害虫や病気が発生すると、野菜がだめになるだけでなくマンションではお隣に迷惑をかけることにもなりかねません。
葉っぱをよく観察しておくと、虫食い跡や病気にも気づきやすくなります。
害虫や病気は予防するのが一番です。天然素材で作れる虫よけもあるので、子どもと作ってみるのもよいですね。
4-4.声かけやクイズでモチベーションを高める
種類によっては、早く収穫できる野菜もありますが、植物は2週間、4週間とある程度の時間をかけて成長し、野菜を実らせます。
子どもは楽しくないと「もういいや」「お母さんがやっといて」となりがちです。
┋
「今日は天気がいいね!太陽の光があると、野菜はどうなるかな?」
「この野菜の土はどのくらい水を吸うかな?」
「あとどれくらいで収穫できるかな?」
「野菜はどれくらい成長したかな?」
など、野菜を育てることを楽しいと思えるような、声かけをすることで、野菜作りへのモチベーションを維持してもらいましょう。
また、子どもたちが大好きなクイズ形式で問題を出して楽しむのもおすすめです。
┋
例えば、
「この苗は、なんの野菜? ①トマト ②なす ③ひまわり」
「茎にトゲがある野菜はなんでしょう?」「ここにあるかな?」
など、クイズにすることで、子どもたちの興味を引き出す工夫ができますね。
実際に小学校理科教育においても、スケッチやクイズを通して子どもたちの興味や理解を促す取り組みが報告されています。
4-5.野菜作りに失敗した場合も考えておく
天候や害虫の影響などさまざまな要因で野菜がうまく実らないことがあります。
野菜ができなかったという事実に、ショックを受けてしまい「もうやらない!」と言い出すことがあるかもしれません。
そのため、前もって失敗する可能性があるということを伝える必要があります。
また、失敗してしまったときには、結果だけでなく過程やそうなった理由に目を向けるとよいでしょう。
「どうすればよかったのかな」と一緒に考えたり、「もう一度挑戦してみようか」といった声かけで、子どもが失敗を前向きに受け止められるようにサポートすることが大切です。
5.家庭菜園を通じて、子どもの学ぶ力を育もう
家庭菜園では野菜を育てる過程で、たくさんのことを体験できます。
実際に体験することで、観察力やリサーチ力といった主体的な学びの土台を育むことができます。
プランターで気軽に始められるので、家庭菜園は初めてという方も子どもと一緒にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
日々成長する野菜の様子に、お母さんやお父さんも癒やしを感じるかもしれません。
ぜひ子どもと一緒に野菜作りを楽しんでみてください!
主な参考文献
・文部科学省,学習指導要領「生きる力」, 幼稚園教育要領
自然に触れる大切さを学べる関連トピックをご紹介!
・【保育士直伝】自然体験が育む子どもの力とは?気軽にできる自然遊びと親の心がけ