子どもロコモの解決策7選を保育士が紹介!運動不足をカンタンに改善しよう
この記事を書いた人
宮先惟之
- 保育士
保育所や子ども園にて15年間勤務。
主に、3〜5歳児のクラス担任や障がい加配保育士をしてきました。
2児の父でもあり、子育ての大変さや楽しさを感じながら、日々子どものやる気を引き出す環境作りや言葉のかけ方を工夫しています。
「子どものケガの仕方におどろいた」「子どもの姿勢が悪く、疲れやすいのが気になる」「子どもでも肩こりや腰痛ってあるの?」と思ったことはありませんか?
もしかすると、その症状は「子どもロコモ」かもしれません。
子どもロコモって、聞き慣れない言葉ですよね。実はここ10年で言われ始めた言葉なんです。
今、子どもたちの心身に何が起きているのでしょう?
本記事では、現役の保育士である筆者が、たくさんの子どもを見ているからこそ分かる子どもロコモの原因と解決策をお伝えします。
3〜6歳頃の子どもロコモの対策として簡単に実践できて続けやすい方法を紹介しますので、ぜひご覧ください。
目次
1.ロコモ(ロコモティブシンドローム)とは?
ロコモとは、骨や関節などの運動器の働きが弱まるために「立つ」「歩く」といった体を移動させる動きが低下した状態をいいます。
1-1.子どもに広がるロコモ
これまで、ロコモは加齢とともに骨や関節などの働きがおとろえることで起こっていました。
しかし最近では、同じ症状が子どもにも起きる「子どもロコモ」が増えています。
お子さんに、こんな様子はありませんか?
・姿勢が悪く、疲れやすい
・転んだときに手が出ず顔をぶつけてしまう
・しゃがむのが苦手
・肩こりや腰痛がある
・骨折しやすい
うちの子は大丈夫かな?と心配になりますよね。
子どもロコモに当てはまるか、チェックしてみましょう。
1-2.子どもロコモをチェックする5つのポイント
子どもロコモの可能性を次の5項目でチェックしてみましょう。
これから伝える動きで1つでもできないものがあれば、子どもロコモに該当するかもしれません。
1-2-1.体のバランスをチェック
両手を広げて、片足で立ってみましょう。左右ともふらふらせずに、5秒以上立てるかな?
1-2-2.下半身の柔軟性をチェック
足のかかとを床につけたまましゃがめるかな?
後ろに倒れずできたらバッチリです。
1-2-3.上半身の柔軟性をチェック
両手をまっすぐ(垂直に)上げられるかな?
1-2-4.肩甲骨と股関節の柔軟性をチェック
膝を伸ばしたまま、指を床につけられるかな?
1-2-5.上半身の動きをチェック
じゃんけんのグーをしながら肘を引いてから、次に手をパーにしながら腕を前に出させるかな?
パーのときに、手首と指がしっかり反っているかに注目です。
当てはまった項目はありましたか?
実は、埼玉県で幼稚園児、小学生、中学生を合わせた1343人が子どもロコモチェックを行ったところ、1つでもできない項目があった子どもは40%以上いたといったデータがあります。
参考:認定NPO法人 全国ストップ・ザ・ロコモ協議会「子どもロコモ読本」
子どもロコモは身近ですね。
では、なぜここまで子どもロコモは増えているのでしょう?
2.どうして、子どもロコモは起こるの?
次に、子どもロコモが起こる原因を探っていきましょう。
2-1.運動不足による身体活動の減少
子ども達は運動を通じて、筋力や筋肉の柔軟性、バランス感覚を養います。しかし最近では、運動をする時間が減ってきています。
スポーツ庁による「令和3年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果(概要)について 」の調査の中で、「児童生徒の運動時間(体育の授業を除く。)」を見ると、ここ5年でみても小学生の男子、女子共に、運動する時間が年々少なくなっていることが分かります。
それに伴い、1日あたりの運動時間が60分未満の子どもは増えています。
では、これまで運動していた時間、子ども達はどのように過ごしているのでしょう?
2-2.スマホやテレビの使用時間の増加
ここ数年、子ども達の過ごし方に大きな影響を及ぼしているのが、スマホやテレビです。
また、家庭でゲームを楽しんでいる子どもも多いのではないでしょうか?
保育の現場では、子ども達がよくテレビアニメやYouTube動画、ゲームの話をしているのを耳にします。
先ほどもご紹介した、スポーツ庁による調査「令和3年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果(概要)について 」の中にある、「3 児童生徒の生活習慣(1) スクリーンタイムの状況」を見てみると、小学生の男子、女子共に、年々、テレビ、スマートフォン、ゲーム機等による映像の視聴時間であるスクリーンタイムが増加していることが分かりますね。
スマホやテレビを見ている時間が長くなれば、運動することも減り、子どもロコモを引き起こす原因となるでしょう。
2-3.食生活の乱れや栄養の偏り
みなさんは、食事できちんと栄養がとれていますか?栄養がとれていないと、ロコモのリスクが高まります。
例えば、骨や筋肉を構成する栄養が不足すると、体は健康に育ちません。骨密度の低下や筋力の低下が起こると、大変ですよね。栄養の偏りも、ロコモを引き起こす原因の1つですよ。
過剰なカロリー摂取や栄養バランスの偏りによって体重が増加すると、関節への負担が増します。
特に、膝や腰の関節にストレスが増え、体を柔軟に動かすことが困難になるでしょう。
3.子どもロコモの解決策7選
運動や食事の習慣を整えていくことで、ロコモは予防できます。
具体的で、始めやすい方法を紹介しますよ!
3-1.ストレッチをして、姿勢を改善しよう!
まずは、手軽に始められる運動からお伝えします。
ストレッチは、体の柔軟性を向上させ、筋肉や関節の動きを良くする効果が期待できます。時間や場所は問わないので、始めやすいところがいいですね。
「認定NPO法人 全国ストップ・ザ・ロコモ協議会」が推奨する「子どもロコモ体操」をご存じですか?
3つの動きを行う、数分でできる簡単な体操です。
1つずつ紹介しますね。
3-1-1.胸郭(きょうかく=胸部の外郭をつくるカゴ状の骨格)の運動
手を頭の後ろに組み、足を肩幅に開きます。
次に、息を吸いながら腕を後ろへ動かし、前に戻しながら息を吐きます。
肩甲骨(けんこうこつ)を意識しながら、腕を大きく動かし3回繰り返しましょう。
[ポイント!]
腕を動かすときは、肩甲骨を「開く」「寄せる」ことを意識しましょう。
3-1-2.つま先立ち→体前屈(たいぜんくつ)
手のひらを上に向けて組み、大きく伸びをします。
腕をまっすぐ伸ばすこと、かかとを上げてつま先で立つようにすることを意識しましょう。
次に、かかとを落とし、伸びをしたまま体を大きく前に倒します。
その後、ゆっくりと体を起こし、元の姿勢にもどりましょう。
3回繰り返します。
[ポイント!]
大きく伸びをするときは、肩甲骨も一緒に引き上げるイメージで行いましょう。
体を前に倒すときは背中が丸まらないよう、骨盤を倒すように意識するといいですよ。
3-1-3.ストレッチ
両手を前に突き出し肩の高さまで上げ、腰を下ろします。
背筋を曲げないようにすることに加え、足の親指が浮かないようにしましょう。
これも、3回繰り返します。
[ポイント!]
両手を肩の高さまで上げるときはできるだけ腕を前に出し、肩甲骨を伸ばすことを意識しましょう。そうすることで、背筋が曲がりにくくなりますよ。
最後に大きく深呼吸で終了です。
始めは慣れないかもしれませんが、続けていくうちにスムーズに体が動かせるようになり、姿勢も良くなるでしょう。
行う時間帯は、お風呂上りがおすすめですよ。体が温まっており、筋肉がほぐれているからです。
3-2.登園や降園時に、子どもと毎日歩こう!
ストレッチもなかなか習慣にしづらいといった方には、毎日のウォーキングがおすすめですよ。
朝歩いている方は、ふとしたとき、子どもに体力がついていると感じたことはありませんか?
保育の経験談ですが、園外保育(散歩や遠足)をしたときに子どもの体力の差に気付づくことがあります。
普段から歩いている子どもは、長い時間安定して歩くことができるんですね。歩くって軽い運動のようですが、積み重ねることで大きな力になりますよ。
新しく運動の習慣を作るのは大変ですが、これなら始めやすいのではないでしょうか?
車や自転車は便利ですが、可能な方は登園か降園のどちらかだけでも歩いてみてはいかがでしょう。
3-3.外で遊ぶ時間を十分にとろう!
平日に運動する時間がとりづらい方は、休みの日に外でしっかりと体を動かす機会を持ってみましょう。
おすすめは、遊具がたくさんある公園ですよ。
遊具は、子ども達をワクワクさせて遊びたい(体を動かしたい)気持ちを引き出してくれます。また、遊具は登るときに体を自分の手で支えたり、バランスをとりながら移動したりと自然といろいろな体の動きを体感できるところもいいですね。
楽しく遊ぶなかで、姿勢やバランスが良くなるだけでなく、運動能力の向上も期待できるでしょう。
大きな広場がある場所では、親子でボールで遊んだり、おいかけっこをしたりするのでもいいですよ。
子どもはおうちの人が一緒だと嬉しくて、やったことがないことでも挑戦してみるかもしれません。おうちの人もぜひ、楽しんで体を動かしてみてくださいね。
子どもが2歳、3歳くらいの方はシャボン玉遊びもいいですよ。
プカプカ浮かぶシャボン玉を追いかけるうちに、走ったり歩いたりを繰り返しており、実は体をいっぱい動かすことにつながっています。
3-4.室内でも運動遊びを楽しもう!
室内でも、体を動かす遊びを通して子どもロコモを予防していきましょう。
風船を使って遊ぶと、楽しく体を動かすことができますよ。
子どもが好きな遊びを3つ紹介しますね。
3-4-1.風船キープアップ
・遊び方
風船を落とさずに何回タッチできるかを数えます。
タッチする数を増やしていきましょう。足で風船を蹴って上にあげてもOKです。
親子で向き合って交互にタッチするルールでも楽しめますよ。
3-4-2.風船バレー
・準備物
コートを仕切るもの
・遊び方
仕切りを挟んで向き合って立ち、自分のコートに風船が落ちないように、相手のコートに返します。
バレーなので、キャッチはせず、手に当てて遊びましょう。
風船には、何度でも触れて良いですよ。 相手のコートに5回先に落とした方が勝ちです。
3-4-3.風船テニス
・準備物
うちわ
・遊び方
風船バレーのテニス版です。
ラケットに見立てたうちわを使って相手のコートに風船を返します。
相手のコートに変えるまで、風船は何度触れてもOKです。
風船は、目標物が見やすく、ゆっくり落ちるため遊びが長続きしやすいところがおすすめです。
紹介した遊び以外にも、子どもが楽しく全身を使った遊びはこちらの記事でも紹介していますよ。
・運動神経を伸ばす「お家遊び」5選!〜誰でも伸びる運動発育の黄金期とは?~
3-5.ゲームやスマホをさわる時間を制限しよう!
続いては、生活習慣に目を向けていきましょう。
テレビやゲームは、子どもの興味を惹き付ける内容のものが多いですが、ついつい長い時間見ていませんか?
1日1時間と決めたり、幼児なら「今長い針が6だから、10までね」と時間で区切るようにしてもいいでしょう。
筆者の家庭では、テレビは1日30分程度、ゲームは20分程度としています。時間を区切る理由を伝えることもポイントですよ。
「続けて見たり遊んだりしていると、目が悪くなるね」と伝えると、納得して自分からやめることもあるでしょう。
ゲームをよくするお子さんの場合、ゲーム以外のおもしろい遊びが見つかるといいですね。
筆者の場合、食後にトランプやかるた、すごろくなどを子どもとしています。
家族で一緒にカードゲームやボードゲームなどで遊ぶのは、親子の会話も生まれ、楽しいですよ。
3-6.栄養のバランスがとれた食事をしよう!
食事を見直すことも大事ですよ。
体を作る上で大事な「筋肉を強くする栄養素」と「骨を強くする栄養素」を紹介しますね。
「筋肉を強くする栄養素」は、タンパク質とビタミンB6です。筋肉はタンパク質でできています。肉、魚介類、卵、大豆製品、乳製品から摂取できますよ。
食事で摂取したタンパク質は、ビタミンB6の働きによって体内で効率的に利用され、体の成長や健康につながります。ビタミンB6はバナナや赤身からとれますよ。
「骨を強くする栄養素」は、カルシウムとビタミンD、Kです。
子どもは、骨の量が増加する時期ですので、骨の材料になるカルシウムは積極的にとりましょう。乳製品や小魚、海藻、大豆などに多く含まれていますよ。
ビタミンDはカルシウムの吸収をサポートし、ビタミンKは骨形成、骨量の維持に役立ちます。
ビタミンDは魚やきのこ類に、ビタミンKは納豆や緑黄色野菜から摂取できますよ。
食事をするときには、子ども達に食べ物の栄養や役割のことを伝えると食育にもつながり、前向きに食事を楽しめるでしょう。
3-7.朝ご飯をきちんと食べよう!
保育の現場で、普段は活発な子どもが活動に消極的な場合、朝ご飯を少ししか食べていなかったり、全く食べていないことがよくあります。
私たちは、子どもが「朝にご飯を食べなかった」と話したり、連絡帳の朝食欄が未記入であることから家庭の様子を知るのですが、そのたびに朝ご飯の重要性を感じます。
朝に、体を動かす為のエネルギーを補給し、1日の活動に備えましょう。
きちんとご飯を食べることで、体だけではなく心も元気になり、前向きに活動に取り組めるようになりますよ。
たくさん体を動かすことにもつながり、子どもロコモの予防になるでしょう。
4.運動習慣と生活習慣を整えて、子どもロコモを予防しよう!
子どもロコモの予防は、身近な運動習慣と生活習慣を見直すことが大切ですね。
今回ご紹介した解決策に、実践できそうなものはありましたか?
たくさんのことをしようとすると、続かないかもしれません。まずは、1つか2つできそうなものから取り組んでみましょう。気軽な気持ちで取り組んでみながら、子どもによって合う活動を続けてくださいね。
余裕がでてきたら、他の解決策にもチャレンジです!効果も大きくなりますよ。
やってみる中で、子どもの頑張りや変化に目を向けて、褒めたり励ましたりするとさらに効果が大きくなります。
取り組む過程も楽しみながら、子どもの成長を見守ってくださいね。
参考文献
・認定NPO法人 全国ストップ・ザ・ロコモ協議会「子どもロコモ読本」
・スポーツ庁「令和3年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果(概要)について」
・医療法人かわの内科胃腸科 院長 河野政典/管理栄養士 堀田千晶「食事からこども達の「ロコモ」を予防しよう!」
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