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子どもにご褒美を与えるのはよくない?”本当”のやる気を高める方法とは!?

お子さんに何かを頑張ってほしい!という時にご褒美を用意することはよくありますよね。

しかし一方で、「子どもにご褒美をあげることはよくないのでは?」と不安に思う保護者の方も多いと思います。

ご褒美をあげることがよいのか、悪いのか、その答えは研究によってさまざまです。

しかし、ご褒美の使い方によっては子どもの”本当の”やる気を高めることができます。

人間のやる気が高まるメカニズムを知ることで、お子さんの”本当の”やる気は高まります!

今回は、4歳から6歳くらいのお子さんのやる気を引き出すためにご褒美を取り入れる実践方法を紹介します。

 

目次

1.子どもへのご褒美はこんな場面で役立つ

 

保育園・幼稚園に通うお子さんに、家でも頑張ってもらいたいことがたくさんあると思います。

でも、子どもが自発的に行動することはなかなか難しいこともありますよね。

そんな中、次のような場面でご褒美を設けると、お子さんがやる気になってくれます。

 

1-1.苦手なことに挑戦するとき

苦手なことに対しては誰もが「やりたくない!」と避けてしまうことがありますよね。

例えば
・歯医者に行く
・苦手な食べ物を食べる

など、初めてのことや一度経験して苦手意識があることには、行動するハードルが上がってしまうことがあります。

そんな時にご褒美があると「終わったらご褒美があるから少しだけ頑張ろう!」と思いますね

「苦手だ」と思っていても、実際にやってみると思ったよりも平気だった!という経験も積むことにつながります

 

1-2.興味のないことに挑戦するとき

自分のしたいことや遊びたいことに興味津々なこの時期。

例えば
・お勉強
・お手伝い
・習いごとの練習

など、親としては早期から取り組んで力をつけてほしいと考えることはたくさんあると思います。

しかし「~しようよ」と誘っても、自分のしたいことが優先になりがちです。

そんな時にご褒美を設定することで「やってみようかな」という気持ちを生むことができます

 

1-3.毎日継続して取り組んでほしいとき

毎日のルーティンである
・歯磨き
・お着替え
・お片付け

なども、お子さんに自主的に取り組んでほしいですよね。

しかし、面倒なことは保護者の方に甘えてしまったりやりたくないと逃げてしまったりすることもあります。

このような場面では、自分でがんばって取り組んだらシールがもらえるなどのご褒美があると、少しずつシールをためようと頑張って取り組むことができます

 

2.人がやる気になるメカニズム~ご褒美との関係~

ご褒美を設定する具体的な場面を思い浮かべると、
「本当にご褒美をあげても大丈夫なのかな?」
「ご褒美で本当に頑張ってくれるのかな?」
「できれば、自分からできるようになってほしいんだけど」

と心配になる保護者の方もいるでしょう。

しかし、ご褒美を使うと”本当の”やる気を高めることにつながることが、さまざまな研究から明らかになっています

 

2-1.内発的動機付けと外発的動機付け

まず、人間が何か行動するときの様子を想像してみましょう。

例えば勉強をする時、「勉強しよう!」と思うには目的やきっかけが必要です。

その目的やきっかけを「動機付け」と言います。

動機付けは「内発的動機付け」と「外発的動機付け」の2つに分けられます。

ご褒美はこのうち「外発的動機付け」に当たります。

①外発的動機付けの例

外発的動機付けとは、外部からもたらされる他の物事の達成のために、その行為が行われる動機付けです。

●お小遣いやおもちゃなどのご褒美(~が欲しい)
●ランキング(人より優位に立ちたい)
●褒め言葉や感謝の言葉(周りの認められたい)
●罰則や降格(嫌なことは避けたい)

 

②内発的動機付けの例

内発的動機付けとは、自分自身の内面から沸き立つ、興味、意欲、関心をもとに行われる動機付けです。

●楽しさ(本を読むことが楽しい!)
●面白さ(サッカーの練習が楽しい!)
●好奇心(ひらがなを読んでもっといろいろなことを知りたい!)
●やりがい(お片付けをしたら気持ちがいいな!)
●達成意欲(毎日練習したら自転車に乗れるようになった!)

 

2-2.子どもが自分でできるようになる”本当の”やる気

「外発的動機付け」と「内発的動機付け」の2つのうち「内発的動機付け」が行われると、自発的な行動が増えると言われています。

「楽しい」「もっと知りたい」というポジティブな感情がベースとなるため、行動の継続率も高い傾向にあります。

この「内発的動機付け」が”本当の”やる気につながります。

また、人間にはもともと次の3つ欲求が備わっています。

●有能性:自分はできる!もっとできるようになりたい!誰かの役に立ちたい!
●関係性:周りの人と一緒にやりたい!仲良くしたい!
●自立性:自分でやることを決めたい!好きな物を選びたい!

これら3つの欲求がそそられることで”本当の”やる気がうまれ、お勉強やお手伝いなどをお子さんが自ら「やりたい!」と思うようになります

 

2-3.ご褒美で”本当の”やる気を引き出す

ここまでを見ると「ご褒美は外発的動機付けだから、”本当の”やる気につながらないのでは?」と思うこともあるでしょう。

しかし、ご褒美という「外発的動機付け」をうまく活用することでこの”本当の”やる気を引き出すことができます

例えば

●ご褒美を目当てに勉強を頑張る
→→→ 問題が解けるのが楽しい!もっと解けるようになりたい!
●ご褒美を目当てに習いごとに行く
→→→ お友達と一緒にできるのが嬉しい!
●ご褒美を目当てに着替えを頑張る
→→→ 自分で好きな服を選んで着たい!

苦手なことや初めてのことに対して、ご褒美をきっかけに挑戦することで、できる嬉しさやそのこと自体の良さや面白さを感じ、”本当の”やる気がお子さんの中に沸き立っていきます

これが、ご褒美の効果なのです。

 

3.子どもへのご褒美が逆効果になることも

ここまで見てきたように、ご褒美は”本当の”やる気を引き出すためにとても有効な手段です。

しかし使い方によっては、ご褒美がお子さんの中にある”本当の”やる気をそいでしまう可能性もあります。

有名な実験を例に見ていきましょう。

 

3-1.ご褒美が”本当の”やる気を奪う

幼稚園児を対象にした実験があります。この実験では、3つのグループに分けてお絵描きをしてもらいました。

・グループA
絵を描いたらご褒美(賞状とリボン)をあげることを事前に伝えておき、絵を描いたらご褒美をあげる。
・グループB
ご褒美をあげることは伝えず、絵を描いたらサプライズでご褒美(賞状)をあげる。
・グループC
絵を描いてもご褒美はあげない。

2週間後の結果はどうなったでしょう。

グループBとグループCの園児はその後もお絵描きを自主的に楽しんでいました。

しかしグループAの園児は絵を描く時間が減り、お絵描きに対する興味も失ってしまいました。

「〇〇したら~してあげる」というご褒美を習慣化することで、「ご褒美がないから頑張らなくていい」という発想につながってしまいます

お子さんの中に眠っていた”本当の”やる気を、ご褒美という制度が奪ってしまう恐れがあるのです

これを『アンダーマイニング効果』と呼びます。

ご褒美をもらうこと自体が目的になってしまい、本来やっていた行為へのやりがいを感じられなくなってしまうのです。

 

3-2.結果に対してご褒美を与える

子どもを2つのグループに分けます。

ご褒美は報奨金です。

・グループA
「成績がよくなったらご褒美を出す」と知らされている。
・グループB
「本を読む、宿題を出す、きちんと出席する、制服を着る」といった過程に対してご褒美が与えられる。

2つのグループの学習効果を比較した結果、努力に対してご褒美が与えられたグループのほうに学力向上が見られました。

努力にご褒美が与えられたグループはやることが明確だったため、自然と学力も向上したと考えられます。

このグループの子どもは学力が上がったことに純粋に喜びを感じることができ、今後は努力することに“本当の”やる気をもって取り組むことができるでしょう

 

3-3.ご褒美を効果的に活用するポイント

これらの実験の結果を踏まえて、

ご褒美を与える時には、以下は避けるように注意しましょう。
●ご褒美をあげることが習慣になる(~したら必ずご褒美がもらえる)
●結果に対してご褒美を与える(ご褒美がもらえるまでの過程が曖昧)

この2つをできるだけ避けながらご褒美を活用することで、子どもの”本当の”やる気を高めることができるでしょう。

 

4.子どもにご褒美をあげるときの具体的実践方法

お子さんの”本当の”やる気を高めるためにご褒美が効果的であること、一方でご褒美が逆効果になることがあることを見てきました。

これらを踏まえて、実際にご褒美を使って”本当の”やる気を引き出すための具体的なポイントをお伝えします!

 

4-1.子どもが努力したことにご褒美を与える

ご褒美を与える時には、お子さんの努力した過程に対して与えましょう

例えば

「ひらがなを書けるようになる」ではなく「毎日5個ひらがなのなぞり書きをする
「ピアノの曲が弾けるようになる」ではなく「毎日10分ピアノを弾く

のように具体的な行動を決めて伝えるとよいでしょう

また、結果に対してご褒美をあげるときにも声掛けひとつで過程に着目することができます。

「いやだったけど、歯医者に行ってピカピカにできたね!」
「苦いピーマンを頑張って食べたね!」

など、苦手なことに挑戦すること自体を、保護者の方はたくさん褒めてあげるとよいでしょう

 

4-2.ポイント制にして褒め言葉をたくさん伝える

ご褒美で毎回おやつなどのモノを与えていると、ご褒美がないときにはやらないという習慣がついてしまいます。

その代わりに ・シール ・ポイント ・スタンプ などを努力や過程に対して毎回あげて、目標の回数をクリアした時にご褒美をあげるようにしましょう。

またシールなどをあげる時に
・「今日は、お母さんに言われなくても自分からできたね!」
・「今日は、とっても集中してできたね!」
・「丁寧にやってくれて嬉しいよ!ありがとう!」

などの褒め言葉をたくさん伝えてあげましょう。

最初はスタンプやシールが欲しくて頑張っていたお子さんも、たくさん褒め言葉をもらうことで自分のできたことに自信をもてたり、感謝される喜びを感じられるようになるでしょう

 

4-3.ご褒美は自己決定の喜びを知るチャンスに

ご褒美を与える時には、保護者の方が決めた物を与えるだけでなく、お子さん自身が決められる機会にすることで自立性を伸ばすことにつながります。

例えば
・夜ご飯でお子さんが好きなメニューをリクエストできる
・次のお休みに遊びたいことを選べる

などの自己決定の機会を与えられるといいでしょう。

「自分のやりたいようにできる」というのは誰もが嬉しいものです。 そのためには、自分のことをきちんとやらなければならない、ということを学ぶ経験にもなります

 

5.ご褒美をきっかけに、子どもの”本当の”やる気を高めよう!

ご褒美は難しいこと、初めてのことに挑戦する「きっかけ」です

このきっかけを上手に活用して、お子さんの”本当の”やる気をたくさん引き出して、お子さんがいろいろなことに楽しく取り組む姿を保護者の方も一緒に喜べるといいですね!

 

 

参考文献
動機付け理論と学生指導への応用

 

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