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保育士が子どもに使う魔法の言葉!否定語から肯定語への言い換え方とは?

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  • 保育士

5学年差姉妹のママ。

元塾講師。在職中に保育士資格を取得しました。

佐々木正美先生の『子どもへのまなざし』シリーズが子育てのバイブルです。
自治体の子ども読書活動推進懇話会委員、学校の読み聞かせボランティアとしても活動しています!

「子どもがなかなか言うことを聞いてくれなくて、最後には大声で怒ってしまった」「子どもの寝顔を見ながら、昼間あんなに怒らなくても良かったのにと後悔した」など、子育て中の多くの方が、こんな経験をしているのではないでしょうか。

「なんで言うことを聞いてくれないんだろう」「もしかして言っていることが子どもにうまく伝わっていないのかな?」といったお悩みの理由は、無意識のうちに「否定語」をたくさん使っているからかもしれません。

思い返してみると、「そっちは危ないから行かないでね」「コップの牛乳、こぼさないようにね」など、普段よく使うフレーズにも否定語が含まれていますね。

子どもも大人もストレスなく言いたいことを伝えるのにおすすめなのが、普段何気なく使っている否定語を肯定語に言い換える方法です。

SNSでも「保育士さんが使っている魔法の言葉」として、否定語から肯定語への言い換えが話題になっています。

今回は、そもそも否定語が子どもに伝わりにくい理由と、肯定語を使うことで得られるメリットについて解説し、すぐに使える「否定語から肯定語への言い換えリスト」もご紹介します!

この記事を参考に、「肯定語への言い換え」をぜひ実践してみてくださいね。

 

目次

1.なぜ子どもへ「否定語」だとうまく伝わらないの?

「ダメ!」「〇〇しないで!」と強い口調で言っても子どもの行動が変わらないのは、否定語で伝えようとしているからかもしれません。

まずはなぜ否定語だと子どもにうまく伝わらないのか、その理由を3つにわけて解説します。

 

1-1.子どもにとって「否定」のイメージが難しい

否定語で注意されたとき、子どもがその内容をイメージし、一瞬で理解するのはとても難しいことです。実は子どもだけでなく、大人にとっても否定のイメージをすることは難しいと言われています。

それでは「否定」をイメージすることの難しさについて、実際に体験してみましょう。今から否定の形で指示を出しますので、指示に従ってみてくださいね。

〈2匹の白い子犬がじゃれ合っているところを想像しないでください〉

いかがですか?「想像しない」ことができましたか?

おそらくほとんどの方が「じゃれ合っている2匹の白い子犬」を思い浮かべてしまったのではないでしょうか。

このように、否定のイメージをするには、脳内でまず一旦否定される内容を思い浮かべて、それから否定であると理解する作業が行われることになります。

そのため否定をイメージするのは、肯定のイメージをするよりも時間がかかってしまうのです。

脳が成熟した大人でも否定のイメージに時間がかかるということは、まだ脳が発達途中の子どもにとっては、より難しい作業であることがわかるでしょう。

そのため否定語で注意されても、子どもはとっさに応じられないことがあるのです。

 

1-2.否定されるだけでは何をして良いのかわからない

もし道を歩いているとき、「ここは危険なので通らないでください」と言われたらどうでしょうか?

大人であれば、その場所をよけて通る、別の道で迂回するなどの対応ができます。このような対応をすぐに取れるのは、大人がこれまでに多くの経験を積み重ねているからです。

それに対して子どもは、突然否定語で注意されても、それだけでは次にどんな行動をとって良いかがわかりません

成長途中にある子どもは、日々さまざまな経験を積み重ねている真っ最中です。

今の行動を否定されたあと、次にどんな行動をとったら良いのか、経験が足りないためわからないのです。その結果、「ダメ!」「〇〇しないで!」と言われたその行動を、すぐに止められずに続けてしまうのですね。

スムーズに行動を切り替えてもらうには、「〇〇しないで!」のかわりに「〇〇しよう!」と言う方が伝わりやすく効果的です。

 

1-3.否定されると子どもが萎縮してしまう

家庭や職場で自分の言葉や行動を否定するような注意を受けたとき、まるで人格も否定された気持ちになったことはありませんか。実際は行動についての注意であると頭でわかっていても、気が滅入ってしまうこともありますよね。

子どもにやめてほしいことやしてほしくないことを伝えるときに、否定語ばかりを使っていると子どもも同じように悲しい気持ちになります。

大人は行動に対して否定語を使っているつもりでも、子どもは自分自身を否定されているような気持ちになってしまうかもしれません。

否定語を使って大きな声で怒られると、「なぜしてはいけないのか」の理由を考える余裕もなく、子どもはただただ萎縮してしまいます。

理由がわからないまま萎縮してしまうことが続くと、行動の理由が「怒られるからやめる」「怒られるからやらない」になり、自主的に行動する意欲が低くなるリスクもあります

 

2.子どもへの言葉を「肯定語」に言い換えるメリット

子どもに伝わりにくい「否定語」を「肯定語」に言い換えると、どのような良いことがあるのでしょうか?ここでは「否定語」を「肯定語」に言い換えるメリットを3つご紹介します。

 

2-1.子どもが取るべき行動がわかりやすい

「ダメ!」「〇〇しないで!」という否定の言葉だけでは、子どもは何をして良いかわからず戸惑ってしまうと先述しました。

否定の言葉のかわりに「〇〇してみよう!」「〇〇できるかな?」と肯定語を使うと、どのような変化があるでしょうか?

肯定語に言い換えて伝えると、否定語で伝えていたときに比べて、何をしたら良いか子どもがすぐに理解できます。

次に取るべき行動が明確にわかるので、発達途中でまだ経験が少ない子どもも、戸惑うことなくその行動を取れるでしょう。そしてその場面でとった行動が、新たな経験として子どもに蓄積されていきます。

肯定語で伝えられる→取るべき行動がわかる→行動できた!

これをくり返すことで、今後同じような場面に出会ったとき、自主的に行動できるようになります。

 

2-2.子ども親も穏やかな気持ちでいられる

否定語を使ってうまく伝えられず、子どもがなかなか言うことを聞いてくれないと、イライラして思わず怒ってしまうこともありますよね。

怒りたくて怒っているわけではないだけに、自分も嫌な気持ちになったり、落ち込んだり後悔したりしてしまうことは、子育て中なら誰もが経験していると思います。

否定語から肯定語に言い換えて具体的に伝え続けることで、子どもはだんだんと場面ごとに望ましい行動を取れるようになっていきます

そうすると何度も注意する必要がなくなるので、親もイライラすることが減り、穏やかな気持ちで過ごせるようになります。

子どもも「どうして良いのかわからないのに、ただ怒られた」という思いをしなくなり、ストレスを感じることもなくなるでしょう。

親子とも穏やかな気持ちでいられるので、一緒に過ごす時間がより楽しくなりますね。

 

2-3.子どもの自己肯定感が高まる

子どもの自己肯定感を高めるために大切なのは、子どもに「ありのままの自分をまるごと受け止めてもらえている」という感覚を持たせることです。

否定語を多く使っていると、大人にそのつもりがなくても、子どもに「あなたを受け入れていない」という誤ったメッセージが伝わってしまう恐れがあります。

否定語を肯定語に言い換えることで、誤ったメッセージが子どもに伝わるリスクを抑えられ、取るべき行動がわかりやすいので「自分でちゃんとできた!」という自信にもつながります

何度もしつこく注意をしたり、大声を出したりする必要がなくなることで親も心に余裕が生まれ、穏やかな気持ちで子どもに接することができます。

その結果、子どもが「自分は受け入れられている」という感覚を得られ、子どもの自己肯定感を高めることが期待できます。

 

3.保育士が使う「肯定語」をまねしてみよう!

保育士さんが、一人でたくさんの子どもたちを上手に導いている様子を見ると、「さすが!」と感心してしまいますよね。

そんな保育士さんたちは、普段から意識して否定語から肯定語への言い換えをしているとのことです。

ここでは実際に保育士さんが使っている「否定語」から「肯定語」への言い換えで、家庭ですぐにまねしてみたい3つのフレーズをご紹介します!

 

3-1.「しゃべらないで!」→「お口を閉じて静かにしようね」「お口チャックのままでいてね」

子どもたちに静かにしていてほしいとき、保育士さんたちは「しゃべらないで!」という否定語を「お口を閉じてしずかにしようね」「お口チャックのままでいてね」という肯定語に言い換えます。「お口チャック」は比喩表現ですが、子どもたちにわかりやすく伝わる定番の言い換えですね。

ほかにも、「見えないあめ玉をあげます!みんなお口をあけてね。はい、入れました!お口を閉じて落とさないようになめてね」というパターンもあるそうです。

これならきっと、子どもたちは楽しい気持ちのまま静かにできるでしょう。親子で過ごすとき、公共の場所など静かにしてほしい場面でさっそく使える言い換えです。

「見えないあめ玉をあげるね」と言いながら、あめ玉を口に入れてあげる動作もつけるとより効果的です。

 

3-2.「走らないで!」→「歩いてね」「座っていてね」

子どもたちみんなで廊下を移動している時や、給食の準備をしている時、走ると危ない場面で保育士さんが使うのは「歩いてね」「座っていてね」という言葉です。

「走る」という行動をやめて、どんな行動をとってほしいのかが明確に伝わります。

車が行き交う道路やたくさんの人で賑わうショッピングモール、買い物客で混雑したスーパーなど、親子でいるときも走ると危ない場面はたくさんありますよね。

そんなときは「走らないで!」を「歩いてね」や「止まってね」に言い換えて伝えてみましょう。「ゆっくり歩こうか」「手をつないで一緒に歩いてくれると嬉しいな」「一度止まろう」とより具体的に言うと、さらに伝わりやすくなります。

 

3-3.「ダメ!」→「止まって!」「ストップ!」

子どもの身が危険なとき、動きを制止するためとっさに大声で「ダメ!」と言ってしまうのは当然のことです。

大声で子どもの動きを止めたら、あとから「〇〇だから危ないんだよ」と理由を教えてあげられると良いですね。

こんなとっさの場面でも、保育士さんの否定語から肯定語への言い換えが使えます。

保育士さんは否定語である「ダメ!」を肯定語である「止まって!」や「ストップ!」に言い換えるそうです。

「止まって!」「ストップ!」と言い換えることで、今すべきことが「止まる」という動作であると明確に伝わります。

声をかけたあとも、安全を確保した上で止まらなければならなかった理由をしっかりと伝えましょう。

 

4.家庭で使える「否定語→肯定語」の言い換えワード12

保育士さんが使う否定語から肯定語の言い換えワードを、先述した3つに加えさらに12個ピックアップしてご紹介します。

家庭でもすぐ使えるものばかりなので、ぜひ言い換えを試してみてくださいね。

 

4-1.すぐに使える「否定語→肯定語」の言い換えワード12

  1. 「さわらないで」→「ここから見るだけね」「そっとしておこうね」
  2. 「立たないで」→「座っていてね」
  3. 「こっちに来ないで」→「今の場所で待っていてね」「〇〇にいてね」
  4. 「そっちに行かないで」→「ここにいてね」「ママのそばにいてね」
  5. 「動かないで」→「今の場所で止まっていてね」「今の場所でお地蔵さんのまねをしていてね」
  6. 「のぼらないで」→「おりて下にいようね」
  7. 「大きな声を出さないで」→「小さな声でおはなししよう」「ありさんの声でおはなししようね」
  8. 「よそ見しないで」→「こっちを見て」「前をよく見てね」
  9. 「手を離さないで」→「しっかり手をつないでいてね」「ママの手をギュッとにぎっていてね」
  10. 「もたもたしないで」→「超特急でやっちゃおう!」
  11. 「こぼさないで」→「しっかり持ってね」「もう少し前に置いてね」
  12. 「たたかないで」→「お口でおはなししてね」「やさしくしてね」

 

4-2.「否定語→肯定語」言い換えのコツは?

否定語から肯定語へ言い換えるコツは、してほしくないことよりも「してほしいこと」を伝えることです

否定語を使ったときに、「その行動を止めて、何をしてほしかったのか」を振り返って考えてみてください。

その「してほしかったこと」をわかりやすく具体的に言葉にしたものが、肯定語の言い換えワードになります。

否定語を使ったときには、どんな肯定語で置き換えられるか考えて、次の同じような場面に備えられると良いですね。

 

4-3.肯定語と否定語をうまく組み合わせよう

否定語から肯定語への言い換えについて解説してきましたが、否定語を絶対に使ってはいけない、というわけではありません。

否定語から肯定語の言い換えが重要なのは、子どもが取った行動に直接働きかけるときです。

肯定語で働きかけたあと、否定語も組み合わせて説明することで、上手に子どもの行動を導けます。

たとえば、「ゆっくり歩こうね。お友だちとぶつかったらけがしちゃうから、走らないでね」と、先にしてほしい行動を伝えてから、してほしくない行動とその理由もあわせて伝えてみましょう

否定語も交えることで、しないほうが良い行動とその理由、そのかわりにしたほうが良い行動がセットで理解できます。このような経験ひとつひとつが積み重なり、子どもの成長に合わせた自主的な行動につながっていきます。

 

5.肯定語で言葉がけをして子どもの可能性を伸ばそう!

否定語を肯定語に言い換えて伝えることで、子どもは自然に自分が認められているという感覚で過ごせるようになります。

自分が認められているという感覚は、子どもの「自分が好き」という感情の土台になります。たくさんの肯定語で話しかけて、子どもの可能性を伸ばしていきましょう!
 

・非認知能力がどうして大事なの?効果は?

・情報を知ることがどうして大切なの?

こちらで詳しく解説中です!

 

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