国語力って何?子どもの国語力を伸ばすために家庭でできる3つの方法
この記事を書いた人
よつば
- 幼稚園教諭
- 小学校教諭
- 保育士
幼稚園で2年、保育所で3年の勤務経験があります。
現在は小学2年生の息子と4歳(年少)の娘の子育てをしながら、記事執筆をしています。
毎晩寝る前に子ども達に絵本を読み聞かせるのが日課です。
「これからの時代は国語力が大切」「子どもの国語力が低下している」などの言葉を聞いたことはありませんか?
「国語力」とは単に国語教科の問題を解く力というものだけではありません。これは全ての教科や大人になってからの生活にも役立つ力です。
子どもの国語力を高めたいけれど、どのようにトレーニングしたらいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、子どもの国語力を高めるために家庭で簡単に実践できる方法をご紹介します。
目次
1.国語力とは
「国語力」とは、一言であらわすと学習や生活で必要な日本語の力です。
つまり全ての勉強の基本となる力であり、学習面だけでなく人とのコミュニケーションや日常生活など、生きていくうえで非常に重要な力です。
ここでは、国語力がどのような力なのか詳しく解説していきます。
1-1.国語力を構成する2つの領域
文部科学省文化審議会答申「これからの時代に求められる国語力について」では、これからの時代に求められる国語力は2つの領域で構成されていると述べられています。
- 考える力,感じる力,想像する力,表す力から成る,言語を中心とした情報を処理・操作する領域
- 考える力や,表す力などを支え,その基盤となる「国語の知識」や「教養・価値観・感性等」の領域
1の領域は国語力の中核として考えられており、
- 考える力
- 感じる力
- 創造する力
- 表す力
上記4つの力は、具体的な言語活動である「聞く」「話す」「読む」「書く」として現れます。
続いて、2の領域は1で解説した4つの力を支え、基盤となるものです。
「国語の知識」とは主に学校教育で習得する、次のような知識のことを指します。
- 語彙
- 文法
- 漢字
- 慣用句
2の領域における「教養・価値観・感性等」は個人の根幹的な部分を形成し、これが1の領域の「考える力」「感じる力」「創造する力」「表現する力」につながります。
つまり、「教養・価値観・感性等」は「国語の知識」によって支えられ、これらの要素が「考える力」「感じる力」「創造する力」「表現する力」の基盤となり、最終的には「聞く」「話す」「読む」「書く」といった具体的な国語活動につながるということです。
このように、国語力とはこの2つの領域が相互に影響し合って構成されている重要な力です。
1-2.子どもの国語力が低下している
現代において、日本の子ども達の国語力が低下しているという懸念が広がっています。この懸念の背景には、2018年に実施されたOECDの学習到達度調査(PISA)の結果が関連しています。
OECDとは、ヨーロッパを中心に日本、アメリカなど38ヵ国の先進国が加盟する国際機構です。この調査において、日本の子ども達が「数学的リテラシー」と「科学的リテラシー」の分野で世界トップレベルの得点を獲得していました。
その一方で、「読解力」の項目においては前回の調査に比べて順位が下がっていたことが大きな話題となりました。
具体的には、日本の読解力の得点はOECD平均得点を上回ってはいるものの、特に低得点層が増加していることが明らかになりました。
また、文部科学省・国立教育政策研究所はこの結果を受け、以下の点に課題があると指摘しています。
- テキストから情報を探し出して答える
- テキストの質と信ぴょう性を評価する
- 自分の考えを他者に伝わるように根拠を示して説明する
こういったことから、日本の子ども達の国語力の低下が問題視されており、子どもたちの国語力向上が重要な課題となっています。
引用:文部科学省・国立教育政策研究所「OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」
2.国語力がつくと何に役に立つ?
国語力は、国語の学習だけに必要な力だけでなく、様々な場面で重要な力です。ここでは、国語力が何に役に立つのかについて具体的に解説します。
2-1.国語以外の教科にも役立つ
国語力は、国語の教科以外のすべての学習に必要不可欠な力です。つまり、国語力があると国語以外の教科の学習もスムーズに理解できるようになります。
例えば、算数の文章題を読んで計算式に変換する際、適切な解釈と表現が必要です。また、教科書の文章を理解し、その内容を吸収するためにも国語力が要求されます。
さらに、様々な教科に関する情報や知識を得るためには、本や文献を読み解くスキルが求められます。
これらの活動は国語以外の教科でも日常的に行われており、どれも国語力が基盤となっています。
国語力が備わることで、異なる教科においても効果的な学習が可能となり、知識の習得や問題解決能力の向上が期待できるでしょう。
2-2.人とのコミュニケーションに役立つ
国語力は人とのコミュニケーションを円滑に進めるためにも役立ちます。
コミュニケーション能力とは、人と意思疎通をするための力です。人と意思疎通をするには、相手の話を聞いて理解し、自分の思いや考えを適切な言葉で表現する必要があります。
これらのスキルはすべて国語力が必要不可欠です。
人と会話をする際に、相手の話の意図を正しく受け取れないとすれ違いが生じます。また、自分が話をする際に、自分の気持ちを適切な言葉で表現できないと、相手に上手く伝わらない場合もあります。
このように、国語力は人とのコミュニケーションを円滑にし、人間関係を良好に保つためにも必要となります。
2-3.大人になってからの生活に役立つ
国語力は大人になってからも生涯にわたり役に立つ力です。
仕事においては、報告書の作成やプレゼンテーションなど、文章や言葉で情報を表現し、効果的に伝えるスキルが必要とされます。
普段の生活でも、国語力は非常に重要です。例えば、家電製品や薬の説明書を読んで正しく理解し、安全に使用する能力は生活の質を向上させます。
また、情報社会においては、インターネットを通じて情報を収集し、信頼できる情報かを見極める力が求められます。さらに、自分の興味や関心に応じて書かれた本や記事を理解し、楽しむことが、知識の増加や趣味の充実につながります。
国語力は、キャリアや個人の成長において不可欠なスキルです。生活のあらゆる局面で国語力を活用できると、より豊かな生活を築くことができるでしょう。
3.国語力を伸ばすために家庭でできるトレーニング方法3つ
ここからは子どもの国語力を伸ばすためのトレーニング方法をご紹介します。どれも家庭で簡単にできるのでぜひ実践してみてくださいね。
3-1.読み聞かせをする
子どもの国語力を伸ばすためには絵本や童話などの読み聞かせがおすすめです。国語力は読書と密接に関係していると言われています。
しかし、読書習慣のない子どもにいきなり読書をさせるのは難しいことです。そこで、本に親しみを持ち、読書の楽しさを知るために、親子での読み聞かせが有効となります。
子どもに好きな本を選んでもらい、毎日読み聞かせを行いましょう。集中力が続かない場合は、短い絵本でも構いません。読み聞かせを続けることによって集中力がつき、長いお話も聞けるようになってきます。
長いお話が聞けるようになったら、絵のない児童文学の読み聞かせもおすすめです。絵本と異なり、耳だけの情報でお話を聞くので、話を聞いて内容を理解する力が養われます。
筆者の家庭でも、毎晩寝る前に児童文学を少しずつ読み聞かせしています。ベッドに入った状態で読み聞かせをするので、子どもの気が散ることがなく、お話に集中できますよ。
このように、お話に親しむことで、読書の楽しさを知り、読書習慣が身につくでしょう。読書習慣を育てるために、親子での読み聞かせを楽しんで続けていくことが大切です。
3-2.親子でたくさん会話をする
国語力を身につけるためには、親子の会話が大切です。まず、子どもとの会話に耳を傾け、会話のキャッチボールを続けてみてください。
子どもが話をしてきたとしても、親が「ふーん」と簡単な返答で終わらせてしまうと、会話は終わってしまいます。もし親がわからない話題だった場合は、「それはどういうこと?」「ママに教えて?」などと質問しましょう。
質問を通じて、自分の思考を整理し、言葉で表現する力のトレーニングになります。
また、幼児期の子どもは「なぜ?どうして?」といった質問をたくさんする時期です。親が知っていることであれば、丁寧に説明をしてあげましょう。
知識が及ばない場合でも、「どうしてだと思う?」と逆に質問することで、子どもは考える力を養い、自分の思考や感情を表現する力が養われます。
親子間で言葉のコミュニケーションを積極的に行うことで、子どもの語彙が豊かになり、話を聞く力や伝える力が向上します。このようなコミュニケーションは、国語力を発展させ、親子の絆を深められるでしょう。
3-3.言葉を使った遊びをする
言葉を使った遊びは国語力を伸ばすために非常に有効な方法です。
言葉遊びには、以下のようなものが挙げられます。これらの遊びは豊富な語彙力が必要です。
- しりとり
- なぞなぞ
- 連想ゲーム
- ダジャレ
- なぞかけ
例えば、しりとりは言葉をたくさん知っていなければ遊びを続けるのは難しいでしょう。
最初は言葉が思いつかない場合もあるかもしれませんが、その際には親がヒントを出しても構いません。徐々に慣れてくると、子どもの語彙力も増加し、遊びがスムーズに進行するようになります。
さらに、これらの言葉遊びは特別な道具が不要で、どこでも簡単に楽しめるのが魅力です。ちょっとした待ち時間や、家の中で過ごす時間にも適しています。
子どもたちが楽しいと感じる中で、国語力の向上が期待できるでしょう。
4.子どもの国語力を伸ばす親の話し方
子どもの国語力を伸ばすためには、親の話し方も重要です。ここでは、親が子どもと話す際に気をつけるポイントを解説します。
4-1.親の考えを具体的に言葉にして伝える
国語力を伸ばすためには、短文や単語だけで話すのではなく、きちんとした文章で話すことが重要です。このスキルはコミュニケーション能力や表現力の向上にもつながります。
そのためには、親が具体的な言葉で子どもに話しましょう。親が子どものお手本となり、具体的な言葉で意思や感情を伝えることが重要です。
たとえば、子どもを叱る際に「ダメでしょ!」と言うのではなく、叱った理由やその時の親の気持ちなどを具体的に伝えるようにしましょう。
子どもがお店の中で走っていたことを叱る場合は、「お店で走ると人にぶつかって怪我をするかもしれないし、他のお客さんが気持ちよく買い物できないでしょ?だからお店の中では走らずに静かに歩きましょう」といった具体的な説明をすると、子どもはなぜ叱られたのかを理解しやすくなります。
このような具体的なコミュニケーションを続けていくと、子どもは具体的な言葉を使った会話を学び、友達や家族以外の人とのコミュニケーションも円滑に行えるようになるでしょう。
4-2.子どもの言葉を先取りせず自分で話させる
子どもと会話をするときには子どもの言葉を先取りせずに、自分で最後まで話させるようにしましょう。
子どもの言葉を先取りするとは、子どもが話している途中で、意図を理解し、それを先に言葉にしてしまうことです。子どもが一生懸命話そうとしている最中で親が先に話すと、自分で文章を組み立てて話す力がつかず、自分の意見や感情を表現する自信を失う可能性もあります。
そのため、子どもの言葉が詰まっていても、最後まで自分で話せるように待つようにしましょう。
また、子どもとの会話中、威圧的な雰囲気を出さないように気をつけることも大切です。相槌をうったり、「ゆっくりでいいよ」と声をかけることで、子どもが安心して話せる環境を作りましょう。
4-3.子どもにとって少し難しい言葉も取り入れる
子どもと会話をするときには子どもが知らないような難しい言葉も使うようにしましょう。
子どもにわからない言葉を避けて簡単な言葉ばかり使うと、子どもの語彙力はあまり伸びません。むしろ、新しい言葉に触れる機会を提供することが大切です。
意図的に難しい言葉を使ってみて、子どもが「どういう意味?」と質問してきたら、その言葉の意味や使い方を教えてあげましょう。このようなやり取りを繰り返すことで、子どもは言葉の意味を理解し、語彙が増加していきます。
例えば、「この前のサッカーの試合は『健闘』していたね」という風に子どもが普段使わない言葉を意識して使ってみましょう。
子どもに「健闘ってどういう意味?」と聞かれたら丁寧に説明してあげてください。また、子どもが前後の文脈から言葉の意味を理解する場合もあり、これも文章を読み取るために重要な力です。
子どもに難しい言葉を使って話すことは、語彙力を向上させるだけでなく、好奇心を刺激し、学習意欲を高める手助けにもなります。
5.親子の対話を取り入れて楽しく国語力を伸ばそう
国語力は、あらゆる教科の土台となり、学習だけでなく、人間関係や日常生活においても重要な力です。
子どもの時から国語力を向上させるためのトレーニングを行うことで、一生涯、役に立つ力が身につきます。子どもの国語力を伸ばすためには、国語の学習に加えて、親子の会話やコミュニケーションが大切です。
この記事を参考にして、ぜひ親子で楽しみながら国語力を伸ばしてみてくださいね。
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