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小1から始める「キャリア教育」の効果と家庭で意識できること

この記事を書いた人

柳生有香子 柳生有香子

柳生有香子

  • 幼稚園教諭
  • 保育士

保育士、幼稚園教諭の資格所持し、保育園や児童発達支援、放課後デイサービスなどで計12年以上勤務してきました。

息子が3人います。

子育てや幼児教育、LDの子どもへの支援について関心が強く勉強しています。

子どもが小学1年生になると、学校の授業が始まることで、少しでも将来につながる教育をしていきたいと意識する親御さんも多いのではないでしょうか。

小学校ではキャリア教育が取り入れられていると聞いたけれど、キャリア教育とは何か?今ひとつイメージが湧かない方もいるかもしれません。

この記事では、小学校でのキャリア教育の内容や、キャリア教育が小学1年生の子どもに与えるメリットをわかりやすく説明します。

家庭でのキャリア教育のポイントも紹介しますので、子どもの可能性を広げるために、できる部分から実践してみてください。

 

目次

 

1.キャリア教育とは?

教科の勉強だけでなく、キャリア(仕事)についても小学生の子どもに働きかけるのは目的があります。ここでは、小学校でキャリア教育が始まった理由や、小学校でのキャリア教育から中学校や高等学校へのつながりを説明します。

 

1-1.キャリア教育が始まった背景

キャリア教育とは、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育(※1)」と定義されています。

簡単にいうと、「子どもが将来社会に出て、自分の力で生き抜いていく力をつけるための教育」と解釈できます。

国の取り組みとしてキャリア教育の必要性が初めて取り上げられたのは、1999年(平成11年)でした。IT化やグローバル化が加速していく社会を見据えて、学校教育にキャリア教育が登場しました。

速いスピードで変化する世界において、子どもたちは自分で未来を切り開いていく必要があります。キャリア教育がスタートしたのは、こうした時代の変化が理由です。

 

1-2.小学校がキャリア教育の土台

キャリア教育は小学校からスタートして、中学校、高等学校へとつながっていきます。

文部科学省が提示している「小学校キャリア教育の手引き(改訂版)」では、キャリア教育が小学校→中学校→高等学校と段階的に進められる全体図が示されています(※2)。

高等学校まで進むと、現実的に将来を設計し、社会に出る前段階として進路を絞る段階です。

小学校は、キャリア教育において基盤作りの時期です。この時期にしっかりと土台を固めておくことが、中学校や高等学校での伸びに大きく影響してくるでしょう。

 

2.小学1年生にキャリア教育をするメリット

高等学校まで続くキャリア教育全体の土台は、小学校だと確認しました。さらに小学校でのキャリア教育の中でも、1年生でどんな一歩を踏み出すかで、子どもの成長が変わってきます。

良いスタートを切るためにも、小学1年生へのキャリア教育を行う意味合いや、1年生でキャリア教育を受けるとどんなメリットがあるのかを把握しておきましょう。

 

2-1.1年生はキャリア教育のはじめの1歩

小学校への入学は、親子ともに節目となる大きな変化です。キャリア教育の視点から見ても、1年生でどんな1歩を踏み出すのかは重要です。

「小学校キャリア教育の手引き(改訂版)」では、キャリア教育での小学校低学年の課題として、「小学校生活に適応する(※3)」が1番目にあげられています。

入学したての1年生へのキャリア教育では、スムーズに学校に慣れることが重視されています。1年生の子どもにとって小学校は社会そのものなので、学校が楽しいと感じる気持ちが社会への興味や関心の芽になるためです。

つまずきを生じさせず、外の世界へ向けて肯定的な気持ちを育むことがキャリア教育のスタートです。

 

2-2. キャリア教育が与える良い影響

キャリア教育といっても、小学1年生で職業選択についての活動をするわけではなく、成長段階に合った内容が行われます。

「小学校キャリア教育の手引き(改訂版)」で小学校低学年の課題として「小学校生活に適応する」の次に掲げられているのは、以下の2つです。

・身の回りの事象への関心を高める
・自分の好きなことを見つけて,のびのびと活動する

子どもが将来社会で生きていく基礎として、

①人や物への興味
②自分の好きなことを楽しむ体験

の2つが必要だと示されています。小学低学年では、この目標に沿ったキャリア教育が進められています。

1年生へキャリア教育を行うと、子どもの好奇心や「楽しいからやってみる!」というやる気を膨らませられるのがメリットです。自分の世界が広がってワクワクする感覚を、1年生のうちにたっぷり味わってほしいですね。

 

3.小学校で実践されているキャリア教育

実際に小学校ではどのようなキャリア教育が行われているのでしょうか?具体例とともに紹介します。

 

3-1.小学校ではどの時間に取り組まれているか

小学校でキャリア教育は、道徳や生活などの教科学習のほか、特別活動や総合的な学習の時間に行われます(※4)。

地域のさまざまな立場の方を講師に招いてお話を聞いたり、グループ学習で友達と意見を出し合ったりするなど、取り組み方は多岐に渡ります。

例えば、1年生の1学期には、生活の教科学習として「がっこうたんけん(※5)」の授業が行われる場合があります。学校という場所について詳しく知ることで、安全に楽しく過ごせるようになるのが目的で、入学間もない時期の子どもにぴったりの活動です。

子どもが通う小学校ではどんなキャリア教育が行われているのか、保護者も気にかけておくと良いでしょう。

 

3-2.東京都町田市の実践

キャリア教育に積極的に取り組んでいる東京都町田市の実践例を紹介します。具体的な内容を知ると、小学校でのキャリア教育についてイメージが湧きやすいですね。

これまでに町田市のいくつかの小学校では、3年生の総合的な学習の時間にキャリア教育として、稲の苗を植えて育てたり、繭細工づくり体験の授業を行ったりしてきました。

他にも4年生の社会の学習として、染め物の職人さんを招いて技を見せてもらい、ランチョンマットを染める体験授業を実施した学校もあります(※6)。

こうして実際に自分で作業する時間は、バーチャルな世界にはない実感をもたらすので、子どもにとって貴重な体験です。自分の知らない世界を垣間見ることで、子どもは視野を広げて社会への好奇心を深められます。

 

3-3.秋田県大館市の実践

秋田県大館市は、「大館ふるさとキャリア教育(※7)」としてキャリア教育の充実に力を入れている自治体です。それぞれの小学校で、キャリア教育の授業が積極的に実践されています。

ユニークなのは、「大館きりたんぽまつり」に参加する取り組みです。

「きりたんぽまつり」は大館で続く歴史のあるお祭りで、子どもがボランティアとしてお手伝いしたり、本格的にドレッシングやパスタソースの商品開発をして販売ブースを出店したりする小学校もあります(※8)。

子どもにとって地域社会の行事に参加する、貴重な体験の場となっています。

キャリア教育を実践する具体的な方法は、地域の特色やクラスカラーに合わせて工夫できるように、ある程度学校や教師の裁量に任されている部分があります。

小学校での取り組みが、中学校、高等学校とへと連動していくので、親としても関心を持って応援していきたいですね。

 

4.キャリア教育を意識した家庭での関わり

学校での取り組み以上に、子どもの成長にダイレクトに影響するのが家庭でのキャリア教育です。子どもはいずれ社会の中で、自立を求められます。

将来の自立に必要な成長を見据えて、1年生の子どもには家庭でどのようなキャリア教育ができるのか、確認してみましょう。

 

4-1.好きなものを尊重される環境が意欲を育む

家庭で行うキャリア教育でのポイントは、子どもの興味や好きなものを大切に扱うことです。

まずは子どもの好きなものを尊重してください。生き物、電車、アニメ、スポーツ、工作、遊びなど、勉強に全く関係ないことでもかまいません。

子どもの興味を認めて、サポートする姿勢を示すことが大切です。そうした親の関わりは、子どもが安心して自分の興味を外へ向けて広げていける基地になります。

子どもの中に「自分の考えや感覚はこれでいいんだ」と肯定する気持ちを育てましょう。小学1年生の時期に重要なのは、子どもが自分の内側から湧いてくる感覚や意思に自信を持つことです。ここから好奇心や意欲が育っていきます。

 

4-2.家族で密に関わる時間が心を安定させる

1年生の子どもは、初めて学校という集団生活を経験し、集団の中の1人として活動します。一方、家庭は個人のスペースであり、集団の中の1人ではなく、自分だけに注目してもらえる場所です。

家族で密に関わる時間を通して、子どもは「自分はかけがえのない大切な存在なんだ」と実感できます。

子どもとの時間を確保し、家がほっとしてくつろげる居場所となるように心がけましょう。夕食を食べながら学校での話を聞いたり、一緒にお風呂に入ったりなど、日常の何気ない生活こそが子どもの心に栄養を与えます。

家庭から得られる情緒の安定は、学校生活の基盤であり、ひいては将来の自立に向けた基礎部分でもあります。

 

4-3.自己肯定感や安心感が人や社会への関心につながる

1年生のキャリア教育において家庭の役割は、子どもが「自分は自分でいいんだ」と自分を肯定する気持ちを育むことです。

自分を肯定できるからこそ、家族や友達、学校への肯定感が生まれます。自分や他者を肯定する気持ちが、お手伝いをしたり、学校の係をがんばったりする前向きな行動へとつながっていきます。

小学校で自信を持って行動できると、自分にはできることがあると実感し、働く意欲の源が芽生えます。自分への肯定感→人や社会への肯定感→貢献したい気持ちという順序で育っていく過程を心にとめておいてください。

 

5.未来を生き抜く力をつけるキャリア教育

小学校でスタートするキャリア教育は、中学校、高等学校と長い期間をかけて進められていきます。

先を見通した視点で子どもの教育を考えて、1年生ではまず子どもの興味を尊重し、意欲や自己肯定感を育てましょう。

子どもにすぐ結果を求めるのではなく、長い期間で成長をみて、根本的な心の力を蓄えておくのが大切です。

キャリア教育の視点を生かして、子どもが未来を生きる力を身につけられるようにサポートしていきたいですね。

 

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参考文献
※1:第1節 キャリア教育の必要性と意義(その1),文部科学省,2013年9月
※2:第1節 キャリア教育の必要性と意義(その2),文部科学省,2012年5月
※3:第4章 各学年段階における キャリア教育,文部科学省,2012年5月
※4:第1節 小学校におけるキャリア発達、第2節 教育課程とのかかわりにおけるキャリア教育(その1),文部科学省,2012年5月
※5:低学年の発達課題と実践のポイント(その2),文部科学省,2012年5月
※6:小中一貫町田っ子カリキュラム キャリア教育(改訂版),町田市教育委員会,2022年3月
※7:大館ふるさとキャリア教育,教育委員会事務局 学校教育課 教育研究所
※8:①ふるさとキャリア教育子供ハローワークによる地域の取組(大館市),文部科学省YouTube公式チャンネル,2017年

 

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