オルタナティブスクールとは?どんな子どもが通う?特徴やメリット・デメリットを紹介
この記事を書いた人
まさ
- 中学校教諭
- 高等学校教諭
- 保育士
中学校教諭、高等学校教諭、保育士の資格所持
大学卒業後、海外ボランティアや日本の療育センターにて、障害のあるお子さんと関わってきました。
現在は、育休を取得し、0歳と2歳の子どもの子育てに奮闘しています。
得意なことは、手遊び、工作です。
「子どもの個性や自主性を伸ばしたい」「子どもに合った学校に通わせたい」と考える親御さんに注目されているのが、オルタナティブスクールです。
自分の子どももオルタナティブスクールに通わせたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、オルタナティブスクールは、義務教育とは異なる内容で学習が進められるため、「どんなことをするのか分からない」「興味があるけれど、うちの子どもに合っているか不安」ということもあるでしょう。
そこで今回は、4歳〜6歳の子どもをもつ親御さん向けにオルタナティブスクールの特徴や向いている子ども、メリット・デメリットなどをご紹介します。
それぞれの教育法で大切にしている学び方に特徴があるので、子どもに合わせて選べるといいですね。
目次
1.オルタナティブスクールとは?フリースクールとの違い
オルタナティブスクールとは、アメリカやヨーロッパの哲学的思想を取り入れたオルタナティブ教育を実施する学校を指します。
オルタナティブは英語の「Alternative」が由来で、「代わりの、慣習的方法をとらない」という意味です。公立・私立の学校に代わる選択肢といえるでしょう。
公教育では、文部科学省が定める学校教育法により、教科や指導要領などが規定されています。それに対し、オルタナティブスクールでは法による規定はなく、独自の教育方針や理念で運営されています。
■フリースクールとの違い
公立・私立の学校の代わりといえば、フリースクールを思い浮かべる方もいるのではないでしょうか。
フリースクールは、何らかの理由で不登校となった子どもが通う学校というイメージが強いです。一方、オルタナティブスクールは、公教育とは異なる独自の運営制度や教育法に魅力を感じて選ぶ家庭がほとんどという特徴があります。
2.オルタナティブスクールの特徴・メリット
オルタナティブスクールには、公教育とは異なる魅力がたくさんあります。
ここでは、オルタナティブスクールの特徴をご紹介します。
2-1.子どもの個性を尊重できる
オルタナティブスクールでは、子どもの個性を尊重して、学習が進められます。
時間割や教科書に沿って進められる公教育と比べ、自分の興味のあることをとことん追求することが可能です。
そのため、子ども一人ひとりの特性を活かしやすくなります。
2-2.子どもが主体となって学べる
オルタナティブスクールでは、子どもの興味関心に基づいて、学習内容や生活ルールを大人と子どもが一緒に話し合って決めることが多いです。
また、大人は教師ではなく、子どもをサポートするスタッフという立場で関わることがほとんどです。
学習内容や学校運営にも積極的に関わることで、子どもの自ら学ぶ意欲を育むことができるでしょう。
2-3.体験型の学習が豊富
オルタナティブスクールには、体験型の学習が豊富に用意されています。
机に向かって勉強するのは、あまり好きではないけれど、実験や工作には目をキラキラ輝かせて取り組む子どもも多いのではないでしょうか。
絵画、手芸、料理、演劇、楽器、農業などさまざまな体験をすることで、子どもの学びや興味が深まっていくことでしょう。
2-4.少人数で異年齢交流もできる
少人数の中で年齢の異なる子どもと交流ができるため、お互いに助け合って学べます。
公教育では、基本的には学年ごとに学びが展開されるので、年上の子どもに教わったり、年下の子どもの世話をする機会は少ないです。
オルタナティブスクールでは、異年齢交流を通じて、協調性や年長者との関わり方、年少者への教え方も自然と身につきますよ。
3.オルタナティブスクールのデメリット
さまざまな特徴があるオルタナティブスクールですが、覚えておきたい注意点があります。
入学を検討するときには事前に確認しておきましょう。
3-1.学校の数が少ない
オルタナティブスクールは公立や私立の学校と比べて、数が少ないのが現状です。
オルタナティブスクールに通わせたいけれど、地域に希望するオルタナティブスクールがない場合もあります。
また、通えたとしても遠方の場合は、毎日送り迎えが必要になるかもしれません。
3-2.認可校が少ない
オルタナティブスクールの多くは、国からの認可を受けずに運営されています。
そのため、オルタナティブスクールに通っている子どもは、小学校・中学校の卒業資格が得られない場合があります。
ただし、在籍している学校と連携することにより、オルタナティブスクールの活動が出席とみなされることもあるので、卒業資格が心配な方は、一度地域の学校に相談してみましょう。
また、数は少ないですが私立として認可を受けているオルタナティブスクールを選ぶのもよいでしょう。
3-3.上級校がついていない
オルタナティブスクールのほとんどは、小学校・中学校までです。
そのため、進学を希望するときは、高校から公教育の学校に通う場合があります。
しかし、自主性や個人を尊重するオルタナティブスクールから一般的な高校への入学は、校風が合わなかったり、個性が活かせなかったりする心配があります。
また、行きたい高校が見つかっても、受験対策が充分できない場合も考えられます。
そのため、オルタナティブスクールを選ぶ場合は、将来の進路も見据えておくのがおすすめです。
3-4.費用が高額になる
自己負担が少ない公教育と比べて、オルタナティブスクールは費用が高額になります。
そのため、一般的な家庭だと子どもを通わせることが経済的に難しいと感じることもあるでしょう。
費用は学校によって異なるので、学校説明会やすでに通わせている保護者の方から情報を集めておくといいですね。
3-5.学校によって教育法の差が大きい
オルタナティブスクールは、子どもの個性や自主性を尊重するため、学ぶ内容も柔軟に決められます。
そのため、学校によって教育の考え方や学ぶ内容が大きく異なります。
ある子どもにとっては最適な教育法も、ほかの子どもにとっては合わないこともあるでしょう。
オルタナティブスクールを決めるときには、家族で充分話し合い、実際に足を運び、教育環境を見たり、話を聞いたりして判断するのがおすすめです。
4.どんな家庭がオルタナティブスクールを選択している?
ここでは、具体的にどんな家庭がオルタナティブスクールを選択しているのかご紹介します。
4-1.子どもの自主性を大切にしたい
子どもの自主性を大切にしたいと考える家庭がオルタナティブスクールを選択することがあります。
あらかじめ決められたカリキュラムに沿って授業が展開される公教育では、子どもが「これを学びたい!」と思っても、自由に学びを深められません。
せっかくの学びたいという意欲を摘み取ってしまうのは、もったいないと感じる親御さんもいるのではないでしょうか。
オルタナティブスクールでは、学ぶ内容自体を子どもが決められる場合もあるので、子どもの自主性を大切にできます。
子どもの興味に合わせて、自ら学べる環境があるのはうれしいですね。
4-2.子どもの個性を伸ばしたい
子どもの中には、ギフテットと呼ばれる高い能力を備えた子どもや、特定の分野に強みがある子どももいます。
そんな子どもの個性を存分に伸ばしたいと考える家庭には、オルタナティブスクールが向いています。
オルタナティブスクールは、画一的な教育ではなく、子どもの個性を引き出す環境が整えられています。
ただし、芸術に強い子どもや、算数が得意な子どもなど、子どもによって特徴はさまざまです。
オルタナティブスクールは、学校によって力を入れている分野が異なるため、事前に見学をして話を聞いてみましょう。
4-3.子どもに公教育が合わないと感じている
決まったカリキュラムに沿っておこなわれる公教育が合わないと感じている家庭の場合も、オルタナティブスクールを選択肢にいれるとよいでしょう。
また、個性が強すぎるあまり、公教育になじめなかった子どもも、オルタナティブスクールではのびのびと過ごせることもあります。
縦割りでの活動や体験型の学習を通じて、どんどん能力を開花させることもあるかもしれませんね。
5.オルタナティブスクールで採用されている教育法
オルタナティブスクールで採用されている教育法には、さまざまなものがあります。
今回は、代表的な4つの教育法をご紹介します。
それぞれの教育法の考え方を知って、学校選びに活かしましょう。
5-1.モンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育は、1907年にマリア・モンテッソーリという女性医師が考案した教育法です。
モンテッソーリ教育では、子どもは自ら自立・発達していく力(自己教育力)があると考え、大人は子どもの成長を促す援助者としてふるまいます。
環境設定に重きを置いたり、カードや模型など専用の教具を活用するのもポイントです。
【一般的な小学校との違い】
・宿題やテスト・成績表がない
リサーチ課題などはあるものの、家に帰っておこなう宿題は基本的にありません。
・科目ごとの時間割がない
午前中の時間は自分が学びたいことを選んで学び、午後は国語や算数などの科目学習をするなど、自発的な活動を重視した時間割です。
「モンテッソーリ教育法を取り入れている幼稚園・保育園」に関してはこちらの記事で詳しく解説しています!気になる方はぜひご覧ください。
モンテッソーリ保育園・幼稚園のメリットやデメリットを解説!~園選びのポイントもご紹介~
5-2.シュタイナー教育
シュタイナー教育は、哲学者のルドルフ・シュタイナーが提唱した100年以上の歴史がある教育法です。
0歳~7歳、7歳~14歳、14歳~21歳の7年周期で、それぞれ「意思」「感情」「思考」の3点を育て、バランスよく自立した人間に成長していくという考えがシュタイナー教育の方針です。
また、机上の学問だけでなく、芸術作業も重要視しているのがシュタイナー教育の特徴です。
オイリュトミー(耳から入る音の響きを身体の動きで表現する方法)や手仕事、園芸など特色ある芸術活動が展開されます。
【一般的な小学校との違い】
・8年間同じ担任
1〜8年生(中学2年生)までは同じ教師が担任となります。
・エポック授業
朝の約100分間で、同じ科目を2〜3週間連続して学ぶ授業方法を行います。
5-3.イエナプラン教育
イエナプラン教育は、教育学者ペーター・ペーターセンが創始しました。オランダを中心に世界中で広まっている教育法です。
自律と共生をテーマとし、自主性・協調性を育む独自のプログラムを実施しています。
イエナプラン教育20の法則のもと、4~6歳、6~9歳、9~12歳の3つのグループに分かれて活動します。
また、一般の学校のような「教科」はなく、「会話」「遊び」「仕事(学習)」「催し」の4つの基本活動が展開されます。
【一般的な小学校との違い】
・ワールドオリエンテーション
理科や社会に代わる総合学習を行います。特定のテーマについて、生徒たちが自分で調べ、学び、発表します。
・ブロックアワー
生徒自ら組んだ1週間の学習計画に沿って行われる個別学習です。わからないことはグループの年長者へ質問できるようになっています。
5-4.フレネ教育
フレネ教育は、南フランスの教師セレスタン・フレネによって考案されました。
子どもの自主性と自由を尊重する教育です。学習は、一人ひとりの個性に合わせて進められます。
また、子どもの思いを言語化した自由作文に力を入れており、投票で選ばれた自由作文は教材として活用されます。
さらに、学年が異なる子どもと一緒に過ごすことで、協調性を学ぶこともできます。
【一般的な小学校との違い】
・個別学習が基本
自分専用の「活動計画表」を作成して自分のペースで学習を行います。わからないことは先生に質問して個別でじっくり学びます。
6.個性や自主性を大切にするオルタナティブスクールは、子どもの可能性を広げる!
公教育とは違った独自の教育方法で、子どもの能力を引き出したり、子どもの可能性を広げるオルタナティブスクール。
子どもに合った学校選びの一候補として考えてみてもいいかもしれません。
学校教育の多様化を知り、それぞれの特徴や注意点を理解した上で、子どもに合った学校を見つけることができるといいですね。
今回ご紹介したオルタナティブスクールの特徴や注意点も参考にしながらリサーチしてみてくださいね。
参考文献
・世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書 おおたとしまさ (著)
・日本モンテッソーリ協会(学会)
・新訂版・シュタイナー教育クリストファー・クラウダー (著), マーティン・ローソン (著), 遠藤 孝夫 (翻訳)
・日本イエナプラン教育協会
・フレネ教育研究会
・日本モンテッソーリ教育綜合研究所
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