【2歳】発音の不明瞭さが気になる…。原因やサポートのヒントを言語聴覚士が解説!
この記事を書いた人
平尾しほ
- 言語聴覚士
言語聴覚士免許を所有、児童発達支援センターでの勤務経験があります。
特に遊びの中でのことばの育ちを意識して個別療育を行っていました。
現在小学校2年生の息子がいます。
個別療育でのたくさんのご家族とのかかわりと子育ての経験を合わせて、皆様に分かりやすくお伝えしていきたいです。
2歳になると、言葉の数がどんどん増え、2語文を話し始める子もいます。たどたどしい話し方は、この時期特有でかわいいですよね。
しかし、「何を言ってるのか分からない」「発音がはっきりしない」と発音の不明瞭さに不安を感じる方もいるかもしれません。
「まだ2歳だからこれぐらいかな?」と思う一方で、お友達の様子を見て「○○くんはもっとはっきり話せてるな」と比べてしまうこともあるでしょう。
この記事では、2歳の言葉や発音の発達について説明し、発音の不明瞭さの原因やご家庭でできる関わり、専門家への相談や受診の見極めポイントなどを解説します。
目次
1.2歳の言葉の発達はどれぐらい?
2歳になると、行動範囲が広がり、目が離せなくなりますね。
好奇心も旺盛で何でも自分でしたがり、親の手助けを嫌がり、「いや!」と言葉で伝える様子も見られるようになります。
ここでは、2歳の言葉の発達はどれぐらいなのか、その目安を見ていきます。
1-1.言葉がどんどん増えて文を作ることができる
2歳は、言葉の獲得が著しい時期です。 1歳半ごろになると、分かる言葉の数は50語に到達すると言われています。
「コップ持ってきて」「今からばーばのお家に行くよ」など、生活に関連する事柄についてはおおむね理解できるようになります。
このころを目安に、知っている言葉の数が飛躍的に増えます。これを「語彙爆発」と呼び、2歳では300語以上の言葉が分かるようになるのです。
それにともなって、話せる言葉もどんどん増えていきます。言葉を知るのが楽しく「これなに?」と頻繁に聞くようになる子もいるでしょう。
話せる言葉が増えることで、「ワンワン いた」「ブーブー きた」などと単語をつなげて話す「2語文」が聞かれるようになります。
それまで話す言葉は名詞がほとんどでしたが、動詞など文をつくるための言葉の獲得も増え、表現のバリエーションが広がります。
1-2.発音はまだまだ幼い
2歳では使う言葉の数はどんどん増えていきますが、発音に関しては発達途中です。聞き取りにくく、ママやパパが理解するのがやっと、ということもあるでしょう。
子どもが日本語の音を正しく言えるようになるのは、6歳ごろと言われています。
● 1・2歳:母音(あいうえお) ぱ行、ま行、ば行、や行、わ行
● 2・3歳:た行、だ行、な行
● 3・4歳:か行、が行、は行
● 4・5・6歳:さ行、ざ行、ら行
おおむねこの順番で発達していきます。 2歳ではまだ、発音するのが難しい音が多いです。
「くるま」を「うーま」のように話す、「ブーブ」と幼児語を使う、全体的にごにょごにょ話すということはよくあります。多くは全体的な発達とともに改善されていきます。
1-3.言葉を増やす、やりとりを楽しむのが重要な時期
2歳は話せる言葉が増え、単語をつなげて表現できるようになってきます。
一方、発音は未完成で、「はっきり話せること」を重要視する年齢ではありません。
さまざまな言葉を知っていくこと、それを誰かと伝え合うやりとりを楽しむことがとても大切な時期です。
言葉を通したふれあいを大切に、表現の幅をどんどん広げていきましょう。
言葉の発達や発音の獲得は個人差もかなり大きく、お友達と比べると不安になることもあるかもしれません。
そんなときは、言葉の数や発音だけでなくお子様が「言葉のやりとりを楽しんでいるかな」「相手に伝えたいという気持ちがあるかな」という点に目を向けてみてくださいね。
2.2歳の発音が不明瞭な原因は?
2歳は、話せる言葉が増える一方で、発音は発達途中です。まだはっきり話すのが難しくても当たり前と言えるでしょう。
しかし、あまりにも不明瞭に聞こえると、親としては心配になってしまいますよね。 ここでは、発音が不明瞭になる原因を解説します。
2-1.発音に関連する口の動きが未熟だから
言葉を発するには、覚えた言葉の中から言いたいことを探します。そのうえで、肺から息を出しそれに合わせて舌や顎を動かすという「協調運動」が必要になります。
発音には、舌を細かく動かすなど微細な運動が多く、2歳にはまだ難しいこともあります。出すのが難しい音があるのも、このためです。
おしゃべりをすることや食べること、歌うことなどお口を使う活動で、発音に関する微細運動は徐々に完成していきます。
運動の発達にも個人差があるように、発音できる音の獲得ペースも子どもによって違います。
2-2.音を聞き分ける力が育っている途中だから
言葉を覚えるときには、聞いた言葉とそのものとを結びつけます。2歳では言葉を1音1音聞くのではなく、音をかたまりでとらえてインプットします。
例えば、実物の卵を見て「たまご」の言葉を聞いたとき。「た」「ま」「ご」の3つの音からできていると認識するのは、2歳にはまだ難しいのです。
そのため、次に卵を見たときに「かまご」「まーご」など近い音で発音したり、ひとまとまりに発音したりするため、大人の耳には不明瞭に聞こえることがあります。
1音1音を聞き分けることが難しいため、口に出すときの音のイメージも曖昧なのです。
年長ぐらいになると、卵を「た」「ま」「ご」と音で分解して覚えていくことができるようになります。その頃には、音を聞き分ける力も向上し、全体的に不明瞭という状態はあまり見られなくなってきます。
3. 2歳の発音が不明瞭なとき、親ができることは?
まだはっきりと話せない子が多い2歳の時期ですが、日々そんな姿を見ていると、発音の不明瞭さに対して、お家でできることがないのか気になりますよね。
ここでは、2歳の言葉が不明瞭な子どもに対してできる関わりについて紹介していきます。
今後はっきり話せるようになる準備を、遊びの中でしていきましょう。また、おすすめしない関わり方もお伝えするので、少し意識してみてくださいね。
3-1.発音につながるお口の運動を促す
一つ目は、言葉を発するお口へのアプローチです。
言葉を発するのに必要な息を吐く、舌や顎などを適切に動かすことにつながる運動を遊びの中に取り入れてみましょう。
〈まね遊び〉
「あっかんべー」で舌を動かす、「あっぷっぷ」で唇に力をいれるなどお口の動きを意識的に取り入れ、まねっこ遊びをするとお口の運動につながります。
にらめっこや手遊びなど顔に注目する遊びをしてみましょう。絵本を使うのもおすすめです。
〈吹く遊び〉
ストローでティッシュを吹くことも楽しい遊びになります。息の加減・強弱を学びながらお口の動きも促せます。
ラッパや笛など音が出るおもちゃなどもおすすめです。音の大きさとそれに合わせたお口の動きを自然と覚えられるでしょう。
また、食べるときのお口の動きは、発音にも大きく影響します。「しっかり噛めているかな?」と食事の時のお口の動きを観察してみてください。「もぐもぐ」「ぱくぱく」と大きく動かす様子を親が見せて、一緒によく噛む練習をするのもいいですね。
3-2.言葉をしっかり聞けるように関わる
二つ目は、言葉を聞く段階へのアプローチです。
言葉を正しく発音するには、正しく音を聞き分けることが必要。2歳では言葉を実物や経験と結び付けて、しっかり聞くことが大切です。
また、言葉のバリエーションが広がる時期なので、たくさんの表現に触れてほしいですね。
お子さんが言った言葉に対して、
● 繰り返す
● 言葉を1つ足して返す
ことを意識してみましょう。
例)一緒にお散歩をしているとき車が走っているのを見かけ「ブーブ きた!」「うーま きた!」などと伝えてくれたとき
→「ブーブきたね。 くるまはしってるね」「くるまきたね。あおいくるまだね」
繰り返すことで言葉のインプットをより強くでき、言葉を1つ足すことで新しい表現を身につけていくことができます。
3-3.言葉の育ちにつながらない…。避けたい関わりは?
2歳は語彙がどんどん増えていく時期です。子どもが言葉をインプットする機会を減らしてしまう関わりは、避けたほうがよいでしょう。
NG!〈発音を正す、一音一音区切って言う〉
例)象を見て「じょーたん」
→×「じょーたん?違うよ、ぞうさんだよ」「ぞ・う・さ・ん だよ」
〇「そうだね、ぞうさんだね」
前段落でも述べたように、音を聞き分ける力が弱いため、一音ずつの訂正を理解することは難しいです。また、発音は正すのではなく、親が正しい発音の言葉を述べることが大切です。
子どもが正しい発音に注意を向けることができ、音の聞き分けや正しい発音の獲得につながります。
NG!〈「これ何?」「○○って言ってみて」を繰り返す〉
例)「おはな!」
→×「すごい!じゃあこっちは何?(ちがうものを指して聞く)
〇「おはなだね。おはなさいてるね」
子どもの言葉が聞きたくてつい質問攻めしてしまいそうになりますが、正しい言葉を聞く機会を奪ってしまいます。ぐっと堪えて、まずは子どもの言ったことを繰り返してみましょう。
4.どんなときに専門家を頼ればいい?
2歳では「はっきり話すこと」が最重要ではないとお伝えしました。では、いつどんな状態であれば専門家に頼るのがよいか?と疑問に感じますよね。
ここでは、言葉の専門家である言語聴覚士に相談する目安をご紹介します。
個人差が大きいため、あくまで目安です。お子様やパパ、ママが困っているときはいつでも相談してくださいね。
言語聴覚士とは?
言語聴覚士は、言葉や発音の指導ができる専門家です。言葉の発達やコミュニケーション、発声、発音などの分野で子どもの状態に応じて訓練を計画、実施します。
言語聴覚士は主に、病院などの医療機関、療育センターなどの福祉施設にいます。どこに行けばよいか分からないときは、かかりつけの小児科で紹介してもらったり地域の保健センターに問い合わせたりするのがよいでしょう。
4-1.受診の目安は、就学前の時期
発音の発達は、年長~小学校入学ごろに完成します。そのため年長になって「上手く言えない音がある」と発音の練習をはじめる子どもは少なくありません。
つまり、発音に関する対応が必要になる目安は、就学前後の時期です。
小学校に入学すると音読や発表など人前で話す機会が増えるため、それまでに聞き取りやすくしたいと思う保護者も多いでしょう。
また、年齢があがると、お友達と話しているときに「何を言ってるのか分からない」と指摘されたり、「どうしてさかなじゃなくて『たかな』って言ってるの?」と聞かれたりすることもでてきます。
子ども自身が気にするようになったときもひとつの目安ですね。
4-2.こんなときは早めに相談しよう
2歳は、まだ発音に不明瞭さがあっても当然の時期ですが、以下のようなケースでは早めに対応が必要な場合もあります。
● 母音(あいうえお)以外の音が聞かれない/中耳炎を繰り返している
→難聴や聞こえにくい状態の可能性あり
● 話すときに口が変わった動きをしている(左右どちらかだけが動いているなど)
→誤った発音が定着する可能性あり
● 舌の動きが小さい、変わった形をしている
→舌小帯短縮症などの可能性あり
これらは言葉のインプットもしくはお口の動きに制限がある可能性があるので、経過観察で済むこともありますが、一度相談してみることをおすすめします。
もちろんこれらに当てはまらなくても、子どもが気にしている、パパやママが心配な時は迷わず受診しましょう。今後の見通しも含めて、子どもの言葉の育ち一を緒に考えられる専門家がいますので安心してくださいね。
5.2歳の発音の不明瞭さには、遊びの中での対応を
2歳は言葉の表現が豊かになり、やりとりがどんどん楽しくなる時期です。
発音はまだ未完成なため、不明瞭さはあって当然と思っていてもよいでしょう。
「はっきり話す」でなく「言葉を使うことを楽しむ」ことが大切です。遊びの中でお口を動かしたり言葉をしっかり聞けるように関わりましょう。
楽しく遊んだことが発音を獲得していく準備となり、子どものペースではっきりした発音を獲得していくでしょう。
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参考文献
・山崎祥子著 子どもの発音とことばのハンドブック 芽ばえ社,2011
・藤田郁代監修 玉井ふみ/深浦順一編集 標準言語聴覚障害学 言語発達障害学 医学書院