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自分の意見が言えない「自己主張」できない我が子への親の関わり方

この記事を書いた人

久美子 久美子

久美子

  • 公認心理師
  • 臨床心理士

5歳と7歳(小1)の息子のアラフォーママ。

公認心理師・臨床心理士の資格を持っています。

心理士の仕事をしながら、発達心理学の視点も踏まえて、日々、子育て奮闘中。

夫にも積極的に育児に参加してもらい、親子でハッピーになれる時間を模索しています。

お子さんは自己主張が上手にできていますか? それとも苦手ですか?

自分の意見をうまく伝えられないと、ストレスがたまってしまうこともありますよね。

子どもたちは、嫌なことや困ったことが起きたら、自分で伝える必要があります。

特に小学校になると、自分の意見が言えないと、先生に気づいてもらえず、結果的に本人が嫌な思いをしてしまうことがあります。

自分の本当の気持ちを素直に伝えられるようになるためには、どうすればいいのでしょうか?

今回は、自己主張が苦手な子どもにおける、効果的な親の関わり方について紹介します。

 

目次

 

1. 子どもが自己主張できない心理は?

「自己主張」とは、「自分の意見や考え、欲求を伝えること」であり、誰かに自分のことを理解してもらうために必要な大切な社会スキルの一つです。

幼児期に自己主張ができる子どもは、

「いやなことははっきり『イヤ』と言える」

「入りたい遊びに自分から『入れて』と言える」など。

自分の意見を相手にきちんと伝えることができます。

しかし、中には自己主張がうまくできない子どもたちもいます。それはどうしてでしょうか。

その理由を以下で詳しく解説していきます。

 

1-1.敏感すぎる子

自己主張が弱くなってしまう子どもの特徴のひとつとして、「敏感性の高さ」があります。

敏感性の高い子どもは、他人の気持ちに敏感なため、主張よりも理解を優先させてしまいがちです。

集団の中では、敏感性の高い子どもたちはストレスを強く感じます。

子どもの気質の中で、生まれつき敏感すぎる気質をもつ子どもをHighly Sensitive Child(以下 HSC)と呼びます。

彼らはいわゆる、「内気」・「臆病」・「恥ずかしがり屋」と言われることが多く、その特徴は幼児期から現れ始めます。

HSCを含め敏感すぎる子は、先生や友達からの何気ない言葉でも傷ついてしまうことがあります。

このような経験をすると、ますます自己主張ができなくなっていきます。

 

1-2.自尊感情が低い

現代の子どもたちは「自尊感情」の低さが問題になっています。

内閣府の2007年の小中学生に行った調査では、自分の将来に悩みや不安を抱えていたり、自分自身に対しても課題を抱える子どもが増加していることが示されています。

自尊感情とは、「自分に対する肯定的な態度」です。

自尊感情が低いと、自分自身を受け入れることができません。そのため、相手のことも受け入れることができなくなります。

また、自分の言いたいことがあっても、そんな自分自身を否定してしまいます。

その結果、自己主張ができなくなってしまいます。

 

1-3.主張が強すぎてしまう

自己主張が強すぎると、友達の気持ちを無視したり、軽んじたりすることがあります。

衝動的な言動をとるため、人間関係でトラブルが起こりがちです。

幼児のうちは周囲の大人が対応してくれますが、小学校に上がると、社会スキルの低さが学校での問題行動につながることが指摘されています。

自己主張が強すぎるお子さんは、友達の気持ちを考えたり、自分の気持ちをコントロールして話すことが大切であることを教えてあげることが重要です。

 


自己主張が苦手でも強すぎてもコミュニケーションスキルとしては不十分です。

コミュニケーションスキルの低さは後々の不登校やいじめなどの深刻な問題にも結びつくため、トレーニングなどを通してスキルを獲得させてあげましょう。

 

2.子どもが自己主張できない環境要因は?

子どもが自己主張できない要因はなんでしょうか。

環境からくる要因について見ていきましょう。

 

2-1.「我慢は美徳」と考える傾向

近年のグローバル化に伴い、日本人にも自己主張することが求められるようになっています。

自己主張は、もともと欧米流の文化ですが、日本人には相手に負担をかけないように配慮する「自己抑制」の文化が根付いています。

また、日本人は相手がいる前で一方的に自分のことばかり言えないと、自己主張したがりません。

相手を気遣い、対立しないように我慢できることは、日本人の誇れる美点でもあります。

しかし、日本の社会では子どもに対しても、自己主張することよりも相手のために自己抑制することが望まれます。

「『してはいけない』と言われたことはしない」

「友達とやりたい遊びが違うとき、友達のやりたい遊びも取り入れてあげる」など。

このように「我慢しようね」と言われて育つ日本人の子どもたちは、必然的に自己主張が苦手なまま成長してしまう傾向があります。

 

2-2.幼児期の「おそれ」から「引っ込み思案」へ

自分から話しかけられない子どもは「引っ込み思案」と言われますね。

「引っ込み思案」とは、自分から物事を進めることや人前に出ることが苦手で、自己主張がしにくい性質を指します。

このような子どもは、集団行動への参加が遅れてしまうことがあります。

発達心理学では、2歳頃に現れる「内気さ」は「おそれ」の感情から来ており、その後、気質や環境によって、4歳頃から引っ込み思案になることが示唆されています。

しかし、引っ込み思案は年齢とともに減少し、心配する必要はないとされています。

ただし、過保護な親の関わり方があると、引っ込み思案が持続する可能性があるため注意が必要です。

特に、4歳~7歳の親の関わり方の影響が注目されています。

 

3.幼児の自己主張と自己抑制の発達~幼児のコミュニケーション

幼稚園や保育園に入ると、自分の欲求や行動をコントロールすることが求められます。

大人は子どもが社会的な場面で「自己抑制」できているかに目が行きがちですが、同時に適切な「自己主張」もできているかどうかが重要な視点です。

 

3-1.自己主張と自己抑制のバランスが大切

少し古い研究ですが1988年に行われた、幼稚園児の自己主張と自己抑制の発達を調査したグラフをみてみましょう。

自己主張は3歳から4歳半にかけて急激に高まり、その後は停滞・後退することがわかります。

一方、自己抑制は、自己主張に比べて年齢に伴う上昇が大きく、男の子では3歳前半から6歳後半まで一貫して伸びています。

女の子では、年齢に伴う伸びがみられましたが、4歳後半から6歳前半にかけて一時的に停滞・後退しています。

また、男女差についての結果では、どの年齢でも女の子の方が男の子よりも自己抑制が高いことがわかりました。

この男女差は、日本の伝統的な性役割によって女性に従順さが求められるといった社会的な背景が反映されていると考えられます。

 

3-2.幼児からコミュニケーションスキルは伸ばせる

近年、幼児期からコミュニケーションスキルを高めることが求められています。

文部科学省の幼稚園教育要領では、幼児期の重要な経験として「自分の思ったことを相手に伝え、相手の思っていることに気づく」という能力を育むことが挙げられています。

幼児は保育園や幼稚園での生活が大半を占めるため、この時期から社会的な関わりを体験し始めます。

ある調査では、友達と意見が対立する場面で、3歳と5~6歳を比較したところ、

3歳では自己中心的に解決しようとする行動が多く見られましたが、5~6歳では相手を優先したり、自分と相手の両方に配慮した行動が多く見られるようになったと報告されています。

つまり、未就学児からでもコミュニケーションスキルは伸ばせるということです。

 

4.自己主張ができるようになるための親の関わり方

子どもの自己主張を促す親の関わり方を紹介します。

 

4-1.子どもの言葉を遮らずにしっかりと聴こう

普段から、子どもの言葉を落ち着いて最後まで聴くように心がけましょう。

つい、子どもが話をしているのに、話を遮ってしまうことはありませんか?

 

以下は、子どもの話を最後まで聴けていない筆者自身の例です。

【口を挟んだり、ちゃかす】

子「ママ、今日ね、ぼく幼稚園で泣いちゃったんだ」

ママ「また泣いたの?本当に泣き虫だね~」など。

【否定する】

子「◯◯ちゃんがぶってきた」

ママ「でも、先に何かやったんじゃないの?」など。

 

受け入れてもらえなかったり、否定されると、子どもは尊重されていないと感じ、自分の意見が言えなくなってしまいます。

忙しい場合は、子どもの話をきちんと聴かないで親が「こうでしょ!」と結論を出してしまうこともあるでしょう。

「そのときのこと、もっと教えて?」「そのあと、どう思ったの?」と、話を促す質問を入れてみてください。

子どもが「イヤだ」「困った」と思ったときに、それを主張してもいいと、体験させてあげることが重要です。

自己主張のベースは、親が話をしっかり聴いて、子どもの意見を尊重することから始まります。

 

4-2.親が先回りしてやってしまうと逆効果

引っ込み思案の子どもに、母親が過干渉な関わりをすると、引っ込み思案が持続すると言われています。

親が過干渉だと、子どもが自力で小さな困難を克服するチャンスを奪ってしまいかねません。子ども自身に経験させてあげることが大切です。

親は子どもの様子を見ていると、何も言わなくても次に何をしてほしいのかわかります。

おもちゃを取ってほしいとき、トイレに行きたいときも親は察することができて、親のほうから声をかけてあげますが、必ずしも望ましいとはいえません。

察してくれる大人がいないと、子どもから適切な自己主張ができなくなってしまいます。

自分の言葉で「おねがい」する方法を教えておきましょう。

たとえば、「どうしたの?」と聞いてみるといいでしょう。すると、「あのおもちゃがほしい」「トイレに行きたい」と自分で答えます。

「トイレ」と、単語しか言わなかったときは、「トイレに行きたいって言ってみて」とセリフを言える練習をさせましょう。

口癖として習慣にしてしまうと、どんな場面でも自然と言葉が出てくるようになります。

 

4-3.自分で言えたときは、言えたこと自体を褒めよう

子どもが自分から思ったことを言えたら、「ちゃんと自分の気持ちを言えたね」「教えてくれてありがとう」と褒めてあげましょう。

ポイントは、「頑張ったことを喜び、具体的に褒める!」です。経験を通して、自分をポジティブに捉える自己肯定感が高まり、その結果、自己主張もしやすくなります。

日頃から、子どもが本音を言える雰囲気づくりを心がけましょう。

ママが忙しそうにしていたり、イライラしていたりすると、子どもは思ったことが言い出せなくなってしまいます。

お風呂や寝る前など、子どもとゆっくりできる時間を意識して取りましょう。

時々、「ねえ、ママ。今日ね、◯◯ちゃんが私は何もしてないのに、叩いてきてね。嫌だったの。」など、唐突に子どもが、自分の気持ちを語ることがあります。

そんなときは、「そうだったんだね」と気持ちを受け止めてから、言えたことを褒めてあげましょう。

「困ったときは、今みたいに話してね」と、親に相談してもいいと教えてあげましょう。

小学生高学年、中学生と大きくなると、恥ずかしがったり、「どうせわかってもらえない」と考えて、親に自分の困ったことを相談しなくなる子どももいます。

小さいうちから、親に相談できる下地を作っておきましょう。

 

4-4.敏感すぎる子への親の関わり方

環境に影響を受けやすい敏感すぎる子どもに対しては、「ありのままでいい」と自分を肯定させてあげることがポイントです。

親は、以下の3つを意識しましょう。

①子どもの敏感さを誇りに思う。

子どもを受容してあげましょう。親が「安全基地」になることで、自分を肯定できるようになります。

また、子どもの感じ方や気持ちを尊重してあげましょう。

②気質のネガティブな面に注目しない

敏感な子どもは、自分がトラブルの原因だと思いがちです。問題をすべて気質(敏感性)のせいにしないように配慮しましょう。

また、親の何気ない言葉や無邪気な冗談でも傷ついてしまうため、発言には気をつかってあげましょう。

③強みを伸ばそう

弱気になったときは、反対に強みに気づかせてあげましょう。

敏感な子は、「細かいことに気づける」「共感力が高い」「直感が鋭い」「創造性が豊か」「思慮深い」といった良い面があります。

敏感だったり受け身的な子どもには、自分の思いや気持ちを表現したり、ネガティブな感情とうまく付き合うスキルを子どもの成長に合わせて獲得させてあげることが望まれます。

 

5.幼児期に身につけたい「自己主張力」!

いかがでしたでしょうか。

幼児期は、お友達とのやりとりが増えて、我慢することを覚えたり、自我の芽生えから自己主張が始まる時期でもあります。

集団生活では、自己抑制を求められますが、過剰なしつけは自己主張をできなくさせてしまいます。幼児期に身につけたいのは「自己主張力」です。

幼児期から親の働きかけで自己主張を促すことが重要です。自己抑制と自己主張のバランスを大切にしながら、お子さんと関わってみてください。

次回、筆者の記事では、自分も相手の意見も大切にするコミュニケーション方法「アサーション」についてご紹介します。乞うご期待ください。

主な参考文献
・寺川志奈,自己主張と自己抑制の発達,小児内科 50(3)418-421,2018
・山根由梨,深見俊崇,石野陽子,児童のアサーションと自尊感情との関連,教育臨床総合研究15 107-121,2016
・山本佳代子,敏感性の高い子どもの育ちへの支援,西南学院大学人間科学論集17(2)215ー 226,2022
・畠中智惠,中本浩揮,幾留沙智,井福裕俊,森司朗,幼児用主張行動尺度作成の試み―信頼性と妥当性の検討,パーソナリティ研究 28(3)11,2020

 

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