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【4歳・5歳】子どもが勝ち負けにこだわる原因と、適切な親の対応とは?

この記事を書いた人

工藤りえ 工藤りえ

工藤りえ

  • 幼稚園教諭
  • 保育士

幼稚園・こども園にて12年勤務。主にクラス担任と障害児保育を経験してきました。

特に障害児保育に関心を持ち、子どもの自己肯定感を高める関わり方を勉強しています。

小1・2歳の兄弟がおり現在は、ママ向けWebマガジンや保育メディアなどで記事執筆を行っています。

得意なことは、ダンス、歌遊び、読み聞かせ、リトミックです。

子どもが「勝敗がつく遊びを好まない」「負けると泣いたり怒ったりしてしまう」
そんなお悩みはありませんか?

子ども同士で勝敗がつく遊びが始まるとき、「負けたらまた泣いてしまうのでは」「怒り出さないといいな」と、ママは不安を抱えつつハラハラしながら見守ることが多いのではないでしょうか。

そんな不安を少しでも解決に近づけるために

・子どもが勝ち負けにこだわる原因
・勝ち負けにこだわる子どもへのおすすめ対応

を、保育現場での事例を挙げて解説しています。

ぜひ本記事をお読みいただき、ママの心が少しでも軽くなる方法を見つけてくださいね。

目次

1.勝ち負けにこだわる子どもが4歳・5歳に多いのはなぜ?

なぜ、勝ち負けにこだわる子どもは4歳・5歳児に多いのでしょうか。

それは、単純に勝敗を理解し始める3歳半頃と比べて、4〜5歳頃になると、より勝ち負けに対する理解が深まるから。

3歳半頃は勝ち負けをなんとなく理解しても、「負けてくやしい」気持ちは強く感じないことが多く、集団遊びと並行して自分の好きな遊びを選び、黙々と遊び込むことが多い時期です。

4〜5歳頃になると友だち関係がより広がるため、「一緒に遊びたい」の気持ちが育ち、自然と勝敗がつく遊びの経験が増えていきます。

数の知識が身につき「1番が嬉しい」ことを覚える時期でもありますね。

こうしたことから、遊びを通して「勝つと嬉しい」「負けるとくやしい」を味わい、勝ちたい気持ちがふくらむ4〜5歳頃に、勝ち負けへのこだわりが強くなることがわかります。

 

2.4歳・5歳の子どもが勝ち負けにこだわる原因

勝ち負けにこだわりがあるお子さんを持つママにとっては、こだわりの原因が気になりますよね。ここでは、考えられる原因を3つご紹介します。

 

2-1.性格的要素

勝ち負けへのこだわりで1番多い原因は「性格的要素」です。

元々負けず嫌いな子や、気持ちの切り替えが苦手な子、負けることへの不安が強い子など、生まれ持った性格が勝ち負けへのこだわりが強い原因となることが多くあります。

 

2-2.負けのイメージができない

勝敗がつく遊びは、どうしても「勝ち」へのイメージが強く頭に残りがちです。

実は、勝って嬉しい気持ちは予想できても、負けたらどうなるのかをイメージできない子が多くいます。これは、勝敗がつく遊びの経験を積み、負けることも体験していくことで改善する場合があります。

 

2-3.親が周りと比べる

「○○ちゃんはできるのにね」「お兄ちゃんお姉ちゃんは、もっと上手だったよ」など、無意識に子どもを誰かと比べてしまうことはありませんか?

親がそうしてしまうことで、子どもは劣等感を抱きます。1番にならないとパパやママは認めてくれない、と思うようになり、1番だけを求めます。

 

3.保育現場ではどうしてる?勝ち負けにこだわる子への対応をご紹介

保育園・幼稚園などの集団生活の場には、さまざまな子がいます。勝ち負けにこだわりが強い子も、今までたくさんいましたよ。

そこで、勝ち負けにこだわる子には保育現場でどう対応しているのか?実際に起こった例を挙げて、効果的だった対応方法を3つご紹介いたします。

 

3-1.負けると仰向けで大泣きするAくん(4歳)

かけっこやじゃんけんで負けると必ず大泣きして、仰向けで足をバタバタしているAくんがいました。Aくんは4歳児クラス(年中)の中でも言葉の成長が早く、理解力もありました。その分、勝ち負けがあることを理解するのも早かったように思います。

Aくんは、周りのみんなが困ってしまうくらい、負けると大泣きしていました。大きな声で泣くので、お友だちも困り顔。

そこで、職員の間で統一した対応が

・勝ち負けがある集団遊びをする前に、個別に「勝つのも負けるのも素敵なことだよ」と、プラスのイメージを持てる声がけをする

・負けたあとに大泣きしていたら「悔しかったね」と共感する声かけを繰り返し、Aくんの気持ちに寄り添う関わりを徹底するようにする

でした。

すると、Aくんは成長に伴ない、少しずつ「負け」を受け入れられるようになっていきました。5歳児クラス(年長)になったときには負けて泣いている小さい子に、「大丈夫だよ!」と自ら声を掛けるようになっていましたよ。

 

3-2.チーム競技で負けたくないため、友だちにきつく当たるBちゃん(5歳)

チーム競技で負けたくないあまり、友だちへの当たりが強いBちゃんがいました。

Bちゃんは、リーダー気質のしっかり者。先生のお手伝いを好み、人前に出るのも大好きな女の子です。

集団遊びの中にはチーム競技が多くあります。4歳頃からリレーやサッカーなど、ルールが複数あるチーム競技を楽しめるようになります。

しかしチーム競技になると、Bちゃんは負けたくないあまり、勝てそうなスキルがある子を見定め、チームメイトを決めたがる傾向が強かったのです。

また、負けそうになると遊びの途中でも友だちに強い言葉で攻め立ててしまうところがあり、Bちゃんとチームメイトになるのを嫌がる子も増えていきました。

そこで職員は、絵本の読み聞かせタイムに人形を使って、

・「1番じゃなくても頑張っている子は素敵だよ」

・「友だちはどんな気持ち?想像しよう」

というテーマの寸劇で伝えました。

するとBちゃんなりに納得したのか、その後は時間をかけて「負けてもみんなで頑張った」ことを受け入れられるようになりました。

卒園するときには、チーム競技で負けても「あたしたち頑張ったからいいじゃない!」と大人顔負けの言葉をお友だちに掛けていましたよ。

 

3-3.負けるとパニックになり、勝敗がつく遊びを拒むようになったCくん(5歳)

勝ち負けに非常に敏感で、負けると必ずパニックになり次の活動にスムーズな移行が難しいCくんがいました。

Cくんは、元々1人で黙々と遊び込むことが多く、勝ち負けがある遊びを好まない男の子です。

次の活動に影響が出るほどのパニックで、なかなか切り替えがうまくいかないことが多かったため、

・「これから○○をするよ」

・「勝つ子と負ける子がいるよ」

・「終わったら次の活動△△があるよ」

のように、職員の間で「予告」を徹底し、これからおこなう予定を個別に細かく伝えました。

心構えがあると、Cくんの安心感が違ったようです。

また、無理に活動に参加させないよう職員の間で統一しました。

・「見ていてもいいよ。やりたくなったらいつでも一緒にやろうね」

などと伝えて、同じ空間の中で少しずつ慣れてもらえるよう関わりました。

後にCくんは発達障害のひとつ「自閉スペクトラム症」と診断がつきました。

パニックの状態が重い、他の活動に支障が出る、などママが少しでも不安になることがある場合は、気軽に専門機関を頼ることも選択肢のひとつですよ。

 

4.家庭ですぐにできる!勝ち負けにこだわるお子さんへのおすすめ対応3選

ご紹介した保育現場での対応は、ママも家庭ですぐに実践できますよ。ぜひ参考にしてみてくださいね。

 

4-1.負けてくやしい気持ちに寄り添う

ママにしてほしいことが、負けてくやしい気持ちへの共感です。

子どもは、自分の気持ちを大好きなママが理解してくれていると、心から安心します。

勝ち負けにこだわる子は勝って認められたいと思っているので、ママは子どもが頑張った過程をたくさん褒めてあげてください。ママが認めてくれることで子どもの自己肯定感は高まり、大好きなママは自分をわかってくれる、と心から安心しますよ。

「負けても大丈夫」「次があるから大丈夫」など、ママの「大丈夫」には子どもを安心させる強いパワーが込められている魔法の言葉。

何度も「大丈夫」を伝えてあげてくださいね。

 

4-2.人形を使って、勝ったとき・負けたときの気持ちを子どもに問いかけてみる

勝ち負けにこだわる子が多い4〜5歳は、感性や想像力が著しく発達する時期です。人形を使った簡単な人形劇は、子どもの記憶に残り、理解しやすい特徴があります。

子どもの想像力を生かし、おうちにあるぬいぐるみや人形で、簡単な寸劇をしてみるのがおすすめですよ。

例えば、ぬいぐるみ2体でかけっこをして、勝った子と負けた子をママが演じます。子どもに「負けた子はどんな気持ちだろう?」「なんて声を掛けてみる?」などと問いかけてみてください。子どもの想像力や協調性が育まれる効果も期待できますよ。

人形を使って遊ぶのが苦手なママは、同じテーマの絵本を読み聞かせするのも効果的です。

 

4-3.トランプでまずは楽しく遊んでから勝敗要素を取り入れる

2~5人ほどで遊べるトランプゲーム「ぶたのしっぽ」をご存知でしょうか?

【ぶたのしっぽのルール】

①ジョーカーを除いたカードをよく混ぜて、裏面が見えるように円形に並べる。

②じゃんけんをして1番目の子から1人ずつ好きなカードを1枚めくって、絵柄が見えるように円の中心に置く。これを、2人目、3人目と続ける。

③円の中心にカードを置いたとき、前の人が置いたカードの絵柄と同じだったらカードに全員が手をつき、最後に手をついた人が円の中にあるカードを回収する。

④以上を何度も繰り返し、最後に1番多くのカードを持っている人が負け!

というトランプゲームです。

まずは、勝ち負けにこだわらず、ルールを守ることを意識づけて遊びましょう。繰り返し遊ぶと、ルールがある遊びの楽しさがわかってきます。

子どもがルールを理解して楽しめるようになったら、勝敗を説明して遊んでみるといいですよ。

ポイントは、子どもが「ぶたのしっぽ」を好きになってから勝敗をつけること。

好きな遊びを通して「勝つ嬉しさ」「負けるくやしさ」「相手がいるからこその面白さ」を味わい、勝ち負けへの理解が深まりますよ。

 

5.勝ち負けにこだわる子へのNG行動


勝ち負けにこだわりが強い子へ、ママもさまざまな対応を試してみたのではないでしょうか。

中には、子どもへの間違った行動もあります。ここでは勝ち負けにこだわる子へのNG行動をご紹介いたします。

 

5-1.勝ち負けのこだわりを強く叱る

勝ち負けにこだわる子どもへの対応でママにしてほしくないことは、こだわることに叱ることです。

子どもは、好きで勝ち負けにこだわりがある訳ではありません。「泣くのをやめなさい」「どうして我慢できないの」といった、子どものこだわりを責めるのはやめましょう。

大好きなママが、気持ちをわかってくれない、自分のことで怒っている、と自己肯定感が下がるきっかけになる場合もあります。

こだわりも、子どもの一部。ママは大変ですが、できるだけ受け止めて共感してあげてくださいね。

 

5-2.プレッシャーを感じる言葉がけ

ママが無意識に子どもに伝えがちなのが、プレッシャーを感じる言葉です。

「1番を目指してね」「勝つところが見たいな」など、勝たないとママが喜んでくれない、と子どもが思ってしまう言葉がけは避けた方が良いでしょう。

もちろん、上記の言葉が有効な子もいますが、勝ち負けにこだわりが強い子には「頑張ってるところ見ているからね」など、今までの過程を認める言葉がけが子どもの心に届きやすいのでおすすめですよ。

 

5-3.ルール変更をする

勝ち負けへのこだわりが強い子は、急な変更や臨機応変が苦手な傾向があります。遊びのルールは、途中で変更しないことを一貫しましょう。

ルールを変更することで子どもが混乱し、より勝ち負けがある遊びを嫌がってしまうこともあります。

負けると泣いてしまうから、と特別にルールを変えるのは子どもにとっても良くありません。小さなことでも、ルール変更は避けましょう。

 

6.勝ち負けにこだわる子どもの気持ちに寄り添って


4〜5歳児は、まだ感情のまま素直に気持ちを表現する時期。「負けてくやしい」気持ちを我慢するのは難しいでしょう。

個人差はありますが、小学生くらいになると、負けてもくやしさを自分の中で収められるように成長していきますよ。

今回ご紹介した対応が、ママの心を少しでも楽にできますように。ぜひ参考にしてみてくださいね!

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