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お箸は何歳から?子どもの発達に応じた見極めと練習方法を保育士が紹介

この記事を書いた人

宮先惟之 宮先惟之

宮先惟之

  • 保育士

保育所や子ども園にて15年間勤務。

主に、3〜5歳児のクラス担任や障がい加配保育士をしてきました。

2児の父でもあり、子育ての大変さや楽しさを感じながら、日々子どものやる気を引き出す環境作りや言葉のかけ方を工夫しています。

「お箸っていつ頃から持てるようになるの?」
「子どもにお箸の使い方を教えたいがどうやっていいか分からない」
と思ったことはありませんか?

年齢の近い子どもがお箸で食事をしていると聞くと、「うちも使い始めないと・・・」と感じたりしますよね。

本記事では、現役の保育士である筆者が、これまで保育現場で関わってきた子どもの姿や自身の子育ての経験を踏まえて、お箸が持てる時期の見極めをはじめ、お箸を正しく持つための大事なポイントをお伝えします。

ご紹介する効果的な練習方法は身近なものを使って実践できるので、ぜひ試してみてください。

お箸の持ち方を教える場合、最初が肝心です。
それでは、1つ1つ丁寧に一緒にみていきましょう。

 

目次

1.お箸が使えるようになるのはいつ?

はじめに、お箸が正しく使えるようになる年齢についてお話していきます。

お箸を安定して扱えるのは、指先を器用に動かせるようになる5歳頃です。なぜ、5歳頃になると指先の器用さが増すのでしょう?それは、体(手)の発達と関係しているから。

箸の奥深い日本文化を考察した書籍「ものと人間の文化史 102 箸(はし)」では、”5歳頃は、手を構成する骨(手根骨)が発育し、その周りの筋肉とのバランスが整う時期”とも述べられています。

実際に保育現場でも、4歳児(年中)クラスはお箸を持つ子どもはいますが多いとは言えず、一方、5歳児(年長)クラスになると正しい持ち方で食事をする子どもがどっと増えますよ。

では、「5歳児頃になると自然とお箸が持てるようになるのか?」といったらそうではありません。発達には個人差があるので、3〜4歳頃から少しずつお箸に触れる機会を作っていくのがおすすめです。

しかし、「お箸に触れるといっても何をどうしたらいいの?」と思いますよね。
お箸で食べ物をつかんだりお箸の向きを調節する際には、指先と手首をコントロールする必要があります。

まずは、3〜4歳頃から指先や手首を柔らかく動かせるように日頃から意識し、今のお子さまの様子を見ながら、必要な手立てを考えていきましょう。

 

2.お箸の持ち方を教える前にチェック!

それでは、お箸の練習を進めていくにあたって今のお子さまの様子をみていきましょう。
正しい持ち方ができるよう、3つのポイントをチェックしていきます。

2-1.人差し指を支点にスプーンを下手で持っているかな?

 


現在、どのようにスプーンやフォークを持って食事していますか?
実は、ここがお箸を正しく持つにあたって1番大切なところです。

スプーンにかける指と支える指に注目してみましょう。
人差し指と親指がスプーンの上にあり、中指、薬指、小指がスプーンを支えるような形になっていますか?
人差し指が支点になってスプーンが動かせる状態です。

時折、中指がスプーンの上になっていたりグーで握るように持っている子どもを見かけます。
この場合、お箸を持ったときに誤った持ち方になる可能性が高くなるので、スプーンの持ち方から正しく持てるように気を配っていきましょう。

 

2-2.指先や手首をしっかり動かせているかな?

お箸を上手に扱うためには、指先や手首をしっかりと動かせる器用さが大切です。

生活の場面を見てみましょう。
例えば、「ボタンをとめることはできるかな?」、「指で小さい物をつまむことはできるかな?」、「お菓子の袋を開けることができるかな?」などチェックしてみてください。

こういったことは子どもの発達に繋がる貴重な機会なので、おうちの方が全てしてあげるのではなく、チャレンジする様子を見守ったり手伝ったりしてあげてくださいね。

 

2-3.鉛筆やクレヨンの持ち方はどうかな?

遊びの場面でも、子どもの発達に注目です。

お絵かきで鉛筆やクレヨンの持ち方はどうでしょう?
スプーンの持ち方同様、中指が鉛筆の上にきていたら誤りです。鉛筆の下に来るように声をかけたり、手を添えて正しい持ち方を知らせたりしましょう。

正しい持ち方が身に付くと、スプーンやお箸も正しい持ち方が自然とできるようになりますよ。

ところで、おうちの方はお箸を正しく持てていますか?お子さまの見本となりますので、1度ご自身の持ち方を確認してみましょう。

 

3.お箸の正しい持ち方をおさらいしてみましょう!

ここでは、子どもにとっても分かりやすいお箸の正しい持ち方をご紹介します。


①上のお箸は、人差し指と中指の2本ではさむ。鉛筆やクレヨンの持ち方と同じ。
②下のお箸は、薬指と小指で支える。

 

上記のように、まず上のお箸を持ってから下の箸を入れると上手く持てるでしょう。

保育現場でよく見る間違いとして、上記のような「箸の上に人差し指と中指がくる」持ち方をする子どもがいます。
1度、癖になると修正が難しいので、丁寧に伝えていきたいですね。

では、次におうちで実践しやすく、子どもが楽しめるお箸の練習方法を紹介していきます。

 

4.楽しいお箸の練習方法3選

では、実際に子どもがお箸を持てるようになる練習方法を3つご紹介します。

練習というよりは、楽しい遊びを通じてお箸の持ち方を学べたり、触れて扱いに慣れたりといったことをねらいにしています。

保育現場でも効果のあった方法ですので、おうちの方も楽しみつつ取り組んでみてください。

4-1.トングで具材つかみ

【用意するもの】
・製氷ケース
・デコレーションボール
・トング
・お箸

【遊び方】
デコレーションボールをトングやお箸でつかんで製氷ケースに入れます。
カラフルできれいなボールが子ども達のやる気を引き出し、いろいろな色があることで同じ色を近くに集めるなど、子どもなりに考えて置くなど繰り返し遊ぶ姿が見られました。


【遊びのポイント!】
・トングを持つ際には、親指と人差し指で持つようにしましょう。※中指は曲げる。
・トングに指のイラストを描くと、子どもはイメージしやすいですよ。
・トングで入れて遊ぶのに慣れたら、お箸に変えて挑戦してみましょう。

 

4-2.お箸を使ったままごと遊び

【用意するもの】
・お箸
・トング
・お皿(ケースでも可)
・具材

【遊び方】
ままごと遊びの中に、お箸を用意します。
具材とお皿があれば、盛り付ける際や食べる真似をする際に上手に使って遊ぶでしょう。
まずはおうちの人が使ってみると、子どもはその様子を見て真似て遊びますよ。

【遊びのポイント!】
・用意する具材は、お箸でつかみやすい布製のものや小さめのものがおすすめです。
・お箸が難しい場合は、トングを使っても良いでしょう。※使う時は、持ち方に気を配ってくださいね。

 

4-3.お絵描き

【用意するもの】
・描くもの(クレヨン、ペン、色鉛筆など)
・紙(普通紙や画用紙)

【遊び方】
絵を描いて遊ぶことはお箸を柔軟に持って動かせる力に繋がりますので、正しい持ち方で筆記用具を持ち、伸び伸びと楽しんで絵を描きます。
お箸を使うことに抵抗があるお子さまにとっても、お絵描きだと楽しんで遊ぶのではないでしょうか?
お子さまの様子に合わせて好きなものに取り組んでみてください。

【遊びのポイント!】
・お箸の持ち方とペンや鉛筆の持ち方は似ています。
お絵かきで色の濃さを調節する機会は、指先の力加減を調節できるいい機会です。手首を自然と使えるところもいいですね。

 

5.いよいよ実践!食事でお箸を使うときのポイント


最後は、実際の食事で実践できる効果的な声かけと、ポイントについてお話します。

お箸を使っての食事は大人が思っている以上に難しいので、子どもの様子を見ながら少しずつ進めていきましょう。

 

5-1.スプーンを適度に使う

食事の際には、スプーンも併用しましょう。
子どもにとってお箸の使い始めは、途中でやめようとするかもしれません。

集中が切れた状態でお箸を使い続けると、誤ったお箸の持ち方が定着したり、お箸を使う意欲が薄れたりします。

スプーンを正しく持って食べることもお箸を持つことにつながるので、食事の始めはお箸を持って食べて、疲れてきたらスプーンに変えるようにしましょう。

お箸を正しく持てたときに褒めて、「またやってみようね」と言葉をかけると、次もやる気をもって取り組みますよ。

 

5-2.お箸の持ち方を指摘しすぎない

子どもに、良かれと思ってついついあれこれと指摘したことはありませんか?
お箸を短く持っている、指の位置が違う、マナーが良くないなど見ていると感じることは多くあるでしょうが、言われる子どもからするとどうでしょう。

慣れないことをしている中で、たくさんのことを言われると混乱してしまいます。
やる気をなくしたり、食事自体が嫌になったりすることは避けたいですね。

優しく話しかけ、伝えることは1つに絞ると良いでしょう。
1つ1つ身につけていけば、いずれ正しく持って食事ができるようになりますよ。

 

6.お箸の雑学:数十年前とは違う!お箸が持てる時期


私が保育士として就職した2010年頃は、3歳児クラスではみんながお箸が使えるようにといった流れがありました。

きっと、その頃はお箸が使えるようになる年齢は今より低かったのでしょう。

学術論文「幼児の生活技術の現状と背景問題-兵庫県下H幼稚園児に対する実態調査から- 」では、直接体験不足に伴う身体学習機会の減少が、幼児の動きのぎこちなさにつながっていると指摘されています。

現代では、水道の蛇口をひねったり、ドアノブを回したりなど、日常生活の中で手首や指を使う機会が減りつつあります。それに伴い指先や手首が育つ機会も昔とは異なってきていると言えます。

便利になった今だからこそ、私たち親が意図的に子どもたちが成長できる環境を作ることって大事ですね。

お子さまの反応や育ちを楽しみながら見守っていきましょう。

主な参考文献
・向井由紀子,橋本慶子「ものと人間の文化史 102 箸(はし)
・大和晴行「幼児の生活技術の現状と背景問題-兵庫県下H幼稚園児に対する実態調査から-

 

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