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忙しいママも簡単!社会性や心身を育む「おうち食育」今日から親子で始めてみよう

この記事を書いた人

遠藤さおり 遠藤さおり

遠藤さおり

  • 社会福祉士

大学在学中に社会福祉士・介護福祉士の資格を取得。

知的障害児のレスパイトサービスや高齢者介護施設での勤務を経て、現在は福祉系ライターとして活動中です。

自身も小学生の子の母として、子どもの可能性を伸ばすことを第一に考えながら子育て奮闘中!

福祉の視点を活かしながら、お悩みに寄り添った記事の執筆を目指してまいります。

子どもの健やかな発達のために、国が中心となって推進している「食育」。

「食育は大切って聞くけれど、具体的にどんなことをするの?」

「家庭ではどうやって教えたらいいの?」などなど、疑問も多いのではないでしょうか。

「食育」に力を入れている幼稚園や保育園も多いですが、実は家庭でできる取り組みもたくさんあります。

今回は、忙しいママでも簡単にできる「おうち食育」の取り組みをご紹介します。

家庭での取り組みは、特別に難しいことを行う必要はなく、無理のない範囲で習慣化していくことが大切です。

勉強や運動と同じように、「食」に対する価値観も大切に育んでいきましょう。

 

目次

1.「食育」って何?

「食育」は、「食べること」に関する知識を学ぶことで食への興味関心を高め、生涯を通して健康的な食生活を送るための土台を育む教育です。

2005年に施行された「食育基本法」では、食育を“生きる上での基本”として以下のように表しています。

“もとより、食育はあらゆる世代の国民に必要なものであるが、子どもたちに対する食育は、心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるものである。”
引用:食育基本法

 

少し昔になりますが、2012年に木村拓哉さんが主演を務めたドラマ「PRICELESS」と文部科学省がコラボして、「食べるが価値」と題して食育の大切さをPRするメディアを立ち上げました。

そこでは、「食育」で身につけることとして、以下の6つが注目されました。

  • 食べ物を大事にする感謝の心
  • 好き嫌いしないで栄養バランスよく食べること
  • 食事のマナーなどの社会性
  • 食事の重要性や心身の健康
  • 安全や品質など食品を選択する能力
  • 地域の産物や歴史など食文化の理解など

(引用元:文部科学省×PRICELESS)

 

「食育って、なんだか大変そう」と思ってしまいがちですが、実は手軽に取り組めることがたくさんあります。

まずは、「食育」の効果を学んで、簡単なところからスタートしてみましょう!

 

2.「食育」にはいい効果がたくさん!

文部科学省や農林水産省、厚生労働省、食品安全委員会など、様々な方面からアプローチが行われている「食育」。

幼稚園や保育園、学校だけではカバーできない部分も多く、家庭での取り組みも推奨されています。

ここからは、親子で「おうち食育」に取り組むメリットについて、確認してみましょう。

 

2-1.「食育」のメリットとは?

「食育」のメリットは多岐にわたりますが、今回は代表的なものとして、以下の3つを挙げます。

①子どもの「健やかな身体と精神」が養われる

「食育」に取り組むことで、食の大切さに気づき、栄養バランスの整った食事や規則正しい食生活、安全な食品の選び方などを学ぶことができます。
成長著しい子どもの時期こそ、親子で健康的な食生活を心がけ、身体と心を元気に育てましょう。

②子どもの「社会性」が身につく

「食育」は、食事マナーの習得にはもちろんのこと、食事の準備・片付けにおける共同作業の経験など、子どもの社会性を育てる絶好の機会となります。
食材の生産や販売など、見えない部分にも目を向けるチャンスをつくり、子どもの興味関心を刺激していきたいですね。

③子どもの「食を楽しむ心」が育まれる

「食育」に取り組むことによって、食への興味関心が高まり、食事は「お腹を満たすもの」という一義的な行動から、「味わう」「目で見て楽しむ」「料理に挑戦する」といった楽しみが生まれます。
また、「食育」ではコミュニケーションも大切にされているので、親子での楽しい食体験をもとに、子どもの「食を楽しむ心」を大切に育んでいきましょう。

 

2-2.「食育」を家庭で!「おうち食育」の必要性とは?

メリットがたくさんある「食育」ですが、家庭で取り組むことによって、子どもの時期に限らず、生涯をとおしていい効果が得られることがわかっています。

ここでは、食生活に関する研究事例を2つ取り上げておうち食育の大切さを考えてみましょう。

①子どもの頃の食が大人になっても影響する

山口県大学の井上らが行った研究『子どもの頃の食に関する経験が大学生の食生活に与える影響』では、子どもの時期に「食育」に取り組むことの重要性が表されました。

◆研究から見えてきたこと

子どもに家庭で食に関わるしつけや教育を行うことが、大学生になった時点での食習慣や食行動を良い傾向に導くという関連性。

とくに、

「箸を正しく持つ」

「食事前後のあいさつをする」

「手を洗ってから食べる」

「落ち着いて食べる」

について家族から教えられたことのある人は、大学生になった時点でもこれらの項目をよく守っていたことの結果が出ています。

家族一緒に食卓を囲みながら大切なことを伝える「おうち食育」は、生涯をとおしていい効果がありそうですね。

 

②親子で食育に取り組むことの大切さ

医学博士である中掘らが行った『子どもの食行動・生活習慣・健康と家庭環境との関連』では、親子で取り組むことの重要性が表されました。

◆研究から見えてきたこと

子どもの食行動や生活習慣、健康を良くするためには、

保護者の食意識を高め、親子の会話を増やし、子に家事手伝いをさせるなどの家庭環境を整えていくことが重要であること。

「食育」はイベント的に終わらせるのではなく、家庭で継続的に取り組むことが大切のようです。

手間や時間のかかる大掛かりな取り組みではなくとも、小さなことを毎日の習慣にしていきましょう。

 

3.食育はいつから始める?

「食育」は、だいたい何歳くらいから始めるのがベストでしょうか?

始めどきと、各年齢における「食育」の目標についてご紹介します。

 

3-1.食育の始めどきは、3歳くらいがオススメ

「食育」は、離乳食を卒業し、自分で食べられるようになった3歳くらいから、日々の暮らしの中で自然に取り入れていくのがオススメです。

幼児期の「食育」は、食事への関心や意欲を高めることや、基本的な食習慣の土台づくりが目標となりますので、それまでは「食べることに慣れる」を大切にしていきましょう。

次に各年齢の食育目標をご紹介しますので、目安にしてみてくださいね。

 

3-2.年齢別【3・4・5歳】の食育目標

【3歳】自分で食べる楽しみを感じ、食事の時間にメリハリをつけよう

乳歯が生え揃い、大人と同じものが食べられるようになる時期です。

手先も器用になり、食べこぼしも減ってくるでしょう。

自分で食べられるようになり、食に対しての意欲が増す一方で、気分のムラによって食べる量に差があったり、好き嫌いが出てきたりする時期でもあります。

苦味や酸味に対して本能的に避けることもありますが、「食わず嫌い」にならないよう、まずはひとくち食べてみることを勧めましょう。

 

さらにこんな取り組みも◎

「食育」の一環として、大人と同じように陶器製の食器を使ってもらうのもオススメです。
おもちゃとは違う材質の食器を使うことによって、遊びと食事のメリハリもつき、食事への集中力も高まります!

 

【4歳】食事のマナーを身に着けながら、プラスアルファの食育に取り組もう

幼稚園や保育園の入園をきっかけに、家族以外の集団で食事をする機会がグンと増える時期です。

先生や友だちと一緒に食事をとる楽しみが生まれ、お弁当や給食の時間を楽しみにするお子さんも多いことと思います。

一方で、親御さんの目の届かないところでの食事が増えるので、家庭ではマナー面も十分教えていきたいですね。

とくにお箸は、3歳半〜4歳にかけて使い始めるお子さんが多いようです。

お箸の持ち方やお茶碗・お椀の扱い方など、声掛けと親御さんの行動の両方から示していきましょう。

 

さらにこんな取り組みも◎

理解力や記憶力も発達するこの時期は、日常的な「食育」の他に、親子で旬のもの料理したり、野菜を栽培したりするのもオススメです。

後ほど詳しくご紹介するので、チェックしてみてくださいね。

 

【5歳】食事の大切さに目を向け、食べられることに感謝する気持ちを持とう

基本的な食習慣が身についたこの時期は、食事の大切さや食事が食卓に並ぶまでの過程など、目に見えない部分にも視野を広げたい時期です。

「野菜はどこで作っていると思う?」「これは、誰が育てたのかな?」というように、子どもの興味を引き出す会話を取り入れ、食材の買い出しや調理などに積極的に関わる機会を作りましょう。

栄養面からの食事の大切さも徐々に理解できるようになる時期ですので、バランスの取れた食事や、食べ物の選び方についても伝えられるといいですね。

 

さらにこんな取り組みも◎

どうしてご飯が食べられるのか、について一緒に考えてみましょう。
「食べられること」のありがたさや動物の「命をいただく」ことを学び、感謝する気持ちも育んでいきましょう。

 

4.毎日の習慣にしたい「おうち食育」

ここからは、毎日できる簡単な取り組みをご紹介!

「食育」を意識して少し行動を変えるだけでOKなので、ぜひ今日からはじめてみてくださいね。

 

4-1.家族で食事をとる

家族と一緒に食事をとると、コミュニケーションが図れる、マナーを身につけられる、栄養に偏りがないか親がしっかり把握できる、といったメリットがあります。

厚生労働省は、「​​『1人で食べる』 子どもは、 普段の生活でも疲れやすく、 イライラすることが多い傾向が見られる」と指摘しており、子どもの健やかな心を育むためにも、家族と一緒に食事をとることを推奨しています。

とくに、ひとりで食べる「孤食(こしょく)」の状態になりがちな朝食は、家族そろって食卓につくための工夫も大切です。

前日の夕ご飯の残り物を活用したり、おにぎりや具だくさんお味噌汁などの「簡単に作れる・食べられる」メニューを取り入れたりするなどして、調理時間よりも子どもと一緒に食卓につく時間を優先しましょう。

 

4-2.食事の準備や片付けを一緒に行う

食事の準備や片付けを一緒に行うことも、簡単にできる「食育」のひとつです。

配膳マナーを学べたり、「食事を用意することの大変さ」「食べられることのありがたさ」に気づけるきっかけにもなるので、ぜひ実践してみましょう。

食べる前に、匂いや見た目から食事を感じることで、食欲が刺激される嬉しい効果もありますよ。

子どもが手伝うことで親御さんも助かり、親子ともに嬉しい効果がいっぱい。ぜひ今日から毎日の習慣にしてみてくださいね。

 

4-3.バランスよく食べられるよう調理や食器を工夫する

好き嫌いが多い、食べる量が少ない、食べムラがあるなどなど、子どもの食事の悩みは尽きませんよね。

今現在もたくさんの工夫をされているかと思いますが、「食育」の観点から見ると、やはりバランス良く食べられるように・苦手なものを克服できるように、といった試みは重要です。

引き続き、細かく刻んだり食べやすい味付けにしたりして、子どもの食欲を促しましょう。

また、調理方法だけでなく、食器を変えてみるのもオススメです。

子どもの食器を大人と同じ陶器やガラス製に揃えることで、程よい緊張感が生まれ、食事の時間にメリハリがつくようになります。

盛り付け方も、ワンプレートに乗せることで食べやすくなるお子さんがいる一方で、目に入る量に圧倒されてしまうお子さんもいるようです。

小さな小鉢に食べやすい量を盛り付け、ひとつずつクリアしていく感覚で達成感を味わわせるのもオススメです。

 

4-4.食事のマナーを伝える

食事のマナーを教えることは、家庭の役割がもっとも大きい「食育」といえます。

とくに、幼稚園や保育園など家庭以外で食事をとる場面も増えるこの時期は、今後一生の糧になるマナーをしっかりと伝えたいところです。

「いただきます・ごちそうさまでした」の挨拶をする・しっかり座って食べる・お箸やお茶碗を正しく持つ・肘をつかない・口に物が入った状態で喋らないなど、基本的なマナーを伝えましょう。

子どもは見て学ぶ模倣学習が得意ですので、親御さんの行動もマナーを教える上でキーポイントになります。大人も改めて意識していきたいですね。

 

5.プラスアルファで行いたい「おうち食育」

ここからは、日々の「おうち食育」にプラスして取り入れたいアイディアをご紹介!

親御さんが日々何気なく行っていることも、実は立派な「食育」の1つかもしれません。

どのようなことを意識したらよいのか、チェックしてみてくださいね。

 

5-1.旬のものや郷土料理を食べる

何気なく食卓にのぼる料理の中にも、旬の食材がたくさん使われているはずです。

「とうもろこしは、夏が旬だよ」「冬は白菜が美味しいね」と言葉にして子どもに伝えることも立派な「食育」になりますので、意識してみてくださいね。

また、季節ごとのイベントは「食育」のチャンスです。
日常的なメニューにプラスして、行事食や郷土料理も積極的に取り入れてみましょう。

「これは、お正月にこの地域でよく食べられてきたんだよ」「ひな祭りには蛤のお吸い物を作ろうね」など、料理の由来について触れることで、子どもは「見て・聞いて・食べて」たくさんの情報を得ることができるでしょう。

 

5-2.一緒に買い物に行く

子どもと一緒に食材の買い出しに行くのも、オススメの「食育」です。

スーパーでは、お盆やお正月などの季節に合わせた商品が並んでいたり、切り身ではない丸ごと一匹の魚が見られたりと、買い物ならではの体験ができるところも魅力です。

食材がどのような形で売られているのか、産地はどこなのか、季節によってどのような食材が多いかなど、子どもと話題にしながら買い物ができたらいいですね。

 

5-3.一緒に調理する

時間や気持ちに余裕があるときは、ぜひ一緒に調理してみてください。

調理することで、食材の本来の状態や、下処理や味付けなどの調理の過程・手間を知ることができ、「食べる」意欲につながります。

また、「命をいただいている」ことを知ることで、将来フードロスやアニマル・ウェルフェア(主に畜産動物に対して、身体的・精神的苦痛を取り除くための福祉的な視点)に目を向けるきっかけにもなるでしょう。

皮を剥く・野菜を洗うなど、できる範囲のことからでよいので、一緒にキッチンに立つ機会を作ってみてください。

 

5-4.農業体験をする

野菜の栽培・収穫を行う農業体験は、学校や幼稚園・保育園で実施されていることも多く、「食育」の取り組みとしてオススメです。

家庭では、プランター栽培やキッチンでの水耕栽培など、手軽なものがチャレンジしやすいでしょう。

市の施設やレジャー施設では、稲作体験や果物狩りなど、なかなか自宅ではできないダイナミックな農業体験ができるのが魅力です。

季節に合わせて、探してみるのもいいですね。

 

5-5.栄養について伝える

一見難しそうに見える「栄養」についての話題ですが、幼児の時点では、「元気に動くために必要なもの・身体を作るために必要なもの・調子を整えるもの」の3つがあることを伝えるだけでも十分です。

学校教育では、それぞれ「黄・赤・緑」の3つに色分けしていく「食育」が行われているようですので、色を目安に食材の説明をしていくのもいいでしょう。

完全に理解できなくても、栄養バランスに気をつけて食べることの大切さが伝わるように、声掛けをしていきたいですね。

 

6.まずは簡単な取り組みから!「おうち食育」を楽しみましょう

「食育」と聞くと、栄養バランスや、毎日しっかり食事をとることを考えがちです。
ガチガチに考えてしまうと、お子さんにとっても、ママにとってもつらくなってしまいますよね。

幼児期の「食育」は、「楽しく食べて、食に興味を持つ」ことを目標に、日々の暮らしの中で無理なく取り組んでいきましょう。

一度習慣にしてしまえば、子どもが大人になっても役立つことばかりです。

まずは小さなことから、親子ではじめてみましょう。

 

・非認知能力がどうして大事なの?効果は?

・情報を知ることがどうして大切なの?

こちらで詳しく解説中です!

 

 

主な参考文献
平成十七年法律第六十三号 食育基本法,e-Govポータル
食べるが価値。食育って何?,文部科学省×PRICELESS
井上 寿美香,片山 久美子,陳 暁倩, 中村 幸一郎,金子 祐大,齋藤 すが代,戸川 桂一,森重 恵介,森本 陽子,草平 武志,吉村 耕一,人見 英里,子どもの頃の食に関する経験が大学生の食生活に与える影響,山口県立大学学術情報 第12号,大学院論集 通巻第20号,2019
中堀 伸枝,関根 道和,山田 正明,立瀬 剛司,子どもの食行動・生活習慣・健康と家庭環境との関連:文部科学省スーパー食育スクール事業の結果から,第63巻 日本公衛誌 第4号,2016

 

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