わがまますぎる!言うことを聞かない!5歳児「反抗期」への対応のコツ
この記事を書いた人
遠藤さおり
- 社会福祉士
大学在学中に社会福祉士・介護福祉士の資格を取得。
知的障害児のレスパイトサービスや高齢者介護施設での勤務を経て、現在は福祉系ライターとして活動中です。
自身も小学生の子の母として、子どもの可能性を伸ばすことを第一に考えながら子育て奮闘中!
福祉の視点を活かしながら、お悩みに寄り添った記事の執筆を目指してまいります。
幼稚園・保育園に入園したばかりに比べ、だいぶお兄さん・お姉さんらしくなってきた5歳児。
自立への道を着実に歩んでいるように見える一方で、「わがまま」や「こだわりの強さ」、「しつこさ」に困ることはありませんか?
反抗期?
ストレスが溜まっている?
赤ちゃん返り?
しつけが悪かったかしら……
そんな風に悩む親御さんも多いようです。
しかし、5歳くらいの子どもに見られる反抗的な態度は、成長の証でもあるようです。
今回は、5歳児に起こりがちな”困った行動” の理由と、対応のコツをご紹介します。
5歳児ならではのポイントを掴み、余裕を持ってこの時期を乗り切りましょう!
目次
1.あるある? 5歳児の子育てで起こりがちな困った行動
まずは、5歳児にありがちな”困った行動” の例を見てみましょう。
以下のようなこと、経験のある親御さんも多いのではないでしょうか?
●「どうしても今食べたい!」と言い出すと、ダメな理由を伝えても聞く耳を持たない。
●できないことがあると、癇癪を起こして親に八つ当たり。なだめても効果なし。
●「ママなんて嫌い!いなくなればいいのに!」などと暴言を吐いて抵抗する。
●きょうだい喧嘩がひどい!手を出すこともしばしば。
●「どうしてダメなの?なんで?なんで?」としつこく聞いてくる……。
口達者になり、大人との会話もだいぶスムーズになってきた頃、こんな困りごとが立て続けに起こると、つい感情的になってしまいますよね。
「甘やかしすぎたかな?」「愛情不足かな?」と心配になったり、「これからどのように躾をしていったらいいかしら……」と焦る気持ちもあるでしょう。
5歳の子どもを育てるお母さんは、予想していなかった難題に、
「子ども相手なのに感情的になってしまう」「この子の躾をしっかりしなければ、と焦ってしまう」と、お悩みが多くなりがちです。
2.【5歳児】反抗期はなぜ起きる?
では、なぜこのような”困った行動” が増えるのでしょうか?
ここからは、反抗期について発達の観点からその理由を詳しく見てみましょう。
2-1.言葉で問題解決を図ろうとする時期だから
理解力やコミュニケーション能力が育ってきた5歳児。
大人の言うことを理解し、同時に自分の気持ちを言葉で伝えられるようになる時期です。
そんなこの時期の子どもたちは、何か問題が起こったときに「言葉で解決を図ろうとする」という姿勢が見られるのが特徴的です。
東京学芸大学の広瀬らの5歳児を対象にした研究では、以下のように述べられています。
“4歳児以降に調整・仲直り行動からいざこざの終結を図る傾向が見られ、その際に5歳児では言語方略が多く用いられることを明らかにしている”
引用:5歳児の葛藤処理方略の発達過程 : 幼稚園生活3年目の変化に注目して(2020)
今までは、気に入らないことがあると泣いたり怒ったり、「非言語的」かつ相手にどうにかしてもらおうとする「他者依存的」な方法で、自分の意思を押し通そうとしていたのではないでしょうか。
しかし、年齢が上がるにつれて言葉を使い、自分で交渉する力を身に着けるようになります。
その過渡期がちょうど5歳頃と言われています。
「わがまま」「しつこい」と思われていた言動も、実はこの時期ならではの「問題解決」の手段だったのかもしれません。
2-2.自分なりのルールや考え方を重視しようとする時期だから
さらに、理解力や他者への意識の高まりとともに、「自分なりのルールや考え方にこだわる」姿勢が見えるのも、この時期の特徴です。
先ほど見た広瀬らの研究では、5歳児の規範の考え方について以下のように述べています。
“5歳児では権利の侵害に関する葛藤が増えることから、自身の権利への注目や、それを守らなければならないという規範意識の高まりが見られるようになる”
引用:5歳児の葛藤処理方略の発達過程 : 幼稚園生活3年目の変化に注目して(2020)
このように、自分の思い通りにいかない状況に葛藤しやすい5歳児は、集団の中での自分の権利を守るためにルールやこだわりを持ち出し交渉することが多々あります。
「どうしても今やりたい・食べたい」と無理なこを言い出したり、きょうだい喧嘩がひどくなったりするのもそのためです。
お母さんから見るとわがままだと感じられますが、5歳児にとっては「自分なりのルール・こだわり」をもって、自分の権利を守っているようです。
そう思うと、今までよりも少し成長した一面が見えてきますよね。
2-3.「自己抑制」がまだ未熟だから
このように、他者とのコミュニケーションの仕方も以前よりだいぶ成長してきた5歳児。
しっかりしてきたように見えますが、自分を制御する「自己抑制」の力はまだまだ未熟なので、自分の感情にまかせて行動してしまいがちです。
そもそも、自分を制御する「自己抑制」の力は、「実行機能」といわれる物事を計画し制御する脳の働き(前頭前野)に関係があるといわれています。
上越教育大学の森口による研究『実行機能の初期発達、脳内機構およびその支援』では、
3歳より4歳、4歳より5歳といったように3歳〜8歳までの年齢全てで統計的に有意な成績差がみられ、「実行機能」は成長と共に徐々に高まっていくことが示されています。
とくに、3歳〜8歳までの間に急激な上昇がみられたといいます。
5歳という年齢は、脳の器質的な観点から見てもまさに成長著しい時期の真っ只中です。
さらに、厚生労働省からは5歳児の癇癪について情報が出ているので見てみましょう。
“幼児が自己主張する力は3歳過ぎから急速に発達しますが、自己抑制する力は3歳過ぎより7歳頃までゆっくりと発達するようです。両者のギャップが4,5歳頃に大きいため、こうした年齢の幼児でとくにかんしゃくが多いと感じられるようです”
引用:第三章 健診・発達相談等の実際
どちらの研究・資料からも、5歳児は「自己主張」と自分を制御する「自己抑制」のバランスが難しい時期ということがわかりますね。
7,8歳に向けてゆっくりと発達するようなので、この時期ならではの課題だと捉えて、余裕を持って接していきましょう。
3.【5歳児】わがままへの対応のポイント〜
ここからは、そんな5歳児への対応のポイント2つを見てみましょう。
3-1.この時期の”あるある” だと割り切る
まず重要なのが、このような困った行動は期間限定ということです。
この時期の”あるある” だと割り切りましょう。
先ほども紹介したとおり、感情をコントロールする自己抑制の力は7歳頃まで伸びてゆくので、気長に待ちたいですね。
そして何より、このような行動を出せるのは、信頼しているお母さんへの甘えのひとつです。
身近な人にしっかり甘えた経験のある子どもは、その後も他の人と信頼関係が築けるようになるといわれています。
この時期にしっかりと子どもの甘えを受け止めましょう。
3-2.自尊心を傷つけないよう心がける
さらに、5歳児への関わりで重視したいのが「自尊心を傷つけない」ことです。
幼稚園・保育園では”年長さん” と呼ばれる5歳児。
お兄さん・お姉さん扱いされて自己肯定感が育まれる一方、コントロールできない感情と理想の間で、子どもなりにジレンマを抱える時期でもあります。
5歳児の困った行動に「もう5歳なのにどうして!」「あなたはいつもそうなんだから」と否定的な言葉で責めず、温かく見守る姿勢を大切にしましょう。
そして「自分でやりたい」「自分ならできる」という感情を潰さないよう、日頃から自己肯定感を育む声掛けをするのがおすすめです。
「あなたが大切よ」「あなたはあなたのままでいい」と伝えながら、子ども自身で乗り越えるのを待ちましょう。
4.反抗期の具体的な対応のコツをご紹介!
では、実際に困った行動に直面したときにどのように対応したら良いでしょうか。
具体的なコツをご紹介します。
4-1.子どもの気持ちに共感する
子どもが困った行動をしたり、かんしゃくを起こしたりした場合、まずは落ち着いた声で子どもの気持ちに共感しましょう。
泣いたり怒ったりしているときは、なかなか自分の気持ちを言葉で表せないものです。
お母さんが子どもの気持ちを言語化して代弁してあげるのも効果的でしょう。
そもそも、「怒り」の感情は突然湧き上がるものではなく、「一次感情」の上に成り立つ「二次感情」です。
一次感情には、「悲しい」や「ふがいなさ」「恥ずかしさ」といったものがあるので、まずはそちらに目を向けて言語化しましょう。
お母さんが感情を受け止めてくれることで子どもの気持ちが落ち着くこともあるので、共感の声掛けは有効です。
まだまだ感情コントロールが難しい5歳児。
威圧的に叱ったり、自尊心を傷つけるような内容にならないよう、気をつけたいですね。
例:思ったように絵が描けず、怒って癇癪を起こし大泣きしている場合
【OK対応】
「できなくて悲しいんだね」
「悔しくて涙がでちゃうよね」
【NG対応】
「いいかげんにしなさい!赤ちゃんじゃないんだから」
「そんなことで怒らないの!」
4-2.子どもの意見を聞く
子どもが落ち着いたら、子どもが自分の言葉で気持ちや意見を言えるよう、促しましょう。
先ほどもご紹介したとおり、5歳児は、言語的な手段で問題解決を図る練習をしている時期です。
自分がどのような思いで行動を起こしたのか、冷静に振り返る機会を作りましょう。
子どもの言葉を引き出すときに重要なのが、否定的な”決めつけ” の言葉で責めないことです。
お母さんからすると、何度も同じことの繰り返しでうんざりしてしまうこともあるかもしれませんね。
しかし、5歳児はまさに「自分のルール」で権利を守ろうとする時期です。
子どもの意見を引き出して双方向のコミュニケーションを図れるよう、根気強く向き合いましょう。
例:弟におもちゃを取られたことに腹を立て、弟を叩いた場合
【OK対応】
「どうして弟を叩いたの?状況がわからないから、説明してくれる?」
「叩いたら危ないってわかっているのに、どうして叩いたの?」
【NG対応】
「また同じことして!あなたはどうしてそうなの」
「前にも叩いちゃダメ言ったのに、いつもそうなんだから」
4-3.ゆっくり説明する
子どもの意見を聞いたあとは、どうしてダメなのかの理由や、お母さんの考えなどを伝えましょう。
問題解決のためには、相手の意見に耳を傾けることも重要です。
子どもは自分の意見が通らないことに抵抗するかもしれませんが、落ち着いた声で冷静に伝えましょう。
ここで気をつけたいのが、「悪い子」などとネガティブなレッテルを貼らないことです。
注意するのは行動に対してであって、本人そのものの否定であってはならないからです。
子どもの自尊心を傷つけることにもなるので、あくまで「いけなかった行動」にフォーカスして話をしましょう。
また、脅しを使わないことも重要です。
脅しは一見効果的に思えますが、繰り返すことで長期的には逆効果になります。
「なぜダメなのか」その都度しっかりと向き合って説明していきたいですね。
例:「ママなんて嫌い!いなくなればいいのに!」と言った場合
【OK対応】
「そんなこと言われて、ママはすごく悲しい」
「人に”いなくなればいい” なんて、言ったら相手が悲しむよね?」
【NG対応】
「そんなこと言うなんて、悪い子だね」
「じゃあ、ママは本当にいなくなるね」
4-4.解決方法を子ども主体で決めるよう促す
最後は、子ども自身が解決への道筋を決められるようサポートしましょう。
ここでは、子どもに決定権を持たせるため、お母さん自身も少しの妥協を視野に入れることが必要です。
全てを禁止してしまったり、お母さんの思い通りにさせたりしようとすると、子ども主体で決める経験ができなくなります。
自分の力で物事を解決する訓練にもなるので、ダメと言いたい気持ちをグッと堪えて子どもの決定に任せてみましょう。
もちろん、可能な限りです。
全てを譲ったり、子どもの言いなりになったりする必要はないので、上手に交渉してみてください。
このときに重要なのが、「もう知らない」と突き放さないことです。
お母さんからすると、子どもの要求を突っぱねて言うことを聞かせるのは簡単ですよね。
しかし、頭ごなしに否定されたり突き放されたりすると、子どもは自分で解決するチャンスを逃し、自信を失くしてしまいます。
これから先、様々な人と自分の気持ちをすり合わせ、お互い納得のいくルールで問題解決していくためにも、絶好の訓練の場と捉えて向き合いましょう。
例:お菓子を「どうしても今食べたい!」と夕ご飯前にしつこく言ってきた場合
【OK対応】
「すぐ夕ご飯にするから、あとで食べた方がいいと思うけど、どうする?」
「夕ご飯がしっかり食べられるなら、少しだけならいいよ。いくつ食べる?」
【NG対応】
「夕ご飯前に何言ってるの!」
「お腹いっぱいになっても知らないからね。好きにしなさい」
5.ママのリフレッシュも大切
最後に、この時期を乗り越えるために、お母さん自身のリフレッシュについても改めて目を向けてみましょう。
今回は、先輩ママたちが実践した「イライラしたときの対処法」を3つご紹介します。
5-1.自分の時間を作る。30分でもOK!
忙しい毎日の中で、”スキマ時間” があったとしたら、掃除や洗濯、おかずの作り置きなどを済ませてしまいたいですよね。
しかし、たとえ短い時間でも1日の中で自分だけの時間を持つことは心のリセットに効果的です。
子どもへの笑顔につながると思って、あえて家事などはせずに自分だけのために過ごしてみてください。
しかし、「いざ自分の時間を作ってみたけど、どう過ごしていいのか…… 」と悩むお母さんも多いかもしれませんね。
そのようなときは、まずは”いつもいる場所” から離れてみましょう。
キッチンやリビングにいることが多い方は、寝室で本を読んでみるのもヨシ、お風呂に入ってみるのもヨシです。
外出できるようであれば、自宅を離れていつもと違う場所を訪れてみるのもいいですね。
短時間でも外に出られれば、さらに効果的です。
カフェやショッピング、ただただ電車に乗るなど、あえていつもと違う場所での自分時間を楽しんでみましょう。
5-2.子どもが小さかった頃のアルバムを見てみる
つい感情が爆発して、イライラが押さえられなくなってしまったら、子どもが小さかった頃の写真を見返してみませんか?
筆者は個人的に、こちらが一番効果的だったように思います。
「こんなに可愛いときがあったな。あのとき、もっとこうしてあげればよかったな」
そんな風に思えたら、イライラしている今も後々振り返ってみると貴重な時間になることに気づけるかもしれません。
5-3.アンガーマネジメントを活用してみる
怒りと付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」をご存知ですか?
これは、思わず頭に血が上ってしまったときに、「怒りの衝動」をコントロールするための訓練です。
カッとするような怒りが続く時間は、およそ6秒間。
この6秒間をやり過ごすために、「1・2・3…… と数える」「胸を3回なでおろす」などのルーティンを決めておくのが、アンガーマネジメントの方法です。
心理療法プログラムのひとつとして評価されている方法なので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
>>CONOBAS 親子で実践!「アンガーマネジメント」をマスターして怒りの感情を上手に扱おう!
6.今だけのわがままも受け止めて、成長を見守りましょう!
5歳にもなるとだいたいのことを自分でできるようになるので、「もう5歳なんだから。もっとできるはず」と、期待も大きくなってしまいますよね。
しかし、この”期待” が困った行動へのイライラをより増幅してしまうこともあるかもしれません。
口は達者になっても、5歳は5歳。甘えたいときもある年頃です。
大事なのは、自尊心を傷つけない対応と「この時期だから」と見守る姿勢。
「まだ困った行動が多くても仕方がない」と割り切って、成長を楽しみましょう。
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主な参考文献
・広瀬 美和, 福元 真由美, 柴山 真琴,5歳児の葛藤処理方略の発達過程 : 幼稚園生活3年
目の変化に注目して,東京学芸大学紀要. 総合教育科学系,2020
・厚生労働省,第三章 健診・発達相談等の実際
・森口 佑介,実行機能の初期発達,脳内機構およびその支援,心理学評論58巻1号,2015
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