【保育士直伝】自然体験活動が育む子どもの力とは?気軽にできる自然遊び
この記事を書いた人
宮先惟之
- 保育士
保育所や子ども園にて15年間勤務。
主に、3〜5歳児のクラス担任や障がい加配保育士をしてきました。
2児の父でもあり、子育ての大変さや楽しさを感じながら、日々子どものやる気を引き出す環境作りや言葉のかけ方を工夫しています。
「自然体験学習って子どもにどんなメリットがあるの?」「身近な場所で実践できる自然体験活動を知りたい」と思ったことはありませんか?
自然体験が子どもの育ちに良いことは何となくイメージできますが、実際には子どもの成長にどのような影響を及ぼすのでしょうか。一言で「自然体験活動」「自然体験学習」と言ってもどのようなことをしたらよいかわからない方も少なくないのでは。
本記事では、現役の保育士である筆者が、自然体験で育まれる子どもの力を具体的に解説します。あわせて、特別な道具や知識がなくてもできる自然体験遊びを紹介します。
子どもへの接し方のコツもお伝えするので、成長の後押しに役立ててもらえたらうれしいです。
目次
1.自然体験活動ってどんなこと?子どもの成長を後押しする理由
子ども達にとっての学びの形は様々です。特に自分自身の身を持って多様な体験をすることは心と体の成長を促すと言われています。
文部科学省が平成28年に発表した『文部科学白書』の中でも、
“体験を積み重ねることにより、「社会を生き抜く力」として必要となる基礎的な能力を養うという効果がある”
引用:平成28年度 文部科学白書
と体験活動を推奨しています。
幼少期から青年期にかけて、人や自然、社会と関わりを持ちながら多様な体験をすることは、五感を刺激し心と体の成長につながるのです。
今回は、体験活動の1つである「自然体験」についてくわしく解説します。そして活動を通して、子どものどのような力が育まれるのか説明しましょう。
1-1.「自然体験」の概要とは?
自然体験とは、「自然の中で得られる様々な経験や活動」のことです。
具体的には、登山、キャンプ、ハイキングなどの野外活動や、星空観察、動植物観察といった自然環境の仕組みを知る体験学習活動などです。
活動を通して、体力や知識がつくことはもちろん、“思考力”や“自然を大切にする心”なども育まれるでしょう。 自然体験は魅力がいっぱいです。
1-2.生活圏内でできる身近な自然体験活動でOK!
自然体験のようなアウトドアアクティビティは、遠い場所に行ったり準備が大変だったりと、ハードルが高いイメージがありませんか?
しかし、意外と身近な場所で気軽にできることもたくさんあるんです。 例えば、いつも行っている近場の公園や川での遊びの中にも学びの要素がたくさんありますし、家庭菜園を一緒に楽しむという方法もあります。
これまでアウトドアに挑戦したことがないママやパパでもご安心を。 気軽に楽しめる体験でも、十分に子どもの育ちに効果がありますよ。
具体的にどんな体験があるかは後ほどご紹介します。 無理のない範囲で出かけてみましょう!
2.身近な自然体験学習が育む!子どもの7つの力
自然体験によって子どものどんな力が育つのでしょうか。ここでは子どもが自然体験を通して 育まれる力を7つ紹介します。
2-1.理科的知識が自然と身に付く
自然に触れて遊ぶ中で、理科的な知識について学ぶことができます。 私たちが当たり前だと思っていることを、子どもたちは遊びを通して自分の知識として身につけていくのです。
例えば、「水は高い所から低い所に流れる」ということも砂場で作った道に水を流したり、川で遊んだりした時にふと気付くはず。
天気が変わることや草花が成長する理由などに、関心を持つこともあるでしょう。 こちらが意図して会話をしなくとも、子どもが自ら学べると良いですね。
2-2.知的好奇心から探求心が育つ
自然の中では、子どもたちの知らないことが多く、刺激がいっぱいです。 「どうしてそうなるの?」「なんで?」といった疑問がどんどん出てきます。 「知りたい!」といった知的好奇心から、探求心が育まれるでしょう。
2-3.問題解決力が育つ
「なぜ?」と疑問を持った時や何か困った時、子どもたちはどうすると思いますか? おそらく、まずは身近な大人に聞きます。 そんな時は考える力を育てるチャンス!
親はすぐに正解を教えるのではなく、「どうしたらいいかな?」と言葉を返してみましょう。 すると、子どもなりに調べたり、推測をしたり、考えたことを試すようになります。
例えば、知らない生き物や花を見つけて「名前を知りたい!」と思った時に図鑑で調べるようになるでしょう。 また、どんぐりや葉っぱを拾い集めながら歩く際、手からこぼれる時には、落ちないようにポケットに入れたり袋を使ったりします。
思考力は、学習面でも生活の中でも大切な力ですので、育んでいきたいですね。
2-4.想像力が育つ
自然の中には様々な形や色があふれています。 既存の考えに縛られず自由な発想で遊ぶことができるので、“想像力”が育まれるでしょう。
緑の多い公園では落ち葉や木の実でままごとをしたり、浜辺では砂に絵を描いたり、砂山を作ったりする遊びが楽しいですよ。
子どもたちは遊びながらも頭の中ではいろいろなことを考えています。 自然の中でしか生まれないアイデアもたくさんあることでしょう。自然での遊びには、子どもの成長につながるきっかけがたくさん隠れています。
2-5.生き物に関心を持つ
海や川、山に限らず、近くの公園に行けば、いろいろな生き物に出会うことができます。 「かわいい」「怖い」「おもしろい」「触ってみたい」と、様々な感情を持ちながら生き物に関心を持つでしょう。
時には、「育ててみたい」という思いを抱くこともあります。 以前、保育の場面でも子どもたちとアオムシを育てた際、成長の過程を知るだけでなく、生き物に優しく接する子どもたちの姿が見られました。
なかには蝶まで育たず途中で死んでしまい、土に埋めることも。 その経験も子どもたちにとっては貴重で、“命の大切さ”について考えるきっかけにもなりました。
2-6.食べ物の大切さを知り「食育」につながる
プランターで野菜を育てたり、畑で収穫体験をしたりすることも自然体験の1つです。 水やりなどの世話を通して、野菜を育てる過程や楽しさ、時には難しさを知ることができるでしょう。
また、土がついていたり、形がそれぞれ違ったりと発見も多いです。 魚のつかみ取りや釣りも食べ物を身近に感じる良い機会ですね。
育てた野菜に愛着を持ったり、身近な食べ物に親しみを持ったりすることで、苦手だった食べ物を食べるようになることもよくあるケースです。 “食べ物の大切さ”を知るきっかけになり、食育にも繋がりますよ。
2-7.五感が育まれ、体を動かす楽しみを味わえる
自然の中では、目の前のものをよく観察して触ってみたり、耳を澄まして鳥や虫の声を聴いてみたりなど、おのずと五感をたくさん使って遊ぶことができます。
また、舗装された道と違い、凹凸のある所を歩くことで、バランス感覚の育ちも期待できるでしょう。 さらに、登山をしたり川や海で泳いだりした場合には、十分な運動になり体力もつくはずです。 自然の中で遊ぶことで、体はたくましく育ちます。
3.アウトドア初心者でも生活圏内で子どもとできる自然体験活動
それでは、身近な場所でも楽しめるおすすめの自然体験を紹介します。 水分と着替えを持って出かけてみましょう!
3-1.川や海(水遊び、貝殻集め、生き物探しなど)
暖かい季節には川や海に出かけ、水に触れながら、自然に親しみましょう。 川では、小さな魚やサワガニを探して遊ぶのも楽しいですね。 葉っぱを浮かべて流れていくのも眺めることで、水の流れが分かるきっかけにもなります。
海では、泳いで遊ぶ以外にも、貝殻や綺麗な石を探して遊ぶこともできます。 「海の水はどうしてしょっぱいの?」といった疑問が浮かぶなど、“探究心”が育ち、理科的知識が身に付くきっかけにもなるはずですよ。
3-2.自然の多い公園(自然観察、草花遊びなど)
山や公園では、四季の移ろいを楽しむことで、様々な発見や気づきが生まれます。 季節によって変わる自然の美しさを見ることで、感性が刺激されるでしょう。
春の桜、夏のひまわり、紅葉など、草花が綺麗に咲く時期がおすすめです。 秋冬には、葉っぱや木の実を集めて遊ぶのも楽しいですね。 集めたものを材料にした製作遊びや、どんぐりなどを具材に見立てたごっこ遊びは、子どもの“想像力”を育みますよ。
3-3.登山&ハイキング
涼しい季節になったら、登山やハイキングがおすすめです。 自然の雄大さを感じながら親子一緒に散策を楽しんでみましょう。生き物に対して関心を持つ機会や、畑や果物の木を見て食べ物について知る機会がたくさんあるはずです。
もちろん、体を動かす楽しみを十分に味わえるのも登山やハイキングの醍醐味です。 また、がんばって歩くことで“達成感”を味わえることも魅力の1つ。 自信と体力をつける良い機会になるでしょう。
4.自然体験を通してさらに伸びる!子どもとの接し方3選
自然豊かな環境のなかで思い切り遊ぶだけでも十分な教育効果を得られますが、おうちの人の関わり方がより良い成長を後押しすることにつながります。 3つのポイントを紹介しますので、参考にしてみてください。
4-1.子どもの姿を見守ろう
安全面に気を配りつつ、子どもが自由に遊べるよう見守りましょう。
教育熱心な人ほど、ついつい「これは、○○だよ。」「○○して遊ぶのよ。」とたくさん話しかける姿をよく見かけますが、それが自ら学ぶ体験や、行動を制限してしまう場合も。
一緒に遊びながら、子どもの言葉を聞いて返事するくらいがちょうど良いでしょう。 様子を見守りつつ、子どもが何かを発見する機会や自ら考えたことを試す経験を大切にしてください。
4-2.子どもの疑問を一緒に考えよう
子どもから質問があった時に、皆さんはどうしていますか? 保育現場では子どもたちの“考える力”が育まれるように、答えを教えずに一緒に考える機会を作っています。
例えば、ドングリに穴があるのを見て「どうして?」と尋ねてきた場合、「どうしてだと思う?」と伝え、子どもの考えを引き出していきます。
その場で、正解が答えられない質問もあるかもしれません。 そんな時は一緒に図鑑を使って調べたり、いくつか仮説を立ててからインターネットで調べたりする方法も良いですね。 “知的好奇心”を向上させながら、“想像力”や“思考力”が育つので、子どもの疑問はぜひ親子で一緒に考えてみてください。
4-3.「やってみよう」と伝えよう
子どもと関わる中で、「○○してみていい?」「□□したら、どうなると思う?」と聞かれることはありませんか?
子どもたちは日頃からいろいろな決まりを守って過ごしているので、何かしようと思った時に「やって良いことかどうか」考え迷ったり、無意識に大人の目を気にしたりする時があります。
自然体験では、子どもが自らやってみたいと思ったことや考えたことは、どんどんさせてあげましょう。 「やってみたい」と考え実践する中で、うまくいくこともあれば失敗することもあります。そのトライアンドエラーの積み重ねが、子どもの発達においてとても大切です。
「やってごらん」と大人に見守られながら挑戦できる環境が整っていると、様々なことに自分からチャレンジするようになるでしょう。積極的な行動力にも繋がるので、子どもの気持ちを汲みつつ、安全面に配慮しながら関わってあげてくださいね。
5.自然の中でしかできない子どもとの貴重な経験を楽しもう!
自然体験と聞くと、本格的な活動を想像するかもしれませんが、身近な環境でも十分メリットがあります。 自然には、刺激がいっぱい。
色、形、匂い、音、温度など、様々な環境が子どもの興味や関心を引き出してくれるでしょう。 自然の中だからこそ味わえる貴重な経験がたくさんありますよ。
気楽に挑戦できることもたくさんありますし、ママやパパのリフレッシュにもつながるはず!自然体験を通して、親子の会話やわが子の成長を楽しんでくださいね。
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