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5・6歳の子どもの語彙が少ない…。原因や語彙を増やすためのヒントとは?【言語聴覚士に聞く】

まわりの人とのコミュニケーションが楽しめるようになる5・6歳。言葉でのやりとりも活発になり、時には口ごたえをする様子さえ見られることもあるでしょう。

そんな発達著しい時期だからこそ、「使える語彙が少ない…?」「何を話しているかわかりづらいことがある」など、保護者の方にとっては気になることが増える年齢かもしれません。

5・6歳の子どもが語彙を増やす過程や、なかなか増えない理由、そして家庭で楽しみながらできるサポートについて、療育で日々子どもと関わる、言語聴覚士のaki先生に教えていただきました。

(文責:CONOBAS編集部)

 

目次

 

1.5・6歳の子どもの語彙が少ない理由は?

–−年齢のわりには語彙が少ない、そのために話の内容が分かりにくい…といったことを気にしている親御さんも多いのかなと思うのですが、語彙が少ない原因には、どのようなことがあるのでしょうか。

1-1. 分かる事柄・言葉が少ないから

aki先生:年齢に関わらず、言える言葉が少ないのは、分かる事柄や理解している語彙が少ないからだと考えることが多いです。

例えば、「ポスト」という言葉を言えるようになる過程を考えてみましょう。

まずはこの赤い箱は、どういう所にあるのか、どういうふうに使うものかということを、お散歩の途中で見かけたり親が利用する様子を見たりして知っていきます。

そして、「ポストにお手紙入れるね」などの言葉を聞いて「ポスト」という名前が付いていることに気が付きます。

さらに、「ポスト」と言われたら、ポストを思い浮かべられるようになり、そこから初めて「ポスト」と言えるようになる、というような段階を経ていきます。

ですから、語彙が少ないと感じるときには、言葉を言えるようになる前の段階に目を向けます。「まずはそのものが何かを知ってもらい、言葉を聞いてもらおう」と考えて、アプローチすることが多いですね。

 

−−「インプットや経験値が少ないからアウトプットができない」とも考えることができるのでしょうか。

aki先生:そうですね。そして先ほども述べた通り、言語発達を考える上では「言える言葉」より「分かる言葉」が先行して育ちます。なので、日常での経験を通して、分かる事柄や語彙を増やしていくことを意識することが大切ですね。

 

2.語彙が少ない子どもを、言語聴覚士はどう支援する?

−−具体的に、語彙の少なさを支援する方法にはどのようなものがありますか。

2-1. 体験の中で言葉を聞くことを大切に

aki先生:個別の療育の中でできることは、そこまで多くないと思っています。日常のさまざまな経験の中でたくさんの言葉に触れることが、語彙を増やすことにつながっていきます。

一緒に買い物に行って野菜を選んだり、雪が降ったら雪に触れたり遊んだり。そんな身近なことを、さまざまな言葉に触れる機会にしてほしいと、親御さんにアドバイスをすることが多いです。子どもにとって印象に残るような体験をたくさんしてもらえるようにとお話しています。

支援の場では、絵本や物語、遊びなどで経験を補いながら、新しいものを知ったり出来事を疑似体験したりすることで、それまで知らなかった言葉を聞く→語彙を増やすという流れを意識しています。

 

−−うまく発音ができないなどの悩みについては、医療や言語聴覚士の訓練などで手助けできる部分が大きいと思うのですが、語彙が少ないということについては、経験や関わりという部分が重要ということですね。

ということは、ご家庭での関わりやフォローの方法を伝えることがメインになってくるのでしょうか。

2-2. 訓練のエッセンスをご家族と共有する

aki先生:絵カードなどの教材を使いながら、言葉を言ってもらったり説明の練習をしたりすることも、もちろん行っています。


ただ、療育に週に1回、1時間通っていれば、語彙が爆発的に増えるみたいなイメージは持たないほうがよいかなと思います。

療育で行った活動に準じたことを続けていく、子どもが日々生活する言語環境をよくしていくことを、ご家族と私たちが一緒に考えてやっていくことが大切です。

療育の時間よりもおうちで家族と過ごす時間のほうが長いので、そこで「どのような言葉を聞くか」「どのように関わるか」ということは、子どもに大きな影響を与えます。

ただし、療育と同じことを家庭でもしてほしいというわけではありません。活動の意図や目的を伝え、その部分を家庭に持ち帰ってもらえるようにすることは、言語聴覚士としての重要な仕事だと思っています。

 

3.徐々に語彙を増やすには、家庭との連携が不可欠

−−語彙が少ないというお悩みにアドバイスや支援をして、お子さん自身やご家庭での関わり方が変わった、という事例はありますか。

3-1. 「宿題」が効果的なこともある

aki先生:ほんとにケース・バイ・ケースではあるんですけど。例えば、お会いする頻度も少なかったご家庭の場合、おうちで宿題のようなものをしてもらった例がありますね。

写真を見ながらそれについて話す、という絵日記のような宿題をしてもらいました。出来事を時系列にまとめてお話をするということを、何かイベントがあるごとにお母さんが続けてくださっていたんです。

そんな取り組みをご家庭でしていると、次にお会いしたときに、いつ・誰が・どこでなどの要素が盛り込まれた文を上手に話せるようになったなと感じることはありますね。

 

−−やはり、家庭でのコツコツとした取り組みが実を結びやすいんですね。

aki先生は、ご家庭での取り組みの助けになるようなアイテムをSNSで紹介されています。その中で、語彙が少ないお子さんにはこれがおすすめ!というものはありますか?

3-2. 遊びの中で語彙を身につける

aki先生:『コトバすごろく』はよく使います。

これは私の好みかもしれないですが、遊びの一種というか、親子の関わりの中で自然にできることを大切にしています。この言葉のすごろくもそうなんですが、アナログゲームに近いものをよく使いますね。

 

–−親子で遊びながら子どもの語彙を引き出す・増やすために、aki先生のアイデアを教えてください。

aki先生:この『コトバすごろく』は、語彙を増やすだけでなく、いろんな力を使うことをオールマイティーに促せるんです。支援の中でよく使用しますし、「家でもやってみたい」と言ってもらえれば、持ち帰ってもらうこともあります。

遊び方としては、サイコロなどでお題を選び、それに合った言葉の文字の数だけ駒を進めます。例えば、「赤いもの」というお題に対して「トマト」を思い浮かべた場合、3マス進むことができます。

また、長く進めたければ、「『トマト』よりは『しょうぼうしゃ』のほうが文字数が多いから長く進めるな」とか。文字数を意識して言葉を考えることで、語彙の他に、音韻意識へアプローチすることもできます。

形式ばった訓練というより、楽しみながら、UNOやトランプなどのボードゲームをするようなイメージで使っていただきたいなと思っています。

 

4.語彙を育てるには、体験を通して「知ってる!」「分かった!」を増やすことが大切

<編集部後記>

語彙が少ないと、子どもが話す内容が分かりにくく、心配される親御さんも多いと思います。aki先生のお話から、語彙の少なさは、分かる事柄・理解している言葉の少なさが原因として考えられることが分かりました。子どもが、好きな遊びや生活の中での体験を通して自身をとりまく世界を知っていくことが、語彙を増やすことにつながるのですね。
 
また、語彙を増やすには言語聴覚士による訓練も大切ですが、生活と密着した家庭での関わりを変化させていくことがより重要だと先生は教えてくださいました。日常での関わりや遊びの中に、遊び感覚で訓練のエッセンスを取り入れて行くことが大切なのですね。

お話をうかがった先生

aki先生

児童発達支援施設や医療センターの小児科で働く言語聴覚士。幼児から中学生までの、発達やことばの遅れ、読み書きの苦手さなどがあるお子さんを対象に、個別での言語療法を担当。Instagram公式LINEで、おススメの教材や療育グッズについての情報を発信するなど、教材作りの楽しさをお伝えしつつ、支援者の繋がりを広げるキッカケ作りにしていきたいと思っています。

 

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