5・6歳の言葉の発達に焦りを感じている保護者の方へ【言語聴覚士に聞く】
5・6歳の言葉の発達を促すためには、どんなことが大切なのでしょう。保護者が家庭でできることはあるのでしょうか?
現役の言語聴覚士であり、SNSでも情報を発信しているaki先生が療育で子どもと接する際に意識していること、そして、保護者の方へのアドバイスやメッセージを伺いました。
(文責:CONOBAS編集部)
目次
1.5・6歳の子どもが上手に話すために欠かせないことは?
―――うまく発話ができて、他者とのコミュニケーションがとれるようになるためには、言語聴覚士であるaki先生は、何が一番大切だとお考えですか?
1-1. まずは、話したいことがあり、伝えたい人がいること
aki先生:大前提として、「伝えたいことがある子」に育っているかどうかということが、すごく大事だと思います。そして、「伝えたい人」がいるかどうかも同じように大切ですね。
年齢が上がるにつれて集団で行動することが増え、それぞれの子のペースに合わせて会話する時間って、おそらく家庭の中でも外でも徐々に少なくなると思います。きょうだいがいる場合、それぞれのお子さんとじっくり会話を楽しむ時間を確保するのは、なかなか難しいですし、共働きのご家庭もさらに増え、日々の生活の中で時間をつくることの難しさを感じています。
そんな中で、私たち言語聴覚士にできることは、「良い聞き手」になることじゃないかと考えています。話す内容にとらわれず、「あんなことでもいいよ」「こんなこともいいよね」と受け入れ、コミュニケーションを楽しむ相手や場所になる。そんなことを意識して、それぞれの子どもと向き合っています。支援の様子を見ると、ただ話してるだけに見えることがあるかもしれないですが(笑)、実は目的を持ってやっているんです。
「良い聞き手」を目指す立場からすると、伝えたいことがたくさんあるお子さんの方が、話す力が伸びていくように感じています。上手に話せるようになるためには、話すという行為を繰り返すことが欠かせません。だからまず、「話をするって面白いよね」「誰かと会話するって楽しいね」ということに気付いてもらうことが、言葉の発達を促すことにつながるんじゃないかと思います。
―――「話すことは楽しい」と子どもに感じてもらうために、言葉の発達について悩みを抱いている保護者の方と接するとき、気をつけていることはありますか?
1-2. 保護者との良好な関係づくりも不可欠
aki先生:お子さんはもちろん、保護者の皆さんも一人ひとり、置かれている環境やキャラクターが異なります。
なので、私たちから見ると「困っているのでは…」と思うことが、ご家庭によってはそれほど困っていない場合や、その逆も当然あります。感覚の差というのはとても大きいので、それを知るためにも、保護者の方との間に、まずはいろいろなことを話してもらえるような関係性を築くよう心がけています。
ご家族は、その子を支えるキーパーソンですから、時間をかけてお互いを知り、信頼関係を築きたい。何もかもは分からなくても、分かるよう努力は続けたいと思っています。
―――本人はもちろん、保護者の方との間にも信頼関係があることを第一に考えるaki先生とのやりとりは、きっと子どもにとっても楽しい時間なのですね。
1-3.訓練が一区切りしても、話す練習は続けてほしい
aki先生:そうだといいですね(笑)。
療育の場でしかできない・話せないというのではなく、ここでできたこと・話せたことがいろいろなところでできるようになる、というのが本来目指すべきところだと考えています。
言葉の発達について、私たちがサポートできる期間は限られてる場合が多いです。なので、私たち言語聴覚士の訓練が起点となって、言葉の発達の後押しが、長いスパンで続くといいなと思っています。
そのためにも私たちは、会話を楽しむことや共有する喜びなどを、お子さんだけでなく、お子さんに関わる人たちに伝えていけるようにしたいと思っています。
2.「様子を見ましょう」と言われた保護者に、言語聴覚士はどう寄り添う?
―――我が子の言葉の発達について専門的な機関に相談すると、「様子を見ましょう」と言われることが少なくないようです。となると保護者の方は、いつまで不安な気持ちを抱えていればいいの…、と悩んでしまいますよね。
そんなパパ・ママに、aki先生はこんなことを伝えている、こんなアドバイスをしている、ということがあれば教えてください。
2-1. 小さな進歩を見逃さず、伝える
aki先生:きょうだいがいるご家庭では特に、「上の子はこうではなかったんです」「下の子の方がよくしゃべります」みたいな話はよく聞きます。言葉の発達はそもそも個人差が大きいことを説明しますが、親としてはそう簡単に考えを整理できないこともよく理解できます。
そんな時に、私たち言語聴覚士だからお伝えできることがあります。それは、言葉を獲得していく順序はどうなっているのか。そして、お子さんは今どの段階まで到達していて、次のステップはなにか、ということです。保護者の方の心配な気持ちに寄り添いながら、少しずつ前進しているところを見つけて、フィードバックのときに必ずお伝えするようにしています。
編集部コラム
〜定型発達とは〜
認知や思考のあり方について、多数派のことを指します。狭い意味においては、発達障がいでない人のことを指します。定型発達は、発達障がいの有無にだけ焦点を当てている言葉で、例えば身体障がいなど他の障がいがあっても、発達障がいの傾向がない人は「定型発達者」である、とします。
―――周囲の大人は、「正しく発音する」「会話をする」という結果に目が行きがちですよね。
でも、それができるようになるためには、心身の発達や社会性の獲得などさまざまな要素が関係していることを、保護者の方が冷静に理解して納得するのは、とても大変なことだと思います。
2-2. 言葉の発達は止まることがない、と信じてほしい
aki先生:そうですよね。
例えば、聞き手を考慮して説明したり要約したり、逆に追加で補足したりするというのは、6歳ぐらいから伸びていくスキルだと言われています。
例えば、お母さんには「○○ちゃんがね…」と話し始めるのに対して、私には「きりん組に◯◯ちゃんっていう子がいるんだけどね…」と、情報を補足できるようになっていきます。これは、”aki先生は、◯◯ちゃんを知らないから説明してあげなきゃいけない”と、お子さんが聞き手の状況を考えてくれている様子のあらわれです。
この力が備わっていないうちは、「話が分かりにくい」という印象をもつことが多いでしょう。聞き手の立場を考慮して話すというのは、会話のスキルの中でも最終段階で獲得するものです。
言葉は、長い期間にわたって発達していくものです。たとえ少しずつでも、習得していく・進んでいくものだと、言語聴覚士として子どもたちと関わりながら日々感じています。保護者の方にもぜひ、そういう理解と視点をもっていただければいいなと思います。
3.話すことは楽しい!と思えるサポートが何より大切
<編集部後記>
同年齢の子と比べてしまう、早く上手に話せるようになってほしい…など、我が子といつも身近で接する保護者の方だからこそ、心配や不安を抱いてしまうこともあるでしょう。
しかし、まずは話したいことがあり、伝えたい相手がいることが欠かせないポイントだとaki先生はおっしゃいます。そんな環境を整えることを意識することから始め、お子さんの可能性を信じて寄り添っていきたいですね。
お話をうかがった先生
aki先生
児童発達支援施設や医療センターの小児科で働く言語聴覚士。幼児から中学生までの、発達やことばの遅れ、読み書きの苦手さなどがあるお子さんを対象に、個別での言語療法を担当。Instagramや公式LINEで、おススメの教材や療育グッズについての情報を発信するなど、教材作りの楽しさをお伝えしつつ、支援者の繋がりを広げるキッカケ作りにしていきたいと思っています。
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