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自己中心性とわがままはどう違う?子どもの共感力を高める遊びや親の関わり方

この記事を書いた人

みき みき

みき

  • 司書教諭
  • 中学校教諭
  • 高等学校教諭

高校の国語講師として約8年勤務していました。

中学、高校の教員免許、図書館司書、司書教諭の資格を持っています。

現在は3人の子育てに奮闘中。

知識や経験を活かせるライターを目指し、勉強中です。

絵本やおもちゃを独り占めにしたり、急に大人の話に割り込んできたりするなど、子どもの自己中心的な振る舞いに悩んでいませんか?

一見すると、「わがまま」と捉えられる子どもの態度は、幼児期の認知の特性である「自己中心性」が影響していることがあります。

この記事では、自己中心性とは何か?わがままとの違いについてお伝えします。

他者の視点を育むための親の関わり方や、共感力を伸ばす遊びや体験についても触れますので、日頃のお子さんとの向き合い方を見つめ直すきっかけになれば幸いです。

 

目次

 

1.自己中心性とは

自己中心性とわがままはよく混同されがちですが、この2つには明確な違いがあります。

まずは、自己中心性の定義や、幼児期に見られる自己中心性の具体例を紹介します。

 

1-1.自己中心性の定義

自己中心性という言葉を辞書で調べると、「自分と自分を取り巻く外界とを、はっきり区別することができない性質」と記されています。

自己中心性は、スイスの発達心理学者・ピアジェの「認知発達段階説」の中で使われている用語で、幼児の思考に見られる特性のひとつです。

幼児期は、自分の受け取った情報と同じものを、周囲の人も受け取っていると考えます。これは客観的な視点が未熟なために起こります。この時期は、まだ他者の視点に立った物の見方をすることができません。

ピアジェの提唱する認知発達段階説は、「感覚運動期」「前操作期」「具体的操作期」「形成的操作期」という4つの発達段階に分かれています。

前操作期から具体的操作期に移行すると、自己中心的な認識から抜け出す(=脱中心化)と言われています。その年齢は、7歳ごろが目安です。

しかし発達には個人差があり、就学後も自己中心性が残っている子どももいます。最近は、核家族化・コロナ禍などで、人とのつながりが希薄化している影響から、子どもの脱中心化が始まる年齢が高くなっていると推察できます。

 

1-2.幼児期における自己中心性の具体例

子どもの自己中心性の具体例として、「三つの山の課題」というピアジェが行った実験があります。

これは、子どもの他者視点を理解する能力の発達を調べるための実験です。

上の図のような大きさの異なる3つの山の模型をAの位置から見ている子どもに、「Bの位置にいる人にはこの山がどう見えていると思う?」と尋ねると、自分から見える山が映った写真を選んでしまう課題です。

前操作期の子どもは、頭の中で情報を区分し、他者の視点を想定することが苦手です。そのため、自分とは異なる角度から山の模型を見ている人に対して、「自分と同じものが見えている」と認識してしまうのです。

これは感情においても同様に、「自分が面白い」と感じた事柄は、周りの人も同じ気持ちであると考えます。

子どもが自分の好きなことや友達のことを、よく知らない人に対して一方的に話してしまうなども、自己中心性の具体例と言えます。

 

1-3.自己中心性とわがままの違い

自己中心性とは、「他者の視点に立つことが苦手で、自分と他人を分けて考えることができない未発達の状態」を指します。

一方、わがままは「自分の都合を中心に考えて行動すること」です。自己中心性とわがままの大きな違いは、他者の視点を理解できるかどうかという点です。

自己中心性には「他者の視点という発想がない」のに対して、わがままは「他者の視点を理解した上で、自分のことしか考えない状態」です。

この違いを理解すると、少しお子さんを見る目が変わってきませんか。

まだこの子には、他者の視点が育っていないのだ」と思うことができれば、わがままに見える子どもの言動にも少し冷静に対処ができそうですよね。

 

2.他者の視点を育むポイント

「自己中心性」という発達段階があることが分かっても、他人の気持ちを理解できる子どもに育ってほしいですよね。ここでは、他者の視点を育てるためのポイントを解説します。

 

2-1.子どもの気持ちを言語化する

自分の主観から世界を見ている段階から、他者の視点を育むには、どのような関わりをすればいいのでしょうか。

まずは、子どもの気持ちを言語化するのがおすすめです。他人の気持ちを理解するためには、まず自分の気持ちを知る必要があります

感情を言語化することで、子どもは気持ちを整理することができ、「感情」と「言葉」が対応するようになります。その結果、感情について言葉でのやり取りが可能になります。

「〇〇ちゃんはどんな気持ちになった?」「ちょっと悲しかったかな?」などと子どもの気持ちを引き出す質問をしてみましょう。ママ自身の気持ちを伝えるのも効果的です。

 

2-2.他人の気持ちを想像させる

親子の会話を通して、相手の気持ちを想像する練習をしましょう。

例えば、絵本を読んだ後、「この男の子(登場人物)はどう思ったかな?」などと質問します。お子さんがうまく答えられない時は、「ママ(パパ)はこう思ったよ」と感想を伝えます。

こうした会話を通して、子どもは色々な考えがあることを学んでいきます。

また、この時期の子どもは、友達との関わりが増え、ケンカをすることもあるでしょう。

兄弟喧嘩や友達とのトラブルはなるべく避けたいと思う親御さんも多いかもしれません。しかし子どもは、喧嘩によって「他者の視点」を学んでいきます。

親が仲裁に入る時は、まず子どもの気持ちを受け止めた後に、「相手はどう思ったのかな?」と子どもに問いかけてみてください。

相手の気持ちを想像する練習を繰り返すことで、少しずつ思いやりの心が育まれていきますよ。

 

3.子どもの共感力を育む遊びや体験

続いて、子どもの共感力を育てる遊びや体験についてお伝えします。

 

3-1.ごっこ遊び

前操作期(2〜7歳)には、象徴機能(葉っぱをお皿にする、積み木を食べ物に見立てるなど、現実にない物事を他のものに置き換えて認識すること)が発達します。それに伴って、「ごっこ遊び」が盛んになっていきます。

ごっこ遊びをする時、子どもは自分の興味がある対象になりきって遊びます。例えば、おままごとをする時は「ママ・パパならこんなふうに話す」と想像力を働かせることで、他者の気持ちを想像する練習になります。

男の子が好きな「戦隊ごっこ」も、仲間と協調して遊ぶ力を育みます。自分勝手に振る舞うだけでは、相手がつまらなくなって遊びが成立しません。

順番にヒーロー役になったり、「やられた!」とリアクションを取って、その場を盛り上げたりするなど、相手の気持ちを想像して協調する力が育っていきます。

 

3-2.虫やペットなど生き物を育てる

生き物を育てることも、子どもの共感力を育みます。

家庭でのペット飼育経験が子どもにもたらす影響について調べた調査(※1)によると、「(ペットを)飼育している子どもは、飼育経験の無い 子どもよりも『共感性』や『向社会的行動(人や集団を助けようとする行動)』の得点が高い」ことが明らかになったそうです。

言葉を持たない生き物のお世話をするには、その生き物についてよく調べて、観察しなければなりません。虫は餌を与えなければ死んでしまいますし、部屋の温度にも気を配らなければなりません。

生き物のお世話を通して、命をいたわる気持ちが湧き、責任感を身につけるきっかけにもつながるでしょう。

 

3-3.絵日記を書く

絵日記を書くのもおすすめです。お子さんが自分で文章を書くのが難しい場合は、ママやパパが代わりに書いても大丈夫です。

例えば、子どもがお絵描きをした後、ママやパパが子どもの描いた絵について色々な質問をします。「何を描いたの?」「この人は誰かな?」「何をしているのかな?」とお子さんが答えやすい質問をしてみて下さい。

子どもが話したことを簡単な文章にして、絵の横に書いてあげれば、絵日記が出来上がります。

文字を書くのが好きな子なら、文章ではなく、単語を書くだけでも構いません。日常の出来事を振り返ることで、子どもが自分や相手の気持ちと向き合い、言葉にする練習につながりますよ。

 

4.よくある子どもの困った行動と、親の対応のコツ

続いて、子どもが自己中心性から抜け出すために親ができる関わりを解説します。

 

4-1.自分勝手なルールを周りに押し付ける

自分の都合のいいようにルールを決める。周りがそれに従わないと「バカ!」と暴言を吐いたり、「あっちに行って!」と仲間外れにするなどの行動に困ることはありませんか?

その際、「そんなこと言わないの!」「ダメでしょ!」と注意していませんか。子どもは周りの気持ちを察することが難しく、抽象的な言葉を理解できません

子どもを叱るときは、具体的な言葉を使うことが大切です。

・「〇〇くんが決めたルールで、友達も楽しめるかな?」
・「バカという言葉は、お友達が悲しい気持ちになるよ」
・「あっち行って!と仲間外れにされたら、友達はどんな気持ちになるかな?」

などと、周りの気持ちを想像させる声がけを心がけましょう。

 

4-2.大人の話に割り込み、一方的に話し続ける

大人同士で話している時に、子どもが話に割り込んできたり、順番を待たずに、自分の話を始めたりするのも、自己中心性が残っているお子さんに多い特徴です。

周りの人がよく知らない話でもお構いなしに、自分の気が済むまで話し続ける姿を見て、「ちょっとは空気を読んでよ」と困ってしまうママやパパも多いと思います。

その場合は、「今、パパとママがお話ししてるから、終わるまで待っててもらっていい?」と順番を守るように促します。

頭ごなしに叱ったり、無視をしたりするのは避けます。お子さんにしてほしい行動をわかりやすい言葉で伝え、お子さんが守ることができたら、「偉かったね」とすかさず褒めてあげましょう。

また、自分の好きなことや友達のことを、よく知らない人に対して一方的に話してしまうなどの場合は、ママやパパが相手にも伝わるようにフォローしてあげると良いでしょう。

この時期は、他者の視点に立って、道筋を立てて説明するのが苦手な子が多いので、お子さんが一方的な話し方をしていても心配しすぎることはありません。

お子さんの「話したい」という気持ちを尊重し、相手にもわかりやすい伝え方を少しずつ教えていきましょう。

 

5.自己中心性は成長の証!ゆっくり見守ろう

自己中心性はわがままとは違い、「他の視点に立つことができない、発達の未熟さ」が原因で起こります。

小学校1年生は、次の発達段階へ移行する大切な時期なので、子どもの成長に寄り添い、ゆっくり見守りましょう。

子どもが自分の気持ちを安心して話せる環境を作ることから始めてみてくださいね。

参考文献
※1:森下正康,小林美月,家族のペット飼育態度が子どもの飼育態度や共感性・向社会的行動に与える影響,2014年

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