上の子の赤ちゃん返りいつまで続く?特徴と原因、困った行動のシーン別対応法
この記事を書いた人
白山七衣
- 心理カウンセラー
- 幼児教室講師
メンタル心理カウンセラー、日本語教育能力検定の資格所持。
幼児教室講師をはじめ、オンライン講師、家庭教師、添削指導者として0歳から18歳までのお子さんの教育や学習サポートの仕事に長年携わってきました。
現在は、主に教育ライター、子育てカウンセラーとして活動しています。
お子さんたちの学びや成長、保護者の皆様のお悩みに役立つ記事をわかりやすく丁寧にお伝えしていきたいです。
休日は自然の中でお散歩したり、スイーツの食べ歩きをして、リフレッシュしています!
「下の子が生まれてから、上の子が赤ちゃん返りして急に駄々をこねるようになって困っている」
「上の子が赤ちゃん返りして、お兄ちゃんお姉ちゃんとして振る舞えなくて心配」
「出産を控えていて、上の子が赤ちゃん返りをした場合どうしたらいいのか知りたい」
とお悩みの方いはらっしゃいませんか?
今回はそんなお悩みをお持ちの方に向けて、赤ちゃん返りの特徴・原因・対応法をご紹介します。
具体的なシーン別の対応法もお伝えしまので、ぜひ参考にしてみてください。お悩みを解消して、親子、家族の楽しい時間を増やしましょう。
目次
1.赤ちゃん返りとは?~赤ちゃん返りの特徴~
赤ちゃん返りとは、下のお子さんの誕生をきっかけに、上のお子さんが今までできていたことができなくなったり、赤ちゃんのように振る舞ったりする状態をいいます。
心理学用語では「退行」と呼ばれ、現状より前の発達段階に戻ってしまう状態です。わがままを言ったり、ぐずったり、泣いたり、乱暴になったりと手を焼くことが増えます。
赤ちゃんのお世話だけでも大変なママにとっては、大きな悩みの種になってしまいますね。
赤ちゃん返りの具体的な行動や状態には、さまざまなものがあります。まずは、よくある赤ちゃん返りの例を確認してみましょう。
1-1.赤ちゃん返りの例
赤ちゃん返りには、次のような例がよく見られます。
- 赤ちゃんのように甘える
- できていたことができなくなったり、できないフリをする
- 赤ちゃんのように大声で泣いたり、泣く真似をする
- わがままを言ったり、意地悪をしたりする
- 乱暴な言動をする
- ママにべったりくっついて離れない
- ママを怒らせるような反抗的な行動をとる
この他にも、今までなかったのに急に次のような変化がある場合は、赤ちゃん返りの可能性があります。
- 指しゃぶりをする
- おねしょやおもらしをする
- 夜泣きをする
1-2.赤ちゃん返りはいつからいつまで?
赤ちゃん返りが多い年齢は2歳~3歳くらいで、4歳頃にはおさまることが多いようです。
4歳頃になると身の回りの状況への理解力が進んだり、社会との関わりが増えて、自立した心が育ってくるからです。ただ、個人差もありますので、小学生くらいのお子さんでも赤ちゃん返りが起こることがあります。
赤ちゃん返りをする期間は、下のお子さんが生まれてから数か月という場合が多いです。お子さんによっては、妊娠中から赤ちゃん返りがあったり、1年以上続くこともあります。
また赤ちゃん誕生後すぐではなく、しばらくたってから上のお子さんの赤ちゃん返りが始まったり、いったん落ち着いたのに再度赤ちゃん返りが始まったという例もあります。
年齢や期間には個人差がありますが、必ずいつかはおさまるものです。今回の記事を参考にしていただき、余裕をもって対応できるといいですね。
2.赤ちゃん返りの原因
赤ちゃん返りは、上のお子さんの不安な気持ちやストレス、赤ちゃんに対する嫉妬の気持ちが原因です。
赤ちゃんが生まれると、ママは赤ちゃんのお世話で忙しく、ママの上の子に対する対応や、家族の生活リズムなどに変化が生じます。上のお子さんは、それを敏感に感じ取って不安な気持ちになったり、ストレスを感じたりしているのですね。
また、ママをはじめみんなが赤ちゃんに注目するので、今まで自分だけに向けられていた愛情が赤ちゃんに奪われるような嫉妬の気持ちを抱くこともあります。
甘えたり、わがままを言ったりといった困った行動をわざとしているわけではなく、不安な気持ち、嫉妬の気持ちをうまく表せないことが原因で赤ちゃん返りをしているのです。
上のお子さんは、ママに自分に注目してほしい、今までのようにママの愛情をしっかりと感じて安心したいのですね。
3.赤ちゃん返りへの対応法~上手な愛情の伝え方4つのポイント~
赤ちゃん返りは、ママの気を引きたい、ママの愛情を確かめたい気持ちが原因となっているので、ママの愛情をしっかり伝えて安心させてあげることが大切です。
次の4つのポイントを押さえて、ママの愛情を上手に伝えてあげましょう。
3-1.気持ちを理解する
赤ちゃん返りの行動は、ママを困らせたいわけではなく、お子さんの大きな不安からきていることを理解しましょう。
赤ちゃんのお世話で大変なママにとっては、上のお子さんは大きくなったのに、どうしてお兄ちゃんお姉ちゃんらしくできないのかと、ついイライラしてしまうこともあるかもしれません。でも、実はとても大きな不安を抱えているのだと理解していると、上のお子さんの状態や行動も受け止めやすくなります。
お子さんは、ママのことが大好きで、しっかりとママの愛情を確かめて安心したいのです。ママの愛情をしっかり確認できれば、気持ちが満たされて落ち着きます。
まずはお子さんの気持ちを理解してあげると、ママの気持ちにも余裕が生まれて、上手に愛情を伝えてあげられます。
3-2.そのままを認める
お子さんの心の安定を保ち、自分に自信をもって自立した行動ができるように促してあげるためには、自己肯定感を育むことが大切です。
自己肯定感を育むためには、お子さんのそのままを認めてあげましょう。
赤ちゃん返りの行動をしたときでも、叱ったり否定したりするのではなく、まずは不安な気持ちを受け止めてあげましょう。
「ママの愛情を確かめたくて甘えているんだな」「不安だから赤ちゃんのように大泣きするのだな」とそのままの状態を認めてあげましょう。
お子さんは、自分をそのまま受け止めてもらえたことで、ママの愛情をしっかりと感じて安心します。
ママはそのままの自分を認めてくれるという安心感を得られると、自己肯定感が高まり、少しずつ自立した行動ができるようになります。
3-3.気持ちを整理してあげる
赤ちゃんの誕生により、ママの対応も、家族の生活リズムも変化します。赤ちゃんが泣くと、ママはすぐに赤ちゃんのところに駆けつけますし、いつも上のお子さんではなく赤ちゃんを抱っこしています。
ママは上のお子さんに今までと変わらない気持ちで接していても、上のお子さんにとってはママの自分への愛情が変わってしまったのではないかと不安になります。
家族の生活リズムも変化し、赤ちゃん中心に動くので、上のお子さんは注目されるのはいつも赤ちゃんだと嫉妬の気持ちを感じてしまうこともあります。
上のお子さんは、整理しきれないモヤモヤした気持ちを抱えていることがあります。それが時として、乱暴な言動や、反抗的な行動になって表れることもあります。
お子さんの気持ちを代弁してあげたり、上の子の気持ちを描いた絵本を読むなどして、お子さんの気持ちを整理してあげましょう。お子さんは自分の気持ちを客観視でき、気持ちが落ち着いてきます。
3-4.スキンシップを増やす
お子さんの気持ちを安心させてあげるには、スキンシップが効果的です。
皮膚刺激によってオキシトシンというホルモンが分泌され、不安やストレスを軽減し、安定した心の働きを促してくれることがさまざまな研究(※1)からわかっています。
抱っこやおんぶをしたり、手をつないだり、頭をなでたりと上のお子さんとスキンシップを取るようにしましょう。
常にスキンシップを取る必要はありませんが、量よりも質が重要です。1日のうち少しの時間でもいいので、意識して上のお子さんとの時間をとってスキンシップを取り入れると良いでしょう。
お子さんは、ママの愛情をしっかり感じられ、心が安定します。
「スキンシップの取り入れ方」については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
4.【シーン別】赤ちゃん返りへのおすすめ対応例とNG対応例
ここからは、上手な愛情の伝え方の4つのポイントを、具体的にどのように活用していくかをご紹介します。
赤ちゃん返りでよく起こる、困った行動6つを例にあげていますので、ぜひ参考にしてみてください。
4-1.「抱っこ抱っこ」と抱っこをせがまれるとき
忙しいときや、赤ちゃんが泣いているときに限って「抱っこ、抱っこ」と抱っこをせがんできて、困ってしまう例はよくあります。
こんなときは、まず上のお子さんの気持ちにこたえてあげることが大切です。
■おすすめの対応例
抱っこをせがむときは、なるべく早く気持ちにこたえて、抱っこしてあげましょう。赤ちゃんが泣いていても、基本的には上のお子さんを優先してあげましょう。
お子さんは、自分を優先してもらえたことでママの愛情をしっかり確認でき、安心します。 逆に赤ちゃんが泣いていることが心配になって「ママ、赤ちゃんが泣いているよ」と言ってくれるかもしれませんね。その際は、「そうだね。今度は赤ちゃんを抱っこするね」とか「一緒にあやしてあげようか」と言葉掛けをして、お子さんの優しい気持ちを伸ばしてあげましょう。
■NGな対応例
「赤ちゃんが泣いているでしょ」「もうお兄ちゃんなんだから、いつまでも抱っこって言わないで」などと叱ったり、突き放すような言葉掛けは避けましょう。
上のお子さんはもう大きいのだからと突き放してしまうと、余計に不安感が大きくなって、赤ちゃん返りが悪化する可能性があります。
4-2.1人でお着替えできるのに「やって、やって」と甘えてくるとき
保育園や幼稚園に行くようになって、とっくに1人でお着替えできるようになっているのに、「やって、やって」と甘えてくることもあります。
このようなときも、まずは甘えたい気持ちを満足させてあげましょう。
■おすすめの対応例
「やって、やって」と言ってきたときは、「じゃぁ、今日はママと一緒にお着替えしようか」と手を貸してあげましょう。
お子さんは、ママがしっかり自分を見てくれることで気持ちが満たされます。その上で、「上手にボタンが留められるようになったね」とか「靴下を正しくはけてるね」など、望ましい行動や正しい行動を褒めてあげましょう。
お子さんは認められた満足感と誇らしい気持ちで、ぐんと成長しますよ。
■NGな対応例
「そんなこと自分でできるでしょ」「今忙しいから自分でやって」などと叱ったり、突き放したりするのは避けましょう。
お子さんは、ママは以前のように自分に愛情を持ってくれていないのではないかと不安を感じてしまいます。
4-3.下の子をたたくなど乱暴な行動をするとき
下の子が上の子の積み木を触って崩してしまうと、上の子はわざと壊されたと勘違いして下の子をたたくなどの乱暴な行動をしてしまうという場面にもよく出会います。
このようなときは、ママが双方の気持ちを代弁して状況や感情を整理してあげましょう。
■おすすめの対応例
上の子に対しては「一生懸命作ってくれたのに、赤ちゃんが触って崩れちゃったね。お兄ちゃん悲しいよね」
下の子に対しては「かっこよかったから触ってみたかったんだね」「まだ小さいから上手に触れなかったんだね」などと双方の気持ちを代弁してあげましょう。
上の子は、赤ちゃんが上手に触れなくて崩してしまったと理解でき、ママが自分の気持ちを汲み取ってくれたことで満足感を得られます。
■NGな対応例
「お兄ちゃんなのに、たたいちゃダメでしょ!」と、強く叱責するのは避けましょう。
上の子はたたくのが悪いこととわかっていても、気持ちをコントロールできずに行動してしまっています。強く叱責されることで、余計に気持ちが混乱してしまうこともあります。
4-4.「○○ちゃんなんか嫌い!」など下の子に辛くあたるとき
ママが下の子ばかりを構っているのを見てやきもちを焼き、「○○ちゃんなんか嫌い!」と下の子に辛くあたることがあります。
このようなときは、ママが上の子への愛情を伝えてあげるとともに、きょうだいとして上の子が下の子に対して愛情を持てるように導いてあげましょう。
■おすすめの対応例
上の子がやきもちを焼く場合は、一緒に赤ちゃんのお世話のお手伝いをしてもらうのがおすすめです。
「おむつ替え手伝ってくれる?」「赤ちゃんのお着替えの服選んでくれる?」など、できることを手伝ってもらいましょう。
「お手伝いとても上手にしてくれたね」とか「お姉ちゃんも赤ちゃんと同じように小さかったのに、こんなに成長してくれてうれしいな」「いつもありがとう」など、上の子の成長を喜んだり、感謝する言葉掛けをしましょう。
お子さんは認められて自己肯定感も上がりますし、自分が赤ちゃんの役に立てる喜びや愛情を感じることができます。
■NGな対応例
「そんなこと言わないの」とか「お姉ちゃんなんだからもっと優しくして」などと、上の子を叱ったり、否定したりするような言葉掛けは避けましょう。
お子さんはママの愛情を確かめられず、自己肯定感が低下し、赤ちゃん返りの状況が悪化してしまうことがあります。
4-5.ママのそばを離れないとき
上の子がママにべったりくっついてそばを離れず、何もできなくて困ってしまうことがあります。
このようなときは、みんなの注目が赤ちゃんに向いているので、上の子が寂しい気持ちや不安な気持ちを抱えていることが大きいです。ママと2人の時間を作ってスキンシップを取り、気持ちを満たしてあげましょう。
■おすすめの対応例
家族や周りの人の助けを借りて、ママと上の子の2人だけでお出かけできる時間を作れるといいですね。お子さんはママを独占できた嬉しさと、ママと楽しい時間を過ごせたことで気持ちが満たされます。
あるいは、赤ちゃんのお世話をパパに頼んで、夜寝る時間は上の子だけに寄り添ってあげるのもおすすめです。今日1日の話を聞いたり、絵本を読んであげたりしましょう。お子さんは安心して眠りにつくことができ、気持ちが安定します。
■NGな対応例
もうお兄ちゃん、お姉ちゃんなんだからと、無理やり離れさせることは避けましょう。お子さんの寂しい気持ちや不安な気持ちがよりいっそう大きくなってしまいます。
4-6.わざと食べ物をこぼすなど、ママを怒らせるような反抗的な行動をとるとき
上のお子さんはママの気を引きたくて、わざと食べ物をこぼすなど、ママを怒らせるような反抗的な行動をとることがあります。反抗的な行動をとるのは、お子さんが自分の気持ちを持て余して、どう行動すればよいのかわからないからです。
■おすすめの対応例
お子さんが気持ちを持て余しているときは、似た気持ちの主人公が出てくる絵本を読んで、自分の気持ちを客観視し、どう行動すると良いのか見せてあげるといいですよ。お子さんが葛藤する気持ちを乗り越えて、自立へと成長するのを優しく促せます。
<おすすめの絵本>
1.『ピーターのいす』 エズラ・ジャック・キーツ 著/偕成社1969年
パパとママは赤ちゃんのことばかり。ちょっとモヤモヤした気持ちを抱えながらも、心の成長をとげるピーターのお話です。
2.『ちょっとだけ』 瀧村有子 作・鈴木永子 絵/福音館書店2007年
赤ちゃんが生まれていつも忙しいママ。いろいろな事を我慢する健気ななっちゃん。優しい愛情にあふれるお話です。
■NGな対応例
食べ物をこぼしたことを強く叱ったり、責めたりすることは避けましょう。
お子さんは悪いことだとわかっていても、ママの気を引きたくてわざと反抗的な行動をしています。自分の気持ちを理解してもらえず、叱責されることでストレスを感じ、気持ちがますます不安定になる可能性があります。
5.赤ちゃん返りは一時的 適切に対応して家族の成長へつなげよう
赤ちゃん返りは、不安な気持ちや自分に注目してほしいという気持ちの表れです。
お子さんの気持ちを理解して適切な対応をすれば、自分にも変わらず愛情が注がれていると安心し、赤ちゃん返りも落ち着いてきます。そして、生まれてきた弟や妹にも愛情を持って接することができるようになります。
赤ちゃんのお世話はどうしてもママに負担がかかります。家族みんなで協力して、赤ちゃん同様に上のお子さんのケアもしてあげたいですね。
上のお子さんが心の成長をとげると、さらに家族も成長します。家族で楽しい時間をたくさん過ごしましょう。
主な参考文献
※1 山口創『皮膚感覚と脳』日本東洋医学系物理療法学会誌 第42巻2号
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