image-8576

未来を生きる力「オープンマインド」とは?家庭でできる関わり方や取り組み

この記事を書いた人

遠藤さおり 遠藤さおり

遠藤さおり

  • 社会福祉士

大学在学中に社会福祉士・介護福祉士の資格を取得。

知的障害児のレスパイトサービスや高齢者介護施設での勤務を経て、現在は福祉系ライターとして活動中です。

自身も小学生の子の母として、子どもの可能性を伸ばすことを第一に考えながら子育て奮闘中!

福祉の視点を活かしながら、お悩みに寄り添った記事の執筆を目指してまいります。

近頃、「多様性を認める」「多様性が大切」といった言葉がよく聞かれますね。

多様性とは、それぞれが違う特徴や特性をもっていることを意味します。

これからの社会で重要な価値観ですが、みなさんはどのように子育てに取り入れていますか?

年齢やジェンダー、人種や国籍、障がいの有無、宗教などあらゆる面で多様性を認める動きが強まり、もはや「普通」や「一般的」といった言葉が通用しない社会になりつつあります。

このような流れの中で幸せに生きるためのキーワードとなるのが、今注目を集めている「オープンマインド」です。

オープンマインドは、これからの社会を幸せに生きていく上で欠かせないスキルの1つだといわれています。

今回は、子どものうちにオープンマインドを身につけるメリットや、親ができることについてみていきましょう。

 

目次

 

1.今、注目されている「オープンマインド」とは?

オープンマインドとは、自分をさらけ出して他人を受け入れる心のことです。

海外でも大切にされている価値観であり、偏見のない心・先入観やわだかまりをもたない心といった意味をもっています。

オープンマインドと聞くと、「open(開く)+ mind(心)」=「心を開くこと」と思われがちですが、実はそれだけではありません。

オープンマインドには、自分が正しいと決めつけずに異なる意見にも耳を傾け、自分とは違う意見や考えを認める姿勢が含まれています。

最近は、IQや学力テストなどで測れる「認知能力」に対して、積極性や粘り強さ、協調性やコミュニケーション能力、リーダーシップといった数値では図りにくい「非認知力」の重要性が叫ばれていますね。オープンマインドもこの非認知能力のひとつです。

他人と信頼関係を築いていく土台にもなるため、社会生活に必要な重要な力だといわれています。

 

2.「オープンマインド」の強みやメリットは?

オープンマインドが注目されている背景には、急速に進む社会の移り変わりがあります。

たとえば、グローバル社会が加速する中で、様々な国や地域の人と接する機会が増えています。また、超少子高齢社会に突入した日本では、世代間を越えた関わりも今後ますます増えていくでしょう。

子どもの身近な学校では、自閉症やADHDといわれる、考え方や行動に特徴をもったクラスメイトと関わる機会があるかもしれません。

オープンマインドは、「人と違う」「自分と違う価値観」の中で、苦しまず適応して生きるための大きな強みになります。

自分以外の意見にも柔軟に耳を傾けることができれば、対人関係のトラブルや心の病を予防することができます。

また、他人からの評価を気にしすぎず、否定を恐れず自分をさらけ出すことで、自己肯定感や自己効力感を高めることにもつながります。

学校生活では、いじめを回避し、解決する力としても役立ちます。

 

3.「オープンマインド」を阻害する差別や偏見

社会が多様化していくと、だんだんと見えてくるのが「差別」や「偏見」の問題です。

最近のニュースを見ても、性別や性的指向、人種のマイノリティに関する差別問題がよく取り上げられています。

多くの親御さんが、「わが子には差別する人にはなってほしくない」「親の言動が影響するかもしれないから気をつけないと」と、慎重になっているのではないでしょうか。

差別や偏見は知らず知らずに根付きやすく、オープンマインドへの意欲を阻害してしまいます。

ここでは、差別意識や偏見が生まれる心の発達にフォーカスして、「公正動機」といわれる心のモデルをみてみましょう。

 

3-1.「公正動機」は徐々に発達していく

公正動機」とは、社会が公正で平等であることを望む心の動きです。この感覚は、幼児期から小学校低学年にかけて、大きく発達するとされています。

0〜2歳のころは自分視点の世界が広がり、社会的な不平等や差別を認識することはできませんが、3〜5歳くらいになると公正動機が発達し、みんなが平等に扱われることを望むようになります。

例えば、2歳の子どもは、友達がもっているおもちゃを「遊びたい」という気持ちから奪い取ってしまうことがあります。これは、相手の気持ちや社会的なルールがまだわからないためです。

しかし、4歳頃になると、おもちゃをもっていない子におもちゃを渡してあげたり、自分のおもちゃを貸してあげることができるようになります。

また、6歳頃になると、誰かがいじめられている場面などを目撃したら、その子を助けたいという気持ちが出てくるようになります。

小学校低学年では、公正な扱いを求める感覚がさらに発達し、自分自身や他人が公正に扱われることを望むようになります。

そして、社会全体に対して公正な判断力をもち、公正な行動ができるようになるとされています。

このような「公正動機」の発達と、社会に馴染んでいく「社会化」の過程で、子どもたちは良いことが一部に偏ることのない公正な判断力や行動力を身につけていくとされています。

 

3-2.「公正動機」が発達する過程では、差別意識が生まれやすい

このように、公正動機の成長自体は正常な発達です。

しかしこの時期は、「自分がいる集団が一番だ」と思いやすく、「自分にとっての良いこと」を追求するあまり、他の集団に対してネガティブな印象をもちやすいといった側面があります。

このような揺らぎやすい時期に周囲からの偏った考えが影響すると、他の集団に対して差別的な価値観が芽生えるリスクがあります。

たとえば、大人が「あの子は暗いから、あの子といると友達ができなくなるよ」と話していたとします。

子どもはそれを聞いて、「あの子=暗い子=友達ができない」というように差別・偏見のある間違った思考を学んでしまいます。

特に、公正動機の発達が顕著な幼児期〜小学校低学年にさしかかる時期は注意が必要です。

公正動機の健全な発達を見守りながら、周囲からのネガティブな影響をなるべく減らせるよう親の行動や子どもが触れる情報に十分注意していきたいですね。

では、ここからは子どもの「オープンマインド」を育む関わり方や家庭でできる体験について見ていきましょう。

 

4.オープンマインドを生み出す親の3つの関わり方

ここでは、子どもの心に「オープンマインド」を生み出す親の関わり方を3つのポイントに分けてご紹介します。

良くも悪くも、もっとも身近にいる親御さんの小さな一言や行動は子どもに無意識のメッセージを植え付けます。いいお手本となれるよう、親自身も日頃から差別意識や偏見に対してアンテナ高くいたいですね。

子どもが差別意識や偏見をもたず「みんな違っていい」価値観をもてるよう、親ができることを考えてみましょう。

 

4-1.グループ化する表現を避ける

「男の子は車が好き」「女の子はおとなしい」というように、性別や年齢による決めつけの価値観を問題視されている方も多いのではないでしょうか。

このような決めつけの表現を避けるために「男の子だってお人形遊びが好きでもいいのよ」や「女の子だって活発な子がいるのは当たり前よ」と言い替えている方も多いかと思います。

このような表現は一見ポジティブ、中立的のように感じますが、一方で発達途中の子どもの心には「男の子/女の子」と区別していること自体が「人をカテゴリー分けする」というネガティブな影響をもたらしかねません。

「自分とは違う集団」という印象を与えますので、たとえポジティブな表現であっても、グループ化する表現は避けるように注意しましょう。

 

4-2.グループではなく個人を見るように促す

では、子どもが「あるグループの中の1人」という認識をもたないために親ができることとは何でしょうか?

ポイントは、グループではなく “その人個人” を見るよう促すことです。たとえば、子どもが「今日、幼稚園で男の子たちが鬼ごっこをしていた」と言った場合、「それって誰のことを言っているの?」と具体的に聞いてみましょう。

この質問によって、 “その子” を「男の子」といったグループうちの1人ではなく、「誰か」という個人に注目するよう子どもを導くことができます。

成長とともに世界が広がったときに人種や国籍、宗教などのデリケートな問題に対して差別や偏見をもたないことにもつながりますので、意識的に取り入れていきたいですね。

 

4-3.異なる文化・価値観があることを子どもに伝える

私たちは、家族や地域など限定された社会で生きていますが、疑いもなく、自分の考えや行動が「普通」で「一般的」と思ってしまいがちです。

そのため、幼いうちから自分が住んでいる地域や国以外に、異なる文化や価値観があることを知っておくことも大切です。

たとえば、旅行には「他県に足を運べば雪が降っている」「初めて食べる食べ物がある」といったように、自分の世界とは違った文化・価値観に触れることができるメリットがあります。

旅行ほど大掛かりなものでなくても、いつもと違う公園に行けば「遊具の譲り合いのルールが違う」「いつもと違う花が咲いている」などその年齢相応の違いに触れることができます。

広い世界に飛び立つ前に、様々なチャンスを逃さず、子どもに伝えることを心がけましょう。

 

5.家庭で取り組みたい!「オープンマインド」を育む体験とは?

最後に、オープンマインドを育むために、親子で取り組みたい体験を3つご紹介します。

親と子の距離が近い幼いうちに、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

 

5-1.地域のボランティア活動やイベントに参加する

ボランティア活動は、年齢や性別を越えた関わりがもてることはもちろん、普段なかなか触れることのできない高齢者福祉、国際理解、防災などの分野に参加できる貴重な経験です。

ボランティアというと学生が行うイメージがありますが、たとえば地域の防災訓練や美化活動、警察署が開催している安全教室など、1日だけ・短時間で・誰でも参加できる手軽なものもたくさんあります。

ぜひお近くのボランティア活動やイベントをチェックしてみてくださいね。

 

5-2.ドキュメンタリー番組を見る

自宅ですぐにできるアイディアとしておすすめしたいのは、ドキュメンタリー番組を観ることです。

たとえば自然をテーマにしたものや国際問題、福祉をテーマにしたものなど子ども向けの番組もありますので、ぜひ親子で一緒に視聴してみてください。

日常では触れることのできない様々な問題や人々の思考に触れることで、それまでの先入観をなくし、共感力を高められるのがメリットです。

字が読める年齢であれば、ノンフィクションの本を読むのもいいですね。

▶活用してみよう!

❚ NHK for School

生活から学習まで、幼児期から中高生までの学びにフォーカスしたさまざまな番組が無料で視聴できます。

例えば、発達障害などの困難があるこどもたちの特性を知ることで、多様性への理解を深めるこども番組「u&i」。身近な生き物たちの生態をじっくりと見つめる「しぜんとあそぼセレクション」など。

 

5-3.自然に触れる体験をする

キャンプや農業体験などの自然に触れる体験も、オープンマインドを育てるために非常に効果的です。

このような体験では自然の中という非日常にいる連帯感が生まれるので、より濃密なコミュニケーションが期待できます。

家族だけでなく、祖父母やいとこ、友人家族などと一緒に行くことを計画し、親が積極的に様々な人と関わる姿勢を子どもに見せましょう。

 

6.「オープンマインド」で子どもの未来を広げよう!

オープンマインドとは、自分と他人の違いを認め、異なる意見にも柔軟に耳を傾ける能力のことです。

オープンマインドをもっている人は自分も他人も尊重でき、常に新しいアイディアを柔軟に受け入れられるといったメリットがあります。

これから先の人生、自分軸をもって幸せに暮らしていくためにもとても大切です。ぜひ小さいうちに身につけさせてあげたいですね。

大人になるとどうしても自己開示することに対して消極的になったり、苦手意識をもったりしがちです。しかしオープンマインドはプライベートをさらけ出したり、自分の意見を押し通したりするワガママとは全くの別物です。

幼児期〜小学校低学年の頃は様々なことを吸収できる黄金期である一方、差別や偏見が生まれやすい時期でもあります。この時期こそ親御さんがお手本となる姿を見せて、子どもの価値観をいい方向に導きましょう。

 

公式LINEでもパパ・ママの悩みに寄り添った情報を発信中!

・どうして○○するの?

・育て方はこれでいいの?

そんなお悩みはありませんか?

「なぜ」がわかると…

子どもの成長に前向きに向き合える

見通しが持てる、安心できる

CONOBAS公式LINEではパパ・ママの悩みに寄り添った情報を発信中!

ぜひお友だち登録してくださいね!

非認知能力についてはこちらで詳しく解説中!⇓

 

 

主な参考文献
・森永康子,大渕憲一,池上知子,高史明,吉田寿夫,伊住継行,今、差別を考える―社会心理学からの提言―,研究委員会企画シンポジウム2 Vol.59 304-314,2020

 

ランキング

カテゴリー一覧

人気のタグ