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療育では何をする?始める時期や効果、子どもへの接し方を元療育施設スタッフが解説

この記事を書いた人

まさ まさ

まさ

  • 中学校教諭
  • 高等学校教諭
  • 保育士

中学校教諭、高等学校教諭、保育士の資格所持

大学卒業後、海外ボランティアや日本の療育センターにて、障害のあるお子さんと関わってきました。

現在は、育休を取得し、0歳と2歳の子どもの子育てに奮闘しています。

得意なことは、手遊び、工作です。

  • 健診で療育を勧められたけど、いつから通い始めればいいの?
  • 療育はどんなことをするの?
  • 療育を受けさせるか迷っている

そんなお悩みはありませんか?

身近に療育に通っている子どもがいないと、なかなかイメージするのが難しいですよね。

この記事では、 療育を始めるタイミングや効果、具体的な内容、発達が気になる子どもへの接し方 などについてご紹介します。

また、療育センターで勤務していた筆者が、成功事例や親御さんの声もお伝えします。

はじめて「療育」という言葉を聞いた方にも分かりやすいよう解説していますので、ぜひ気軽に読んでみてくださいね。

 

目次

 

 
 

1.療育とは?

療育とは、障がいのある子どもの支援をおこなうことです。

支援の内容は多岐にわたっており、子どもの興味・特性や通いやすさなどから選ぶことができます。

厚生労働省の児童発達支援ガイドラインでは、療育をほぼ同義の「発達支援」と呼び、以下のように定義しています。

“障害のある子どもに対し、身体的、精神的機能の適正な発達を促し、日常生活及び社会生活を円滑に営めるようにするために行う、それぞれの障害の特性に応じた福祉的、心理的、教育的及び医療的な援助である”
引用:厚生労働省 児童発達支援ガイドライン

 

もともとは、身体障がいのある子どもに対して、医療と教育を合わせて援助することを目指していました。

しかし、現在では発達障がいや知的障がいのある子どもなど、幅広い障がいのある子どもに対応しています

 

2.療育ではどんなことをする?具体的な取り組み内容

療育では、子ども一人一人の特性に合わせた活動や指導がおこなわれます。

どんなことをするのか具体的な内容をご紹介します。

 

2-1.着脱や食事などの身辺自立の練習

発達障がいや知的障がいの子どもの中には、洋服の着脱をしたり、スプーンとフォークを使って食事をとったりするのが難しい子どももいます。

保護者の方の中には、まずは身辺自立ができるようになってほしいと願う方も多いですよね。

療育センターでは、身辺自立を目指して、体の使い方を学んだり、指先の動きを練習したりします。

また、子どもが主体的に取り組めるよう環境を整えたり、やる気を引き出す工夫も施されます。

家庭でも練習できるよう、補助の仕方を教えてくれる場合もあるので、気になるときは質問してみるのがおすすめです

 

2-2.認知(物事への理解)を高める個別の学習

発達障がいや知的障がいのある子どもは、大きな集団の中で学ぶよりも、特性に合わせた個別の学習をおこなうことで、学びがスムーズになります
興味や関心に偏りがあったり、日常生活の中で自然に学ぶのが難しい子どもに合っている方法です。

学習といっても2歳〜3歳ごろの小さな子どもを対象としている場合は、パズルやおもちゃなどを通じて、同じものを見つけたり、分けたりする活動をしたり、遊びながら「待っててね」「こっちにおいで」などといった簡単な言語指示の理解を促したりする活動が展開されることもあります。

物事への理解が進むことで、親御さんの負担が軽減されたり、幼稚園や保育園といった集団生活に馴染みやすくなることでしょう。

無理矢理お勉強させるようなことはないので、安心してくださいね。

 

2-3.体の使い方を学ぶ運動

体の動かし方が不器用だったり、イスに座っているのが苦手な子どもは、運動を通じて体の使い方を学ぶこともあります。

体が上手に使えるようになると、座った姿勢を保てるようになるので、小学校の授業に役立てることが可能です。

また、将来的には転んだときに手がつける、電柱などの障害物をよけるなど、ケガを防ぐことにもつながります。

生活の質を高めてくれる、スポーツに親しむきっかけにもなりますよ。

 

2-4. 社会性を身につけるソーシャルスキルトレーニング

基本的な知識や理解が身についてきた子どもには、社会性を身につけるためのソーシャルスキルトレーニングをおこないます。

「うちの子は、お友達との関わりが上手くいかない」と悩んでいる方もいることでしょう。

ソーシャルスキルは、社会生活や人間関係をスムーズにするために必要なスキルです。

小学校入学前にソーシャルスキルを学ぶことは、子どもの学生生活をよりよくすることにつながりますよ。

例えば、「お友達のおもちゃを無言で奪ってしまう」といった悩みはよく聞かれます。
しかし、日常生活の中では、他の保護者の目が気になったり、兄弟がいたりして、ソーシャルスキルの練習が難しい場合もあるでしょう。

療育センターでは、先生がそばについて「貸して」という練習をしたり、絵カードを使ってどのように対応すればよいか学ぶことができます。

成功体験がつめるようスモールステップで練習するため、子どもにも負担が少なく安心ですよ。

また、子どもによっては、自分の気持ちを表現する方法を学んだりします。

例えば、イライラしたときには、

  • 深呼吸する
  • 1人になる
  • 心の中で10を数える

などといった対処法を一緒に考えたり、

「○○が嫌だったんだ」
「○○したかったんだ」

と自分の気持ちを適切に相手に伝える方法を学んだりします。

 

【うちの子にできるかな?なじめるかな?そんな不安も大丈夫!】

①「療育って初めて聞いたし、なんとなく不安…」
子どもが生まれてから初めて「療育」という言葉を聞いた方も多いですよね。
療育に対して、なんとなく不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
療育センターで勤務していた筆者のところにも、厳しい訓練のようなイメージを持って、相談にくる方もいました。
しかし、実際の療育の内容は、遊びが活動の中心であったり、音楽を使ったり、体を動かしたりと、楽しみながら取り組めるよう工夫が凝らされています。
毎週楽しみに通っている子どもがほとんどですよ。

②「大きな声を出したり、泣き出したり、癇癪がひどくても通えるのかな…?」
療育に通おうか迷っている保護者の方の中には、「幼稚園や保育園でなじむのが難しかった」「幼児教室で大声を出してしまい辛い思いをした」という方も多いです。
療育センターには、障がいや子どもに関する専門知識や経験が豊富なスタッフがそろっているため、心配しすぎる必要はありません。
親御さんの不安は子どもにも伝わるので、安心して子どもを任せてみましょう。

③「うちの子は落ち着きがないから学習できるかしら?」
療育センターでは、集中しやすいよう落ち着いた環境を設定したり、見通しを分かりやすく絵で示したりと、あらゆるところに工夫が凝らされています。
通い始めてすぐに成果が見られることは少ないのですが、続けていくことで成長が感じられるでしょう。

 

 

3.療育はいつから始める?早期の介入が勧められる理由とは?

療育には「いつから始めるのがよい」という明確な基準はありません。

一般的には、1歳半健診で言葉の遅れや他者とのコミュニケーションの取り方に心配があることが指摘され、その後、3歳児健診まで様子を見た後、療育を検討するケースが多いようです。

基本的には子どもの年齢に関係なく、「必要性を感じたタイミング」で、なるべく早い段階で検討しましょう。

早期の介入が勧められる理由は、子どもが小さいうちに療育に通い、保護者や周囲の方が子どもの特性を理解した上で適切な関わりをすると、子どもがもつ能力を最大限引き出すことができるからです。

子どもの特性を活かしたり、弱点を感じにくくする工夫を身につけて、子ども自身が生きやすくする手助けができます。

また、成功体験を積み重ねることができ、小学校に向けて自信をもってスタートできるでしょう。

子どもの発達で気になることがあれば、まずは気軽に相談してみましょう。

 

4.療育の効果とは?子どもだけでなく保護者にもメリットがたくさん

療育を勧められたが、療育には効果があるの?と疑問に感じている保護者の方も多いですよね。周りに療育に通っている子どもがいないとなおさらです。

ここでは、療育の効果や保護者の方のメリットをご紹介します。

 

4-1.日常生活に必要な力が身につけられる

療育を通じて、身辺自立や他者とのコミュニケーション能力、物事の理解など、日常生活に必要な力を身につけることができます。

障がいの程度や課題によって、個人差はありますが、その子どもなりの成長を見せてくれることでしょう。

日常生活に必要な力が身につくことで、家庭生活だけでなく、幼稚園や保育園での生活もより豊かになっていきますよ。

 

4-2.「私にもできた!」成功体験がつめる

発達障がいや知的障がいのある子どもは、年齢を重ねるにつれて「失敗してしまった」「できなかった」という思いを抱えている子どももいます。

また、なぜ叱られているかが理解できず、悲しい気持ちになる子どもも…。そんな子どもを見るのは辛いですよね。

療育では、子どもの発達段階や特性に応じてスモールステップで学習を進めるため、「私にもできた!」と成功体験をたくさん積むことができます。

幼少期に成功体験を多く得ることで、生涯にわたって困難に挑戦する力やあきらめない力、失敗しても乗り越えていく力を身につけられるでしょう。

 

お着替えで成功体験が作れた例

筆者の勤めていた療育センターにも、幼稚園で着替えが時間内にできず困っている子どもがいました。

様子を見ていると、着替えている途中で他のことに気持ちが移ってしまったり、脱いだ服をあちらこちらに広げてしまい、片付けるのに苦労しているようでした。

しかし、一見ふざけているようにも見えるので、幼稚園の先生から注意された経験があったようです。

そこで、療育センターでは、

・着替える手順を示したボードを目の前に置いておく
・脱いだ服を入れる箱を用意しておく
・タイマーをセットして時間を目で見れるようにする

などの工夫をし、小さな成功体験を積み重ねられるようにして練習しました。
2か月ほど練習すると、幼稚園の先生から着替えがスムーズになったと言われたらしく、誇らしげな姿を見せてくれましたよ。

 

 

4-3.障がいの特性や関わり方を学べる

「自分の子どもだけど、ときどき、何を考えているのか分からない」「どんな関わり方が良いのか迷っている」と、1人で抱え込んでいる保護者の方もいることでしょう。

療育センターには、言語聴覚士や臨床心理士、作業療法士、児童指導員など療育の専門家がたくさんいるので、子どもの特性に合わせたアドバイスを受けたり悩みを聞いてもらえたりします。

障がいの特性には、「落ち着きがない」「言ったことをすぐに忘れる」など、さまざまなものがあります。

また、同じ障がいでも、子どもによって個人差が大きいです。
障がいの特性や、特性に対応した関わり方を知るだけで、子どもが何を考えているのかが分かったり、コミュニケーションがスムーズになったりします。

また、特性を知っておくことで、周囲の方に必要な支援を伝えることもできます。

子どもがどうして困っているのか、どんなサポートが必要なのかが分かると、ぼんやりと不安を抱えていた日々に少し光がさすことでしょう。

 

子どもの癇癪の原因と関わり方を学んだ親御さんの声

療育センターでよく聞かれる相談の中には、「一度癇癪を起こすと収まるまで時間がかかる」というお話があります。

癇癪の度に、強く怒ってしまったり、イライラしてしまい、自己嫌悪に陥っていると悩んでいる保護者の方も多いです。

そんな時には、子どもが癇癪を起こしたタイミングや周りの状況などをよく聞いたり、実際に療育センターでの子どもの様子を観察したりして、なぜ癇癪が起きているのかを考えていきます。

癇癪の原因が分かると、癇癪をできるだけ起こさないようにしたり、癇癪が起こったときの対応方法などを知ることができます。

子どもの癇癪はすぐに改善することはありませんが、関わり方が分かることで、「子育てに自信がついた、祖父母にも対応を説明できた」と前向きな声がきかれることもよくあります。

 

 

5.療育を受けるかどうか迷っているときはどうする?

1歳半健診や3歳健診で療育を勧められたが、

  • 日常生活で困りごとはないし、うちの子に療育は必要ないのでは…
  • ちょっと落ち着きがないけれど、まだ年齢が小さいし…
  • 言葉はゆっくりだけど、言われていることは分かっているみたいだし…

と療育を受けるかどうか迷っている方もいることでしょう。

ここでは、療育を受けるかどうか迷ったときに、ぜひやってみてほしいことをご紹介します。

 

5-1.発達相談や発達検査を受けてみる

自治体や療育センターなどでは、発達相談や発達検査を受けることができます。

発達相談は、「言葉が少し遅れている気がする」「育てにくさを感じる」「気持ちの切り替えが難しい」などちょっとしたことから気軽に相談できます。

話しているうちに、頭の中が整理されたり、不安が解消されることもありますよ。

発達相談は自治体や療育センターなどで受けられるため、気軽に連絡してみましょう。

発達検査とは、保護者への質問や、専門資格をもったスタッフが子どもと関わることを通じて、発達の水準を評価する検査です。

国立特別支援教育総合研究所によると以下のように記されています。

“発達検査は0歳児から使用でき、知的能力だけではなく、身体運動能力や社会性の発達なども含めて、発達水準を測定します。発達年齢(DA)や発達指数(DQ)を算出するものもあります。検査には、検査者が直接子どもを検査したり、観察したりして評価を行うものと、保護者など養育者に質問してその報告をもとにして評価を行うものがあります。”
引用:国立特別支援教育総合研究所

 

検査というと血液検査などを想像する方もいますが、全く別物となります。

子どもの様子に合わせて検査をおこなうので、椅子に座れなかったり、発語がない場合も大丈夫です。

発達検査では、子どもの強みや弱み、今後の見通しなどを知ることにもつながるので、受けておいて損はないでしょう。

 

5-2.療育施設に見学に行ってみる

療育施設の中には、見学可能な施設もあります。

療育に通おうか迷っている方は、一度見学に行ってみるのがおすすめです。

幼稚園のような雰囲気の施設だったり、子どもの興味をそそる玩具や教材がたくさんあったりと、施設によって様々な特徴がありますよ。

子どもによって必要な支援の内容は異なるので、自治体の担当スタッフや療育センターの担当者に助言をもらうとよいでしょう。

 

5-3.コミュニティに参加する

実際に発達相談に行ったり、療育施設に見学に行ってみる勇気がない、時間がない、という方は、発達障がいや知的障がいに関するコミュニティに参加するのもよいですね。

オンライン上やSNSを通じて、情報交換ができます。しかしながら、オンライン上の情報には誤っているものもあるので、あくまで参考程度にするのがおすすめです。

 

6.療育が必要な子どもへの接し方~家庭で心がけたい3つのこと~

療育が必要な子どもへの接し方にはポイントがあります。
家庭で心がけることで、子どもによい影響があるので、ぜひ試してみてくださいね。

 

6-1.「肯定的な声かけを意識!」子どもの自己肯定感を育てる

肯定的な声かけを意識することで、子どもの自己肯定感を育てられます。

特に保育園や幼稚園に通っている子どもは、なんとなく自分が苦手なことやできないことがあることに気づいている可能性もあります。

そのため、たとえ失敗したとしても肯定的な声かけを意識することが大切です

例えば、お茶を入れようとしてこぼしたとしましょう。
「こぼさないで!」「気をつけてって言ったでしょ」というよりは、
「自分で入れようと思ったんだね。次はもう少しゆっくり入れてみるとできるかもね。」などと伝えると次にチャレンジする意欲が湧いてきますよ。

また、褒めるときは大げさに褒めてあげてくださいね。
「できた!」という自信が、次のステップにつながっていきます。

 

6-2.「指示は具体的な表現を活用!」時には視覚に訴える

指示は具体的な表現を活用しましょう。

例えば、「片付けてね」ではなく、「ぬいぐるみを箱に入れてね」と伝えます。

また、「急いで着替えて」ではなく、「タイマーがピピッとなるまでに着替えてね」と伝えると子どもにとって分かりやすくなります。

言葉の理解が難しかったり、指示をすぐ忘れてしまう場合は、子どもの前に今することの写真や絵を貼ったり、やることの順番を示したリストを掲示しておくとスムーズです

保護者の方の中には、何度言っても伝わらないと感じて、イライラしたり、辛い思いをしている方もいるかもしれませんね。

「子どもはそういうものだから。」と周囲の人からなかなか理解を示してもらえない場合もあることでしょう。

写真を準備したり、言い方を変えるのは、少し面倒かもしれませんが、できる範囲で試してみてはいかがでしょうか?

ちょっとした工夫で子どもが指示を理解して行動してくれることもあるかもしれませんよ。

 

6-3.「得意を伸ばす!苦手はスモールステップ!」長い目で見守る

療育が必要な子どもは、得意なことと、苦手なこととのギャップが大きいことがあります。

そのため、得意なことは伸ばし、苦手なことはスモールステップで少しずつ対応できるように、長い目で見守っていくことが大切です。

多様化した社会の中では、得意なことをどんどん伸ばすことが、将来自立して生活するための力になります。

また、苦手なことへの対応方法を学ぶことで、生きづらさが緩和されることでしょう。

療育だけに限らず、家庭の中でできることも多いので、積極的に取り組んでみましょう。

 

7.療育を含め、子どもの発達に合ったサポートと接し方を心がけよう

本記事では、療育の効果や具体的な内容、家庭で心がけたいことなどについてご紹介しました。

療育は、子どものもつ能力を最大限に活かすために大切です。

療育を始めるのは少し勇気がいるかもしれませんが、思い切って一歩を踏み出すことで、新たな気づきがあるかもしれません。

また、療育だけでなく、家庭での適切な対応も子どもの成長を伸ばすことに役立ちます。

子どもの発達に合ったサポートと接し方を心がけたいですね。

まずは、一人で悩まずにお住まいの自治体や地域の子育て支援者に相談してみてくださいね。
 

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主な参考文献
厚生労働省 児童発達支援ガイドライン
国立特別支援教育総合研究所 検査や機器について 発達検査

 

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