「協調性がない」のは悪いこと?家庭でできる協調性の育て方
この記事を書いた人
工藤りえ
- 幼稚園教諭
- 保育士
幼稚園・こども園にて12年勤務。主にクラス担任と障害児保育を経験してきました。
特に障害児保育に関心を持ち、子どもの自己肯定感を高める関わり方を勉強しています。
小1・2歳の兄弟がおり現在は、ママ向けWebマガジンや保育メディアなどで記事執筆を行っています。
得意なことは、ダンス、歌遊び、読み聞かせ、リトミックです。
「子どもがお友だちと遊ばない」 「いつも一人で遊んでいる気がする」 「お友だちにおもちゃを貸してあげられない」このようなお悩みはありませんか?
子どもが一人遊びばかりしていると、ついつい「うちの子、協調性ないのかな?」と考えてしまいがちですよね。 でも、大丈夫。「協調性」は、発達や経験に伴って、高めることのできる能力です。
今回は、協調性が身に付く年齢や、大きくなって協調性が身に付いた子の実例に加えて、協調性が育つ3つのヒントをご紹介します。
少しの工夫で、家庭でも協調性を育んでいくことができます。
ママはもちろん、ご家族で一緒に子どもに向き合い、楽しく日常に取り入れていきましょう!
目次
1.協調性とは?幼児期に協調性が身に付くことの重要性
協調性とは「他の人々と親しみ、相手の気持ちを考え、受け入れながら一緒に活動する」ことです。
協調性がある人は、自分と違う考えを持つ人との関わり方がとても上手。
相手の気持ちをくみ取り、受け入れつつ自分の考えも伝え、同じ活動で気持ちを共有できます。
協調性は、幼児期から周りの人との関わりを重ねることで身に付きます。
幼児期で協調性が育まれることは、大人になってからの生活に大きな影響があるといわれています。
集団生活や、家族との関わりの中で、相手を思いやる気持ちが芽生えてきます。
相手の気持ちの想像、相手に寄り添う心、周りの人と同じ目標に向かうことの楽しさ、幼児期から育むことで、周りとのコミュニケーションがとても上手になりますよ。
協調性を育むためには、「主体性」も大切です。
主体性とは「物事をすすめるときに、自分の考えを軸をとして取り組む」ことをいいます。
自分の考えを大切にして、時に曲げない姿勢は、幼少期から見られる大切な性質です。
主体性と協調性のどちらもバランス良く育つことが、子どもの健やかな心の発達にとってとても重要です。
自分が何をしたいか、相手にどう寄り添えばよいかのバランスをとる経験をしながら2つの力は育っていきます。
2.協調性はどのように育まれるのか
協調性は、周りの人との関わりで育まれます。
幼児期は、主に家族・お友だち・先生と一緒にたくさんの経験を積むことが大切です。
幼児期は、まだまだ周りを思いやるより自分の考えを貫き通したい時期。
たくさんの衝突や我慢も経験しますが、少しずつ周りと一緒に遊んで楽しむ気持ちが芽生えていきます。
2-1.3歳
3歳で「お友だちとうまく遊べない」「ルールを守れない」と悩んでいる方もいるでしょう。
3歳は、まだまだ協調性の土台を作り始めたところで、身に付くまでには時間がかかる年齢です。協調性がなくても、心配いらない年齢です。
3歳は、お友だちを含む人間への関心よりも、自分がやりたいこと、使いたいものへの関心が強く、我慢ができない年齢でもあるので、周りと衝突することも多いです。
「自分のやりたいことを目一杯やりたい!」そんな気持ちでいっぱいの3歳。
協調性よりも主体性がまだまだ強い時期です。
協調性がないのではなく、今はそういう時期なんだな、と見守ってあげてくださいね。
2-2.4歳
4歳は、少しずつお友だちとの関わりが増えていく年齢です。
それでも、まだ協調性の芽が出始めた頃で、しっかり身に付いてはいません。
4歳で協調性がない子も多い時期です。
今まで物への興味で動くことが多かった時期から、少しずつ周りの人への関心が高まります。
身近なパパママ、先生、好きなテレビ番組の登場人物への憧れが強まり、時には真似をしてなりきる子が増えてきます。
また、いくつかのルールを守れるようになり、友だちとゲーム遊びやチーム競技ができるようになっていきます。
ただ個人差があるので、まだ一人遊びを多く好んでも大丈夫です。
周りとの関わりで、楽しい・悲しい・嬉しい・悔しいといったたくさんの気持ちを経験します。そんな経験の積み重ねで、協調性が育まれていきます。
2-3.5.6歳
協調性がしっかりと根付くのは、5.6歳頃といわれています。
年長になる頃には、「お友だち」という存在をしっかり認識して、一緒に遊ぶ楽しさを味わえます。
5.6歳といったら、会話力も上がり周りとのコミュニケーションがとても上手な年齢。
大人の話もしっかり聞いていて、思わずびっくりするような発言が飛び出すこともありますね。
5.6歳の子どもにとって、協調性を一番高めてくれるのは、お友だちです。
個人差はありますが、5.6歳になるとお友だちと遊ぶことがとても楽しい!と感じるようになりますよ。
お友だちとの関わりを積極的に増やし、集団の中でたくさんの経験をさせてあげることが、子どもの協調性を育んでくれます。
5.6歳になると、自分のことは自分でできるようになり、自信がつきます。自信がつくことで、自分の気持ちを周りに伝える「主体性」と、周りのことを思いやる「協調性」が、バランス良く育っていきますよ。
3.家庭でできる協調性の育て方-3つのヒントー
協調性は、人と関わることで育ちます。
お友だちだけではなく、ママや家族との関わりでも育んでいけます。
家族との密なやりとりは、子どもの協調性・主体性を伸ばし、子どもに自信や思いやりが身に付いていきます。
日常の中で意識しやすいヒントと共に、家庭でできる協調性の育て方をご紹介します。
3-1.お手伝いを決める
簡単なものでいいので、毎日できるお手伝いを子どもと一緒に決めましょう。
家の中で、自分だけの役割があることは、子どもにとってとても嬉しく自信がつきます。
お手伝いをして、家族が喜ぶことで子どもも嬉しくなり、お手伝いが楽しみになっていきます。
はじめは簡単なお手伝いにしてみましょう。
「お箸を並べる」「テーブルを拭く」「玄関の靴を並べる」など、続けられそうなお手伝いにすることで、子どもの自信に繋がりますよ。
「お手伝いをしたら、ママが喜んでくれた」という経験は、相手を思いやることにも繋がります。 お手伝いを習慣にして、家族を思いやる気持ちから協調性もぐんとのびていきます。
3-2.挨拶を必ずする
挨拶は、人との繋がりをもつ最も簡単な方法です。
まずはママがお手本を見せて、積極的に挨拶をしましょう。
ママとの挨拶のたびに、ハグをするなどのスキンシップをとることもおすすめです。
家族間はもちろん、お友だちや先生とのやりとりも大切です。
目と目を合わせて挨拶をすることは、相手の様子を伺う練習にもなります。
協調性は、相手のことを知ろうとすることでも育つため、挨拶は協調性をのばすのにとても効果があるのです。
3-3.相手の気持ちを考える言葉がけを意識する
遊びの中で、相手の気持ちを考えるよう促してみましょう。
例えば、絵本の読み聞かせの感想を聞き、登場人物の気持ちを一緒に想像する、などです。
相手がどんな気持ちになるか想像できるように、ママが言葉がけをするだけで、子どもは考える癖がつきます。
協調性は、相手の気持ちを考えることで身につきます。
相手の気持ちに寄り添えるよう、自然に声がけをして、一緒に考えていきましょう。
4.成長と共に協調性が身に付いた例をご紹介!
「うちの子協調性がなくて、お友だちと遊べないんです」 「協調性がないまま大きくなったらどうしよう」 私が働いていた幼稚園でも、このような悩みを打ち明けてくれる保護者の方がよくいらっしゃいました。
協調性がない、といっても子どもによって周りとの関わり方や興味が異なります。
先にも述べましたが、協調性は、成長と共に育っていくものです。
はじめは周りとの関わりが少なかった子も、友だちと遊ぶことの楽しさに気が付いてからどんどん協調性が伸びていくことがあります。
ここでは成長とともに、協調性がぐんと育ち身に付いていった子の実例をご紹介します。
4-1.一人遊びばかりだったのに年長で踊りのリーダーになったAちゃん
3歳の時、未就園児教室に参加していたAちゃん。
内向的で発語も少しゆっくりな女の子でした。
Aちゃんは一人でお絵かきをするのが大好きで、「あっちで一緒に遊ばない?」と声をかけても首を振っていました。
集団での活動にもなじめず、お母さんがいつも心配して、熱心にAちゃんをお友だちの輪に入れようと声がけしていました。
その後、年少から入園し子どもたちの中でたくさんの経験を積みます。
はじめはクラス活動に参加できないことも多く、一人遊びを好んでいましたが、年中の後半に、はじめてお友だちの遊びに興味を示し「先生、わたしもやりたい」と訴えてきました。
Aちゃんは、この日を境に友だちへの興味が高まり、少しずつ自分から関わろうとするようになりました。
年長の発表会では、内向的だったAちゃんが踊りのリーダーに立候補したのです!
毎日の活動で、お友だちと協力する楽しさを知ったからこそ、Aちゃんはリーダーにチャレンジしました。
発表会まで、踊りの中心になって頑張ったAちゃん。
発表会が大成功し、自信に満ちあふれてよりお友だちとの関わりも増え、周りの人の気持ちを考えられる素敵なお姉さんになって卒園していきました。
4-2.友だちに誘われて嫌がっていたBくんはみんなに優しい年長さんに
年少で入園したBくんは、急な予定変更が苦手な子でした。
外遊びの予定が雨で室内遊びに変更になるだけで、玄関で寝転び泣き続けていました。
子ども同士のお友だちとの関わりでは、予想できないことが多く起こります。
そのため、Bくんはお友だちと遊ぶのも嫌がり、いつも先生と一緒に行動していました。
「Bくんと遊んでみたい」と誘いに来てくれるお友だちもいましたが、Bくんは毎回断っていたのです。
やがてBくんも年中になり、自分より小さいお友だちが新入児として入園してきます。
すると、泣いている新入児に「大丈夫だよ」「ちゃんとママが迎えに来るからね」と自分から声をかけることができました!
年少の時とは表情も変わり、頼もしいお兄さんへと成長していったのです。
年長になるころには、泣いている子を見かけるといつも声がけをするようになりました。
Bくんの優しさに周りが救われ、お友だちからも大人気に。
悲しくなったらBくんのところに行く子もいたほどです。
急な予定変更にも少しずつ慣れて、年長の時には落ち着いて対応できるようになっていました。
4-3.遊びの中でいつも怒っていたCくんが応援団長に挑戦
とても活発な年少のCくん。
遊び方が大胆で、時に乱暴をしてしまう子でした。
Cくんは、お友だちと遊ぶのが大好きで、輪の中に自分から入っていきます。
しかし、Cくんは自分の思うように遊びが進まないと、癇癪を起こし泣き暴れてしまうところがありました。
子ども同士の遊びですから、Cくんの思うとおりにはなりません。
毎日怒り泣いて別室でクールダウンしてからクラスに戻る、を繰り返していました。
年中になる頃、いつものように思い通りにならず泣いていたCくんに、年長のお友だちが声をかけます。
「みんなCくんと同じで気持ちがあるよ。みんな違うの。Cくんにも知ってほしい。」
その言葉を聞いたCくんはきょとんとしていましたが、その日から、泣く前に「〇〇したかった」と理由を伝えるようになりました。
お友だちもCくんが悲しむ理由が少しわかってきたようで、「でも今はみんな違うことがしたいんだよ」などと話すようになりました。
このようなやりとりが続き、Cくんも癇癪が減り、別室でクールダウンすることもなくなっていきました。
年長になり、遊びの中でトラブルが減ったCくん。
「Cくんはいつも元気で、応援も上手そうだから」という理由で、お友だちから運動会の応援団長に推薦されました。
とても喜び、自信がついたCくんは、大きな声でお友だちを励ます応援団長を最後までやり遂げました。チームは負けてしまっても「みんなかっこよかった!」とお友だちの頑張りを喜んでいたCくんでした。
5.子どもの成長を見守り、家族で一緒に協調性を育てていこう
「協調性」は、家族やお友だちとの経験を重ね、5、6歳頃に身に付いてきます。
それまでは、周りと同じことをしたり、うまく合わせることができなくても、大きな不安を持つ必要はありません。
自分の気持ちを伝え行動する「主体性」と、周りの人の気持ちを考える「協調性」は、幼児期の経験をもとにバランス良く育っていくものです。
一方で協調性がないことは、決して悪いことばかりではありません。
個性のひとつとして、長い目で見守ることも大切です。
とても心配なときには、専門機関に相談すると、心が軽くなることもありますよ。
また、家庭でも取り入れられる、協調性をのばすヒントはたくさんあります。
お友だちとの関わりが増えると子どもの成長を感じて嬉しくなりますよね。
お子さんのそれぞれの個性を受け止めて、素敵なところをたくさん認めてあげてください。
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参考文献
・文部科学省 幼稚園教育要領 第2章ねらい及び内容