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子どものレジリエンスを鍛えよう!親子で「折れない心」の作り方

この記事を書いた人

遠藤さおり 遠藤さおり

遠藤さおり

  • 社会福祉士

大学在学中に社会福祉士・介護福祉士の資格を取得。

知的障害児のレスパイトサービスや高齢者介護施設での勤務を経て、現在は福祉系ライターとして活動中です。

自身も小学生の子の母として、子どもの可能性を伸ばすことを第一に考えながら子育て奮闘中!

福祉の視点を活かしながら、お悩みに寄り添った記事の執筆を目指してまいります。

「小さなことで落ち込みやすい」「失敗するとすぐに諦めてしまう」

そんなわが子の様子に「打たれ弱さ」を感じ、心配している親御さんも多いのではないでしょうか。

そんなときは「レジリエンス」の考え方を取り入れてみませんか?

レジリエンスは、「心のしなやかさ」や「回復力」を指す言葉で、今、子育ての分野でも注目されている考え方です。

今回は、そんなレジリエンスについて深堀りし、心のしなやかさを育てるコツをご紹介します。

レジリエンスは何歳になっても強化することができます。ぜひ親子で取り組んでみましょう!

 

目次

 

1.生き抜く力!レジリエンスとは?

レジリエンス」は、「心の回復力」や「しなやかさ」、「打たれ強さ」を意味する心理学用語です。

例えば、同じ環境に置かれても「ストレスに押しつぶされて、いつまでも立ち直れない人」がいる一方で、「落ち込むものの、すぐにストレスを乗り越え前向きに生きていける人」が存在します。

この違いこそ、レジリエンスによるものです。

レジリエンスはもともと物質や物体が受けた力に反発する弾性力や、元に戻ろうとする復元力を意味する工学・物理学分野の用語でした。固い棒は強い力を加えるとポキっと折れてしまいますが、柔らかい棒はグニャンと曲がって折れてしまうことはありません。

さらにこの棒に元に戻る力が備わっていれば、何度力を加えても棒が壊れることはありません。

このような考え方を心の動きに当てはめ、「変化に柔軟に対応して立ち直るプロセス」として着目したのが、心理学における「レジリエンス」です。

現在はビジネスや教育分野などに幅広く浸透しており、子どもが強くしなやかに育つために重要なスキルの一つとなっています。

レジリエンスは、気質や心の弱さに左右されるものではないので、「うちの子は気弱だから」と諦める必要はありません。

後天的に身に着けて伸ばせる能力であり、とくに親からの影響が大きい子どもたちは、親の接し方次第で今よりももっと高められることが期待できるのです。

 

2.レジリエンスが高い子どもの特徴

「レジリエンス」が高い子どもに多くみられる4つの特徴をみてみましょう。

①自己肯定感が高い

レジリエンスが高い子どもは、ありのままの自分を大切だと思える感覚「自己肯定感」を持っています。

困難な状況でも「私ならできるはず」「できなくても、私は大丈夫」と捉えることができるので、物事に果敢に挑戦する意欲と、失敗してもへこたれない打たれ強さを備えています。

②思考に柔軟性がある

物事には様々な側面があり、一見ネガティブに思える状況でも、捉え方によってはポジティブな意味を見出すことができます。

レジリエンスが高い子どもは、ポジティブな面に着目する思考の柔軟性を持っているので、困難な状況でも解決に向けて建設的な考え方をもとに行動できるのです。

③感情をコントロールできる

レジリエンスが高い子どもは、辛いことや悲しいことに直面したとき、ネガティブな感情に支配されたり、我慢して押しつぶされたりせず、自分の気持ちを適切に受け止めることができます。

ときにはお母さんやお父さんと共有するなど、他者の力を借りながら自分の感情と向き合い、前向きに対処していくことができます。

④助けを求められる

困難な状況に直面したとき、一人で背負い込んで立ち往生してしまうのではなく、適切に他者に助けを求められることも、レジリエンスが高い子の特徴です。

助けを求めることは決して弱いことではありません。必要なときにヘルプを出せることは、物事を解決に導こうとする気持ちがあるからこその行動なのです。

 

以上のことは、子どものうちに伸ばしてあげたい力と共通する部分が多いですよね。
これらにレジリエンスの視点を取り入れることで、よりしなやかに、強く生きていくベースが育まれていくことでしょう。

 

3. 逆境を跳ね返す力!レジリエンスには個性がある

困難から回復する力、乗り越える力である「レジリエンス」ですが、ここで確認しておきたいことがあります。

レジリエンスが高い子は、親が望むようなどんなときも前向きに頑張るいい子ではないということです。

ときには逃げたり、嘘をついたり、ずるいことをして乗り切ることもあるでしょう。

このように、一般的には好ましくないとされる行動であっても、自分の心を守るためにレジリエンスを発揮することもあります。

困難に直面したとき、常に正しい方法で対処できることばかりではないので、まずは子どもが辛い状況におかれていること、そして乗り越えようと努力した事実に「つらかったね、頑張ったね」と寄り添いましょう。

そのあとに、それ以外のもっと良い方法がないか、子どもと一緒に考える時間を作るのがベストです。

 

4.レジリエンスを高めるための子育て術

ここからは、子どもの「レジリエンス」を高めるために、親ができる関わり方のコツをご紹介します。

どれも特別な技術は必要ありませんので、今日から取り入れてみましょう!

 

4-1.気持ちに寄り添う

子どもは自分の身に起きた辛いことや悲しいこと、怒りがこみ上げてくる出来事を自分で処理する力が未熟です。

感情の扱い方がわからず子どもが落ち込んでいるときは、丁寧に子どもの気持ちに寄り添いましょう。

例えば、友だちとのトラブルで子どもが落ち込んでいるとき、「そんなことないと思うよ。気のせいじゃない?」「考えすぎよ」と慰めていませんか?

親からすると、辛い出来事は「なかったこと」にしてあげたいものですが、子どもが「辛い・悲しい」と感じたことは事実です。

レジリエンスを高めるためには子どもの感情を否定せず、「それは悲しいね」「つらかったでしょう」と気持ちに寄り添う言葉がけを取り入れましょう。

信頼できる親御さんに自分の気持ちをわかってもらえることで、子どもはネガティブな感情と向き合うことができ、前向きに対処していく一歩を踏み出せるのです。

 

4-2.気持ちの切り替え方を提案する

レジリエンスを高めるためには、ネガティブな感情を引きずらずに次に進む思考のクセと、切り替え方法を身につけることが大切です。

子どもはネガティブな感情で頭の中がいっぱいになってしまうと、動けなくなったり、本来出せるはずの力を出し切れずに負のスパイラルに陥ったりすることがあります。

そのようなときは、「早く気づいてよかったね」「次はどうすればいいだろう?」と声を掛け、ネガティブな感情をこれ以上広げない・長引かせない思考のコツを示しましょう。

一方で、自分ではどうすることもできないことに対しては「仕方ない」と割り切ることも重要です。

「そんなこともあるよ」と声を掛け、他のことに気持ちをシフトするよう提案しましょう。

運動や読書、絵を描くなど、日頃から子どもが熱中できることを一緒に探し、ストレス発散の手段として伝えるのもオススメです。

 

4-3.先回りせず、失敗から立ち直る姿を見守る

今しかできない失敗をさせることは重要、と思っても、やはり親としては、子どもが辛い思いをしないように障害を取り除いてあげたくなりますよね。

しかし、レジリエンスは失敗から立ち直るプロセスを繰り返すことで、より強化されていきます。

「もっとこうしたらいいのに」「それは違うよ」と口を出したくなっても、グッと我慢。

先回りせず、子どものトライ&エラーを見守りましょう。

子どもも、親御さんが見守ってくれることを感じられれば、思いっきりチャレンジすることができます。

 

4-4.安心してヘルプを出せる環境をつくる

困ったときに周囲に助けを求められる力も、レジリエンスの1つです。

自分の状況を伝えて上手にヘルプを出せるよう、親御さんは「いつでも頼っていいんだよ」という雰囲気をつくりましょう。

子どもは困難な状況に置かれたとき、自分の状況を把握できずにパニックになったり、言い出せなかったりすることがあります。

大人にとっては大したことないようなことでも、子どもは大きなダメージを受けている場合もあるので、必要に応じて「困ったら何でも言ってね」と声を掛けましょう。

いつでも助けを求められる環境がある、とわかっているだけでも、子どものレジリエンスは高まります。

 

5.レジリエンスを育む│年齢別の4段階ステップ

ここからは、子どもの「レジリエンス」を伸ばすポイントを年齢別にご紹介します。

それぞれの年齢は目安ですので、ステップアップしていくように進めてみましょう。

 

5-1.【0−1歳】子どもの要求に都度応え、安心感を与えましょう

まだまだ言葉でのコミュニケーションが未熟なこの時期の子どもは、泣いたり、声を出したりすることで親とのコミュニケーションを図ろうとします。

このような仕草が見られたときは、なるべく子どもの要求に応えましょう。

「いつでも近くで見守っていてくれる」「困ったときにすぐに来てくれる」という安心感や信頼感は、以降のレジリエンスの土台になります。

 

5-2.【2−3歳】出来たことを一緒に喜び、出来ないときは気持ちに共感しましょう

自分でやりたい気持ちと、出来なくて悔しい気持ちが混在するこの時期は、「レジリエンス」を伸ばすチャンスです。

出来たときは一緒に喜んで自己肯定感を育て、出来なかったときはその気持ちを代弁して、ネガティブな気持ちを乗り越えるサポートをしましょう。

親子の二人三脚がより信頼関係を強くします。

 

5-3.【4−5歳】甘えたい気持ちを受け止め、ありのままの姿が素晴らしいことを伝えましょう

自分以外の人や環境に目が向くこの時期の子どもは、自分の気持ちを我慢したり、相手を尊重したりしながら外の世界で頑張っています。

大人から見ても、だいぶお兄さん・お姉さんになってきたように感じるのではないでしょうか。

しかし、子どもの心はまだまだ甘えたい気持ちでいっぱい。
抱きしめたり、「大好きだよ」「よく頑張ってるね」とわかりやすい形で子どもに伝えましょう。

「お母さん・お父さんに褒められた」という気持ちは自己肯定感を育み、レジリエンスにつながります。

 

5-4.【6−8歳】チャレンジしたことを認め、他人と比べない価値観を教えましょう

小学校生活のスタートとともに、友だち同士の関わりはより密になります。

友だちの存在がレジリエンスにつながることも多いのですが、その反対に、自分との違いに気づいて自信を失い、ネガティブな感情が芽生えやすくなる時期でもあります。

子どもが自分の長所に気づいて「他人と比べなくても良いんだ」という価値観を持てたら、レジリエンスはどんどん強くなっていきます。

また、望んだ結果が出なくても切り替えて前を向けるよう、結果ではなく、チャレンジした気持ちや頑張ったプロセスにフォーカスすることも重要です。

この時期の子どもは、外の世界との繋がりが増えても、まだまだ親離れの途中。親御さんの上手な声掛けで、子どもの気持ちを前向きに導きましょう。

 

6.子育てのために親のレジリエンスを高める大切さ

実は、子どもの「レジリエンス」を育む上で最も効果的なのは、親御さんの高いレジリエンスを見せることなのです。

子どもは、お父さん・お母さんの困難に動じない姿やストレスに支配されない姿を見て、困りごとの乗り越え方やストレスとの付き合い方を学んでいきます。

とくに、子育て中の親御さんは育児に家事に仕事に、日々たくさんのタスクに囲まれています。そんな中でこそ、レジリエンスの高さが生きやすさに直結するのです。

大人がレジリエンスを鍛えるためには、思考のクセを見直しましょう。

● できていないことに目を向けず、頑張っている自分を褒める
● 何事にも完璧を求めず、白でも黒でもないグレー部分を見つける
● 起きてもいないことに不安にならない
● 味方がいることを忘れない
● 怒りのコントロール「アンガーマネジメント」の手法を身につける

レジリエンスが高い状態は、物事を柔軟に捉えて適応するスキルが身についているということです。

ストレスによって致命傷を負わないよう、「〇〇しなければならない」「〜じゃないといけない」から離れ、自分の心の「心地よさ」を優先しましょう。

 

7.親子で実践!レジリエンスを鍛える具体的なトレーニング方法

最後に、「レジリエンス」をより高めるためのワークをご紹介します。

紙とペンを用意すれば簡単にできるので、親子でチャレンジしてみてください。

【方法】紙に、以下の3つを書き出しましょう。各項目ごと、いくつあっても構いません。

①「自分を肯定する言葉」

自分にプラスになるポジティブなラベリングをしましょう。

例:私は努力家だ。

私はどんなときも前向きな人だ。

②「自分が持っている能力」

自分にできることや得意なことを確認しましょう。

例:私は大好きなピアノが弾ける。

私は絵を描くのが得意だ。

③「自分の周りにあるポジティブな資源」

自分の周りにいる大切な人や物を書き出しましょう。

例:私には守ってくれるお父さん・お母さんがいる。

私には大事なぬいぐるみの〇〇がある。

 

以上の3つを書き出すことは、自分の「強み」を言葉にする作業です。

普段意識しづらい「強み」に気づくことは、社会福祉の視点でいうところの「エンパワメント」に当たります。

エンパワメントとは、本来持っている力を知り、最大限に活かして自らをコントロールしていくプロセスのことで、レジリエンスを高めるベースとして、大いに役立ちます。

まずは、このワークによって自分の「強み」を再確認し、レジリエンスの基本となる「自己肯定感」を高めましょう。

 

8.将来活躍するスキル!レジリエンス(折れない心)を高めよう

変化の大きい今の時代、社会でも身の回りでも、予想もしないことが起きています。

そんなときも柔軟に対応できるレジリエンスを持っていることは、生涯を通しての生きやすさにつながります。

むしろ困難を乗り越えることで大きく成長することもあるでしょう。

子どもには、多少のことがあっても難なく乗り越えられる、そんな心の強さを身につけてほしいですよね。

子どもがレジリエンスを発揮してストレスを上手にかわせるよう、日々の生活の中でさりげなくサポートしていけたらいいですね。

そして、親御さんも心を楽に過ごせるよう、親子で「レジリエンス」を高める思考のクセを身につけていきましょう。

 

主な参考文献
書籍:足立 啓美(著), 鈴木 水季(著), 久世 浩司(著), イローナ・ボニウェル(監修),子どもの「逆境に負けない心」を育てる本 楽しいワークで身につく「レジリエンス」, 法研,2014

 

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