【2~6歳】上手な叱り方とは?年齢別のポイントやNGな叱り方
この記事を書いた人
多村美穂
- 保育士
元保育士のWEBライターです。
保育園勤務時は、主に0~2歳児を担当していました。
現在は、大きくなってきた子どもを見守りながら、育児・教育を中心に様々なジャンルの記事を執筆しています。
保育園にて勤務した経験や、自らの子育てを通して得た知識を、分かりやすくお伝えしていきたいです!
お友だちを叩いてしまったり、突然道路に飛び出そうとしたり…子育てをしていると子どもを叱ることは避けて通れません。
しかし、子どもを叱っていると「この叱り方は正しいのかな」「子どもを叱りすぎていないかな?」と不安になってしまう人もいるでしょう。
子どもを適切に叱り、親の意思をしっかり伝えることは、科学的に子どもの成長にもプラスになると考えられています。
この記事では正しい叱り方やNGな叱り方、年齢に合わせた叱り方のコツを紹介します。
この記事を読むことで、どの年齢でも変わらない基本の叱り方と、成長に合わせた応用の叱り方のポイントを押さえることができ、子どもを叱る際に迷わなくなりますよ。
目次
1.子どもを叱る目的と叱る場面
子どもを正しく叱るために、まず叱る目的と叱る場面を把握しておきましょう。
1-1.子どもを叱る目的
「叱る」とは間違いを正したり、ルールや規則を伝えたりすることを指します。
子どもは叱られるべきタイミングに適切に叱られることで、トラブルを回避する方法や社会のルールを学んでいくのです。
なお、「叱る」と似た言葉の「怒る」とは、自分のために、感情を発散させる行為です。
子どもを怒っても、叱られた原因が分からないため、また同じ失敗を繰り返してしまう可能性が高いとされています。
例えば、子どもを叱る際に感情的に怒鳴り散らすことは、「叱る」ではなく「怒る」にあたります。
大切なことは「なぜダメなのか」「何が正しいのか」を伝えること。「怒られるからやめる」のではなく、自分で良い・悪いを考えながら行動できるようになります。
1-2.子どもを叱るべき場面
子どもを叱るべき状況は、主に以下の3つの場合です。叱るべき状況を押さえておくことで、叱る場面をぐっと減らせますよ。
①身の危険があるとき
身の危険があるときは、迷わずはっきりと叱る必要があります。
幼いうちは経験が乏しく、どのようなことが危険か分かりません。
また、幼児期の子どもは好奇心が旺盛で、目の前のことに夢中になるあまり危険な行動をしてしまう場合もあります。
「道路に飛び出したら車にひかれちゃうよ」 「お料理してるお鍋に触ったらやけどしちゃうんだよ」 など、身に危険が迫っているときは何が危険なのかを示しながら、子どもの安全と命を守ってあげましょう。
②人を傷つける恐れがあるとき
人を傷つける恐れがあるときも同様に叱る必要があります。
「人を傷つける」とは、噛む・叩くなど肉体的に傷つける場合はもちろん、心ない暴言や無視など精神的に傷つける場合も含むことに注意が必要です。
また、人を噛んだり叩いたりと肉体的に攻撃する場合は、「おもちゃを取られて悔しかった」「無視されて悲しかった」などのメッセージが隠されていることもあります。
「悔しかったんだね」「悲しいから叩いちゃったんだね」など、まずは子どもの気持ちに寄り添った後に叱ると伝わりやすいでしょう。
加えて、精神的に傷つける場合は、どのような言葉や態度が人を傷つけるのかが分かっていない場合もあります。
その際は「ばかって言われると悲しい気持ちになるよね。○○君も同じだよ」など、人を傷つける行為であることを教えてあげてください。
③家や社会のルールに反するとき
「ご飯を食べるときはいただきますと言う」「病院では騒がない」などの家や社会のルールに反するときも、場合によって子どもを叱る必要があります。
子どもは、日頃の生活の中で家や社会の決まりを1つずつ学び、理解することでルールを守れるようになっていきます。
ルールに反した場合は「どうするべきだったか」「なぜ人に迷惑をかけてはいけないか」など、しっかりと教えてあげましょう。
「小さいから仕方ない」と目をつぶり続けているとルールを知ることなく大人になり、結局は本人が困ってしまいます。
場所や状況に合わせた行動ができる人になるためにも、場合によってしっかりと叱ってあげることも必要です。
2.子どもに伝わりやすい効果的な叱り方
ここからは、子どもに伝わりやすい叱り方のポイントを紹介していきます。
2-1.叱る前に冷静になる
子どもを叱る際は、自分が冷静な状態でいることが大切です。 子どもを叱るような場面では親もカッとなってしまい、頭ごなしに叱ってしまうことがあるでしょう。
しかし、怒鳴ったり追い詰めたりするような態度で接すると、子どもは攻撃的になったり自分の殻に閉じこもったりしてしまう恐れがあります。
叱る前に一拍置き、感情を抑えましょう。冷静な状態で話しあうことで、子どもにとっても安心感が生まれます。
2-2.子どもの気持ちを否定しない
子どもを叱ることがあっても、子どもの気持ちを否定しないように注意しましょう。
「お友だちを叩いたのは、一緒に遊んでほしかったから」「ガラスの破片を触ろうとしたのは、キラキラしていて綺麗だったから」など、子どもの行動にも理由があるものです。
叱る前に「一緒に遊びたかったんだね」「綺麗だったから触りたかったんだね」と、まずは子どもの気持ちを肯定してあげましょう。
その後で「叩くとお友だちがケガしちゃうよ」「ガラスの破片は手を切るから危ないんだよ」などと伝えてあげてください。
先に気持ちを肯定しているため、子どもに伝わりやすくなりますよ。
2-3.子どもと「気持ち」も「体」も向きあう
子どもを叱る際は、「気持ち」も「体」も子どもに向けてください。
「叱る」とは「伝える」ことです。親の「気持ち」と「体」が両方子どもに向かっていなければ、子どもにはうまく伝わりません。
具体的には、以下のポイントを意識するといいでしょう。
- 目線を合わせ、子どもの目を見る
- 携帯を見ながら、お出かけの準備をしながら、などのような「ながら叱り」をしない
「気持ち」と「体」を子どもに向けることで、言葉だけでなく表情や態度からも真剣に叱っていることを伝えられます。」
2-4.叱る理由は1つだけにする
子どもを叱る際は話を広げず、叱る理由を1つに限定しましょう。
子どもを叱っていると、子どもの過去の失敗を思い出して、あれもこれもと言いたくなってしまうこともあるでしょう。
しかし、叱る理由が多すぎると子どもが混乱してしまい、叱られている原因が分からなくなってしまう可能性があります。
【具体例】昨日も今日も、手を洗わない状態でリビングに行ってしまったとき
×「手を洗いなさい!昨日も言ったでしょう!」と昨日のことを含めて叱る
〇「帰ってきたら手を洗おうね」と今のことだけを叱る
2-5.「叱る」と「褒める」を組み合わせる
子どもを叱った後、子どもが改善できた場合は必ず褒めてあげましょう。
改善できたことをしっかり褒めることによって、子どもは自信をつけ、「次もやろう」という意欲をもつことができます。
反対に、子どもを叱ってばかりいると自己肯定感が下がり、自信や挑戦する意欲を失ってしまいます。
また、結果としてうまくいかなかった場合も、挑戦したことを褒めてあげてください。
【具体例】以前は靴を揃えないで家に上がっていたが、今日は揃えようとしていた
靴がきちんと揃っていなくても「今日はお靴のことちゃんと気にしてあげてたね」と伝えてあげる
「叱る」は「褒める」と組み合わせることで、さらなる効果を発揮するのです。
2-6.叱った後はフォローする
子どもを叱ったら、アフターフォローをしっかりしましょう。
親に叱られると、多かれ少なかれ子どもは傷ついているものです。
- 抱っこをしてスキンシップをとる
- 「大好きだよ」と伝える
- 叱りすぎてしまったら「怒っちゃってごめんね」と謝る
などのやり取りを通して、上手にフォローしてあげましょう。
アフターフォローをすることで、「子ども自身のことを嫌いになって叱ったのではなく、悪いことをしたから叱られたんだ」と伝えられますよ。
3.避けるべきNGな叱り方
叱ることは子どもにとってメリットがある一方、叱り方によっては将来に渡って悪影響を及ぼす恐れもあります。
ここでは、親がやってはいけない叱り方を5つ紹介します。悪い見本のチェックリストとして参考にしてください。
3-1.暴力を用いる
叱る際に暴力を使うのは許されることではありません。
体罰がしつけに必要だとの意見もありますが、そもそも暴力は犯罪です。
また、幼児期に体罰を受けた子どもは鬱や多動などの精神的な問題を持ったり、攻撃性が高くなったりするリスクがあると指摘されています。
(出典:>厚生労働省「愛の鞭ゼロ作戦」)
このように暴力を使って叱ることは、デメリットしかないのです。
もちろん、日々の生活の中でついカッとなってしまうこともあるでしょう。
その際に暴力をふるってしまわないように、「深呼吸などをして気持ちを落ち着かせてから対応する」など、あらかじめ対策を考えておくことをおすすめします。
3-2.無視する
子どもが失敗をした際に無視する方法にも問題があります。
親に無視された子どもは、自分自身も親や友だちを無視したり、他人の顔色をうかがったりするようになる可能性があるからです。
ただし、自分がイライラして子どもに怒りをぶつけてしまいそうな場合など、お互いに心を落ち着かせるため一時的に距離を取るのは有効な方法です。
その際は、子どもの安全をしっかりと確保した上で、「戻ってくるからちょっと待っててね」と伝えた後に離れるようにしましょう。
3-3.怒鳴る
感情的になって怒鳴るのは、そもそも「叱る」行為ではありません。
「叱る」目的は、子どもにするべきこと・してはいけないことを伝えることです。一方、怒鳴る目的は恐怖で子どもを従わせることであり、「叱る」とは全く異なります。
そして、怒鳴られた子どもは「怖いから」という理由で指示に従うようになるため、なぜ叱られているのか分からないままやり過ごすようになってしまいます。
また、子どもが「言うことを聞かせるためには怒鳴れば良い」と誤った認識をもってしまう恐れもあります。
叱る際は怒鳴らず、冷静に伝えることを心がけましょう。
3-4.人格を否定する
人格を否定する叱り方とは、「あなたはいつも失敗するわね」「ばかじゃないの」など、子ども自身の人間性を否定する叱り方のことです。
このような叱り方は子どもの自己肯定感を下げる原因となり、自信ややる気を奪う原因となってしまいます。
叱る対象は子どもの行動に限定し、子ども自身を叱らないようにしましょう。
3-5.脅す
「いい子にしてないとおやつあげないよ」と言ったり、鬼や怖い人から電話がかかってくるアプリを利用したりするなど、脅して子どもを従わせる叱り方もおすすめできません。
怒鳴る方法と同じく「怖いから」という理由で指示に従ってやり過ごしているだけで、叱られている理由は分からないままになってしまいます。
また恐怖心で押さえつけることで、子どもは「自分自身を受け入れてもらう」という経験が乏しくなり、子どもの健全な成長や自立の機会を奪うことにもつながります。
叱る際は脅すのではなく、叱っている理由を伝えてあげましょう。
4.【年齢別】子どもの叱り方のポイント
ここからは、年齢に合わせた叱り方のポイントを紹介していきます。
4-1.2歳の子どもの叱り方
2歳前後になると、いわゆる「イヤイヤ期」と呼ばれる自己主張が激しくなる時期を迎えます。
イヤイヤ期の原因は、自我の芽生えと自主性の表れであると考えられています。
そのため、イヤイヤ期の子どもを叱る際は、感情を受け止めてあげることが重要です。
「自分でお靴が履きたかったんだよね」「自分で食べたかったんだね。うまくできなくて悔しいね」と、子どもの感情を受け止め、自主性を尊重してあげましょう。
感情を受け止めてもらうことでイヤイヤが落ち着き、親の言うことを聞き入れる態勢が整います。
また、この時期の子どもの言葉の力はまだまだ発展途上のため、叱っている意味が伝わりやすいよう短い言葉で叱るのも大切です。
具体的には、 「イタイイタイだから、返してね」 「飛び出すと危ないよ」 など、2~3語で伝えてあげてください。
4-2.3歳の子どもの叱り方
3歳からは、叱る際にしっかり理由を伝えるようにしましょう。
3歳を過ぎた頃から、言葉の説明で物事がイメージできるようになってきます。
そのため、叱る理由を伝えることで、危険なことやしてはいけないことが分かってくるからです。
理由を説明する際には、 「人の多い所で走ると、ママが見えなくなって迷子になるよ」 「人のいる方に物を投げると、ぶつかってケガさせちゃうよ」 など、子どもが理解できるように具体的に伝えましょう。
叱られた理由が理解できるということは、叱る基準に一貫性が必要になるということでもあります。
「前は怒られなかったのに、今日は怒られた」と子どもが混乱してしまわないよう、自分の中で叱るルールを決めておきましょう。
4-3.4歳の子どもの叱り方
4歳頃からは、叱る際に人の気持ちも伝えるようにしましょう。
子どもは4歳頃になると、「自分と同じように、他の人にも心や気持ちがある」と気が付き始めます。
「ばかって言われたら嫌だよね。○○君も同じなんだよ」 「○○ちゃんが危ないことをしたら、ママは悲しいな」 と人の気持ちを伝えることで、人の気持ちを思いやる力を育むことができますよ。
4-4.5歳以降の子どもの叱り方
5歳を過ぎる頃になると、善悪の区別や因果関係が分かってきます。
そのため、叱る際には叱る理由を説明するとともに、「どうすれば良かったのかな」と解決策を考えさせるのも効果的です。
その際に大切なのは、人前で叱らず、子どもと1対1で叱ること。
5歳頃は社会性が育ち始め、周囲との人間関係を築きつつある時期です。
人前で叱ると「恥ずかしい」「お友だちの前で叱るなんてひどい」というマイナスの気持ちが強く残ってしまい、肝心の叱る理由が伝わらない可能性があります。
「人前」というのは友だちはもちろん、兄弟も含まれます。 子どもの自尊心を傷つけないためにも、人前で叱るのは避けましょう。
5.「叱っても聞かない…」子どもの叱り方に関するQ&A
ここでは子どもの叱り方に関して、悩みがちな内容をまとめて紹介します。
5-1.叱っても子どもが笑っていたら?
叱っている時に子どもが笑う理由として、主に以下のことが考えられます。
・叱られたショックを緩和している
・ごまかそうとしている
・叱られたことに反抗している
・叱っている人の反応を楽しんでいる
どの理由で笑っていたとしても、子どもは「叱られている」と分かっているので、さらに厳しく叱る必要はありません。
また、「叱っても意味がない」とは思わず、𠮟るべき場合には注意したいことをしっかり教えてあげましょう。
5-2.叱っても聞かないときはもっと叱るべき?
子どもを叱ったとしても、一度で聞いてくれることはほとんどありません。
「叱っても聞かないもの」といい意味で諦めて、何度でもするべきこと・してはいけないことを伝えてあげてください。
5-3.叱っているときに子どもが泣いてしまったら?
叱っているときに子どもが泣いてしまったら、なだめてあげても構いません。
その上で「これで遊びたかったんだよね。でも危ないからやめようね」と優しく注意してあげましょう。
反対に、「泣かないの!」「泣けば許されると思ってるの?」と泣くことを否定したり、追い詰めたりすると、感情表現が苦手になってしまう恐れがあります。
5-4.子どもが癇癪を起したときに叱っても大丈夫?
幼い時期は「お腹が空いた」「疲れた」「構ってほしい」など、何かを訴えたくて癇癪を起すことが多い傾向にあります。
上手に言葉で伝えたり、感情をコントロールしたりすることが難しいため、癇癪を起すことで気持ちを伝えようとしているのです。
そのため癇癪を起しているときに子どもを叱ってしまうと、子どもは「分かってもらえない」と感じ、ますます感情を爆発させてしまうこともあるでしょう。
子どもが癇癪を起しているときは、叱るのではなく、子どもの気持ちを受け止めて落ち着かせてあげてください。
「癇癪の対応法」に関してはこちらの記事でさらに詳しく解説しています!気になる方はぜひご覧ください。
イヤイヤ期の癇癪はどう対応する?児童福祉職を経験したママが「タイムアウト」の方法と効果を紹介!
5-5.叱られ慣れないと打たれ弱くなる?
「叱られ慣れない子どもは打たれ弱くなる」と指摘する人もいるでしょう。
しかし、叱られ慣れてしまった子どもは、自己肯定感が低くなったり、親に対して不信感を抱いたりする恐れがあります。
反対に、適切に叱られつつたくさん褒めてもらいながら育った子どもは、自己肯定感や他者への信頼感を培うことができ、打たれ強くなる傾向があります。
つまり、「打たれ強くするために厳しく叱る」という方法は、逆効果になる可能性があると言えるでしょう。
6.上手な叱り方を身に付け、子どもを伸ばしていこう
子育てをしているとどうしても叱ることが多く、叱ることにウンザリしてしまうこともあるでしょう。
しかし、子どもは失敗をした際に適切に叱られることで、社会のルールや危険を回避する方法を学んでいくのです。
また、親が叱るべき場面や伝わりやすい叱り方を理解しておくことで、叱るストレスも減らしていけるでしょう。
上手な叱り方を身に付け、子どもの失敗を成長につなげてあげてくださいね。
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