環境の変化が子どもに及ぼす影響とは?子どもが不安定なときの関わり方
この記事を書いた人
アリサ
- 幼稚園教諭
- 保育士
保育現場で約10年間働いていました。
1歳児~5歳児のクラス担任、障がい児加配の経験があります。
現在は、2歳と5歳のパワフルな息子たちの子育てに奮闘するかたわら、WEBライターとして活動中です。
一筋縄にはいかない子育ての中で、保護者の皆様の心が少しでも軽くなる情報を発信していきたいと考えています。
好きなものは絵本、読書、お花、柴犬です!
子どもたちは大人が思っている以上に、周囲の環境に影響を受けやすく、それが心や体の状態に表れやすいものです。
「子どもはどんなときに不安定になるの?」「子どもが不安定になったとき、どんな風に関わればいいか知りたい」と考える保護者の方もいるのではないでしょうか。
そんなお悩みをお持ちの方へ、子どもがどのようなタイミングでストレスを感じるのか、不安定になっているサインにはどのようなものがあるのかを紹介します。
子どもに不安定になっているサインが見られたとき、どのように関わればいいのかも解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.子どもにとっての「環境の変化」とは?タイミング別に解説
子どもたちは、環境の変化にとても敏感です。環境の変化というと、入園や転園、進級など春の季節を想像する方が多いかもしれません。
しかし、連休明けや園の行事前、家庭環境の些細な変化も子どもたちの心と身体にとっては「環境の変化」として影響が出ることもあります。
ここでは、それぞれの場面で、どのような部分が子どもにとってストレスとなるのかタイミング別に解説します。
1-1.入園、転園、進級時
入園や転園、進級などは、子どもたちにとって大きな環境の変化です。
進級により、教室や友だち、先生が変わると子どもは大きく戸惑います。入園、転園となると戸惑いはさらに大きくなります。見慣れない園舎で過ごすことや毎日一緒にいた保護者と離れて過ごすことは、子どもにとって不安が大きいものです。
4月の新学期の時期は、今までとは環境や生活の流れが変わり、ストレスを感じやすくなるタイミングだと言えるでしょう。
1-2.連休明け
夏休みやゴールデンウィーク、年末年始の大型連休はもちろん、土日などの2連休であっても、連休明けは一つの環境の変化となります。また、病気などでしばらく休んだあと、登園するときも同様です。
子どもにとって安心できる家族と、安心できる場所で過ごした日々から集団生活に戻るタイミングは、行き渋りなどが起こりやすくなります。
筆者が保育士として働いていたときも、週明けや病み上がりのタイミングは子どもたちも「行きたくない」「ママと一緒がよかった」と泣いたり、泣きはしないものの落ち着かない様子が見られました。月曜日が少し憂鬱な気持ちになるのは、大人も子どもも一緒かもしれません。
1-3.運動会、発表会などの行事前
園では、一年を通してさまざまな行事があります。例えば、運動会や発表会のほか、「何らかの準備が必要な行事」は子どもにとって環境の変化となります。
「どうして行事前が子どもにとって環境の変化になるの?」と疑問に思われる方もいるかもしれません。
園にもよるため一概には言えませんが、何らかの準備が必要な行事の前は園生活の流れに変化があることも少なくありません。
もちろん、園側も子どもたちにとって大きな負担にならないよう、あくまで毎日の園生活の延長線上にその行事があるように保育を行っています。
しかし、行事に向けての活動が増えたり、リハーサルなどいつもとは違う状況で過ごしたりすることがあります。子どもたちは「楽しみだな」「頑張ろう!」と思う気持ちがある反面、緊張したり張り切ったりすることで、知らず知らずのうちにストレスとなっている場合もあるでしょう。
1-4.家庭環境
家庭での些細な変化も子どもたちは感じ取りやすく、環境の変化となります。例えば、以下のような状況が挙げられます。
- 弟や妹が産まれた
- 家族が病気になった
- 新しい習い事を始めたり、習い事で何か変化があったりした
- 園は変わっていないものの、引っ越しをした
- 保護者の仕事で変化があり、帰宅後の流れや降園時間が変わった
- 両親が不仲で、喧嘩する様子を見た
- 園以外で、何か行事がある
子どもたちは、大人が思っている以上に繊細です。大人からすれば「そんなことで?」と思うようなことでも、子どもにとっては大きな出来事の可能性があります。
2.子どもが不安定になっているサインは?
子どもは些細な環境の変化も敏感に感じ取ります。そのようなときに感じる複雑な感情を言葉にするのは大人でも難しいものですよね。子どもであれば尚更です。
しかし、そのようなとき、子どもはさまざまな形で不安になっているサインを出します。言葉でうまく表現できない場合には、体調面や行動面に現れることもあるでしょう。
ここでは、子どもが不安定になっているサインを体調面、精神面、行動面の3つに分けて紹介します。
2-1.体調面
- 食欲がなくなる、または過食になる
- 体の痛みを訴える(頭やお腹など)
- 便秘や下痢を繰り返す
- 眠れなくなる、または寝すぎる
- 体重が減る、または急激に増える
- 吐き気がする
- おねしょをする
- トイレが近くなる
- 疲れている
- 元気がない
- 顔色が悪い
一見「風邪をひいたかな?」「疲れているのかな」と思うような症状も、子どもが不安定になっているサインの場合があります。
2-2.精神面
- イライラしやすい
- 落ち着きがない
- 些細なことで泣く
- ぼんやりしている
- 感情の起伏が激しい、もしくは無表情になる
- チックが出る
『チックは、思わず起こってしまう素早い身体の動きや発声です。まばたきや咳払いなどの運動チックや咳払いや鼻すすりなどの音声チックが一時的に現れることは多くの子どもにあることです。(引用:国立精神・神経医療研究センター「チック症・トゥレット症」)』
怒る・泣くなどの感情を表に出すタイプの不安定さの表れは、周囲が気付きやすいものです。
一方、ぼんやりとしている・無表情といった不安定さの表れはしっかりと子どもの表情や行動を観察することが早めに気付くきっかけになるでしょう。
2-3.行動面
- 気持ちが抑えられず物に当たったり、手が出たりする
- 園に行きたくないと言う
- 園のことを話したがらない
- 会話が支離滅裂になる
- 反抗的になる
- 好きなことでもやりたがらない
- 物音に敏感になる
- 親のそばから離れなかったり、いつも以上に甘えたりする
- できていたことができなくなったり、「やって」と言ったりする
- 一人になるのを嫌がる
行動面での不安定さの表れは周囲にとって気付きやすいものが多いのが特徴です。これらの行動は、親の困り感につながりやすいものです。
「今までできていたのにどうして?」「急にどうしたんだろう?」と思うような行動があれば、それは子どもからの「不安だよ」というサインかもしれません。
3.子どもが不安定なときはどうする?親子の関わり方
先ほど挙げたような子どもが不安定になっているサインが見られたら「どうしよう」「何をしてあげればいいの?」と、親も不安になりますよね。
ここでは、子どもが不安定になっているのが分かったとき、家庭でできる関わり方を紹介します。
3-1.子どもの話を聞いたり、スキンシップをとったりする
子どもが自分の思いを言葉にできる場合は、じっくりと子どもの話を聞きましょう。このとき、言葉に詰まったりうまく説明できなかったりすることもあるかもしれません。しかし、急かしたり、無理に聞き出そうとしたりするのはやめましょう。
子どもが思いを話してくれたときには「話してくれてありがとう」「そうだったんだね」と、子どもの思いに寄り添い、共感するのを意識といいでしょう。「自分の思いを聞いてもらえた、分かってもらえた」という経験は心の安心に繋がります。
一方で、思いをうまく言葉にできないお子さんもいるでしょう。そのようなときには、次のようなスキンシップをとりましょう。
- 抱っこやおんぶをする
- 抱きしめる
- 手を繋ぐ
- 優しく体に触れる
- 膝に座らせる
上記のようにスキンシップの方法はたくさんあります。
スキンシップをとると脳内で「オキシトシン」というホルモン物質が分泌されます。「オキシトシン」は愛情ホルモンとも言われており、心が安らいだり、幸福感が高まるのです。ストレス耐性を高めるとも言われています。
大好きなパパとママに抱っこしてもらったり、頭をなでてもらったりすると、子どもの心はほっと安らぐでしょう。
3-2.子どもの好きなことをする
子どもが好きなこと、喜ぶことを心ゆくまで楽しめる時間や環境を整えてみましょう。大人でも、疲れたときやストレスを感じたとき、趣味の時間を楽しむとリフレッシュできるという方も多いのではないでしょうか。
戸外で遊ぶのが好きなお子さんもいれば、お家でゆっくりと絵本を読んだりお絵描きをしたりするのが好きなお子さんもいますよね。ほかには、工作やゲームが好きなお子さんもいるでしょう。
好きなことをじっくりと楽しむ時間をとったり、好きな場所へ出かけたりするのも気分転換になり、おすすめです。
3-3.不安定になっている原因を解決する
お子さんが不安に感じていることが明確で、その原因が解決できるものであれば、その根本的な部分を取り除いてあげましょう。
たとえば、入園や進級、連休明けといったことであれば、根本的な原因を解決するのは難しいこともあります。しかし、習い事や特定の友だちとのトラブル、その他家庭内での問題などであれば、解決の糸口を見つけられるでしょう。
- 子どもにとって習い事が負担になっているのであれば、一旦休んだり、辞めたりするのを検討する。または、別の教室を考えてみる
- 特定の友だちとトラブルになっているのであれば、園の先生に相談してみる
- 家庭内の問題であれば、その原因から子どもを避けるためにできることはないのか考えてみる
このように保護者が対応できるもの、配慮できることがあるなら、検討してみるとよいでしょう。
4.自分の心と向き合うヒントになる絵本
生きていると、多かれ少なかれ環境の変化は訪れるものです。子どものうちだけでなく、大人になったとしても、環境の変化やそれに伴うストレスとは付き合い続けていくことになるでしょう。
そのようなとき、大切になるのが自分の心と向き合うことです。絵本が大好きな筆者が、心が不安定になってしまっている子どもに寄り添う、これからの力になる絵本を紹介します。
4-1.子どもにとっての「セルフケア」とは?
「セルフケア」とは、自分自身をケアすることです。
自分の心と身体の状態に耳を傾け、自分を大切にしてあげること、自分の気持ちをありのまま受け止めてあげること、ともいえるでしょう。
環境の変化に順応するのが得意な子どももいれば、苦手な子どももいます。親にできることはしてあげたい、気持ちを受け止めてあげたい。
しかし、年齢が大きくなればなるほど、自分自身で不安な気持ちと向き合わなければいけない場面が増えていくのも事実です。
そのようなときに、大切になってくるのが「環境の変化に伴う様々な気持ちと、どのように付き合っていくのか」です。
筆者もどちらかといえば、環境の変化が苦手で、進級や進学、新しいことを始めるタイミングには、わくわくする気持ちよりも不安な気持ちの方が大きかったことを今でも思い出します。
我が子もそのような部分があり、新学期や連休明け、行事前などは気持ちが高ぶりやすかったり、落ち着かない様子が見られたりすることが多いです。
環境の変化に伴って「嫌だな」「不安だな」「怖いな」といった感情が芽生えるのは当然のことです。決して、その気持ち自体が悪いのではありません。
さまざまな気持ちを抱えるありのままの自分を受け止め、自分で自分を大切にする。そんな「セルフケア」の方法を子どもたち自身が身につけていくことは、これから先、何度も訪れるであろう環境の変化を乗り越える手助けとなるでしょう。
「自分で自分を大切にするって、具体的にどうすればいいの?」「どうやって子どもにセルフケアの方法を伝えるの?」と疑問に思う保護者の方へ向けて、次項では「セルフケア」に関する絵本を紹介します。
4-2.子どもにも伝わりやすい!セルフケアの絵本
子どもにセルフケアの方法を伝えるときに、有効な方法のひとつが絵本を用いることです。
筆者が実際に子どもと一緒に読んだり、実践したりしているものを厳選しました。未就学児でも分かりやすい、実践できるものばかりなので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
まず、大切なのが絵本を買って終わりではないということです。大切なのは、子どもと一緒に読んだり、実践してみたりすること。また、いつでも子どもが手に取れるような場所に置いておくと、子どもにとっても「セルフケア」というものが身近になっていくでしょう。
次に、読むタイミングですが、子どもが不安定になっていると感じたときはもちろん、寝る前に読むのもおすすめです。大人も子どももほっとできますよ。
・「子どものためのマインドフルネス」
心と身体をうまくコントロールする方法を、分かりやすいイラストと共に30種類掲載している本です。
雲や木になってみたり、動物になりきって呼吸をしてみたりと、子どももイメージしやすく場所を問わず出来るものばかりで、実践しやすいのが特徴です。
・「きみのこころをつよくするえほん」
ネガティブな感情を自分で認め、そしてそれをどうやって鎮めればいいのか、という解決策までが網羅されています。立ち直る力ややり抜く力とされる「レジリエンス」を育てる絵本です。
5.環境の変化に伴う不安な気持ちとうまく付き合おう
子どもたちは周囲の変化を敏感に感じ取り、その不安な気持ちを身体や心、行動などさまざまな方法で表すことがあります。子どもの姿で「最近、いつもとちょっと違うな」と思うような出来事があったときには、何か環境の変化がなかったかを考えてみるといいでしょう。
子どもが不安定になっているとき、両親はスキンシップをとったり一緒に気分転換をしたりするなど、子どもの気持ちに寄り添うようにしましょう。大好きな両親がそばにいてくれる、自分の思いを丸ごと受け止めてくれるという安心感は、子どもにとって大きな力となります。
環境の変化とは、これから先も付き合い続けていかなくてはいけません。そのようなとき、どうやって自分の心と向き合っていけばいいのか、どうすれば自分の気持ちが落ち着くのか、子どもに合った方法を見つけていくことが大切です。
紹介したように、子どもにとって身近な絵本を用いることで、子どもにも分かりやすく、実践しやすいセルフケアの方法が見つかるかもしれません。
「不安」「怖い」といった気持ちを持つことは決して悪いことではありません。まずは、ありのままの子どもの姿を受け止め、その気持ちとうまく付き合い、乗り越えていける方法を見つけてみてくださいね。
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