【4・5歳】喋りすぎ…?おしゃべりが止まらない子どもの心理と対応
この記事を書いた人
平尾しほ
- 言語聴覚士
言語聴覚士免許を所有、児童発達支援センターでの勤務経験があります。
特に遊びの中でのことばの育ちを意識して個別療育を行っていました。
現在小学校2年生の息子がいます。
個別療育でのたくさんのご家族とのかかわりと子育ての経験を合わせて、皆様に分かりやすくお伝えしていきたいです。
子どもがずっと喋っている。「少し静かにして!」と言っても止まらない…。
4・5歳になると大人の言葉も理解できているはずなのに、なぜおしゃべりが止まらないの?と不思議に思ってしまうことがありますよね。
喋りすぎる子どもに、ついイライラしてしまうこともあるでしょう。
また、就学の時期が近付くと「自分ばかり一方的に話して、お友達に嫌われてしまわないかな」と不安になることもあるかもしれません。
この記事では、4・5歳の子どもが喋りすぎる理由を探り、親にできる対応法をお伝えします。
目次
1.4・5歳の子どもが喋りすぎるわけ
5歳ごろになると、自分の言いたいことを文にして伝えられるようになってきます。
また、周りのお友達を意識するようになり、競ったり協力したりしながら様々な経験をし、喜怒哀楽だけでない複雑な感情を抱くようになってきます。
過去に経験したことやその時の気持ちも、少しずつお話しできるようになってくるのです。
言語での表現のバリエーションが増え、それと同時に、聞いてほしいことの幅も広がる時期ともいえるでしょう。
しかし、子どもがあまりにもたくさんおしゃべりをすると、一生懸命話していて可愛いと思う反面、時にうんざりしてしまうことがあるかもしれません。
まずは、こどもが喋りすぎてしまう理由を考えてみましょう。
1-1.好きなものへの情熱が強い
4・5歳の子どもは、自分が今大好きなもの、興味があることについて話し続けてしまうことがあります。
その楽しさ、素晴らしさをとにかく人に伝えたくて相手や状況にかかわらず喋りすぎてしまうこともあるでしょう。
また、今取り組んでいる活動に興味が持てないとき、おしゃべりすることで自分の大好きなものを思い出し、楽しい気持ちになりたいと考えている可能性も考えられます。
1-2.親や周りの気を引きたい
忙しそうにしている親に「自分に構ってほしい」と感じたり、幼稚園の先生に「他のお友達のところに行かないでほしい」と思ったりする場合があるでしょう。
そのような気持ちが、喋りすぎることにつながることがあります。
子どもは直感的に、自分が話をしている間は大人が自分のそばにいてくれると感じています。
話し続けることで、親や周りの人の注目を自分に引き付けておきたいという気持ちがあるのかもしれません。
1-3.言いたいことがうまく伝えられない
4・5歳の子どもは、まだ自分の伝えたいことを上手く表現できず、結果的に喋りすぎてしまう場合があります。
言いたいことを的確に表現する力が充分に育っていないため、順序よく話したり内容を整理したりするのが上手にできず、話が長くなってしまうのです。
「あのね、それでね、それで、それで…」とたくさんの話をつなげて話し続ける子どもにはこのパターンが多いでしょう。
たくさん話している印象を受けますが、肝心な内容は伴っていないことも多く、とめどなく話すことにつながっていることがあります。
1-4.状況の理解が難しい
4・5歳の子どもが喋りすぎてしまう原因として、「今は自分が話してもよいとき」と「今は話さないほうがよいとき」の区別がつかないということも考えられます。
周囲の状況をみて話すのをやめたり、他の子と話す順番を代わったりするのが難しいこともあるでしょう。
また、会話のキャッチボールが上手くできていない場合もあります。
おしゃべりの中で「話す」と「聞く」の役割交代の練習をしていくと、改善されることがあります。
1-5.発達障がいの可能性も考慮する
衝動的におしゃべりをしてしまうというのは、ADHD(注意欠如・多動症)の症状の一つとして挙げられることがあります。
自分で自分の行動をコントロールするのが難しく、結果的に喋り続けてしまうのです。
また、1-1の『好きなことへの情熱が強い』で述べたように、特定の内容へのこだわりが強く、それ以外の話ができない場合は、ASD(自閉スペクトラム症)の特徴に当てはまるとも考えられます。
いずれも、このような様子が見られる=発達障がいであると断定するものではなく、可能性があるということを表します。
生活全般の様子を踏まえて、気になる・困ることがある場合は、まずは、かかりつけの小児科で相談してみるとよいでしょう。
2.喋りすぎる子どもへの対応 ①喋りすぎを防ぐ
ずっと話し続ける子どもに対して「少し静かにして!」などと思うこともあるでしょう。
子どものおしゃべりが続いているその時に、親はどのような対応をするのがよいか見ていきましょう。
2-1.オウム返しでOK。相槌を忘れない
子どものお喋りをすべてを聞いて反応をしようとすると、大人も疲れてしまいます。
「ちょっと静かにして!」と言っても逆効果…というときもありますよね。
そんなときは「聞いているよ」ということが伝わるよう、「そうなんだ」「へぇ~」と応答するだけで充分です。
「○○なんだね」など、子どもが言った言葉をそのまま返すだけでもOK。
無視されている、聞いていないと子どもが捉えないように「聞いているよ」の合図を送るようにしましょう。
子どもはその合図があることで聞いてもらえていると感じ満足するため、喋りすぎを防ぐことにつながります。
2-2.話を聞く時間を提示する
他のことをしていて手が離せないときでも、子どもは関係なく話しかけてくることがあります。
そのようなときに「ちょっと今はお話やめて」と言っても、またすぐに話し出してしまうことが多いのではないでしょうか。
例えば、「●●分になったらお話をきくね」と具体的に予告しておきます。
そして、その時間になったら、少しの間でもいいので座って話を聞くようにしましょう。
約束の時間にちゃんと話を聞いてもらえたということで、子どもの気持ちは満たされます。
「洗濯物が終わったら」「タイマーが鳴ったら」など、子どもに合った時間の提示方法を考えてみましょう。
2-3.状況を子どもに分かるように伝える
公共の場にいる、他の人と話しているなど「今は話してはいけない」という状況を子どもに分かるように伝えることが効果的な場合があります。
言葉だけでは分かりづらいときは、イラストやアイコンを利用して伝えます。
何度か練習して、「話してはいけない状況」に慣れていくことも必要かもしれません。
その際も「ここを出たら話していいよ」など話をしてもよい目安を同時に示すと、子どもも状況を理解しやすくなるでしょう。
3.喋りすぎる子どもへの対応 ②コミュニケーションを教える
4・5歳の子どもにとって会話の構造の理解が難しくて、おしゃべりを続けてしまうこともあります。
その場合、コミュニケーションの「話す」「聞く」の形を教えることが効果的なことがあります。
また、子どもが内容を整理して話せるようになるためには、大人がどのような質問をするかも大切です。
ここでは、筆者が言語聴覚士として子どもと会話をした経験をもとに、コミュニケーションを教えるための具体的な方法を紹介していきます。
3-1.会話の順番を伝える
人との会話では、一方的に話すのではなく相手の話も聞く、交代で話すということが大切です。
「話す」「聞く」と順番を交代することをターンテイキングと言います。
このターンテイキングを子どもに合った方法で伝えると、喋りすぎることを防ぐ一助になるでしょう。
■タイマーを使って、相手の話も聞く練習を
「タイマーが鳴ったら、お母さんの質問を聞いてね」と言って、まずは数十秒でで区切ります。順番の交代をするということに気付き、意識してもらいます。
■ボールやマイクを交互に持ちながら話す
「これを持っている間はおしゃべりできるよ」と示すことで、役割の交代を視覚的に伝えることができます。
■人形を使って、子どもが自ら交代できるよう促す
お気に入りのお人形などを用いて「僕もおしゃべりしたいよ~」などとセリフを言って、ターンテイキングを促します。子どもの好きなものを介することで、円滑に順番を代わることにつながるかもしれません。
会話には自分と他の人の順番がある、交代して話していくということが分かると、相手の反応を待つなど1人で喋りすぎることが減っていくでしょう。
3-2.円滑に話せるような質問をする
子どもが言いたいことを整理できるような質問を、大人の方からする、ということが有効なこともあります。
■「それって○○のこと?」と質問する
それまでの内容をまとめて、何について話しているのかが本人にも分かるように確認します。
■「はじめは?…」「その次は?…」と次の話を促す
出来事について話すときに、順序だてて話せるようにサポートするのも有効です。
■気持ちを代弁する
「それが嬉しかったんだね?」「楽しかったんだよね?」など、その話をする子どもの気持ちを代弁するような質問をすることで、話して分かってもらえたと感じ、「聞いて聞いて」とおしゃべりを続けることが減るかもしれません。
質問に答えることで、子どもは「次はこれを言えばいいんだ」と気付き、徐々に話したい内容をまとめることができるようになっていきます。
4.おしゃべりはプラスに活かせる
子どもが喋りすぎることに対して、親は「困った」「疲れる」と感じる場面が多いかもしれません。
しかし、言語表現が豊かで、言葉で自分の思いを伝えることが得意であると考えれば、子どもの長所として捉えることもできるでしょう。
4-1.言語性知能が特に優れていることも
アメリカのハワード・ガードナーが提唱した多重知能理論では、人の知能は複数の知能が集まってできていると考えます。
よくおしゃべりする子は、その中でも、自分の思いを言葉で表現するのが好き・得意な言語性知能が高いと考えられます。
その部分を良い方向に活かしていくことで、子どもの個性として伸ばしていくことにつなげられるでしょう。
『多重知能理論』について詳しく知りたい方は、以下の記事をチェック!
・子どもの個性を伸ばす!「8つの知能」で我が子の強みを知ろう
4-2.スピーチや発表で力を発揮できる
喋りすぎる子の中には、言葉で自分の考えを表現することが得意であったり好きであったりする子も少なくありません。
その場合、人前で自分の意見を発表することに抵抗がなかったり、ある程度まとまった内容をスピーチすることが苦痛でなかったりするため、おしゃべりを活かせる場面に将来的に出会うこともあります。
年齢があがるにつれて、言葉で自分の考えを述べたり伝えたりすることが必要な場面は増えます。
学校の授業での発表やグループでのディスカッション、作文などで力を発揮できるかもしれませんね。
5.喋りすぎる子には「聞いているよ」の合図と会話を教える工夫を
喋りすぎる子どもには、聞いているよという姿勢を示すこと、子どもが「今は自分が話してもいいとき」が分かるようにすることが大切です。
また、会話の順番などコミュニケーションを伝えていくことも必要でしょう。
なぜ喋りすぎてしまうのか?子どもが話す様子をよく見て、その子に合った対応を心がけましょう。
また、喋りすぎてしまうことは悪いことでなく、子どもの強みとして生かせる部分でもあるということを心にとめておきましょうね。
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