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小学校が1クラス35人学級へ!子どもへの影響やメリット、課題点は?

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  • 小学校教諭

小学校教諭として5年間勤務、主に低学年と特別支援学級の担任を経験。

身近に発達障がいの家族がおり、特別支援教育について勉強してきました。

現在は、1歳の息子の育児をしながら、教育や家事・育児に関することをブログやSNSで発信しています。

子どもとの時間を最優先にしながら、自分のやりたいことに挑戦していくのが目標です!

小学校の1クラスあたりの上限人数が40人から35人に引き下げられました。

「5人減るだけで、何か変わるの?」「クラスの人数が減るとどんなメリットがあるの?」と、疑問を抱く方も多いのではないでしょうか?

そこで本記事では、小学校35人学級制が進められている理由やそのメリット、課題について具体的に解説します。

親として気になる子どもへの影響についても、筆者が元教師の視点から詳しくまとめています。子どもが安心して学校生活を送るサポートができるよう、35人学級について理解していきましょう。

 

目次

1.35人学級はいつから始まるの?

小学校の1クラスの児童数の上限を35人とする、改正義務標準法が2021年3月31日に可決・成立しました。

これにより、令和3年度の2年生から段階的に導入していき、令和7年度までに全学年が35人学級になります。現在は小学校4年生まで35人学級が実施されており、5・6年生は今まで通り40人学級での対応となっています。

ただし、学級編成には「弾力的運用」が認められており、以前から小学校2年生以上も35人学級を独自で実施している自治体もありました。

今後は、すべての公立小学校で35人学級が段階的に進められていきます。

 

2.小学校が1クラス「35人」までの人数になる理由

今まで小学校の1クラスの上限は、1年生において35人、2~6年生は40人でした。なぜ、全学年で35人学級が実施されることになったのでしょうか。その理由を解説していきます。

 

2-1.教師の負担を減らすため

現在、学校現場では教員の過重労働が社会問題になっています。労働環境が改善される兆しはなく、教員の志願者も減少傾向で、優秀な人材の確保も課題として挙げられています。

35人学級の実施は、1クラスの人数を減らすことで、教員の業務にかかる負荷削減を目的としています。

「たった5人減るだけで変わるの?」と疑問に感じる方も多いかもしれませんが、特に以下のような内容で負担が軽減できると考えられています。

  • ノートチェック
  • テストの丸付け
  • 家庭訪問や面談
  • 成績処理

これらの業務は人数によって負担が大きく異なります。

教員の業務は多岐にわたるので、1クラスの人数が少なくなることで負担が減ることは間違いないでしょう。

 

 2-2.ICT教育推進のため

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、学校現場では「GIGAスクール構想」が急ピッチで進められました。

「GIGAスクール構想」とは、生徒1人につき1台のパソコンやタブレット端末を持たせるICT教育の充実を図る政策のことです。これにより、今後はタブレットやパソコンを活用した、創意工夫のある授業が展開できるようになると期待されています。

ただ、一人ひとりの特性や学習定着度に合わせて、ICTを活用した指導をするためには、教員の目が行き届く少人数であることが望ましいでしょう。

「GIGAスクール構想」によるICT教育の充実を実現させるという目的でも35人学級が推奨されました。

 

2-3.ゆとりある学習空間を確保するため

今までは、教室内に密集した状態で机が並べられ、学習に適した環境とは言えない現状でした。

人数が多ければその分机の数も増えるので、教室内の移動はしづらくなり、教室後方の席では黒板が見えづらい状況に陥ってしまいます。

一方35人学級制の実施により、1クラスの人数が減ることで、ゆとりのある学習空間を確保できます。

また、新型コロナウイルス感染症の対策のために、密を避ける教室環境づくりが必要だという考えが広まりました。

この影響で1クラスの人数上限を下げる必要性が重視され、実施に至ったという背景もあります。

 

3.35人学級のメリット

1クラスの人数が40人から35人に減ることで、どんなメリットが期待できるのでしょうか?

 

3-1.教師の目が行き届きやすい

まず、教師の目が行き届きやすくなるメリットがあります。以下で詳しく見ていきましょう。

 

3-1-1.学習面でのサポート

1クラスの人数が減ることで、教師が子ども一人ひとりにかける時間が増えることに繋がります。また、学級全体を把握しやすくなるでしょう。教師のきめ細やかな指導が可能になれば、子どもの学習面でのサポートが充実することが期待されます。

 

3-1-2.いじめや不登校の問題にも対応

クラスの人数が多いといじめや不登校が多くなるとは言えません。しかし一般的に人数が少ないクラスの方が登校しやすいと感じる子どもが多いと言われています。

山形県や大阪府で実施された調査によると、小学校で少人数学級を導入してから徐々に欠席や不登校が減少したという結果も報告されています。

クラスの人数が減ることで、先生の目が一人ひとりに行き届きやすくなったり、担任が家庭に頻繁に連絡がとれるようになったりと、学校と家庭の連携という面で効果があったと考えられています。

 

3-2.子ども一人ひとりの活躍する場が増える

1クラスの人数が減ることで、子ども一人ひとりが活躍する場面が多くなります。

クラス内で担当する係や代表になる機会が増えたり、普段の授業中も発言・発表する時間が増えたりするでしょう。そうすることで、子どもの意欲を向上させることにも繋がります。

また、大人数ではなかなか自分の意見を発表できなかった子どもも、クラスの人数が少なくなれば発言しやすくなり、自己肯定感のアップにもつながります。

 

4.35人学級を実施するうえでの課題

1クラスの人数が35人になることでさまざまなメリットがある一方で、実施にあたってはどのような課題があるのでしょうか?

 

4-1.担当教員が確保できない恐れがある

35人学級実施において、最大の課題は教員の確保でしょう。

文科省によると、全国の公立学校で35人学級を実施するために必要な教員数は、令和7年度までに計1万3574人であるとされています。

しかし、現在の学校現場では教員不足が常に問題になっています。兵庫県内の公立学校では、164人もの教員が不足している状態であるという、苦しい現場の状況が報告されました。ただでさえ教員が足りていない状況で、ここまで大規模に教員の数を増やせるかは疑問です。

また、教員の数を確保するためには採用の倍率が下がるため、質の高い教員を確保することが難しくなってしまうという懸念点もあります。

 

4-2.教室や備品が不足するリスクがある

35人学級が実施されることで1クラスあたりの人数が減ると、場合によってはクラス数が増えることになります。そうなると、教室や設備、備品の数が不足するところも出てくるかもしれません。

最近では少子化の影響で、空き教室を活用できる学校もありますが、新しい学校やマンモス校では教室の数が足りなくなることが予想されています。

学校の増改築や備品の購入は大きく予算が動くこともあり、計画的に行わなくてはなりません。空き教室の荷物移動や新しい教室整備のための工事による騒音など、教員や子どもへの負担も無視できない問題です。

 

5.35人学級制度が子どもに与える影響とは?

35人学級制度が実施されることで、子どもにはどのような影響があるのでしょうか?

 

5-1.先生との相性に左右されやすい

クラスの人数が少なくなると、その分、担任の先生との関わりも相対的に増えることになります。

面談の時間が増えたり、先生と雑談する機会が増えたりと、何か悩みがあったときには担任に相談しやすくなるメリットもあります。

一方で、担任の先生との相性が悪いと子どもにとってはストレスにもなり得ます。もちろん、担任の先生との信頼関係を築くことは大前提ですが、どうしても難しい場合には保健の先生や他クラスの先生など、学校内に信頼の置ける先生を見つけることも大切です。

 

5-2.クラス内の人間関係が濃密になる

クラスの人数が少なくなると、クラス内で関わる人間関係がより濃密になる傾向があります。

気の合わない友だちと同じクラスになってしまった場合には、クラスの人数が少ない分、人間関係を築くのが難しい場合もあるでしょう。

大人数の中で人と関わるのが苦手な子どもにとっては過ごしやすい環境になる場合もありますから、必ずしも悪い影響ばかりとは限りません。

どちらにせよ、クラスの人数が減ることで子どもの学校生活における人間関係に影響を与えるでしょう。ご家庭では、子どもの話に耳を傾け、学校ではどんな人間関係を築いているのか把握することが重要です。

 

 

6.35人学級のメリットを理解して子どもの学校生活をサポートをしよう

小学校における35人学級は、子どもにとっては自分に合った授業や指導が受けやすくなることで、学力向上も期待できます。

また、教員も担当児童が減ることで負担が減り、子どもに寄り添ったきめ細やかな指導ができるようになるメリットもあります。

一方で、教員や教室不足の問題があることや、1クラスの人数が少なくなれば子どもたちへ少なからず影響があることは理解しておきましょう。

ご家庭では、普段から子どもとコミュニケーションをとることが大切です。何か困りごとやトラブルがあったときには、学校と連携して解決に努めましょう。

35人学級のメリットや課題点を理解したうえで、子どもが安心して学校生活を送れるようサポートしていきましょう!

 

参考
・(教育トピック)小学校35人学級へ!いつから?メリットとデメリットは?徹底解説
・兵庫県内公立校の教員不足、さらに深刻 前年比50人増の164人 県教委調査 時間割やりくりし不足分授業をカバー

 

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