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3歳からのジェンダーフリー教育!家庭でできることや発達へのメリット

この記事を書いた人

柳生有香子 柳生有香子

柳生有香子

  • 幼稚園教諭
  • 保育士

保育士、幼稚園教諭の資格所持し、保育園や児童発達支援、放課後デイサービスなどで計12年以上勤務してきました。

息子が3人います。

子育てや幼児教育、LDの子どもへの支援について関心が強く勉強しています。

ジェンダーフリー教育という言葉を聞いたことはあるものの、「意味はよくわからない」「3歳の子どもにジェンダーフリー教育をするメリットってあるのかな」と疑問を持っていませんか?

この記事では、ジェンダーフリー教育が3歳の発達にどう影響するのかをわかりやすく説明します。

家庭で心がけるポイントやおもちゃや習い事の選び方も紹介しますので、ぜひ参考にして取り入れてみてください。

 

目次

 

1.ジェンダーフリー教育ってなに?

まずは「ジェンダーフリー教育」とはいったいどういう教育なのか、おおまかに理解しておきましょう。

日常生活ではあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、子どもの教育に取り入れたい重要な要素が含まれています。

小学校での取り組みも紹介しますので、就学後の見通しとして知っておくと良いですね。

 

1-1.ジェンダーフリー教育とは?

ジェンダーフリー教育とは、子どもが性別によって固定されたイメージにとらわれず、自分の将来の可能性を広げていくための教育です。

1999年に男女共同参画社会基本法が施行されて以降、「性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現(※1)」が緊急の課題とされ、教育現場でも取り組まれてきました。

最近はSDGs(持続可能な開発目標)でも「ジェンダー平等」が掲げられ、国際的に注目されています。

これからの社会で求められるのは、性別の固定観念や制約にしばられない人材です。そのため、未来を生きていく子どもたちがジェンダーフリー教育を受けながら成長することは大きな意味があります。

 

1-2.日本の状況、学校教育での取り組み

ジェンダー平等の状況がわかるデータとして、世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数があります。2023年6月の発表によると、日本は146か国中125位で、特に政治や経済分野での数値の低さが顕著でした。(※2)

日本はまだまだジェンダー平等とは言えない状態であり、男女共同参画社会の実現は、今後も国が最も力を入れて取リ組んでいく課題の1つです。

ジェンダーフリー教育を進めていく必要がある中、実際に小学校ではどんな取り組みがされているのか、具体例を2つ紹介します。

①男女関係なく、「~さん」と呼ぶ

以前は男子を「~くん」、女子を「~さん」と呼んでいましたが、最近は男女関係なく「~さん」と呼称を統一する動きが広がっています。

例えば、2017年に京都教育大学が行った調査(※3)では、調査回答があった98校のうち7割以上の小学校で全員を「さん付け」で呼んでいました。

私自身、長男が入学して初めて、男子も姓で「〇〇さん」と呼ばれているのを知り驚いた思い出があります。

②男女混合の名簿が導入されている

かつて小学校では、男子が先に50音順に並び、その後に女子が50音順に並ぶという男女別名簿が主流でした。現在は男女別ではなく、50音順に混合で配置される名簿を導入する学校が増えています。

朝日新聞の記事(※4)によると、2020年度の調査で87%の幼稚園・小中高校が男女混合名簿を使っているとされており、主流になっています。

いまの小学校では親の世代にはなかったやり方が取り入れられており、ジェンダー平等の意識を育てる教育環境づくりが進められています。

 

2.3歳からジェンダーフリー教育を行うメリット

実際に3歳からジェンダーフリー教育を行うと、どんなメリットがあるのか見ていきます。まずは子どもの心が、いまどんな成長過程にあるのかを知っておきましょう。

3歳の心の発達を理解しておくと、そこにジェンダーフリー教育がどう働くのかより深く理解できます。

 

2-1.3歳児はどんな発達段階?

3歳は心身とも発達が著しく、心の面では、自他の区別がつき自我が形成される大切な時期です。

語彙が増えるので言葉での自己主張が強くなり、なんでも自分中心に考えて行動する姿が見られます。

一方で友達への関心が強くなり、人と関わりたい気持ちが芽生えてくる時期でもあります。

個人差がありますが、3歳~3歳6ヶ月頃に、子どもは自分の性別がわかるようになります。

3歳は性差を理解しはじめ、幼稚園などで友達との関わりが増えるタイミングなので、ジェンダーフリー教育を取り入れ始めるのにぴったりの年齢だと言えます。

 

2-2.ジェンダーフリー教育を取り入れるメリット

3歳でジェンダーフリー教育を取り入れると、どのような良い効果があるのでしょうか。2つの視点から説明します。

1つめは、子ども自身の心の発達への作用です。自我の土台が形作られる3歳の子どもの内面では、「自分は大切な存在だ」と感じたい気持ちが強く湧き上がってきています。

身の回りのことを自分でしようとしたり、自分の思いを主張したりするのは、「自分」という存在の価値を確かめて安心したい気持ちの表れです。

この時期に「男の子なんだから」「女の子なんだから」と制約を受けると、子どもは性別の枠内で自我を作らなければならず、可能性を狭めてしまいます。

ジェンダーフリー教育をすると、子どもは自分を性別の枠にはめず、自分の意思や感情を大切にしながら成長できます。

2つめは、人との関係への作用です。

3歳はまだ性別への固定観念がありません。この時期にジェンダーフリー教育を行うと、子どもは性差を分別しても、性別による制約を相手に押し付けなくなります。相手の気持ちを尊重する意識が育ち、性差にとらわれない関係づくりの感覚を養えます。

3歳からジェンダーフリー教育をするメリットは、自分も人も肯定する気持ちが育ち、性別で制約を受けずに自我や社会性が発達していく点です。3歳という自我の基礎が育つ時期を大切にして、子どもの心をできるだけ伸びやかに育てていきたいですね。

 

3.家庭でできるジェンダーフリー教育

「ジェンダーフリー教育のメリットはわかったけれど、実際に何をすればいいの?」と疑問に感じますよね。

ここでは、日常生活の中でどんな言動をすれば子どもにプラスになるのかを、具体的な例をあげて紹介します。

 

3-1.日常生活での関わり方が重要

子どもにジェンダーフリー教育を行うには、親がふだんの家庭生活でどんな関わり方をするのかが最も重要です。

3歳の子どもは、しきりに「なぜ?」「どうして?」と質問してきますが、これは周囲の物や人への好奇心が高まっているためです。

とくに家庭内で親がどんな言動をしているかをよく見ていて、そのまま学習して吸収していきます。

子どもに性別に対する固定的な役割分担を植え付けず、自分の本当の気持ちを大事にできる健やかな自我が作られていくために、今よりほんの少し親の行動を変えてみましょう。

難しく考えすぎず、できそうな部分から1つでも意識してみてください。

 

3-2.ジェンダーに配慮した言葉がけのポイント

ジェンダーフリー教育をするとき、3歳の子どもに対して、どんな場面でどんな言葉がけをすればいいのか、いくつか例をあげて説明します。

①男の子が運動遊びを好まず、ままごと遊びばかりしたがる場合

例)「男の子なんだから、元気に外で遊ぼう」→「ままごとって楽しいよね。一緒にしようか」

子どもの好みを否定すると、子どもは自分に自信がなくなります。子どもの好きなものを認めて、一緒に楽しむ姿勢を伝えましょう。

②女の子がおもちゃなど物を投げる場合

例)「女の子なんだから、もっと優しくしなさい」→「おもちゃが、いたいいたいって言ってるね」

3歳は相手にも自分と同じように気持ちがあると気づき始める年齢です。「女の子だから、投げてはいけない」ではなく、物を大切にする気持ちを3歳児の発達に合った言葉で伝えましょう。

③子どもが性別の固定概念を表した場合

例)「車は男の子のおもちゃだよ」「お人形は女の子のおもちゃだもん」→「〇〇ちゃんの好きなものはなあに?」「みんな自分の好きなおもちゃを選んでいいんだよ」

性別によって選択が狭められるわけではなく、自分の気持ちが尊重されていいんだと実感できる言葉をかけましょう。

 

3-3.夫婦の関係性をどう見せるか

子どもは親の夫婦関係を見て、人間関係のモデルとして学習していきます。子どもにどんな夫婦関係を見せていくかは、ジェンダーフリー教育を行う上で重要なポイントです。とくに以下の2つの点がどうなっているかが大切になります。

①家事・育児をどう分担をしているか

子どもはまっさらな目で親の関係性を見ています。3歳の子どもに「男性だから」、「女性だから」という固定観念はありません。

性別で役割分担をするのではなく、夫婦が助け合いながら、家庭を築いている姿を見せましょう。どちらか一方が家事や育児をするのではなく、お互いに苦手な分野をフォローしあって協力する様子を見せられるといいですね。

②夫婦間でどんな会話がされているか

夫婦のパワーバランスで、どちらかが威圧的であったり、自分の主張ばかりを通しているのは好ましくありません。子どもにとって、夫婦は一番身近なロールモデルです。

男女の関係は対等で思いやりを示し合う関係だと伝えるためには、夫婦間の会話も平等で温かい会話を心がけましょう。たとえ3歳と小さくても、子どもは夫婦の会話をよく聞いています。

3歳の子どもにとって生活のほとんどは家庭であり、人間関係のほとんどは親との関係です。親との関わりは、思っているよりも子どもに大きく影響します。

子どもが性差にこだわらず、のびのびのとした気持ちで成長してくために、家庭の中でほんの少しジェンダーフリー教育を意識してみてください。

 

4.ジェンダーフリー教育での習い事やおもちゃの選び方

ジェンダーフリー教育の観点から、習い事やおもちゃをどう選べばいいのかを紹介します。子どもがまだ3歳だと、ほぼ親が選択する場面が多いので、参考にしてみてください。

 

4-1.習い事

3歳になると、習い事を始めようかと考えるご家庭も多いかもしれません。水泳や英語、ピアノなど、選択肢が多いので何をさせたらいいかと悩みどころです。

私自身は長男が3歳のときに、空手に通わせはじめました。なぜ空手にしたかというと、長男は大人しくじっとしている子どもだったので、「男の子らしく強くなって欲しい」と考えたからです。小さな体で道着を来て空手をする姿は微笑ましく、子どもの成長を感じて嬉しい気持ちでいました。

しかし8歳になり、長男から「もうやりたくない」と言われたとき、正直あまり驚きませんでした。その頃には空手の練習をするのも楽しくなさそうで、義務で練習しているのがわかっていたからです。

すぐに空手は辞めたのですが、のちに大学生になってから「空手は本当に嫌だった」と言われました。「男の子だから」と習い事を選んでしまった自分の考えの浅さを反省しました。

何かを習わせたいと思ったら、子どもが自発的に取り組み、楽しむことができる習い事をおすすめします。男女のイメージではなく、その子自身を見て選んであげましょう。

子どもの性格や個性を一番わかっているのは親です。習い事選びでも性別で判断せず、子どもの気持ちを汲み取ってあげてください。

 

4-2.おもちゃ

おもちゃは子どもの成長にとって大切なアイテムです。しかし子どもが欲しがるものを買っていくときりがないので、「何を買えばいいのか迷う」というママやパパも多いと思います。つい男の子には車や戦隊もの、女の子にはままごとセットや人形と、性別で選んでしまいがちな場面ですよね。

3歳はまだ言語面での発達が十分でないので、自分の気持ちを言語化して伝えきれません。そのため親の選んだおもちゃが自分の欲しいものでなくても、上手く説明できずそのまま遊んでいる場合があります。

できれば「子どもが本当に遊びたいのはどれかな?」と立ち止まって考えてみてください。お気に入りのおもちゃ、幼稚園や児童館で喜んでいるおもちゃ、おもちゃ売り場で興味を持ったおもちゃなど、ふだんの様子にヒントはたくさんあります。

親が性別で決めつけず、自分の気持ちに気づいてくれたと感じるのは、子どもにとっておもちゃを買ってもらう以上に価値のある経験になります。

 

5.子どもの可能性を広げるジェンダーフリー教育

この記事では3歳児へのジェンダーフリー教育について、いろいろな面から紹介しました。この先、社会全体でますますジェンダーフリーが浸透していくと予想できますが、大切なのは言葉や概念ではなく、子どもの未来です。

子どもが自分の力を信じて、自分のしたいことをして生きていけることが、ジェンダーフリー教育の目的です。ジェンダーフリー教育では、子どもが自己肯定感や平等意識を培っていけるように導きます。

まずは親が自らの考えや行動を振り返り、頭の片隅にでもジェンダーフリーの意識を置いてみましょう。

意識すれば行動は変わってきます。小さなことから、なにか1つでも家庭の中での言葉がけや夫婦の関係で実践してみてくださいね。
 

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参考文献
※1:男女共同参画局,男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)
※2:独立行政法人国立女性教育会館,学校における男女共同参画の推進のための教員研修プログラム
※3:杉井 潤子・林 逸歩,京都市立小学校における「さんさん付け」呼称の導入実態
※4:平畑玄洋,学校の男女混合名簿、今や9割弱 「男子が前」わずかに,朝日新聞デジタル

 

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