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メタ認知って何?幼児期の子どものメタ認知を家庭で鍛える方法を紹介!

この記事を書いた人

かわもと かわもと

かわもと

  • 高等学校教諭
  • 公認心理師
  • 中学校教諭

中学校教諭、高等学校教諭、公認心理師の資格を所持しています。

大学卒業後、療育施設にて勤務していました。

現在は、0歳の子どもを育てながら、子育てに役立つ記事を執筆しています。

得意なことは、絵本の読み聞かせ、歌遊びです。

「メタ認知」という能力をご存知でしょうか。

あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、近年、「メタ認知」は、教育やビジネスなどさまざまなシーンにおいて必要なスキルとして注目されています。

この記事では、メタ認知の定義や子どものメタ認知を鍛えるメリット、子どものメタ認知を家庭で鍛える方法をご紹介します。

幼児期のお子さんでも実践できる方法をお伝えしますので、親子で試してくださいね。

 

目次

 

1.メタ認知って何?注目されている理由は?

まずは、メタ認知とは何なのか、子どものメタ認知が発達する時期についてご説明します。

 

1-1.メタ認知の定義

「メタ認知」の「メタ」には、「高次の」「超越した」という意味があります。記憶・思考・情動・知覚など、自分が認知していることを「高次の」(=メタ)視点から把握するというのが、メタ認知の意味です。

メタ認知能力を高めると、自分の課題や問題点に気づき、感情や行動をコントロールできるようになります。

友達とケンカした時でも、メタ認知能力の高い子どもは、自分や相手の気持ちを客観的に分析し、「自分の非を認め、友達に謝る」などの適切な行動をとることができます。

メタ認知とは、自分自身を客観的に見つめ、目の前の問題や状況を冷静に判断し、自分の感情や行動をコントロールする力のことを言います。

 

1-2.幼児期におけるメタ認知の発達

メタ認知は、3~5歳頃に芽生える(※1)と言われています。

メタ認知の発達には、「実行機能」が大きく関与しています。実行機能とは、目標を定めて、自分の行動や思考、感情をコントロールする脳機能のことで、3〜6歳頃に発達します。

また、「人の立場や気持ちを理解する力」や「自分の思考や気持ちを理解するための言語能力」も、メタ認知の発達に欠かせません。それらの能力は、3歳〜5歳頃に大きく成長します。

以上の理由から、幼児期後半は子どものメタ認知の土台を育む、大切な時期と言えるでしょう。

長期的な視点を持って、お子さんのメタ認知を伸ばす関わりを心がけたいですね。

 

1-3.メタ認知が注目されている理由は?

メタ認知は、2020年度に実施された「学習指導要領」にも明記されており、教育分野でも注目されています。

学習指導要領では、子どもたちの生きる力を育成するために、学力を「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力・人間性等」の3つの柱からなる「資質・能力」を総合的にバランスよく育むことを目指しています。

その中の一つである「学びに向かう力・人間性等」について、文部科学省は以下のように説明しています。

「主体的に学習に取り組む態度も含めた学びに向かう力や、自己の感情や行動を統制する力、よりよい生活や人間関係を自主的に形成する態度等があり、自分の思考や行動を客観的に把握し認識する、いわゆる『メタ認知』に関わる力を含むものです」(※2)

 

メタ認知は、自ら目標を決め、主体的に学習に取り組む態度を育成するために、重要な役割を果たすと考えられています。

近年では、教育分野だけでなく、ビジネスの世界でも高い関心が集まっています。

 

2.子どものメタ認知を育むメリット

メタ認知能力が高いと、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは代表的なものを5つご紹介します。

 

2-1.自律性が育まれる

メタ認知能力が高い子どもは、自ら目標を設定し、目標達成のための方法を自分で調べ、行動することができます。

例えば、

・苦手な縄跳びを習得するために、時間を決めて練習する
・読みたい本やマンガがあるから、早めに宿題を終える

など、自分でルールを決め、主体的に物事に取り組むことができます。

目標達成の経験を積み重ねると、自分で決めたことをやりとげる喜びを感じ、さまざまな物事にも積極的になれます。

自律性の高さは、将来、仕事をする上でも役に立つ能力です。

 

2-2.問題解決能力が高まる

メタ認知能力が高い子どもは、トラブルに遭遇した時、時間をおいて冷静に次の行動を考えることができます。

例えば、忘れ物をした時でも、先生に言いに行く、友だちに借りるなど、嘘をついたり、パニックになったりせずに、的確に考え、柔軟な対応ができます。

失敗しても逃げ出さずに自分で解決する経験は、学びが多く、次に活かすこともできるでしょう。

 

2-3.感情のコントロールができる

メタ認知が育まれると、自分の感情をコントロールできるようになります。

イライラしたときにも、「自分は何に対して怒っているのか?」「どうすればイライラを鎮められるのか?」を客観的に考え、自分の気持ちを落ち着かせることができます。

メタ認知を伸ばすことで、自分の感情に振り回されることが減ります。

 

2-4.円滑な人間関係を築ける

メタ認知能力が高いと、自分と他人の気持ちを冷静に見つめられるようになり、円満な人間関係を築けるようになります。

自分とは違う考えを持つ人間に対しても壁を作らず、考えの違いを認め、相手を理解しようと努力します。自分の意見も恐れずに主張することができるでしょう。

相手の立場も理解しているため、他人のミスにも寛大になり、相手の気持ちに寄り添いながら冷静なアドバイスをするなど適切な対処ができるようになります。

人間関係のトラブルが起きにくく、起きたとしても自分の非を認めたり、落ち着いて話し合うことができるでしょう。

 

2-5.学力向上にもつながる

メタ認知を育むことで、主体的に学習する姿勢が身につき、学力の向上にもつながります

ベネッセ教育総合研究所の『小学校高学年の学びに関する調査2019(※3)』によると、メタ認知が高い子どもは低い子どもより、自分の成績は「上のほう」であると回答しています。

なぜ、メタ認知能力が高いほど、成績が良くなるのでしょうか。

メタ認知は、自分を客観的に捉えることです。例えば、算数の文章題を間違えた時、「また間違えちゃった!」「この分野は苦手だな」という段階で終わってしまうと、メタ認知ができているとは言えません。

メタ認知能力が高い子どもは、なぜ間違えたのかを分析し、文章を図や表にして理解を深めたりします。

「大切なところを見極めて線を引く」「友達と勉強してやる気を高める」など、効果的に学習するための工夫が、学力の高さにもつながるのでしょう。

 

3.子どものメタ認知を育てる親の接し方や声がけ

子どものメタ認知を伸ばすための親の接し方や声がけを、3つの場面に分けて、ご紹介します。

 

3-1.子どもが成功した時の声がけ

幼稚園や習い事などで子どもが先生に褒められたり、何かに成功して喜ぶ姿を見ると、親も嬉しいですよね。

子どもの成功体験に対して、親は「褒める」以外にどのような関わりをすればいいのでしょうか。

メタ認知を伸ばすポイントは、「なぜうまくいったのか?」を子どもに考えさせる質問をすることです。

成功体験を客観的に振り返ることで、子どもは自分の努力を実感し、次のチャレンジに活かすことができます。

【会話例】

①子どもが算数のプリントで全問正解した時、
親:「全部自分で解けたんだね。どんなところを頑張ったの?」
子ども:「指で数字を数えた」

②絵や工作などを先生に褒められた時、
親:「先生に褒められて嬉しかったね。どんなところを工夫したの?」
子ども:「たくさん色を使って描いた」

 

子どもがうまく答えられないときは、親が子どもの努力や工夫した点を見つけて、言葉にして伝えるといいでしょう。

親に認められる経験を重ねることで、子どもの自信につながります。

 

3-2.子どもが遊びや勉強でつまづいた時の声がけ

「ひらがながうまく書けない」「パズルのピースがはまらない」など、子どもが何かにつまづいた時は「自分を客観的に見つめる質問」を投げかけましょう。

「うまくできない」と落ち込む子どもには、「大丈夫だよ!どうしたらうまくできるか、ママと一緒に考えよう」と子どもの気持ちに寄り添います。

その上で、「何に困っているのか」「どこが難しいのか」など、自分を客観的に見つめる問いかけをします。

「なぜうまくいかないのか?」を冷静に見つめられると、子どもは落ち着いて、今すべきことに注意を向けることができます。

【会話例】

①積み木を高く積み上げられなくて困っている時

子ども「もう嫌だ、全然うまくできない!」
親「大丈夫だよ、ママと一緒にどうしたらうまくできるか考えよう。〇〇ちゃんは、何に困っているの?」
子ども「積み木が落ちちゃう」
親「積み木を高く積み上げたいけど、うまくいかないんだね。困ったことを上手に話してくれて、ありがとう。どうしたら高く積み上げても落ちないかな」
子ども「大きい方を下に置く」「高いところはママと一緒にやる」
親「自分でしっかり考えることができたね/それはいい考えだね」

 

子どもが問題の解決策をうまく導けない時は、「こうすればうまくいくよ」とすぐに正解を見せるではなく、「大きい積み木と小さい積み木、どっちを下に置いたらいいかな」など、子どもが自分で考えるためのヒントを与えます。

 

3-3.人間関係のトラブルが起きた時の声がけ

「友だちにおもちゃを取られた」など、子どもが人間関係のトラブルで悩んでいる時は、子どもの気持ちを受け入れた上で、相手の視点や気持ちを想像する声がけをします。

「おもちゃを取られて悔しかった」「やりたい遊びが出来なくて悲しかった」など、子どもの気持ちに最後まで耳を傾けましょう。

親が日頃から子どもの話にしっかり耳を傾けることで、子どもは「聞く姿勢」を体得していきます。

「悔しかったね、悲しかったね」と子どもの気持ちに共感することで、子どもは「自分の気持ちを親に受け入れてもらえた」という安心感から、親の言葉を受け入れやすくなるでしょう。

子どもの気持ちが落ち着いたら、次は「相手の立場や気持ち」について考えるように促します。

【会話例】

親「友達はどう思ってたのかな」
子ども「このおもちゃが欲しい」
親「そうだよね!友達の気持ちを上手に考えたね。友達もこのおもちゃが欲しいんだよね。どうしたらいいと思う?」
子ども「『あとで貸すから待ってて』という」
親「いい考えだね。やってみよう」

子どもの答えは否定せず、認めて褒めましょう。もし解決策をうまく答えられない時は、「○○という考えもあるけどどうかな」と親が提案します。

 

4.子どものメタ認知を家庭で鍛える方法

ご家庭でメタ認知を鍛える方法を3つご紹介します。

 

4-1.1日を振り返る

1日の出来事を振り返る習慣は、メタ認知を鍛える効果的な方法です。

寝かしつけの時に、「今日、幼稚園で楽しかったことを1つ教えて!」と子どもに質問してみましょう。

子どもが「忘れた!」「わからない」という場合は、「給食で美味しかったものを教えて」など、答えやすい質問に変えてあげるといいです。

また、親自身も、楽しかったことを話すのがおすすめです。楽しいエピソードを話すことで、前向きな気持ちで1日の終わりを迎えることができますよ。

 

4-2.絵本の読み聞かせ

トラブルや困難に遭遇した時こそ、メタ認知を発揮させたいところですが、実際は、多くの子どもは感情的になって、冷静に考えられないものですよね。

その場合は、自分を客観視する練習として、絵本を活用するのがおすすめです。ここでは、子どものメタ認知を育むおすすめの絵本をご紹介します。

【おすすめの絵本】

①まかしとき!

お手伝いをほとんどしたことがない女の子が、おばあちゃんの怪我をきっかけに、お手伝いに奮起するが、失敗を繰り返してしまう話です。失敗を恐れる子どもの励みになる絵本です。

>>まかしとき!(フレーベル館 )Amazon販売サイト

②けんかのきもち

仲良しの友だちとケンカしてしまったとき、「相手はどんな気持ち?」「どうしたらいい?」と考えさせてくれる絵本です。

>>けんかのきもち からだとこころのえほん(ポプラ社) Amazon販売サイト

③マイロのスケッチブック

人は見かけではわからない。自分の想像が正しいとは限らない。別の視点を持って考える大切さを教えてくれる絵本です。

>>マイロのスケッチブック(鈴木出版) Amazon販売サイト

 

絵本を読み終わった後に、「この子はどんな気持ちなのかな?」「〇〇ちゃんならこんな時、どうする?」など、子どもに問いかけてもいいでしょう。

友達とのケンカなど、日常でよくある失敗やトラブルを題材にした絵本を通して、登場人物の気持ちを想像することで、子どもが実際にトラブルに遭遇した時も、自分で考えて落ち着いた対応を取れるようになっていきますよ。

 

4-3.交換日記をする

交換日記は、起きた出来事や自分の気持ちをただ書いて整理するだけでなく、親の日記を通して他人の気持ちにも気付くことができます。

例えば、親に叱られた日に、親が書いた日記を通して、その時の親の気持ちを知ることができます。親の気持ちを踏まえ、あの時どうすれば良かったのかなと、別の視点で振り返ることができます。

幼児期でひらがなが書けるなら、「えいが、たのしかった」など「出来事+気持ち」の一言でもいいですね。

ひらがなが書けない・読めないなら、絵を描いたり、親が代筆してもいいでしょう。日記は記録が残りますので、成長した後に見返すのも楽しいですよ。

 

5.子どものメタ認知は長期的な視点で育もう

メタ認知を伸ばすには、一度立ち止まって自分を振り返ることが大切です。子どもがメタ認知をうまく働かせることができなくても、焦らずに長期的な視点を持って接しましょう。

日常的に自分を振り返る習慣は、親自身も多くの気づきが得られますよ。親子で一緒にメタ認知を育んでみてくださいね。
 

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参考文献
※1:本郷一夫/田爪宏二(編著)『認知発達とその支援』ミネルヴァ書房2018年3月出版
※2:学習指導要領「生きる力」(文部科学省)
※3:小学校高学年の学びに関する調査2019(ベネッセ教育総合研究所)

 

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