【3歳・4歳・5歳の転園によるストレス】年齢別ケア方法を徹底解説
この記事を書いた人
haru*(はる)
- 養護教諭
- 心理カウンセラー
養護教諭として小・中学校に7年間勤務し、妊娠を機に退職。
現在は4歳の子どもを育てながら、フェルト生地を使った知育玩具のハンドメイド作品販売「sewing_haru*」の運営と、子育てメディアなどで記事の執筆をおこなっています。
子どもの「好き」をたくさん見つけて増やしていく子育てを目指しています!
転園などで環境が変化することは、大人も子どもも、多少なりともストレスを抱えるものです。
特に子どもは、いままで生活していた環境のすべてが変わり、大人以上に不安になることがあります。
今回は、「転園によって子どもが感じるストレス」や「環境の変化は、子どもにどのような影響を与えるのか」について説明していきます。
3歳・4歳・5歳の年齢別の発達段階に応じたストレスケアや、ストレス緩和のヒントも紹介していきます。転園に限らず、環境の変化があるときのヒントにもなるので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.転園が子どもに与えるストレスとは?
子どもには、その場にすぐ馴染む適応力があるといわれています。年齢が低いほど、生活のすべてが新しいため、環境の変化を受け入れやすいのです。
しかし、自我が育ち、自分と他者との違いや環境の変化を理解できる年齢になると、個性の差が大きく出ます。
そのため、「すぐに適応できる子」と「適応しにくい子」に分かれてくるといえるでしょう。
1-1.「去る」ストレスと「入る」ストレス
転園によるストレスには、「去る(=退園)」ときと「入る(=入園)」ときの、2種類のストレスがあります。
つまり、子どもが転園するときには、2回ストレスがかかるのです。
このストレスの影響は、子どもによってさまざまなパターンがあります。
- 退園も入園もスムーズ
- 退園はスムーズで、入園が大変
- 退園が大変で、入園はスムーズ
- 退園も入園も大変
このように、転園の際に生じるストレスは一概に「こういうもの」とはいえません。
「慎重派」や「おおらかな子」など、お子さまのタイプによって左右されることもあります。
1-2.転園前にかかるストレス
子どもによっては、転園にともなう退園の前からストレスを感じることがあります。転園とは、子どもにとっては経験したことのない未知のものです。
転園前は特に、この先どうなるのかが見通せず不安を抱きやすいことも、ストレスの一因になり得るといえるでしょう。
また、転園の理由の説明が不十分だと、得体のしれない「転園」に対して、緊張したり不安を抱いたりする場合があります。
仲良しのお友だちがいた場合、「一緒に遊べなくなるかもしれない…」と、不安を抱くこともあるでしょう。
1-3.転園後にかかるストレス
新しい園へ通い始めてからも、心身に負荷を感じる度合いや、その時間・期間は子どもによって異なります。
転園後の子どもは、新しい環境にいます。その場のルールや環境に適応しようとするため、心にも身体にもストレスがかかります。
新しい人間関係を築かなければならないため、「この人はどんな人なのかな」などと周囲を観察する場面も多く、不安や緊張感を抱きやすくなるでしょう。
また、転園前のお友だちとの別れを体験し、寂しさからストレスを感じることもあります。
1-4.親にもかかる、転園のストレス
転園でストレスがかかるのは、子どもだけではありません。大人にももちろん、かかります。
たとえば、園によっては持ち物のサイズが違っていたり、転園に必要な書類をすべて揃えたりするため、物理的な負担が大きくなります。
また、新しい担任と信頼関係を再構築しなければならないことも、ストレス負荷がかかるといえるでしょう。
そのなかで心がけていただきたいことは、大人がすべてを1人で抱えこまないことです。
1人ですべてを解決しようとすると、心に余裕がなくなってしまいます。その状態で子どものストレスケアまでするのは、大変ですよね。
不安な気持ちや疑問点などは、転園前であれば、担任の先生と相談ができます。
転園後でも、わからない点を質問することで、新しい担任の先生と話すきっかけづくりにもなり、信頼関係の構築にもつながるでしょう。
また、転園前後は子どもがストレスを抱えて、赤ちゃん返りをしたり甘えんぼうになったりして、大人側が疲れてしまうこともあります。
そんなときには割り切って、思いきり甘えさせて、話を聞いてあげるのがおすすめです。甘えさせてくれたことで、お子さまは安心感を抱き、少しずつでも環境の変化に慣れようとしてくれますよ。
転園後の登園しぶりはこちらをチェック!
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2.転園|子どものストレス耐性に合った寄り添い方を
転園をしたからといって、誰もが「転園前のほうがよかった!」となるわけではありません。
「みんながこういう反応を示す」という目安もないため、環境の変化にどう慣れていくかは、その子がもともと持っている『気質』が大きく関係しています。
2-1.環境の変化に弱い子と強い子の違いとは?
成長するにつれて、環境や人との関わりでつくりあげられていくのが、『性格』です。
しかし、人には生まれながらにして、ある程度決まっている『気質』というものがあります。これは、アメリカの精神科医であるトーマス博士が『ニューヨーク縦断研究』という、乳児期~青年期の子どもの成長過程を追跡調査した結果、発見されたものです。
気質は、その人自身をつくりあげる基礎となる中核です。持って生まれたものなので、改善することはできても、すべてを変えるのは困難だといえます。
環境の変化があったときに、心理学の面では、気質によって以下のような違いがあらわれます。
<①新しい刺激への反応>
初めての状況や物事に対して、「近づくのか」または「避けるのか」
<②順応のスピード>
新しい環境や人間関係などに、どのくらいスムーズに適応できるのか
人それぞれ違う反応を示すものであり、気質的に環境の変化に『弱い子』『強い子』がいるといえるのです。
そのため、「パパが子どものときは、大丈夫だったぞ!」「下の子はすぐに慣れたけど、上の子は全然ダメね」のように、他者と比較するのは避けてください。
生まれながらの『気質』を見極めて、その子自身が感じた気持ちを受け入れてあげることが大切だといえるでしょう。
3.3歳・4歳・5歳|年齢別ストレスケアのヒント
転園時のストレスの傾向は、年齢によって異なります。ここでは、3歳・4歳・5歳の発達段階に応じて、必要なストレスケアを年齢別に紹介していきます。
3-1.3歳児に適したストレスケア
<3歳児の発達段階>
なになに期やなぜなぜ期のピークにあるのが、3歳児だといわれています。
「なんで?」「どうして?」のように、すべてのできごとに疑問を抱く時期です。
過去や未来など時間の概念を理解し始めているため、未来(=転園)のことも、ある程度理解できるようになっています。
<3歳児のケアのヒント>
3歳児には、「園が変わる」や「引っ越しをする」のように、転園の意味を具体的に説明してあげましょう。
いまのお友だちとは離れるけれど、新しいお友だちと出会えるという説明をし、「なぜ」「どうして」の不安を解消してさせてあげることが大切です。
また、3歳児は「ごっこ遊び」ができるようになっています。 ごっこ遊びを通して、転園後の「はじめまして」と挨拶をする練習や、新しいお友だちに「一緒に遊ぼう」と遊びに誘う練習をすることができます。
転園前に練習をしておくことで、「こうすればいいんだ!」と、お子さまが自信を持てるでしょう。
3-2.4歳児に適したストレスケア
<4歳児の発達段階>
ある程度、理論的な話ができるようになっているのが、4歳児です。
過去のできごとを覚えているため、転園前のことも記憶に残っている傾向が見られます。
3歳児よりも物事を理解していて、感情がより豊かになっているため、転園についてきちんと説明をしないと「なんで!?」と癇癪を起こす可能性があります。
そのいっぽうで、想像力が豊かになっているため、「転園をしたら、こんなことがあるよ」と教えると、未来(=転園後)について想像しようとします。
<4歳児のケアのヒント>
転園が決まった段階で、説明をするようにしましょう。
たとえば、「お引っ越しをするから、いまの園から遠くなって通えないの。だから、別の園に変わるんだよ」など、転園する理由を説明するのです。
順をおって説明すれば、納得ができるようになっているのが、4歳児だと考えられます。納得するまで話すことで、お子さま自身の心の準備も整っていきますよ。
3-3.5歳児に適したストレスケア
<5歳児の発達段階>
自分の思っていることを、他者に伝えられるようになってきているのが、5歳児です。
その一方で、自我を抑える能力が発達してきているため、「泣きたい気持ち」を我慢することもあります。
<5歳児のケアのヒント>
5歳児になると、交友関係も構築され始めています。
そのため、「転園すると、いまのお友だちと離れてしまう」という現状と、「これからは、新しいお友だちのいる園にいく」という未来のことを教えましょう。
「いまのお友だちと離れる」と聞いて、悲しい気持ちになってしまうお子さまもいると思います。
しかし、お友だちと離れても「休日に会う」や「お手紙を交換する」など、いままでとは違う交流方法があることも教えてあげましょう。
また、悲しいという気持ちは我慢せずに、「いまの気持ちを話すことが大切」と伝えます。素直な思いを話すことで、感情を整理していくことができます。
「子どもの環境が変わってしまって、申し訳ない」など、大人が抱く不安な気持ちが、子どもに伝わってしまうことがあります。大人が不安そうだと、子どもにもそれが伝染してしまうのです。
園に慣れるためには、日々の明るい声かけが不可欠です。
「ママやパパは、毎日お仕事にいっているんだよ!」や「園では、新しい先生やお友だちといっぱい遊べるね!」など、子どもが不安を抱くことなく、前向きに楽しくなれるような声かけを心がけていきましょう。
4.転園|ストレス緩和におすすめの対処法
3歳・4歳・5歳の年齢別のケアに加えて、転園することを伝えるときのポイントを紹介します。転園だけではなく、環境の変化があったときのヒントにもなりますよ。
4-1.転園が決まったら早めに知らせる
「悲しくさせてしまうかもしれない」と大人が思い込み、子どもに伝えるのを先延ばしにすると、かえって逆効果になってしまうこともあります。
子どもにとっても、心の準備期間が必要です。経験したことのない「転園の意味」を子どもが理解するには、時間がかかります。
転園が決まった時点で、子どもにも伝わるような言葉で、知らせてあげましょう。
4-2.子どもの感情をコントロールしない
転園に前向きになって欲しくて、つい「いつまでも泣かないの!」や「新しい園も楽しいよ!」などの言葉をいってしまうかもしれません。
しかし、こうした言葉は、お子さまの「いまの悲しい気持ち」を否定することになる可能性もあります。
まずは、子どもが感じた気持ちを、ありのままに受け止めてあげることが大切です。
悲しい気持ちに寄り添い、大人が受け入れてくれることで、お子さまは感情の整理整頓ができるようになるのです。
4-3.続けられる範囲で、転園前を維持する
習い事や習慣など、いままでやっていたことを、できる限り継続させてあげましょう。
「すべての環境が変化したわけではない」と安心感を持たせてあげることが大切です。
習い事の場合は、おなじ教室や先生ではなくても大丈夫ですよ。 ピアノならピアノ、サッカーならサッカー、のように、おなじジャンルのものを継続させてあげましょう。
4-4.変化が苦手な子へのプラスのケア
環境の変化に慣れるまでに、時間がかかる子どももいます。
その場合は、事前情報を与えて、不安な要素を少しでも減らしてあげましょう。
たとえば、前もって園の下見にいって様子をみせてあげるのもよいでしょう。事前に園までいけない場合は、ホームページなどをみせることもおすすめです。
「この園には大きな滑り台があるんだね」「教室には、キッチンセットがあって楽しそうだね」のように、お子さまにとって「ちょっといいこと」を、みつけてあげましょう。気持ちを前向きに持っていく手助けになりますよ。
また、不安な気持ちから、いつもより甘えてくることもあります。 そのときは突き放さずに、思いきり甘えさせてあげることも大切です。
子どものストレス緩和のために、転園先と親との間でできることもあります。
それは、連携をとって「園での様子」「家庭での様子」など、こまめに報告し合うことです。
園と家庭での様子を互いが把握し、地道に信頼関係を築いていくことで、「親が安心して預けている=子どもにとっても安心できる場所」ということが、お子さまにも伝わります。
スムーズな転園は、親の準備しだいだといえます。
事前に子どもに説明をしたり、園と協力して情報共有をしたりすることで、「安心して通える場所」「親が信頼して自分(子ども)を預けている場所」と認識してもらうことが大切です。
子どもが持つ気質も関係するため、万全な対策をとっていても、慣れない子は慣れないものです。
そのときは「この子の性格だからね」と割り切って、お子さまのメンタルケアに集中できるような環境を整えてあげましょう。
5.ありのままの気持ちに寄り添い、お子さまのペースで慣れていこう
環境が新しくなったときに、お子さまは不安を抱きやすいものです。
しかし、信頼できる大人が「自分(子ども)の気持ち」を受け入れてくれることで、少しずつでも安心感を得られます。
転園でストレスや不安を感じることは、特別なことでも否定すべきことでもありません。大切なのは、お子さま自身が感じた気持ちを我慢せずに、大人に伝えていくことです。
言葉に出して気持ちを整理してもらうことの重要性を親は理解し、お子さまのペースで、新しい環境に慣れていきましょう。
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