【年中・年長児の登園しぶり】心理的要因と乗り越えるための具体策
この記事を書いた人
榊原なつき
- 心理カウンセラー
- 中学校教諭
- 小学校教諭
- 保育士
小学校教諭として2年間勤め、現在は放課後等デイサービスに勤務
保育士・小学校教諭・中学校教諭・心理カウンセラーの資格をもち、大学では教育社会学を専攻。
ひとりひとりの個性に合った教育や療育を目指しています!
休み明けや新年度、それまで幼稚園や保育園に楽しく行っていたお子さんが、急に「行きたくない!」と言ったらびっくりしますよね。
なんとかなだめて行かせても、翌朝にはまた準備を嫌がることも。
何日も続くと心配ですし、保護者の方も疲れてしまいますよね。
実は、年中・年長のお子さんの場合、その年齢ならではの登園を嫌がる理由があります。
保護者の方がそれを知ることで、問題の解決がスムーズになります。
今回は登園しぶりをする年中・年長のお子さんの心理的要因を解説し、登園しぶりを乗り越えて楽しく幼稚園や保育園に行けるようになるためのポイントを紹介します!
目次
1.年中・年長のお子さんが登園しぶりをする心理的要因
園生活に慣れたはずの年中・年長のお子さんであっても、園での生活の中で小さなストレスを抱えていることがあります。
園に行きたくないと思う理由はお子さんによって様々ですが、成長の過程で、以下のような心理的な要因が考えられます。
1-1.家から出るのが嫌。気持ちの切り替えが難しい
園の生活ではたくさんの人に会い、様々な出来事が起こります。
周りの人にあわせて行動することが求められることもあります。
それらに対して、日々少しずつストレスを感じるお子さんもいることでしょう。
一方、家族がいて、好きなことができる家は安心して過ごせる場です。
「安心する場所からどうしても離れたくない」という気持ちになっているのかもしれません。
いわゆる「中間反抗期」ともいわれるように、年中・年長の時期のお子さんは「自分で決めてやりたい!」という思いが強い時期です。
一方で、園ではルールを守ったり、お友達と仲良くするために我慢したりすることを経験していきます。
その分、家はお子さんにとって自由に過ごせる魅力がたくさんあるので、なかなか離れたくないという気持ちになることがあります。
中間反抗期についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
・親も子もつらい「中間反抗期」の特徴と対応のコツを知って上手く乗り越えよう!
1-2.親御さんと離れることが不安
それまで問題なく園に通っていたお子さんでも
・長期休みに親御さんとずっと一緒に過ごしていた
・弟や妹が生まれて親御さんが忙しくなった
というような背景から、親御さんと離れることに不安を感じるようになることがあります。
この時期に「赤ちゃん返り」と呼ばれる行動がよくみられます。
それまでずっとお子さんに一身に愛情を注いでくれていた親御さんが、次第に赤ちゃんのお世話等で離れていくことに不安を感じて、無意識に親御さんに注目されようとアピールするのです。
「行きたくない!」と言ったり泣いたりして登園しぶりをすることで、親御さんとの時間を無意識に確保しようとしているのかもしれません。
1-3.園で、苦手な活動がある
外遊び、工作、お昼寝、お散歩、などなど…。
園では、みんなで一緒に取り組む活動がたくさんあります。
色々な活動を経験する中で、自分の思うようにできなかったり、お友達のようにうまくできなかったりすることもあります。
そのような挫折経験から、「もうやりたくない!」と園での生活が嫌になってしまうこともあります。
1-4.お友達と関わることが難しい
年少さんの頃は一人遊びをすることも多かったのが、心の成長に伴って集団遊びをするようになります。
・お友達の輪に入っていけない
・遊びのルールを守るのが苦手
・自分の思ったことを上手に伝えられない
などがあると、お友達とのトラブルが生じて園での生活にストレスが生じてしまいます。
年少の登園拒否はこちらをチェック!
・【年少児の登園拒否】行きたくない理由と対処法を詳しく解説!
2.年中・年長のお子さんが登園しぶりをしたら、どう対応する?
年中・年長のお子さんが登園しぶりをしたら、まずは落ち着いて様子を確認しましょう。
体調に問題がある場合は休ませる必要がありますが、元気なのに行きたくないという場合は、以下のことをまず行なってみましょう。
最初の対応を落ち着いてすることでお子さんの気持ちも和らいで、少しずつ解決へ向かう手立てとなるでしょう。
2-1.まず、お子さんの話をしっかり聞く
お子さんが「行きたくない!」と言った時には驚きますよね。
親御さんも忙しいのでとりあえず行ってほしいと思うこともあるでしょう。
しかし登園しぶりがあった場合には、最初の対応が肝心です。
最初にしっかり原因を見つけることで、登園しぶりが長引かないように対処することができます。
まずは、「どうしたの?」「何か嫌なことがあったの?」と聞いてみましょう。
「嫌だから」「つまらない」など、登園をしぶる具体的な理由がないこともありますが、それはまだお子さんが自分の本当の思いをうまく言葉にできていないからかもしれません。
お子さんが登園することに対して何かしら嫌なこと、不安なことがあることは確かですので、その思いは否定せず受け止めてあげましょう。
2-2.お子さんの気持ちに共感する
お子さんに行きたくない理由を聞いたら、どんな理由であってもまずは共感してあげましょう。
その際、以下の点に気をつけると、お子さんにより共感の気持ちが伝わります。
●目線を合わせる
→→→ しゃがんで、自分のおへそをお子さんに向ける同じ立場で思いを聞く
●ゆっくり話す
→→→ お子さんが親御さんの言葉を頭で整理して自分の思いを伝えられるようにする
●お子さんの言った言葉を繰り返して言う
→→→ お子さん自身が言ったことが受け止められたと感じ、続けて話をしようとする気持ちを促す
例)
「工作の時間が嫌だったんだね」「遊びがつまらないのか〜」
親御さんに共感してもらうことでお子さんは「僕・私の味方になってくれる」と思い、安心感を得ることができます。
安心できることでお子さん自身でも気持ちを整理することができ、行きたくない本当の理由を見つけたり、自分で気持ちを切り替えられたりするようになります。
本当に思っていることを言葉にして受け止めてもらうことで、気持ちがスッキリして再び登園できるというお子さんもいます。
まずはお子さんの気持ちに寄り添って、お子さんの感じていることを認めてあげましょう。
2-3.解決方法を提示して、お子さんに決めてもらう
人間には「自己決定理論」というやる気に関する研究があり、「自分で決めることでやる気を高めることができる」という性質があることがわかっています。
自分で決めたことに対しては納得して行動することができるのです。
特に年中・年長のお子さんは「自分で決めたい!自分でやりたい!」という思いが高まる時期なので、この心理を活用することで前向きに行動してくれるでしょう。
具体的には、親御さんがお子さんに対応方法をいくつか提示し、お子さんに選んでもらうのがおすすめです。
例えば、
・気持ちが落ち着いてから遅刻して行く
・理由が解決する手段を一緒に考える
・とりあえず休む
・苦手な活動は見学できるように先生に相談する
・お子さん自身が先生への思いをお手紙に書いたり、親と一緒に伝えに行ったりする
などの対応方法があります。 お子さんの状況に合ったものをいくつか提案してあげましょう。
「〜なんだね。じゃあどうしたい?」
「お休みすることもできるし、嫌だよって先生に伝えることもできるけど、どうしたい?」
などと聞いてみましょう。
選択肢があればお子さん自身のやりたいことに近いものを選んで決めることができます。
3.年中・年長児の登園しぶりを乗り越えるための具体的ポイント
登園しぶりは何日も続くことがあります。
一度登園できても、また「行きたくない」と言うことも。
そんな時は、焦らずに以下のポイントを意識してみましょう。
小さなポイントを実践していくことで少しずつお子さんの気持ちも前向きになって、登園しぶりを乗り越えることができます。
3-1.親御さんがお子さんに明るい気持ちで接する
お子さんが笑顔で登園できるようになるためには、「園に行っても大丈夫だ」という安心感を持つことが大事です。
そのため、お子さんの味方である親御さんがまずは、前向きな気持ちでお子さんと関わりましょう。
親御さんの不安や心配な気持ち、いつまで続くのかという焦りなどをお子さんが感じとると、お子さんも不安な気持ちになってしまいます。
「お父さん、お母さんはいつも自分の味方だ」
「自分には安心できる場所があるから、園に行っても大丈夫!」
と思えるようになると、しぜんと園に足を運ぶことができるようになります。
園に行くことを促す時には
「園に行って◯◯くんが好きな〜があるかな?帰ってきたら教えて!」
「◯◯ちゃんが園に行ってる間、お母さんもお仕事頑張るから、お仕事終わった時に笑ってる◯◯ちゃんに会えるの楽しみだな!」
など、親御さんが笑顔で接することのできる声かけをすることで、登園に対してポジティブなイメージをお子さんに持たせることができます。
3-2.1日しっかり休んでゆっくり過ごす
もし園を休ませることが可能であれば、1日ゆっくり休んでリフレッシュさせることも考えてみましょう。
毎日、いろいろな人との関わりの中で頑張ってきて、疲れが出ていることもあります。
年中・年長さんも、まだまだ親御さんに甘えたい時期です。
1日たっぷり親御さんと過ごしてパワーを充電することで、お子さんを安心感で満たしてあげましょう。
休ませることが難しい場合は、休日にお子さんと過ごす時間を意識的に作るとよいでしょう。
スキンシップの機会を増やしたり、一緒に楽しめることをしたりして、お子さんへの愛情をたっぷり伝えてあげましょう。
登園しぶりをするお子さんの心の中には、「登園が怖い」「親御さんと離れることが不安」などの感情がいっぱいつまっています。
お子さんとの時間をゆっくり過ごす中で、その感情を少しずつ和らげていきましょう。
3-3.園の先生と連携する
登園しぶりがある時には家庭で抱え込まず、園の先生と連携をとることで、お子さんにとっても親御さんにとっても負担を軽くすることができます。
また、園に行きたくない理由をお子さんがしっかり言葉で伝えられない場合もありますので、園でのお子さんの様子を一番知っている園の先生に聞いてみましょう。
園の先生にお子さんの自宅での様子を伝えるとともに、お子さんの園での様子を聞いてみましょう。
子どもをみるプロだからこそ、気づくことや、お子さんにとって適切な声掛けをしてくれることもあるでしょう。
また、苦手な活動がある場合にも配慮してくれるはずです。
「園の先生に嫌な思いをさせないだろうか」と思うかもしれませんが、お子さんの笑顔を第一に考えていることは、園の先生も親御さんと同じです。
ご家庭と園で協力して、お子さんが笑顔で登園できるようにサポートしていきましょう。
4.登園しぶりは、子どもの世界を広げる時間
登園しぶりは、親御さんにとってもお子さんにとっても苦しい時間です。
しかし、お子さんは園での集団生活の中で、家庭では得られないことを日々学んで成長しています。
登園しぶりは、お子さんの心がその中で成長しようとしている表れです。
小学校への入学も近づき、「保育園・幼稚園の時から登園しぶりがあって、大丈夫だろうか?」「小学校でも同じようなことが起こるのでは?」と不安になることもあるでしょう。
しかし見方を変えると、小学校入学前に登園しぶりを経験し、親子で乗り越えることができれば、対処方法をお子さんは学び、小学校生活ではお子さん自身の力で乗り越えられるはずです。
お子さんの日々の園での頑張りを認めてあげて、心のエネルギーを蓄える時間を作ることで、また新たな世界へお子さんが進んでいける手助けをしていきましょう。
親御さんだけで抱え込まず、周囲の大人が協力しながらお子さんの成長の時間に変えていけるといいですね。
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