鼻くそつけないで!子どもの鼻ほじり癖にはどう対応するのが正解?
この記事を書いた人
狩野淳
- 公認心理師
- 臨床心理士
大学、大学院にて発達心理学と臨床心理学を専攻していました。
臨床心理士と公認心理師の資格を保有しております。
子ども達とその保護者の方の支援を仕事にしており、子ども達へは主に応用行動分析を認知行動療法用いて、保護者の方にはブリーフセラピーを使ったアプローチを行っています。
もうすぐで1歳になる男の子がいて、毎日癒されています!
「我が子が鼻をほじっていて困っている」「どうにかして止めさせたいけど方法がわからない」そんなお悩みはありませんか?
鼻をほじることは衛生上よくありませんし、周りの人に「汚いなぁ」と思われてしまいうまく関係が築けなくなる可能性があるので、何とかしてやめさせたいですよね。しかし親の見ていないところでするため、なかなか止めさせるのは難しいものです。
今回は、なぜ鼻をほじってしまうのか、どうしたら止めさせることができるのかについて解説していきます。お子さんへの対応で悩まれている方はぜひ参考にしてください。

目次
1.子どもはどうして鼻をほじりたがるのか

何度言ってもやめてくれない鼻ほじり…。どうして子どもはそこまでして鼻をほじりたがるのでしょうか。
まずは子どもが鼻をほじりたくなる理由について解説していきます。
1-1.①鼻の中の異物感が気になる
大きな理由の一つとして「鼻のなかが気になる」というものがあります。
子どもの鼻は詰まりやすく、鼻水や鼻くそでいっぱいになってしまいます。大人であれば、こまめに鼻をかむことでスッキリさせられますが、なかにはまだ上手に鼻をかむことができない子もいます。
大人にとっては鼻をかむなんてできて当たり前のことですが、「息を止めて鼻だけで空気を押し出す」ということは練習しないとなかなかできないことなのです。
そのため、「なんかムズムズする」「息がしづらい」といった不快感を自分でうまく処理できません。その結果、指を使って取り除こうとする行動につながりやすくなります。
また、乾燥しやすい季節やエアコンの効いた室内では、鼻の中の粘膜が乾き、固まった鼻くそが刺激になってしまうこともあります。
子どもにとってはその感覚が気になって仕方がなく、「触ればラクになるかも」というシンプルな理由で手が伸びてしまうのです。
とくに小さい子ほど「不快感を取る=指でほじる」という方法を思いつきやすく、癖のように繰り返してしまうことがあります。
1-2.②鼻くそが取れた時にすっきりする
2つ目の理由として、「鼻くそが取れてすっきりする」というものが考えられます。
私たち人間は「気持ちのいいこと・メリットのあることを繰り返し行う」という心理が働くことが多々あります。心理学では、こうした気持ちよさやメリットによって行動が続いてしまうことを「正の強化」と呼びます。
たとえば、子どもが自分で靴をそろえたときに「できたね!すごいね!」と褒めると、次回も同じようにそろえようとしますよね。
これは「褒められる=うれしい」というプラスの感情が行動を後押ししているからです。これが正の強化の典型例です。鼻ほじりにも同じことが起きています。
具体的には「鼻の中の異物感が気になる」→「鼻をほじる」→「鼻くそがとれてすっきりする」→「ますます鼻をほじるようになる」といったものです。
このような流れが強くなることで、親がいくら注意しても鼻ほじりのスパイラルから抜け出せなくなってしまうのです。
1-3.③注目を集めたい
また、別の角度から見ていくと意外な理由が見つかるかもしれません。例えば「注目されたいから鼻をほじる」ということも考えられます。
普段から「もっとママに自分のことを見てほしい」、「パパと一緒に過ごしたい」という欲求をもった子どもにとって、「叱られる」「注意を受ける」ということは苦痛ではない場合があります。
むしろ注目を集めることができるためわざと怒られるような行動をとる子どもだっています。
もちろんこれらの理由が複数重なっている場合もありますし、他の理由が背景にあるかもしれません。子どもの鼻ほじりについて厳しく注意する前にまずはどうして鼻をほじりたがるのかについて考えてみましょう。
2.なぜ鼻くそを食べるの?│心理師のお悩み箱

このコーナーでは具体的なお悩みに対してお答えしていきたいと思います。
「鼻をほじってそのまま食べてしまうという子がいることは知っていましたが、うちの子もそうでした…。正直、ショックだし、気持ちが悪いと思ってしまいます。なぜ、食べてしまうんですか? 子どもの気持ちがわかりません。」
というご質問をいただきました。
筆者である私の周りにも鼻くそを食べてしまう子どもがたくさんいます。その子たちに「どうして鼻くそを食べるのか」と聞くと大抵「なんとなく」「つまらないから」といった答えが返ってきます。
つまり、子どもも鼻くそを食べたいと思って食べているわけではなく、鼻をほじって鼻くそが取れたが、他にすることもないため口の中に入れどんな味がするのか、口の中ではどんな感じがするのか確かめているだけなのです。それが癖となって無意識的に鼻くそを食べてしまう子どももいます。
そのため、刺激のなさが鼻くそを食べる行動に繋がっているのかもしれませんね。
実際にどのようなときに鼻くそを食べているのか観察してみるといいでしょう。今回の記事の後半には鼻ほじりをやめさせる方法についても紹介しているため、是非そちらもご確認ください。
3.鼻ほじりの癖はどう影響するのか│少し怖いデメリット

鼻をほじってしまう理由について紹介してきましたが、次に鼻をほじることでどんなデメリットがあるのかについて解説していきます。
デメリットをきちんと理解しておくことで、年齢や発達段階に合わせて子どもに危険性を伝えることができるので、鼻ほじりをやめさせるきっかけになるかもしれません。
3-1.①周囲からマイナスに思われてしまう
鼻水や鼻くそはきれいなものではありません。それを手で触ったり食べたりしていると人間関係で損をしてしまうかもしれません。
低学年のうちは、周りの子どもからストレートな言葉でからかわれることや、「ちょっと汚い…」という目で見られてしまうことがあります。
学年が上がっていくと、直接言われることは減る一方で、陰でひそひそ話をされ、何となく距離を置かれてしまう…といった形で表れることもあります。
もちろん、必ずそうなるわけではありません。ただ、こうした経験が積み重なると、なんとなく学校に行きづらくなり、人との関わりを避けたくなってしまう子が出てくる可能性もあります。
「最悪の場合こういう展開になることもある」という程度に受け止めて、早めに対策しておくと安心です。
3-2.②病気のリスクが上昇する
そのうえ、鼻をほじる行為には健康面でのリスクも無視できません。
というのも、指先には日常生活で触れたあらゆる細菌が付着しています。そこから鼻の中に傷がつくと、細菌が入り込みやすくなり、思わぬ感染症につながることがあります。
実際、小児科の現場でも「鼻前庭炎(びぜんてんえん)」と呼ばれる、鼻の入り口が赤く腫れて痛む症状は珍しくありません。さらに、繰り返し粘膜を傷つけてしまうことで、鼻血を起こしやすくなったり、傷口が治りにくくなったりするケースもあります。
また、鼻腔内の細菌は種類によっては重い症状を引き起こす可能性があり、特に免疫力が落ちている時期には注意が必要です。
とはいえ、すぐに重病になるわけではありません。ただ「ちょっとした癖だから…」と軽視して続けていると、思わぬ体調不良につながることがあり得る、という点は大人が理解しておきたいところです。
子どもの体のためにも、感染のリスクを避ける意味で“鼻をほじらない習慣”を整えてあげることは重要なのです。
4.鼻ほじりをやめさせるにはどうする?対策・注意点

鼻をほじることでその子の社会面、健康面に悪影響が及ぶ可能性について紹介してきました。
では、子どもの健康的な生活を守り、心身の健やかな成長をサポートするためには親には何ができるのでしょうか。最後に鼻ほじりをやめさせる際のポイントについて紹介していきます。
4-1.①どうして鼻をほじりたいのかを考え、対策していく
冒頭でも紹介しましたが、鼻をほじるのには必ず理由があります。まずはその理由を解明してそれに合った対策を講じていく必要があります。
例えば鼻の異物感があるなら、鼻のかみ方を教える、ティッシュの先をねじり「こより」を作ってくしゃみを出す方法を教える、鼻うがいを試してみるなど方法はたくさんあります。どうしても我慢できないなら一度耳鼻科に相談してみるというのも1つの方法です。
理由を探るとともに「どんなときに鼻をほじっているのか」についても観察してみましょう。やはり暇になったときにほじっているのか、テレビを見ているときに鼻をほじっているのか…。
鼻をほじる機会を作らないとともに、癖になってしまっているなら「手を洗っておいで」「気になるなら鼻のなか見てあげようか」と怒るわけでも注意するわけでもないさりげない一言で「無意識に鼻をほじっている」ことを意識させる必要もあります。
4-2.②頭ごなしに否定しない
また、鼻をほじっている場面を見かけたとしても、「ダメだって言ってるでしょ!」「なんでやめられないの!」と叱りつけてはいけません。
大人からすると「やめればいいだけの話」に思えるかもしれませんが、子どもにとっては不安や退屈、緊張など、本人なりの“理由”があって手が鼻へ向いていることが多いものです。
そこを頭ごなしに否定してしまうと、「自分は責められている」「また怒られる」と感じ、かえって癖が強くなることすらあります。
とくに幼児〜低学年の子どもは、指摘の言い方ひとつで自己肯定感が大きく揺れてしまいます。
強い口調で叱られると、行為の意味を理解する前に“怒られたショック”が勝ってしまい、改善につながりません。場合によっては、親の目を盗んでこっそりやるようになり、結果として状況が悪化してしまうこともあります。
大切なのは、行為そのものを責めるのではなく、「どうしてそうしてしまうのか」を落ち着いて受け止めてあげる姿勢です。
「鼻がむずむずして気になった?」「退屈だった?」と、まず子どもの気持ちを探るように声をかけると、本人も安心して理由を話しやすくなります。そのうえで、別の行動に切り替える方法を一緒に考えていくほうが、長い目で見て確実にやめやすくなります。
5.鼻くそをなすりつけないで!心理師のお悩み箱

「我が子が鼻をほじって床などにつけています。やめなさいと言っても、すぐまたやっています…。子どもだから、と思う反面、汚いのでやめて!と思う気持ちも強いです。どうにかできないものでしょうか」
というお悩みを受けました。
このようなケースでは、“行動を一気にゼロにしようとしないこと”がとても大切です。「鼻をほじる」「床につける」という二つの行動がある場合、どちらも同時にやめさせようとすると、子どもにとってはハードルが高すぎます。
まずは「鼻をほじったとしても、出てきたものはティッシュで拭き取り、ゴミ箱に捨てる」「終わったら手を洗う」という、一段階ゆるやかな目標から始めてみてください。行動の順序が明確になり、子ども自身も“これならできるかも”と感じやすくなります。
そして、スモールステップでは「できた場面を見逃さずに褒める」ことが成功の鍵です。
たとえば、いつもは床につけてしまう子がティッシュで処理できたなら、「床につけなかったね!ちゃんと捨てられたの、すごいね」と具体的に伝えてあげると、子どもは「これを続ければいいんだ」と理解できます。
褒められる経験は行動の定着を後押ししてくれるため、結果として“鼻をほじらない段階”へとスムーズに進みやすくなります。
完璧を求めず、小さな成功を積み重ねること。それが、子どもの癖を負担なく改善していく一番現実的な方法です。
6.鼻ほじり癖も時間をかければ改善します!

今回は鼻をほじってしまう子どもについて、どうしてほじってしまうのか、鼻をほじるとどうなるのか、やめさせるにはどうすればよいのかについて解説しました。
一度身についた癖は、大人でも直すのが大変なものです。まして子どもであれば、気づけば無意識に手が鼻へ向かっていることも多く、一朝一夕で改善しないのは自然なことです。
だからこそ、焦らずに環境を整え、子どもが「やりにくい」「やらなくても大丈夫」と感じられる状況をつくり、根気強く伝えていく姿勢が欠かせません。
たとえば、ティッシュを手の届きやすい場所に置いたり、手が退屈しないように小さなおもちゃを持たせたりと、子どもの“ついしてしまう理由”に合わせて工夫していくことが、改善の大きな一歩になります。
そして何より大切なのは、叱りつけて行動を止めるのではなく、子どもができたことを受け止め、認め、褒めていく関わり方です。
「床につけなかったね」「ティッシュで拭けたね」といった具体的な言葉かけは、望ましい行動を増やすだけでなく、親子の信頼関係をじわっと厚くしてくれます。
この安心感が、子どもにとって“やってみよう”“次も頑張ろう”という気持ちの土台になり、結果として不適切な行動を減らす力にもなります。
癖の改善には時間がかかりますが、少しずつ変わっていく姿を一緒に見守りながら、その都度できたことを肯定していくことで、子どもは確実に良い方向へ進んでいきます。
ぜひ、焦らず丁寧に、そして親子で無理なく取り組んでみてください。
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